魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~   作:無淵玄白

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こちらのリフレッシュとしての新作投稿でしたが、まぁこちらも書いていましたよ。

もはや「さすおに」なんて古いな。時代は『さすがキリシュタリア様』。略して『さすキリ』だ。(爆)

ええ、本当に。よく考えればAチーム全員、何かしら『わかってしまう』ストーリーがあったんだよな。
第五章に来るまで―――。

そういう意味ではリーダーたるキリ様は……本当に、荒耶宗蓮ならば絶望して『人類を全滅』と考えるのに―――いや、本当に深いな。ネタバレになるので新話どうぞ。


第223話『心に暗雲がかかる』

盗聴(パパラッチ)の調子は順調ですかね?」

 

「―――まさかエリカではなく、君が来るとはね……」

 

「たまにはお巡りさんとコネを作っておくのも悪くないと思いまして」

 

病院の事務室、一種の入院患者という『被害者・容疑者』から何かの『情報』を取ろうとアレコレの機器を入れた場所に堂々と入れたのは、機械オンチの刹那でもナノセコンドでセキュリティを突破できる礼装があったからだ。

 

積極的に使おうとは思わないが、この場合はかまっていられない事情が多すぎた。

 

「一つだけ忠告を。ご令妹を死なせたくなければ、本気で止めるべきですね。今回の一件からは手を引いた方がいい」

 

「……君に言われた所で、これがオレの職務だしねぇ。何よりエリカがオレの言うことなんて聞くわけないしな。

言えば言うほど、頭を抑えつけられれば、何としても喉笛に噛みつかんと頭を上げてくる子なんだよ」

 

何より千葉の門人たちの間―――多くの治安関係者の中でアイドル的な立ち位置にあるわけで、あまりとやかく言うと、後々にとんでもないことになる。

 

長男なのに立場がなく、師範としても門下生にアレな態度を取られる。

 

時々、『シバレン』先生の作品に出てくる剣侠を作るのがウチ(千葉道場)なんじゃないかと思ってしまうほどだ。

 

「だとしても―――死んでからでは、なんもかんも遅いですよ。忠告だけはしておきましたんで」

 

そんな軽い口調ながらも、事態の裏側を知っている刹那を引き留めて根掘り葉掘り聞くことは出来なくなっていた。

 

だが、その言葉の深刻さだけは寿和でも聴き逃がせない旋律を伴っている。

 

知らずに汗をかいた自分を自覚して―――とりあえず盗聴に専念することにした……。

 

 

† † † †

 

―――レオの幽体を調べる。そうすることで吸血鬼の正体を探ってみせるという幹比古。

 

そう言ってのけて幽体というものの説明もしてくれた幹比古だが、達也としても突っ込まざるをえないところがある。

 

「幹比古、レオが戦っていた吸血鬼が、レオの精気を吸い取った。

だが、その精気は血液ごと『ツインテール美少女吸血鬼』に吸い取られたんじゃないか?

うまい事言えないが、正体を探る時に混線・混信の類にならないか?」

 

左手に何か――『玉』のようなものを持つ達也が、それを右手にお手玉のように投げ渡す仕草ごと、それを言うと―――。

 

「あ―――」

 

今更気づいたかのように、呪具たる『札』を落としそうになる幹比古。

 

そしてそれとは違い『美少女吸血鬼』という単語に『むっ』としたような深雪とほのかの顔。

 

どうしようもないぐらいに男子2人の『うっかり』の類だったが、そこにタイミングよく『専門家』がやってきた。

 

「幹比古が脳内処理の『イメージ』で見えてきたものを、美月が『眼』で照応させればいい。要は霊媒だ。

この場合、幹比古がかき分けたものを、美月が正しく見ていけばいいんだが――――」

 

「が?」

 

自動ドアが開かれて入ってきた男の、いつもどおりの『魔術師』としての『知識』(ウィズダム)の披露であったのだが、最後の方には歯切れを悪くする刹那。

 

「個人的には奨められない。恐らくだが要らないものまで見る可能性がある。代わりに俺がやるが―――」

 

「いや、刹那の手は借りない。達也もそうだけど、今回の君は―――隠しすぎだ。信用できないよ……」

 

「幹比古……」

 

最期に呼びかけたのは刹那ではなく、レオである。

 

恐らくレオは、何かしら刹那の『助力』を分かってはいたのだろう。だが、それでも幹比古の懸念というか言わんとすることも達也は理解できる。

 

(俺にだけは明かしてくれると思ったんだがな)

 

色々と秘密をしりすぎているからこそ、この事態。上手く回すには達也の手も借りたいと言ってくれると思っていた。

 

いや、刹那はもしかしたらば、『自分』(司波達也)すらも危険に巻き込みたくないからこそ話していないのかも知れない……。

 

(なんだか―――バラバラだな……)

 

友情の崩壊。なんておセンチな単語を使いたくはないのだが、それでも見えぬ亀裂が走るのを達也は幻視する。

 

「―――分かった。「隠し事」をしている俺だからこそ、本当に要らん世話として最期まで忠告しておく……見えないはずのものまで見ようとするな」

 

それが忠告であって美月が少し不安そうにしていても、最期には意を決したようだ。

 

最期に美月が選び取った手は、小指に赤い糸がぐるぐる巻きの男子ではなく、自分とそれなりに同じ視点で『もの』を見れる頑張っている男子であった。

 

幹比古を信頼するその『眼』が光り輝く。メガネを外して札を額に当てて幽体を『見る』幹比古。

 

幹比古に『魔眼』の焦点を当てて―――霊媒と化した美月の脳裏にイメージが飛んできた……。

 

瞬間―――美月の脳裏に『映像』が再生される……。

 

―――わたしがピンチになっちゃったら―――。

―――その時は助けてくれるよね?―――。

 

夕焼けの空、ただの帰り道での約束。

果たされぬヤクソク。

 

―――■塚。俺は、お前を助けられない―――

―――けどな、それでも約束したから。―――

―――俺は別の方法で、おまえを助けてやらなくちゃ―――

 

月光の夜空、いつかの約束を思い出す。

果たさなければならぬヤクソク。

 

メガネを外して『蒼い眼』をした『死神』は、赤い目をした少女を殺すべく、『殺人■』となる……なろうとした。

 

けれど無理だった。彼女を殺すには、あまりにも『死神』は人間で優しすぎた……。

 

■沌を『殺した』時のような心構えは持てない。

人間としての理性や道徳心がどうしても―――そして彼女は怒っていた……。

 

ヤクソクを果たせない殺人■を―――。

どうしようもなく『無力』な己に―――。

けれど終わりの時はやってきた……。

 

―――それじゃあ、わたしは家がこっちだから。―――

 

―――そろそろお別れだね―――

 

―――うん、ばいばい■■くん―――

 

ありがとう―――それと、ごめんね

 

 

美月の見ているものが切り替わる―――。

 

 

それは真夏の夜の夢幻の再演―――。

 

うだるような暑さの中にある数多の出来事。

 

町の正義の吸血鬼少女として動き、人類を救済する『装置』となった友人を助ける姿もあれば―――。

 

黒猫の頼みを聞いたり、黒いナマモノと会話している想い人の姿とその変な言動に涙したり―――本当に薄幸の美少女だなと思えた。

 

路地裏に三人で住んで―――色々とアレだったり、コントをしたり、ゴールドヒロインとなるべく十二宮を攻略していったり―――。

 

そして―――……。

 

「――――っ……」

「美月……?」

 

何も言わず少し俯いてからスケッチブックに筆を走らせる美月を誰も止められない。

 

「レオの精気は―――その茶髪の子に行っている。達也や刹那の言う通り混線してしまったけど」

 

「レオ自身は大丈夫なのか? 吸血鬼に血・精気を吸われたものは、食屍鬼になるという話だが」

 

美月と同じく少しだけ陰鬱を含んだ幹比古の言動に達也は見識を述べたが―――。

 

「そっちは大丈夫だと想う。レオの霊的資質と肉体的資質は高いからね―――何かの『混血』にも思えるよ」

 

「混血?」

 

「面倒くさい説明を省けば―――鬼や妖怪との『混じりもの』のことだよ。彼らとの生殖が可能だった頃の力を有している連中は多いんだ。G組の猫津貝さん、鳥飼さんなんかは、そういったルーツを持っていると想う」

 

その話は、以前―――レオ関連のクリスマスの時に『ランサー』から聞いたものだ。

 

まさか、そちらに関する情報が補足されるとは思っていなかった達也だが……友人の安全が保証されたことは確かだ。

 

「まっ、オレの秘密ってやつだ。あまり探らないでくれ」

 

「ごめん」

 

誰も探られたくない腹はあるわけで、そういうことだった。

 

そうしていると美月のスケッチは終わった……。

 

断片的な情報だが、『吸血鬼』の正体に繋がるものがあるかと全員が、何十枚も描かれたそれらを好きに手に取る。

 

一枚―――達也は手に取る。そしてそこにいた『人物』に眼を疑った。

 

思わず刹那に問いかけたい衝動を押し殺して、目線だけで訴えるも―――取り付く島がない様子。

 

だが、これで確定的な面はある。首筋に噛みつこうとしても出来ない相手。

 

ナイフを持ち―――レオの言う茶髪の少女の真ん中を刺し貫いたもの―――。

 

間違いなく―――相手は刹那の世界の吸血鬼『死徒』であった……。

 

 

◇ ◇ ◇ ◇

 

レオの見舞いの後―――刹那とリーナはまだ話し足らない達也たちと分かれて帰路に着いていた。

 

こちらの対応に色々な反応だったが、それでも話せることは少ないのだから仕方なかった。

 

「気付かれないわけがないんだよな……」

「ドウするの?」

 

どうしようもない。コミューターの中でリーナと話し合いながら、今はダ・ヴィンチとロマン開発のミディアン・レーダーが稼働することを願うのみだ。

 

東京はあまりにも広すぎる。そして死徒の反応はサイオンレーダーでは測れない。奴等は容易に『人』に紛れられるのだ。

 

皮肉なことに、デミ・ヒューマンとも言える『魔法師』よりも『人間に近い』存在だというのだから、始末に負えない。

 

「リーナ、この後の展開を予想してみてくれ」

 

「ウ〜〜〜ン……考えるにエリカはレオの『仇討ち』に出るわよね。トシカズ警部が、フェイカーにやられた時ですらそうだったもの」

 

「けれどレオは別に『千葉流の門下』であったわけじゃないぞ?」

 

「そうは言うけどブラザーであるトシカズさんが、レオを巻き込んだんだもの。何かしらの責任を感じるわよネ」

 

その言葉に、一応『修次』さんの方にも一報を入れて、エリカの行動を封じることを一計した。長男の言では止まりそうにないならば、次男も使うのみだ。

 

「で、連れ回すのはミキだけ―――もしかしたらばミヅキもあるかもしれないけど、戦闘力に欠ける彼女を連れて、レオを倒した『吸血鬼』には向かないわよね」

 

兵法家としては小兵を以て勝利を得んとする気概は買うが、まぁ無理だろう。

 

「さらに言えば、その捜索は『七・十』(Seven・Ten)とは協調しないでしょうね。もちろん『ワタシタチ』とも」

 

そして吸血鬼―――幹比古の言うパラサイトと鉢合う前に、本命の吸血鬼『死徒』とかち合う。

 

最悪の結論であった。

 

「一応、『一匹』ぐらいは就けておきたいが、知覚にすぐれた幹比古が見つける。見つけた後は舎弟よろしくエリカにご注進、態度は硬化。

結果として、吸血鬼退治は難航か……」

 

そして正直に話しても、どうなるか……。

 

「―――要は首さえ落とせばいいんだ。エリカと幹比古には悪いが、鼻先に吊らせるエサの役目をやってもらう」

 

「い、いいの?」

 

「どうせアイツラの武器や魔法じゃ死徒には『無効』(キャンセル)だ。適当な所で介入して確実に首を落とす。夢幻召喚は、北欧の『セイバー』と『ランサー』だ」

 

その意味は―――刹那とリーナにとって一番『力を引き出せる英霊』だ。つまりは……本気で行くということである。

 

リーナは軍での階級の序列を考えから除いたうえで、我知らず息を呑んだ。

 

「吸血鬼とグールが『複数』『数カ所』で出る可能性を考慮して、チームは分ける。後でお虎とシオンたちには伝えておく」

 

「これで終わると想う?」

 

「―――それが分かればなぁ……あの『黒の姫君』との『契約内容』すら分かりゃしないんだからな。正直、ここまで生き汚い存在だとは思わなかった……」

 

シオンの語る所『招かれた死徒』は、数代前のアトラス院長の『可能性』(IF)であった。

 

『人物』自体は、刹那も人伝(ひとづて)ではあるが、知っている。そいつも刹那の世界では『死徒』と化していた。

だが、姫君―――『アルトルージュ・ブリュンスタッド』との契約で死徒になったなど聞いたことはない。

そんな『死徒化』になっていれば、目くじら立てて教会は殲滅作戦を実行していただろうに。

 

 

「何にせよ。こちらの戦力で片がつくならばいいさ」

 

あいつらは尋常の世の人間だ。サーヴァントという『人理』側の存在ならば、『まだ』接触はいいが……。

 

『人類悪』側の存在と接触をすれば、運命に見えぬ『瑕疵』はつくだろう……。

 

そんな風に他人に必要以上の気遣いをする態度が、のけ者扱いを加速させている。

 

そうリーナは考えて、そんなことを刹那も理解していないわけではない。

 

そう理解しているだけに心苦しい。

 

そして、それが最善と判断している2人は互いに自己嫌悪を覚えて―――お互いの手を握りながらも、窓の外。流れる風景に眼をやるのだった―――。今している顔は互いに見せたくないほどにひどいものだったのだから……。

 

 

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