魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~   作:無淵玄白

230 / 420
はい、というわけで新章突入。同時にロストゼロと劇場版ではないひよっちさんのリーナの声がようやく分かったわけだが、『ああ、ねこかぶってんな』と分かる演技であり、グッドだった。


第211話『季節を抱きしめて』

 新年度を迎えた今日この頃ではあるが、年末年始はどうやら各自で、全員揃うということは無かったようだ。

 

 まぁ別に、何かある都度集まんなきゃならない決まりがあるわけではないが、友人との付き合いというのは、些細なことでも、誘ったりなんだりしなければいけないのだから―――。

 

 と、言いつつも三人ほどは既に異国の空の下だったので、日本でも幹比古とエリカは家の事情で三が日は集まることが出来なかったようだ。

 

 達也と深雪もまた『家』の方にお呼ばれするのではないか、とか考えたがそれは無かった。

 

 その辺りはともかくとして―――。色んな所から三が日に来いやという誘いは多かった。

 

 中でも……

 

『セルナ、金沢に一度来ませんか? 年始にお顔をみたいです。お父様も一度お話したいと言っていますから (*˘︶˘*).。.:*♡』

 

 いつの時代の顔文字だよ、と言わんばかりのものを添付しての愛梨からの誘いに対して―――。

 

『From USNA in the Angelina's house (ヾノ・∀・`)ナイナイ』

 

『ア、アンジェリーナァアアア!! というかそういうことはもっと早く言っておいてください!! ヽ(`Д´)ノプンプン』

 

『アンタに伝える理由は無いでしょ。

流石に近傍(ちかば)のフレンズには伝えるようだったけれど(。ŏ﹏ŏ)』

 

『しれっとウソつくんじゃねーですわ。このだらぶち―――!!ヽ(`Д´#)ノ 』

 

 そんな風なやり取り。姫初めを終えた後だったのでリーナの機嫌はマックスに悪かった。

 

 ついでに言えば階下のお義父さんの機嫌も悪かった。

 お義母さんの方は、『マゴはまだかしらー?』。気が早いのは、母親の方であった。

 

 だが、それだけではなかった。結局の所、この2人もリーナの「じいじ」。烈のジジイの弟に隠れて『にゃんつきあっていた』そうだから、『因果応報』であると伝えられるのだった。

 

『ファミリーのそういうナマナマしい話は聞きたくなかったワ……』

 

『ケンお義父さん―――いや、ケン先生は僕にとっても憧れだったんだ。そういう不純な動機ばかりじゃなかったんだよ。アンジー』

 

 とはいうものの、もはや手遅れであった。なのに娘の彼氏は邪険にするのか?

 

 そういう視線を女二人から一心に浴びるお義父さんに、若干気の毒な思いである。

 

 まぁ娘を持つ父親なんて、どこでもそんな風なのかも知れない。あくまで想像ではあるが。

 

 ともあれ、最期の方には結局―――

『アンジーのことは任せた。軍隊に行くと決めた時に、引き留めもしなかった情けない父親である僕が、あれこれと干渉する筋はもはや無いんだからな』

 

 後悔してはいるのだろう。本当はもっと傍で成長を見守り、一人の女の子として巣立つところを見ていたかった。

 

 勿論、その時―――彼女の隣にいるべきなのは、自分のような海の物とも山の物ともつかぬ馬の骨ではなかったはずだ。

 

 だが、それでも『そばにいる』。そう決めたのだから、それだけは貫き通すべきなのだ。

 

 まぁリーナパパの安心の為にも、それなりの社会的地位はエルメロイレッスンで得てきたつもりだが、まだまだなのだろう。と、己を自戒しておく。

 

 シールズの家の人々との交流を経て、フェニックス基地に行こうかと思ったが、その前にバランスから『こっちはそれぞれだ。日本に直行でも構わんぞ』。

 

 何か隠されている。汗を掻いて焦っている様子のバランスを見て、そんな気分を感じたが、追求は出来るはずもなく、結局シルヴィアなどに会えることも出来ずに、日本に帰ったわけである。

 

 そして日本に帰ったら帰ったで、多くの魔法関係者からの誘いがあるのだった。

 

 もっとも一番の関心事は達也からのコールであった……。

 

『深雪たちと初詣に向かった時、案内板に『開運 遠坂神社』なる寺社を見かけたんだが、お前の関係か?』

 

「行ったのか…!?」

 

『いや、何か『お賽銭』を『ガッツリ』取られそうな気がしたんで止めておいた。まぁ新年だから、そんぐらいは大らかになっても良かったかも知れないが』

 

 行かなくて正解である。赤貧のあまり、学生時代に巫女のバイトをやっていた母の『影響』が出てしまったのだろう。

 とはいうも、冬木市民は、神社よりも円蔵山の柳洞寺に詣でることが常なのだ。

 ある意味、戦国時代の寺社混合の名残が色濃いのだろう。

 

 冬休みの殆どを魔法の名家への外回りに費やされつつも、否応なく一学年最期の学期は始まろうとしていた。

 

 ・

 ・

 ・

 ・

 

「―――つまりは勅命ということだ。理解しているか?」

 

「ハイハイ。分かってるってば。要は、何らかの形で『聖剣』を保有しているジャパニーズの特定をした上で、そいつを確保ないし、『聖剣』の奪取をしろってんだろ? 『陛下』から私掠船免状(プライヴェーティア)でも出ているんならば、問答無用で海賊行為出来るんだがよ」

 

「今の時代にそんなこと出来るものか!! ……とはいえ、王室の方々も関心を持っているのは事実だ……」

 

 今時珍しい。本当に珍しいぐらいに書類の山で埋め尽くされた部屋で、男と女―――否、少女は話し合う。

 

 少女の方は本当に気怠げな、というか人をナメきったような態度で、三人がけソファーに身体を預けていた。

 

 肘掛けに足を乗せるというチンピラスタイル。この冬場にも関わらず、ショートパンツで生足を晒した姿。

 

 性的興奮は覚えない。その少女の実力を男は良く知っていたからだ。

 

 少女はそんな体制からでも、『CAD』など用いずとも自分を『殺せる』。そういう手合なのだから。

 

「年明け前から、こんなことばかり言い合ってきたんだぜ。いい加減、意味ね―だろ。容疑者が高校生なのも今更だ」

 

「念押しというのはそれなりに意味はあると思いたいね。特に君のような無軌道極まる少女には、それぐらいは言っておきたい」

 

「寧ろヤル気がダウンするとは思わねーのか?」

 

「ヤル気など最初っから『あっただろう』? 君の一族にとっても、これは『悲願』のはずだ?」

 

 ソファーから身を起こして、ようやく男と正面を向いて会話をする気になった少女。

 

 その目はギラついた野生の肉食獣を思わせるものであり、その髪は黄金(こがね)に輝き、後ろの方でざんばらに纏められていた。だが、その一方で編み込まれた房が内側に存在もしていた。

 

 解けば、それなりの髪の量になるのではないかと思うも、それは彼女は好まない。

 

 活発な少女。そうであることを自他共に認めて、あからさまな女扱いを嫌うのだ。

 

 事実、『この機関』の一員、マギクスとしても優秀だった、最優良のエリートとも言える男が彼女を口説きにかかった。

 

 英国人のくせにフラ公(仏国人)のような真似をする男―――。

 

 それに対して、少女の反応は文字通りの『半殺し』であった。血塗れの身体を晒したその男は、もはや魔法師として再起不能であった。

 

 そんなことを思い出して彼女の評価はバックアップ要員すら必要としないワンマンアーミーだと再認識。言うなれば、本当にこの少女は扱いがむずかしい爆弾なのだ。

 

 下手をすればTOKYOが壊滅するぐらいは覚悟せざるをえない。

 

 噂にだけ聞くUSNAのアンジー・シリウスは、10代の少女とも20代の妙齢の『歌姫大統領』だとも、はたまた、何か行動をするたびにそれが深刻な騒動となり、とんでもないことになる『天魔の魔女』とも……。

 

 何とも言えぬ噂の拡散が拡散を呼んでいるのだが―――。

 

 どうでもいいことであった。ゆえに男は再度命じた。

 

「ラウンズNo.SIX()、オーダーを発令する。コーンウォールより失われし『聖剣エクスカリバー』の確保・奪取―――これを最優先とすべし」

 

「英国王室は、それなりにお得意さんだ。それにエクスカリバーと来れば―――」

 

 絶対に獲ってみせる。そういう気概で歯を剥ける少女は『行くぞ』と呼び、『オウ!!』と叫ぶ仔獅子型のアニマロイドを引き連れて、部屋を出ていくのだった。

 

「はてさて、果たして上手くいくのかね……」

 

 答えは神のみぞ知る(God only knows)。そんな言葉で占められるのだった。

 

 嘆息しながら次なる案件に取り掛かるべく、筆を取り出す『課長』であった。

 

 ・ ・ ・ ・ ・

 

「成長するということは、即ち枝葉を伸ばすということである。

 生命というのは、一つのベクトルであり、放っておいても技術や能力は発展する。もちろん、適切な環境と潤沢なリソースがあれば、成長は早い。

 そう考えれば、魔法師に関わらず全てのニンゲンは、立ち止まることはない。そもそも立ち止まるほうが難しいぐらいだ。

 何かしら過去に脛傷あったとしても、それを『克服』するか、もしくは『抱え込んだ』ままであっても、魂が生み出す衝動は人を衝き動かす―――。

 例え、それが無謀な試みであっても求めるものがあるならば―――人はそれを目指す。

 まぁ何かあって、そのベクトルを変える。即ち魂の根底から生まれ変わるニンゲンというのもいるが」

 

「それはどういったことがあれば?」

 

「一種の『悟り』を開くことですね。自分のダメさ加減にとことん向かい合うぐらいに『大きな人物』を知り、現実を知れば―――その魂は変質を果たす。

 はたまた巨大すぎる『怪異』に直面すれば、変異を果たす。

 まぁだからといって、そんなものに積極的に関わって命を落とすようなことになっては、元も子もないですが」

 

 そりゃそうだ。という苦笑の下、此度のエルメロイ・レッスンは、少しだけの物悲しさを含んでいた。

 

 それは、もうすぐ来るからだ。

 

「なんだよ。遠坂君、いやロード・トオサカ、センチメンタルかい?」

 

「そんなところですよ長岡先輩。オレはまだ、ウェイバー先生の教えを全てあなた方、三年生に教えられていない―――そう考えると、何とも中途半端をやってしまったことにとても後悔を覚えてしまう」

 

 そんな風に苦悩の嘆息をする刹那だが、今期の卒業生たち、通称『草の字』世代とも言われる彼ら、特に2科生たちは、感謝の極みであった。

 

 一般に魔法師というのは、広範囲にわたって『煌めくような才能』を持つ者が尊ばれて、ある特定の分野において恐ろしいほどに『深い才能』を秘めた者は、淘汰されていくのが常だ。

 

 というか、そもそも魔法師の教師の殆どが前者の典型ばかりで、後者のようなものを『どうやって指導すればいいのか分からない』という形だったのだ。

 

 そうでなくても、『魔力』の扱いと演算領域の浅深の相性などを測ることが出来ずに、『この分野』をちょいとやってみてくれということが出来なかったのだ。

 

 そもそもこなすべきカリキュラムが多すぎて、日々の課題をこなすことにだけ汲々としていた……。

 

 魔法を使えることに『楽しさ』など無かった日々に光を差したのが、宝石の魔法使いだった。

 

 遠坂刹那は、人の才能をズバズバと言い当てる人間だった。

 その上で『駄目だったらば、相性が悪ければ―――次の分野ですよ。誰しもどこかに『掘り当てるべき』ものはあるんですから』と言って適切な指導を出せる人間である。

 

 もっとも刹那の指摘は『的外れ』がなく、若干の修正をした後には、即座に『皆中』を出す恐ろしいものだった。

 

 そうして刹那のレッスンが始まって以来、2科生の中に退学者は出なかった。現代魔法のカリキュラムも万全にこなしていき、1科にすら迫るものすら出るほどだった。

 

「まぁ私は途中参加組だが、少しだけ悲しいね。もちろんいつまでも私や刹那が見ていられるわけじゃない。人生は長いから、どこかで独り立ちの時は来るんだけどね……本当に時間(とき)が足りなさすぎた……」

 

 未だに色彩が施されていないキャンヴァスにどうやって何を描いていくのか、そこで指導を入れる。

 もちろん指導がいらないならば、あとは本人の資質と感性だけなのだが―――それでも、全てを教えていれば―――何か『大きなもの』に辿り着くことが出来たんじゃないかと思う。

 

 それをエルメロイの二大講師は嘆くのだった。ダ・ヴィンチの言葉に、三年生の女子は目頭を押さえる。

 

 もはや卒業試験を終えて、自由登校となった身となってもここ(一高)にいる理由は、就職や進学関連だからではなく―――単純に、エルメロイレッスンをまだまだ受けていたいという気持ちがあるからだ。

 

 だが、いつまでも―――ここにいては後進の妨げとも成り得る。

 分かっていても、ここでの授業は、魔法科高校の中で一番にキツイが辛くはない。何より一番楽しかったのだから……。

 

 そんなしんみりとした空気の中でも、授業をその後、滞りなく終えてから、ロマン先生と刹那とダ・ヴィンチは話し合う。

 

「流石に『純正』は法律に引っかかる。まぁ千葉みたいな例もあるから、何か微妙な話なんだけどね」

 

「魔術師にとって一種のイニシエーション、メモリアル品なんですよ。オレは妥協したくない」

 

「そこは妥協しろ! 卒業生が銃刀法違反で捕まってもいいのか!? まぁ今はなき東急ハンズでも『光り輝くタイプ』が売っていたという噂もあるぐらいだからな」

 

『『それは初耳だ』』

 

 何がなんだか分からないが、三人の講師が喧々諤々の様子で言い争う。

 

 何なんだろうと思いながらも、その『タイガー』な『ころしあむ』のシナリオを依頼された『半同人半プロ』な作家たちのような様子に、誰もが興味を覚えながらも、それでも何かがあると思って、少しだけ楽しみにしておくのだった。

 

 

「それにしても―――雫の代わりにやってくる留学生が三人とはな」

 

「B組に寄越されたことから『お察し』ですけどね」

 

「嫉妬か?」

 

「いいえ。ただ今更ながらキナ臭いものを感じまして」

 

「叔母上曰く、刹那の秘術を狙ってUK、フランス……エジプトが動き出したらしいからな」

 

 サイオンもとい魔力によるページ移動―――もはや慣れてしまったものをさせながらオレンジジュースを飲んでいた達也は、『冥界の鳥オシリス』という項目で止めて深雪と会話をする。

 

「横浜での一件。最期に放たれた聖剣の一振りは、戦略級魔法のそれだからな。詳細を知りたいと思っても公式発表の必要もない」

 

 これで中国内戦が起こらず、『予定通り』艦船全てを達也が発破していれば、USNAは―――。

 

(別に動かないんだろうなぁ……)

 

 既にそちらに関わる楔は打ち込まれている。だからどうでもいいと思っているのだろう。

 

マネーデビル(金の悪魔)ならぬマジックデビル(あかいあくま)がやってきて、セツナ・ラインをやっているわけだしな」

 

「何でジョゼフ・ドッジも同然に扱われているんでしょうね……」

 

 深雪は唸るような言い方だが、刹那という劇薬が日本の魔法師社会に齎した衝撃はとんでもない。

 

 もちろん良き面も悪しき面もあることだが……。

 

(白黒つけなきゃならん世界で、『白』は『白』でよくて『黒』は『黒』でいい、はたまた逆に成りたきゃ『どうぞ』と言ったところか)

 

「一つに固まったものを嫌う。光と闇は分かれるべくして別れたのではなく、多くのものを内包出来るからこそ別れたのだ―――だったか」

 

 あらゆるモノは一つでは孤独なのだ。だから多くに分かれようとする。

 

 国家間の力関係が低俗なゼロサムゲームに転じて、魔法の価値や力学ですらソレになる中、そうなの(多様)だから―――。

 

「まったく、大したやつだよ」

 

 笑顔を向けながらの兄の言葉に、もはや深雪は諦めの苦笑を零すしかなくなるのだった。

 

 そうしていると、刹那とリーナを除いた面子が、休憩室にいる自分たちを見つけて駆け寄ってくるのが見えた。

 

 どうやら二人っきりの時間は終わりのようだ……。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。