魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~ 作:無淵玄白
明らかに大きすぎる波動。これほどの『力』の激突を完全に隠蔽している時点で、あまりにも異常であった。
「リズ……君の言う『吸血鬼』の情報が本当ならば、即座に殲滅を図るべきなんじゃないのか?」
「カツトの言うことは単純明快でいいわね。けれど、人手を増やして囲いを作ったところで、『死徒』は囲いの人間を『手下』にして、あっという間に包囲網を腐らせる……刹那が人員を選抜してことに当たっている以上、その可能性を危惧しているのよ」
全ての事情を聞かされて半信半疑ながらも、結界の内側の光景を見てしまう。
宙に浮かぶ水晶球……魔女の占い道具のようなものから見せられた光景に、十文字克人は事実と真実を認めて、この場で加勢すべきではないかというも―――
「アナタが吸血鬼の『子』になってしまったらば、転化を止めきれないわよ。ゾンビがどうやって出来るかぐらいはフィクションで知っているでしょ?」
そう言われてしまえば、何も言えない克人。数日前の七草家での会合を思い出してしまう。
リズリーリエ、遠坂刹那……そして、留学生たちは、その正体を知っている。
知らなくてもいいと言われて、それを納得できるほど……今の克人は物分りが良くない。
「私と戦う気?」
戦闘に入る先触れを感じたのか、眼を鋭く、されどおもしろがるように聞いてくるリズに緊張する。
「いざとなれば、な……」
そもそも勝負になるかどうかすら分からない。
側に控えている執事風の大男…サーヴァントだと断定した相手にすら勝てない。
そう確信しながらも、大気が震えるとでも言えばいいのか、とんでもない圧力が公園から届く。
植えられている木々も自らざわつくように、風に煽られていないのに、震えと怯えを枝葉を用いて表現しているようだ……。
数少ない枯れ葉が大地に落ちていく様子が不吉さを催す。
そして―――。
「―――――――――」
「『下がる』わよ。巻き込まれたくないわ」
結界を超えて『何か』が、こちらを侵食するかのように克人とリズの肌身を細かく突き刺してきた。
『何か』の正体は判明しないが、それの影響なのかリズの映し出していた水晶宮の映像は完全に途切れた。
その時には、半ばリズに引っ張られる形で結界の境界から下げられてしまう。
部外者である自分が関われないことが悔しくて合流してきた真由美。七草家の人間だろうものを連れての登場にバツが悪い思いだ。
というのは克人だけで……克人の手を握っていたリズの姿は無くなっていた。
「何があったの……?」
不安そうな眼差し、首を少しだけ傾げながら見る仕草は、なんとなく程度だが、彼女の名前の由来となった女性を思わせる。
だが、そういう仕草の時に見せている感情は百八十度違うものだ。
答えに窮するわけではないのだが―――。
「お嬢様! 十文字殿! 上を!!!」
懊悩を切り裂くように、侍従の一人が指差した先。
夜空に赤い流星が走っていた。赤い流星は何かが通り過ぎたあとの飛行機雲のようなものだ。
しかし、それを作ったのは、決して航空機及び戦闘機に類するものではないことは明らかだ。
「ナニあれ……?」
その赤い流星の『先』には、鉄の塊があった。夜空の闇の中に紛れそうなぐらいに巨大な鉄塊は……車輪を備えている
車両なのだ。空飛ぶタイヤならぬ空飛ぶクルマが眼に入った。
ここから推し量った形状やサイズから察するに、似通ったものとしては多輪で動く装甲車両。
軍事に詳しくないものでは、そういったことは分からないだろうが、ともあれ……そういうものが虚空を自在に飛びながら一点に向かおうとしているのが見えていた。
「何だ……あれは?」
先程の真由美のつぶやきのリプレイとなってしまったが、そんな克人の声に対して、自分よりも先に疑問を呈して推測していた真由美が答えを出してきた。
もちろん。それが『正解』であるという保証などないのだが。
「可能性の一つだけど……。
ダ・ヴィンチちゃんが平河さん(妹)と開発していた、飛行魔法を応用したエア・キャリア。それを利用しているんじゃないかしら?」
「クロウィック・カナベールか」
数ヶ月前ながらも去年の出来事となってしまった一高主催のマジックライブ。
それにおいて使用されたライブパフォーマンスの為の機材。あの時は人間1人とサーヴァント1騎を飛ばすので精一杯だったというのに、随分な進歩である。
「あくまで私の推測なんだけどね……」
「だがお前の当て推量ぐらいしか俺も思いつかんな。問題は、『どこに降り立つ』のか、だ」
それは10メートル先にある結界が張られた都の自然公園だと思える……。
次の瞬間、魔法師であるならば大体の人間は知覚出来る情報次元の異常。大質量のものが衝突して、あっちこっちを撹拌するかのような勢いが発生―――。
宝具級の魔力が着弾した様子。結界は完全に砕け散って、中から漂う陰性どころか漆黒に塗りたくられたとしか表現できない『魔力』。
公園内全てに充満する血煙の匂いに、七草家の侍従数名が鼻に手を当てながら眉を顰めた。
「十文字殿、まずは我々から行きましょう。お嬢様に見せるには、よろしくないものもあるかと…」
「承知しました。名倉殿」
特に抗弁することでもなく、こういうことは男が率先してやるべきだろうという『今の時代』の価値観に照らし合わせた行動原理で、克人と七草家の執事は『少し待て』と告げてから公園内部に先乗りするのだった。
「こ、これは………!?」
「先程まで行われていた戦闘の様子が、自然と『予想』できますね」
七草家は、自分がリズと接触をして水晶球で覗き見していたことは知らない。
背信からしらばっくれるわけではないのだが、とりあえず黙っておくことにしたのは、克人なりの心の動きである。
要は、真由美の悋気を恐れたのだ。
ヘタレと言われてもしょうがない克人の決断。
そんなことは知らずに名倉は、公園内の惨状に最初の驚愕だけで言葉を失っていた。
名倉の元々の巣は国防軍であり、魔法師の業界、巷の噂に登る101旅団の『大隊』ほどではないものの、七草家からスカウトを受けるほどには、軍部でも『名』の知れた『壊し屋』であった。
だからこそ魔法師が『戦闘』をするという行為における惨状というのは、嫌になるほど分かっていた。
現状のCAD技術においては、余程の制限事項や特殊な状況が想定されない限りは、魔法を早くに発動できる方が、当たり前のごとく『戦闘』の勝利者となる。
(だが、この惨状は明らかにおかしい……確かに体術に優れたものが、魔法の照準捕捉を外した上で反撃に出ることもあれば、数撃の『ハズレ』はあるだろうが……)
それにしたって、『普通』ではないのだ。
並木にある木々の多くは、太い幹の半ばから『くの字』に砕けた様子で折り重なるように上部が倒れている。
言うなれば、物理的障害に慣性力を損しない衝撃物が、連続で順番にあたったことによるような破壊。
同時に衝撃物も『くの字』になりながら当たっていっただろう。
おそらく……『人間』がバトル漫画の表現技法のように飛んでいったのだ。胸郭にあったけの衝撃を食らって『くの字』になりながら。
その他には、地面に刻まれた同心円状の破壊痕。蜘蛛の巣、木の年輪のように規則的に見えて、浮き上がり飛び上がっただろう路面の欠けと、3mは沈み込んだといえる『凹み』が、名倉に戦闘の過激さを知らせた。
あちこちに見える破壊痕は、魔法師が戦闘をしたというよりも、魔法師とは『別種』である超常の存在が戦闘を繰り広げたかのようだ。
そして名倉とは違い、克人はその惨状を幾度か目撃していた。直近で見たのは『横浜』でのことだろう。
さらに言えばリズに見せられていた限りでは、その惨状を催したのはCADや『近代火器』などではなく、原始的な剣や槍。少しだけ卦体な『弦楽器』に模した『杭打機』などもあったが、概ね今の世の中、『現代』にあふれた兵器に比べれば、本当におもちゃのようなものが、これだけの破壊を行った。
改めて克人は、先程まで園内にいた『魔人』たちが織り成した破壊の痕跡を見やった……。
それはあまりにも無造作で、無秩序で、方向性が定まっていなかった。
何かを破壊しようと悪意を抱いて壊したのではなく、戦闘における単純な余波でしかない証左だ。
そう、単純な余波だけで、木々は嵐の中に放り込まれたように倒壊し、大地は隕石でも落下したかのようにクレーター状となっていた。
轟風を巻き起こし、砲弾の如き刺突を放つ
風を割り、闇を切り裂く光剣を振るう
そのどちらもが克人の
あの2人が動き、そこにクローバーの誰かさんが首を突っ込んだ時に、騒ぎの規模は大きくなりすぎて手がつけられなくなるのだ。
だが、その騒ぎそのものを解決するには2人が動かなければならないという。彼らだけが問題の解決手段を持っているというジレンマに頭を悩ます……。
「名倉殿。どうやら下手人の類は見受けられません。逃げられたみたいなので、確認の意味も込めて七草殿を呼んできてくれますか?」
「承知しました。それと、私に気遣っての敬称ではなく、下の名前で呼んであげたほうがお嬢様は嬉しいかと想いますよ」
そういうものかな? と内心でのみ想いながら、名倉が踵を返した後に再び惨状を見やる。
凄まじい破壊痕。これが人間の集団が行ったことだと想うと、魔法師であっても恐ろしい想いばかりが胸を占める。
そして―――。
「遠坂が最初から全力で迎え撃たざるをえない相手。それは最大級の脅威ということだな……」
公園の遊具、安全性を最大限考慮しつつも周囲に迷惑にならず、その上で楽しめるようにと……2010年代から高まっていた公共のマナーなどを考えた上で開発された遊具。
それら全てが何十年も誰にも使われなかったかのように、風化、錆だらけになってしまったのを見る。
そこだけが異質な魔力を感じさせていた……まるで『異界』だ。
その原因は……およそ十分前に遡る……十文字克人が預かり知らぬ結界の内部での戦いの終幕……。
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エリカが聖剣を開眼し、刹那が大剣を弓塚さつきに振り下ろそうとした時。
―――明確な変化が起こる―――。
「!!!!!!!!」
声にならない叫び。とてもではないが、人間の発声器官では出せないだろうものが、弓塚さつきの喉から震えて出てくる。
真正面にいた刹那は、その『叫び』の圧にやられて吹き飛ばされた。
魔力の音圧。こちらの魔術回路をかき乱す音は、スヴィン・グラシュエートの『犬吠え』と同位。
……強制的に
「セツナのインストールを強制的に外すなんて……」
そこまで信頼してくれていたのかと嬉しがる前に気付けをして、攻撃を……言う前に―――。
「滅されよ! 不浄の者!!!」
御旗であり旗槍でもある宝具を
風車のように振り回すのは音圧を散らすためか……。
高速で動くサーヴァント憑依体の攻撃が決まろうとした瞬間……首が刈り飛ばされんとした時に……。
「さつき!!!!」
「世界卵を
『弓塚さつき』を中心にして『世界が塗り替わる』。『世界が入れ替わる』。
その感覚には覚えがある……『馴染み』のものだ。
だが、『正体』を見抜いたことで汗を掻く刹那の驚愕を理解できたものは少ない。
唯一、少ない理解者は、モードレッドの鎧犬たる『カイゴウ』であった。
『オイオイ! マジかよ!?』とリビングアーマーにあるまじき驚愕を口にしながらも、明確な対策はないらしく。
だが、段々と広がる『風景』を前に、自分たちが大魔術に縛り付けられると感じたメンツが、超速で移動を果たし刹那を中心に固まる。
それすら本来の速度とは段違いにおそすぎたのだが、近づく刹那が合わせる形でなんとかなった……。
「か、体が重い!! …… 寒い、とんでもなく寒い!! なんなんだこれは!? 刹那!!」
「落ち着け幹比古。その感覚は全員が同じなんだ。取り乱すな。女の前だぞ……」
身を縮こませて歯をガチガチと何度も噛み合わせ、寒さに震える体を抱きしめる幹比古を宥めようとするが、それは不可能だった。
全員が恐慌とまではいかずとも、少しばかり冷静さを保てない……。
ゆえに今の自分に出来ることなどただ一つ……。
『世界』を入れ替えようとするならば、己の『心象』で全てを変えるというならば……。
(世界を『変質』させる大魔術があるというならば、己の領域を『固定』させることも出来るはず。大規模な式を相手に対抗できるか―――)
だがやらなければ全てが枯れ果てる。その予感だけは間違いなく外れない……。
『黒』の魔眼が発動をして『固定』をしてから、『七色の虹色』に光り輝く眼が、刹那の両目に嵌め込まれる。
その数秒の変化。それすら見逃さないはずの目敏い達也ですら、この大魔術の前では、身体機能の麻痺を起こしていた……。
それどころか―――。
(何なんだコレは……あちこちに『黒線』や『黒い塊』が見えてくる。飛蚊症―――網膜剥離でも起こしたか?)
だとしたらば、『自動回復』されるはずの身体なのだ。己の『異常』だけに囚われて、刹那の魔眼の変化を見逃していた。
転輪する虹色の魔眼……その効果は多くの人間には分からないが、それでも枯れ果てようとする現実を認識して全てを託すのだった。
世界が完全に違うものに変化をする。闇に染まっていたはずの空が青空へと変わり、公園は美しき庭園へと変わる……。
だが、そんな美しい風景は一瞬だけであり、その様子が徐々に荒れ果てた荒野へと変貌していく。
同時に、身体からあらゆる『力』が、『魔力』が抜けていく感覚が全員を襲う。
対抗不可能の強制的な『脱力』『放出』……あらゆる意味で、抜け出ていくものを留められないのを自覚。
しかし―――。
「! 先程よりは楽ですね。とはいえ、完全ではないのでしょうが……!? シオン師父! マイスターの眼を!」
「『事象』を
そういうこと。と何とか作った笑顔で、魔眼に気付いたラニとシオンの推測に返事をした。
黒の魔眼から変化をさせた七色の色彩変化を見せる魔眼が、固有結界の侵食から数メートルの直径を『違う世界』に『固定』させていた。
完全な固定ではない。というか、弓塚さつきから放たれる『異界常識』が、刹那の展開した『時間』と『世界』を食い破ろうとしているのだ……。
「どうやら、この固有結界は―――あらゆるモノから『力』を放出させるようだ……有機物・自然物であれば、最初は『魔力』から、次いで魔力生成が出来なければ生命力。やがては『老いる』『衰弱』―――無機物・人工物であれば!!!」
「セツナ!! ワタシのオドもサイオンもがっつり与えるわよ!!!」
歯を食いしばりながら、異界常識を押し留めんと手を広げて耐えていた刹那に助力が入る。
背中に抱きついてきたリーナから『力』が渡されて、魔眼に回す魔力が出来上がる。
「どうやら事象を改変するスキがない。本当に世界が塗り替わっているんだ!!」
事態の深刻さを受け止めた幹比古が、魔力をチャージしておいた呪符の全てを開放して刹那に渡す。
このまま刹那の言う通り、異界常識によって呪符が枯れ葉のように朽ちるならば、魔力が抜き出されるならば、その前に―――有用な使い道としておいた。
幹比古の即断が、達也、エリカを動かす。
だが……。
「達也君?」
「……直接触れなくてもいいだろう。どうせ女性陣の手で刹那の身体はいっぱいなんだからな」
横浜論文コンペでは、フェイカーの攻撃を見るために、刹那の魔術回路に相乗りしていた達也らしからぬ様にエリカは疑問符を覚えたが、とりあえず詮索は止しておいた。
事態は喫緊なのだ。であるならば、直接『手渡し』た方がいいというのも道理のはずなのだが……。
ともあれ何人もの魔力を渡されて、『小島』を形成していた刹那に余力が生まれる。
その余力を用いて刹那は『連絡』を取る。念話の相手は……。
『―――40秒で支度する。私の『車』がやってくるまで粘れよ
40秒を保たせる。しんどい話ではあるが、よく見ればあちらも暴走状態なのか、Vシオンすら行動不能になっている。
(というより制御出来ていないんだろうな。暴走状態のトリガーは腕の喪失。盾の騎士の消滅……真っ当な魔術行使ではないことは明らか)
内心で結論を出す。それは間違いない話だ。
第一、力を『略奪』出来ていない。
もしもこれが完全な『魔を操る術』であるならば、こちらの力は、弓塚さつきに還元されているはずだ。
(だが、そんなことは気休めにしかなりえないわな。どちらにせよ未熟すぎる術で、こちらは窮地に立たされているんだから……!)
世界の法則を維持しようとする意思。食い破ろうとする意思とがぶつかり合い。
限界を迎えつつあるのは―――刹那の方だったが……。
「賭けには勝ったな」
「な、なんですかあの空飛ぶ車は!? ハリーとロンが乗っているんですか!?」
『空飛ぶフォード・アングリア』なんて古典的なものを言うレティシアだが。そんな風ないいものではない。
どちらかといえば装甲車、輸送車にも似たゴツく無骨なものが、無理やり固有結界を割り砕いて『空』から入り込んできたのだ。
唐突にコメットフォールしてきた装甲車。当然、それを侵食せんとする弓塚さつきの心象なのだが……。
『無駄無駄無駄ぁ!! この不世出の天才、ダ・ヴィンチちゃんの設計した世界を渡る車は、何人にも脅かされない―――まぁどっかでは色々と悲惨な目にあっていそうだけど……マシュー!! 車は大切に!!!』
誰に向かって言っているのやらと言わんばかりのダ・ヴィンチちゃんの声を聞きながらも、刹那たちの目前に着陸した装甲車の後部ハッチが開け放たれる―――。
「殿は私が務めます! さぁ早く!!」
「お虎……!!」
開け放たれた場所から出てきた白武者の姿に驚愕する刹那。
だが、今はあれこれ言っている場合ではない…。
「乗れ!!」
「お、押さないでくれ刹那!! 急ぎなのは分かるけど!!」
幹比古を半ば押し込むように乗り込ませると続々と、入り込む面子。
こういったときの緊急避難行動は流石に弁えているのか、手早く奥に詰めていく。
最後まで残らざるを得ないのは、魔眼を輝かせて侵食に拮抗していた刹那と……背中に抱きつくリーナ。
そして―――。
「さつき……アナタは―――」
金色に輝く眼を悲しげに細めながらも、最後にはその眼を拭ってから、真剣な眼差しを向けたランサー長尾景虎を見た。
『刹那!! そろそろ!!』
「お虎!!」
言われるまでもなく、引っ掴むように後部に押し込まれた刹那とリーナ。
ハッチは閉ざされた後に『虚数域』へと潜航を開始する装甲車両。外の様子は伺い知れないとはいえ、鋭敏な感覚を持つ人間たちは、再び『世界』が違うということを認識してしまう。
そんなことを考えなければ……。
「ちょっとミキ! どこ触ってんのよ!!」
「せまいんだから仕方ないだろエリカ!! それよりも、エルトナムさんの妹さん? 君、『下』は…!?」
「
ラニの言葉を受けて鼻を押さえる幹比古。
『位置関係』は少しばかりお察ししてください。である
「この女子多めの空間ではやってられないよなぁ。達也」
「ちゃっかり1人だけのスペースを確保するとは抜け目ない! 」
人聞きの悪いことを言うな。と言わんばかりに疲れ切った顔をしている達也。どうやら今宵の仕儀は彼にとっても疲労困憊になるものだったようだ。
「中途半端に逃げてしまったが、良かったんだろうかな?」
「流石に今夜は奴らも寝蔵に戻らざるをえないだろう。如何に『食糧』を欲していたとしても、俺達が派手に戦ったことで街の警戒レベルは爆上がりだ。
そこまで大それたことは出来んさ」
達也に話していないことの一つとして、血袋及び子分となっているグールが市内に出て『血集め』を行う可能性もあるが、今はどうしようもない。
そうであるならば、もはや魔法師たちの尽力を願うだけだ。
「今夜は―――俺も疲れすぎたよ……」
「言いながら『ムネマクラ』をナチュラルに行うとか、セツナのドスケベ♪♪」
自然と倒れ込んだ先にあったリーナの柔らかな枕を堪能しながら、刹那は少しだけ眠りに就くことにした……でなければ、コレ以上は、本当に動けないのだから―――。