魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~   作:無淵玄白

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お虎『ふふふ! 私の中の人が遂に結婚しました!! いやーめでたいめでたい!! 
めでたい日で酒が進む進む! ポプテピピックのイベントで中村(?)に能登(?)の結婚と絡めて弄ってきてから数年。これを機に私の新クラス、新霊衣とか実装されてもいいでしょう!!
個人的にはセイバークラスの『カゲトラ・ザ・ブライド』。白無垢でも南蛮のドレスでも可!
社長の新規書下ろしならば、更においしすぎる!! 水着景虎も捨てがたいですが、ここはこの案も進めて――――』


七夕の日に届いたニュース。
ツダケンさんも正式発表という形で既婚者であることが、判明。

いやーめでたいめでたい。水樹奈々さん。津田健次郎さん。おめでとうございます。

そんなこんなでビッグニュースの最中、新話どうぞ。 


第230話『夜が明けて……Ⅱ』

 

 

 

 分かりやすく荒れている。そうとしか言えない剣戟が『野外』道場にて吹き荒れている。

 

 一種の『乱取り』。柔道でも次から次へと立ち代わり入れ替わりで相手を変えていくことで、自由に技を掛け合うことで実践感覚を掴む稽古方法。

 

 一対一を何回も行うこの練習方法は、多くの格闘技系『スポーツ』においては名前と少しの差異はあれども行われている。

 

 絶え間ない戦いの感覚が己を磨くのだ。

 

 だが、日本の魔法武術の一つ、というか殆ど代表格、オーソライズ(伝統化)した魔法剣術・千葉流派。

 

 俗称『千葉道場』においての乱取り・地稽古は、どちらかといえば『天然理心流』『柳生新陰流』に近い。

 

 『魔法』も含めた総合武術(アーツ・オブ・ウォー)としての練度を高めることを目的としているだけに、こういう実戦想定の稽古は稀にやる。

 

 その稀な一回にて……。

 

「ううっ師兄……仇ををを!」

「なぜに僕らがこんな目にぃいい……」

 

 30人近くの師範代クラス……千葉エリカ親衛隊に属する連中が地面に倒れ伏して戦闘不能に陥っていたのだ。

 

「……君らからすれば、ご褒美だろ? 新たな生贄に俺を供するような言動はやめてくれ」

 

 ぎくり!! とあからさまに表情は見えないが背筋をビクつかせる門下生たちに、寿和は頭を掻いておく。

 分かりやすすぎる誘導に引っ掛からなかった寿和に、誰もが少しだけ評価を改める。

 

「オレが言うのもなんだがな。エリカ、やりすぎだ」

「へっへっへ……アタイをこんな悪い女にしたのは、どこのどなたでしたかねぇ?」

 

 俺だな。と苦笑しながら胴着を纏った寿和は剣を抜き払った。

 遠坂刹那によって打ち鍛えられた魔力剣。剣より漂う蜃気楼にも似た魔力が、その剣の威容と異様を教えてくる……。

 

(エリカが手にしている剣は、間違いなく既存のCAD一体型の武具とかそういうものではないんだろうな……)

 

 事実、門下生と礼をした段階でエリカは無手であった。そこからは早業一閃。

 現代魔法ではあり得ざる理屈だが、即座に『剣』を作ったとしか思えぬぐらいに、どこからともなく抜き放った剣。

 長尺の業物が、エリカの手にあったのだ。

 

(ある程度の自在性を持った物質を『変形』させることで無手(てぶら)を装って、奇襲を仕掛けるなんてことも不可能ではない)

 

 どっかの魔法師の一派は、予め術式を『紙の本』に設定しておき、その『紙』を幾枚もの紙片に分裂させた上で、切断力を保ちながら打ち付けるという話だが……。

 

 そもそもデジタル化万能となった時代に『紙の本』などあまりにも異質すぎる。

 しかも、その本とやらはハードカバーほどの厚み……2000年代初期に流行ったファンタジー小説の最初期『日本語翻訳版』程はなければ意味がないというのだから、奇襲するにはなかなかに難儀だ。

 

 更に間抜けた話だが、その魔法師の一派の『お坊ちゃん』は、自信満々にその術で当代最高峰の使い手『遠坂 刹那』に挑んだらしいが―――。

 

 遠坂 刹那は、炎の魔法陣を展開しているだけで殆ど封殺したという『うわさ話』が流れてきた。

 

 最後の方には―――『めんどくせっ。D/P/W/ Schöpfung』という呪文で終わらせたとか何とか……。

 

 閑話休題(それはともかく)

 

 結局の所、道場の秘剣の一つたる薄刃蜉蝣のようなある程度の『形』が定まったもの、傍目には柄だけの剣しか持っておらず、定形式に則った形になるならばともかく―――。

 

 エリカの剣は、本当にどういう理屈で生み出されたのかが分からないのだ。

 

「これでも和兄には、それなりに感謝してるわよ。どういう理屈かは、まだ完全には知り得ないけど、八王子クライシスの後にウチのボンクラボーイズを殴ったお陰で、『これ』があるんだから!!」

 

「オレは自らの手で最強の剣客(しかく)を生み出してしまったのかぁ……」

 

 ホロリと涙を流しながらも、長尺の得物、もう剣とかいうレベルじゃない『兵器』染みたそれを前に寿和は覚悟を決めるのだった。

 

 

 

 ―――翌日。

 

 部署にやってきた寿和の姿は、服の上からでも分かるぐらいあちこちがボロボロすぎて、同僚刑事及び上司・部下全てから『何があったんだ?』と問い詰められてしまう始末。

 

 それに対して寿和は―――。

 

「―――『大熊』と戦った名誉の負傷です」

 

 むしろこのコンクリートジャングルTOKYOにて、大熊と戦わざるをえない状況の方に疑問が向いたが、それ以上を問うことはできなくなる。

 いつもならば飄々としている、妹からはヘラヘラしているなどと『侮らせる』ことを良しとしている顔ではない。

 

 ものすごい真剣な顔に、それ以上の問いは野暮というものであった……。

 

 ・

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 ・

 ・

 

 午前の授業は終わり、予想通りに呼び出しを食らう。

 

 呼び出してきた相手は、十文字克人。リーナには連絡が無い以上、恐らく自分一人で来いという意味だろう。

 

「ダイジョウブ?」

 

「別にとって食われるわけじゃないんだ。先にみんなと食べてろ」

 

 不安げな眼差しをするリーナを安心させてから、昼食たる重箱を預けて呼び出した相手の言う『部室』に向かうことにした。

 

 クロスフィールドの第2部室というのは、訪れたことはないが、場所そのものは分からないわけではなかった。

 

 数多の人間の(厳しい)指導の元、おっかなびっくりではないように使えた学内端末を使って向かった部室。そこには先客がいた。

 

 電子施錠を外された上で入室したところにいたのは達也であった。

 

 気楽に『よう』とでも言われたかのように手を挙げる達也に、同じく返しておく。

 

「司波にも聞いたが、1人か?」

 

「まぁ1人ですね。『お虎』も別場所にいることは確認済みでしょう?」

 

 十文字克人の重厚な声に平淡に返しながら、達也の隣になんとなく陣取る。正面には椅子に座る十文字克人。

 

 その左隣に、社長秘書もしくは政治家秘書のごとく佇む七草真由美という位置関係である。

 

「休みを挟んでおいて何だが、お前たち金曜日の晩に外出しなかったか?」

 

「ええ、しましたよ。バイクで」

 

 なぜ倒置法? と思わなくもない達也の言動だが、思惑は知れた。

 

 あの後の『現場』に入ったのは、警察より先に十と七の捜査隊であり、現場には回収しそこねたバイクがあったことを思い出して、正直に白状したのだろう。

 

 そんな風に刹那は結論を出してから目線をこちらにも向けられる。

 

「同じく。ただ俺の場合は明確な『意図』がありましたから」

 

「―――『吸血鬼』に関してだな?」

 

 首肯一つで返しておく。今は詳細を語るべからずだからだ。

 この場には協力者たるシオンはいないのだから、俺の一存では決められない。

 

「俺もまた『吸血鬼』に関してです。レオ―――1−Eの西城を襲った吸血鬼を探す、同じくE組の千葉のバックアップとして就いていたE組の吉田に連絡を入れられていましたから」

 

 幹比古の用心が役に立った形ではあるが、達也としては、正直何もできなかったような気がするのだ。

 

 だが、そんなことは眼の前の元・上役にはなんの意味も無いだろう。

 

 そして、刹那は……。

 

「仰っしゃりたいこと、聴きたいことは分かりますが、私の口から言えることは少ないです。

 前にも言ったように、俺たちの狙いは『ギャングスタイーター』とでも言うべきものです」

 

「既に俺たちもそちらに『狙い』を移動させつつある。それでも、か?」

 

 その言葉で事態の深刻さを悟ったことが、刹那にも伝わる。

 

「……分かりました。シオンの方にも少し伝えておきます。ただ全容はまだ不透明です。

 放課後に主要なメンツを集めて、話せるだけのことを話しましょう」

 

「「「―――」」」

 

 刹那の言いように、三者三様の沈黙とも絶句とも言える反応を見せる。

 

 だがそれは、刹那にとっても織り込み済みである。

 

(交渉のやり方が『雑』なんだよな。結局の所、ネゴシエーションの基本は、どれだけ多くの『手札』を持っているか、だからな)

 

 時計塔の権力闘争。その中で学んだことの一つに、多くの情報……外情・内情―――はたまた個人の人間関係等々、それらを多く入手しておくことで相手より有利に立つ……。

 

 かつて、ロード・エルメロイII世と呼ばれていた頃のウェイバー先生も、政治に疎くてもライネス先生と共に様々な三大派閥の中を渡り歩き、ノーリッジに自由の気風を奪わせなかったらしい。

 

 まぁ……生々しい事情を察するに、ライネス先生にとってはノーリッジの全てはエルメロイにとって生命線だったのだから、必死にならざるを得なかったのだろう。

 

 とはいえ、それこそが『エルメロイの弟子』たちを生臭い権力闘争から外して、自由闊達に魔術を極めさせた原因なのだ。

 だが、それゆえにノーリッジの出身者は妙な連帯感を持っている。

 

 そこに嵌りきれないスパイ連中も心動かされることは多かったのだから。

 

 そんな風に刹那が胸襟を開いたことで三人はやられた想いだ。

 別に今回の事件で『功績』をあげたいわけではないのだが、どうにも主導権が後輩に握られた感は拭えないのだから……。

 

 ―――してやられた。

 そんな思いばかりである。

 

(手詰まりである。という風を出しすぎたな)

 

 だが、実際に十文字も手詰まりではあった。いや、本当ならば『証人』を呼んできて証言してもらいたかったのだが、彼女は妖精のように姿を消してしまった……。

 

 仮に十文字が、自分が知ってしまった事実を素直に話しても、他の人間が確かな裏付けをしてくれなければ、どうなるか分かったものじゃない。

 

 

 なにより……。

 

(なぜ、そんな化生の類が東京に現れたのかを俺たちは知らないのだからな……)

 

 原因の判明・事態の究明に必要ならば、主導権の一つや二つくれてやる。

 面子に拘るような心地は、十文字克人には無かったのだ。

 

「ならば放課後に、此処で構わないか?」

 

「まぁ大丈夫でしょう。集める面子は多いでしょうが、ここはそこまで手狭ではないですしね」

 

 クロス・フィールドという『サバイバルゲーム式魔法競技』は、その当たりの強さから選手は男子が主で、部室もそれに応じて作られている。

 

 要は、むくつけき男子が大勢集まる部屋ならば、女子が数人多くても大丈夫だろうということだ。

 

「分かった。ならば、放課後に待っているぞ」

 

「了解。達也、お前はどうする?」

 

「俺だけ仲間はずれか?」

 

「いいや、そんなことはない。ただ、もうちっと『芝居』は上手くなれよ。中村悠一のごとく」

 

 後半は良くわからんが、部室から去りゆく刹那の言葉に、達也は『やられた想い』ばかりだ。

 

(2人に対する言舌を以て、刹那に譲歩を引き出させたかったんだが、見抜かれていたか)

 

 いつもの自分ならば、2人に対して、もう少し回りくどく情報の開示などに関してアレコレとあったのだろうが。

 

 最初から腹を割る形で臨もうとしたのは読まれていたようだ。

 

「……当初、俺達は世間一般で騒ぎに、ワイドショーにまで発展している方の吸血鬼を追っていた」

 

「けれど刹那くんは私達には加わらず、三面記事染みた不良やらギャングの失踪を追うと語っていたわ。そして徐々に……こちらも巷で騒ぎになりつつあるもの」

 

 それは達也も理解している。昨今のワイドショーの話題は、巷で続発している『夜の街』の若者失踪事件が大きくクローズアップされていた。

 

 数日前までの『犬歯の無い吸血鬼』の話題は小康、下火になっているが、そちらもあまり話題になることは好まれない。

 

「今はまだ発見された若人や中年の『変死体』は、警察発表で伏せさせているが、時間の問題だろうからな……」

 

 如何に若人があちらこちらに夜な夜などころか。昼夜を通して家に帰らない不良ばかりだとしても、中にはそうじゃない人間もいるわけで、警察としても、そういう連中を一応は『捜索』しているフリをしなければならない。

 

 後々に死体となって見つかれば警察の初動の不手際も云々言われて、人権派及び反権力主義的な『弁護士』たちは、こぞって警察を攻め立てる。

 

 警察機関に影響力を持つ十文字家でも、これ以上の隠蔽は無理と見える……。

 

 そんな気苦労を察しつつも、達也としてもようやく事態の核心に迫ることができそうなのだ―――。

 

(……アイツにだけ苦労を背負わせてしまったのは、已むを得ない話にしてはならなかったんだよな)

 

 予想はあった。予感もあった。予測は―――いくらでも立てていた。

 

 だから今日の放課後は最初の答え合わせとなる……

 

 ・

 ・

 ・

 ・

 

「仕方ありませんね。攻めきれず滅しきれなかった私達に問題があったわけですから。

 彼らがこう来ることは予測済みでした」

 

「すまんな」

 

「お構いなく。ダ・ヴィンチと首っ引きで『計算』をし直していた最中にも、2日がかりで恋人同士にゃんつきたい刹那の気持ちは理解していましたから」

 

『『スミマセンでしたぁ!!!!』』

 

 シオン先輩。容赦ないわー。

 こちらのことを完全に理解してくれて非常に申し訳ないわー。

 

 リーナと一緒に必死の謝罪をしながらも、受け取った情報は予想の『上』をいっていた。

 

こんな不老不死(・・・・・・・)のあり方も、セツナの世界の吸血鬼の在り方なのネ」

 

「限定的な不老不死である以上、どうやっても吸血によって古い遺伝情報を新しいものにしていかなければならない」

 

 人理が惑星全体に版図を拡大していくたびに、『死者』が『生きている』などという『事実』は世界からの反発を生む。

 

 それゆえに死徒たちは、現世に生きている霊長の情報を得る。

 もちろん、それでも『追っつかない』時には幻想種―――下っても野生動物を腹に収めることで、生命体として上位であるとして『存在維持』をしている。

 

 不完全な不老不死……。

 

 幾人もの生ける死者を殺してきただけに、その有り様には嫌悪感を覚える。

 

 魔術師としては、求めるべき到達点の一つなのかもしれないが、正味、魅力を覚えない『転位』である。

 

「どこまで話します?」

 

「並行世界からの来訪者というのは、付け加えなければ矛盾点が発生してしまうからな。そこだけは(たが)うことなく説明しよう」

 

「ソコは説明するのね」

 

 恋人の正体に関して踏み込みかねない分野だけに、デリケートなものだと理解していたリーナは驚いたようだ。

 

「リーナは、USNAで行われた『実験』の説明役だ。他事(ほかごと)は正直、ボロが出そうだ」

 

 苦笑してリーナの髪を撫でて宥めながら言う刹那。

 

「ぐぅ……言い返せないワ……」

 

 悔しそうに眼を瞑り、手を握りしめるリーナ。(髪撫では続行中)

 流石に自分と出会ってからの数年で、自分が腹芸がうまいタイプでないことは自覚したようだ。

 

 結局、陰謀を好む・得意とするマキャベリストタイプではなく、真っ直ぐ行って相手を正論で言い負かすタイプなのだ。

 

 ―――奸智に長けた人間ではない。

 リーナの居ない所で、主要なスターズメンバー全員で『結』を出したあとには、そういうこと(諜報工作活動)には使わないでおこう。という判断が全会一致だった。

 

(まぁ、そういう風なところが『魅力』なわけだが……)

 

 結局、世の中の『状況』に彼女は合わなかったのだ。

 

 これが仮に、悪の組織・敵対的異星人(インベーダー)……世界滅亡や全人類支配などを目論む連中が蔓延る世の中ならば、彼女はアイドル大統領ならぬ、アイドル魔法師としてやっていけただろうに。

 

 だが、現実に『ブラザーフッド』も『ディセプティコン』も存在しない世の中なのだ。

 

 そして、見方次第では自分たちが『ヴィラン』(そちら側)にならざるを得ない儘ならない世界では……。

 

 仕方のない世界に苦笑をしてから、三人と一騎の霊体は夕焼けで染まる世界を歩き出した。

 

 ・

 ・

 ・

 ・

 

 殿様出勤というわけではないだろうが、クロス・フィールドの第2部室には、刹那たち以外の主だったメンバーが勢揃いしていた。

 

 大方の予想通りと言えば、そうなのだが、まさか―――『光井ほのか』まで連れてくるとは……。

 

 恐らく達也に泣きついてでも着いてくるといった深雪を見て、仲間はずれを嫌がった光井が付いてきたというところか。

 

(スプラッターな映像に耐えられないだろう)

 

 その可能性を考えてしまう辺り、窮屈な話ではある。

 だが説明せねばなるまい。上座に近いところに陣取るようにダ・ヴィンチちゃんに手招きされて赴く。

 

 うす暗い室内。別に悪の秘密結社じゃないんだから。視力が落ちたとかで眼科に行きたくないんだから―――そう思いつつも、会議は始まる……。

 

「さて――――どこから話せば良いのかわかりませんので……まずはどこまで知っているかお聞かせ願いたい」

 

 単刀直入に口火を切ったのはシオンからであった。

 

 ベレー帽を直しながら放たれた言葉は確実に伝わる……。

 

 その言葉は十文字と七草に向けられたものであり、2人は特に動揺も見せずに話し始める。

 

「当初は、ワイドショーで騒がれていた『噛み跡』の無い吸血鬼を追って、捜索チームを編成した。

 被害規模は、その時点で数日前のワイドショーの倍以上の数が存在していた。

 この吸血鬼が主に魔法師を狙って犯行を行っていることから、魔法師に対してだけ網の目を張っていた」

 

「けれど、その内に被害の中に非魔法師の人たちが出てきた。そしてそちらは噛み跡があり、もっと言ってしまえば……ミイラのように干からびた死体もあれば、家畜の屠殺場のように、バラバラになったものもあったわ……」

 

 克人の言葉を継いだ真由美は、顔を青くして答える。

 

 演技ではあるまい。死徒による『死体遊び』は、いつでも凄惨な様を与えて、あいつら好みの新鮮な恐怖を人々(血袋)に醸造させるのだから。

 

 そういう現場や写真を2人とも見てきたのだろう……。

 

「そして『噛み跡の無い吸血鬼』を追っていく内に、『噛み跡のある吸血鬼』の手駒……八王子クライシスでの主敵『グール』……だが能力値はかなり上だろうものとバッティングするようになってきた。

 丁度、西城が襲われた翌日ぐらいからだな……」

 

 その言葉で大体は分かったのか、シオンは手を顔の高さまであげて言葉を制した。

 

「そして、金曜日の戦いに繋がるわけですね。大体は分かりました。そして、みなさんが殆ど何も分かっていないことも予測通りでした」

 

 シオンの何気ない言葉に『むっ』とする面子が多いこと多いこと……。

 

 だが実際にそのとおりなのだから、どうしようもあるまい。

 それに対して表情を変えない達也と深雪は、疑惑を持たれかねないことを自覚してほしい。

 

 だが、ここから話すことは全て自供である。これを真実とする調書を取るか否かだ。

 

「まず最初に言っておきます。今回の事態の根本は、私の所属している『組織』の一員が、USNAの一勢力と結びついて起こしたことです」

 

 その言葉でざわつく一同。まさかまさかの話の急展開。そして少しばかり睨むような視線がシオンに向けられるも、構わずにシオンは口を開く。

 

「……ここから先の話は、概ね事実を述べるものですが、あなた方魔法師という存在が理解できる範疇の話ではないと思われる。

 恐らく荒唐無稽なものと判断するものも出るでしょう。だからこそ、今から話すことを事実だと思えないならば構いません。その時点で、この話は聞かなかったことにしてください」

 

 前置きと言う名の『逃げ』を用意しながら、シオンは自分が出した結論を口にしていく……。

 

 

「現在、東京都を中心に続発している『吸血鬼』事件の大元、それは『現象』に成ることで限定的な不老不死を体現した、『徒に死を運ぶもの』―――『死徒』。

 それらの災厄こそが顕現しているのです」

 

 シオンの口の中が乾く想いで放った言葉が、どれだけ届いているかは分からない……。

 

 だが、それでも説明は続く。続いて聞いたことで、誰もが『心胆を寒からしめる』話は続く……。

 

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