魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~ 作:無淵玄白
まぁ前にも週刊誌にすっぱ抜きされていたからなぁ。おめでとうございます。
ついでに言えば三期が決まった『おそ松さん』声優の誰かも―――。
キグナスの乙女たちという魔法科外伝を読みながらの新話どうぞ。
……始まりは、星が生み、受肉させた精霊種族の
受肉した精霊―――真祖種族は、その始まりから一つのボタンの掛け違えがあったのだ。
吸血衝動。
人間を罰しながらも、人間を寵愛するために設計された存在は、その相反する性質ゆえに『人の血』を欲するようになっていく。
「それが、吸血鬼……『死徒』か……」
「超越した種族の血吸い役であった彼らは、真祖との体液接触と同時にその『力』の一端を受け入れるわけです。それこそが『死徒』。
ただ、その事を利用して真祖の力だけを持ち逃げしようとする輩もいましたが……」
無論、そのような勝手を許さないように、『血盟』とでもいうべきもので真祖たちは血袋たる死徒を支配下においていたが……時が経つに連れ、真祖の支配から脱して野に散らばり、好き勝手行う輩も出てきた……。
そして真祖が血を吸った人間が『死徒』に。
死徒が血を吸った人間は
そして
「ですが、これはあくまで『別世界』……まぁ俺の研究テーマの一つであり、家系の宿願というやつですね。『並行世界の観測結果』にすぎません」
「同じく我がアトラス院も『観測』を行うことで、その『事実』を認識してきました。同時に、私は私の祖先が『そういった道』を辿ることも承知していましたので、今回のことを何とかしたいと思っていたのです」
刹那とシオンの言葉が部屋に行き渡る。
一番印象的なのは、腕組みをしてこちらの話を聞いていた十文字先輩の表情―――彼は唸るようにしてから汗を掻いていた。
思っていた反応とは少しだけ違う……。
「にわかには信じがたいけど、今のところ『齟齬』はないわね……けれど当初の犠牲者と、その『死徒』とやらの吸血方法が違うんだけど……」
「それに関しては簡単です。言うなれば方針の違いなのですよ。ミス・マユミ」
方針の違い―――。その言葉に誰もが疑義を覚える。
疑義を覚えるも、それを予期していたように、魔法科高校の教師となったレオナルド・アーキマン……もはやダ・ヴィンチちゃんという愛称で知られる性別不詳の存在が立ち上がり、口を開く。
「そこから先は私が引き継ごう。観測された異世界吸血鬼、あるところでは『上級死徒』、または『死徒二十七祖』とも称される存在。
ワラキアの夜、タタリと言う『現象昇華存在』のチカラゆえなんだ」
死徒のことだけでも許容量いっぱいいっぱいだったところに、更に『現象昇華存在』なる新しいワードが出てきたことで、こんがらがるものも出てきたが、とりあえず話は進む。
「この死徒の特徴は、不老不死を体現するために、己を『現象』……そうだね、毎夜街に立ち込める
そして如何に霧を別のものに『分解』したとしても、再統合を果たす。霧の全てが分裂した『タタリ』と言えるからね」
その言葉で何気ないイメージが出来る。だが、現代魔法の理屈ならば―――。
(いや、無理か……そもそも俺の分解魔法は、霊子そのものを消滅させることは出来ない……)
達也の出した結論。およそ『現実的』ではない仮定で出したものを、更に否定する理屈が出てきた。
「加えて言えば、その範囲は街一つを包み込む。大規模な『結界』と言えるかな。
そして、規模と同時に『タタリ』の能力が問題だ。その結界の効力は、人の持つ『不安』、『恐怖』を具現化するものであること。
今はまだ『完成形』には至っていないが、どうやら再結合を模索して、魔法師の情報を抜き取り肉体情報も支配している……最終的な目的は、やはり『タタリ』の駆動式を展開することにあるだろう」
「そう言えば、あの盾持ちの吸血騎士に追い詰められていた覆面吸血鬼が叫んでいたっけ? 『貴様らの目的は『タタリ』を成すことではあるまい』って」
「だね……」
ダ・ヴィンチちゃんの言葉に思い出したエリカが、目を上の方に向けながら言って、修羅巷の惨劇を思い出したくない幹比古が俯きつつ同意をしている。
「まだまだ『観測』出来ていないところはあるが、2人が言うところの吸血鬼Aの目的は一つ。この世界で『適応』しやすい『魔法師』の情報を使って、確かな形で顕現を果たそうとしているんだろうね」
「Aの正体は―――『形なき霊体』が誰か……魔法師の肉体を乗っ取って動いている。そういう認識で構わないのでしょうか?」
「概ねは、その理解で構わない。更には、この後に見せる『映像』で、納得してもらえればとは想うよ」
十文字克人の疑問に対して嘆息気味に答えるダ・ヴィンチちゃん。
Aに関しては、何とか理解が追いついた。
次なる問題は―――。
「ならば吸血鬼B。西城くんを狙い、千葉さんが遭遇した本物のヴァンパイア……『死徒』、連日連夜『人食い』を行っていると思しき女性三人……確か名前は…『リーズバイフェ・ストリンドヴァリ』『弓塚さつき』……『シオン』というこの三人組に関しては……?」
そう聞かれることを予期していなかったわけではない。
口の中が乾きっぱなしで舌が歯茎に貼り付きかねないままでも、何とか声を出した真由美に誠意を以て答える。
「こちらに関しては、単純だろう。彼女らは何かしかの要件で『死徒』になった類だ。それがタタリによるものなのか、それとも『他の吸血鬼』によるものなのかは断定出来ないが、ともあれ彼女たちは、タタリに成り代わろうとしている。そういう表現が似合うだろう―――」
タタリに成り代わる。その意味合いは良くは分からなかったが、それが犠牲を増やすこととどう直結するのか?
疑問に再び答えるのは刹那にバトンタッチされる。
「死徒たちというのは、カタチはどうであれ『不老不死』を得た存在です。1人の死徒が子飼いの死徒を増やすとなると、当たり前のごとくそれは吸血行為によるものですが、それは血を吸っただけではなりえない行為です。よほどの霊的・肉体的スペックが高いものでなければ『死亡』します」
「干からびたミイラみたいにか?」
「ええ。まぁ詳しい説明は省きますが、吸血行為で生まれるのは大概はグールのみです。グールになれる時点でもとんでもないんですが、まぁそこから『自意識』を保つにいたるまで、本来ならば長い年月が必要。そして、自意識を持ってこそ初めて吸血鬼と言える存在になります」
ここまで概ねフィクションなどでも語られている通り……。この世界でも人の想像が幻想に届いていた証左だ。
まぁモードレッドやレティシアによれば……。
『『たまには出てくる』』
とか言う辺り痛すぎる失態だ。恐らく
「そうして成り上がった吸血鬼でも、親の支配は絶対的であり、それから逃れるために、あらゆる手段で力を手に入れようとする。一番手っ取り早いのは、ヒトに対する吸血行為ですけどね」
「それが惨劇を起こしている原因か……己の身体維持と、そして成り上がるための行い―――」
「下劣にすぎるわ」
表情と言葉で嫌悪感も顕な上役2人に対して、ヒトとしての倫理観を持つには、魔法師という存在も『どっこい』な気がするのは自分だけだろうかと想いつつも、省くところを省いてあの三人の美女集団の目的を語る……。
「まだ推測ですが、彼女たちは『タタリ』の能力値の幾らかを強奪しており、自分たちが延命するために、この東京都全てを何かしらの『装置』にすることを画策しているのでしょう……」
「それはあくまで『推測』なのね?」
嫌な想像を打ち消してほしいのか、念押ししてくる七草先輩の言葉に、一応は神妙にして口を開く。
「ええ、『推測』です。しかし、戦ってみた感触ですが、彼女たちの目的はタタリの残滓よりも直線的で好戦的です。自分たちが生きる『死の都』を作り上げるためだけに、血吸いでグールを作り上げているんですから」
予想以上に想定が甘かったらしき十文字先輩の顔が渋面となりて、天井を見上げさせていた。
あるいは、想像力の限界を突破して許容しきれなくなったか、だ。
「対策に関しては後にして、『何故そんなものが発生したか?』 から説明しましょう。リーナ」
「わかったワ。この事件の根本は、言ってしまえば、USNAの軍部及び軍産複合体などの一部の実験から始まり――『ネバダ州北部』―――AREA■■の空軍……」
リーナの話を耳に滑らせるようにしながら達也は考える。
事件の原因などどうでもいい。まぁ迷惑料金・慰謝料請求なんかは自分が考えることではない。
問題は先程の話、ダ・ヴィンチの言っていた人の持つ不安や恐怖を具現化するという文言である。
(お前は知っていたのか? 『タタリ』という吸血鬼に関して?)
上座付近の椅子に座る男を一瞬だけ見てから、不安や恐怖を具現化する……その『不安』や『恐怖』の中に……
(これまで戦ってきた『根源接続者』『シラクサの数学者』『玉石琵琶精』……『人喰い虎』などが再生されることもありえるのだろうか?)
そんな達也の思考の終わり、リーナが映像再生機器を操作している場面で話に戻る。
「ワタシは恐怖したわ。セツナの『力』を不遜にも模倣しようとして、こんな
心底恐怖しているのか、汗を拭うリーナの姿が印象的。
ピッ! という擬音がキャビネットから響く。別に何かのボタンを押したわけではない。
現代の映像機器は音声認識で様々なことをしてくれる。
もちろん、VR機器やある種のヒトに言えない『趣味』の映像などに入れ込んでいる場合は、音声認識が『アレ』なので、身振り手振りなどでも可能なのだが……。
ともあれ再生された映像……。遠景から撮られている詳細な映像に全員が見入る。
近すぎると実験の邪魔になるのではないかということだが、強大にして巨大な加速装置。
それらを血管や神経節に見立てて、一つの巨大な魔法陣に接続している様は、まさしく科学と魔術が交差する時であった……。
うごめく『管』の全てが一つの魔法陣だけを駆動させるためだけだと思えば、それで行われるものは……正しく―――強力な『力』だ。
実験装置の前には三人の研究員風の男と、実験の責任者らしき男が少し高いところにいた。
壇上に上がっている男は、装置を動かすパネル端末を動かしながら、実験の成果が結実するさまを見過ごさない様子……。
『『………』』
有り体に言えば『マッドサイエンティスト』の男の様子に、ダ・ヴィンチとロマンは苦々しい表情をしている。
ダ・ヴィンチに関しては殆ど『にらみつける』様子だが、ロマンは……『複雑』な様子……。
そして力が収束し、巨大なエネルギーが『場』に集まると、自然と魔法陣の中央に召喚される『門』。
実体化を果たしたそれは、『門扉』として映像に記録されている。自分の目がごまかされているわけではない。
少し古めかしいが、取っ手が一つ。恐らく押し引き方式の扉……。
その扉には、レリーフ…文字が刻まれたものが付けられていたが、達也の眼には遠すぎて何と書かれているかは分からない。
自動で開け放たれる『扉』から続々と出てくる―――霊体の群れ……。
特殊な眼を持っていなくとも、あれだけの『情報量』ならばエリカにも見えているだろう……。
細分化された霊の群れは次から次へと、そこかしこにいる人間たちに『取り憑いていく』……。マッドサイエンティストも、この状況は想定外。物質的破壊を避けるためのシールド装置も、すり抜ける『情報体』の前では病葉も同然。
だが―――『本命』は、この次だった……。
研究所の『職員』だろう相手は霊体から逃げ惑う…。だが、取り憑いた霊体たちもまた逃げようとしていたのだ。
肉体を得たことを喜んでいるのか、嘆いているのか……大声をあげている職員……元・職員たちが、扉を勢いよく開けて入り込んできた2人の『女性』に注意を向けた。
何かの束縛を砕いて、鎖を引き千切るようにして出てきた2人の女性に対して―――あからさまな絶叫を上げる。
『ひ、ひひぃいいいいいいいいいいいいい!!!!!』
悲鳴だ。画面越しにも拾っていた音が、耳朶を震わせる。
人に真なる恐怖を伝えるキーニング……。
入り込んできた女性の内の1人は、息も絶え絶えながらも驚くほどの疾さで瞬発して、一番近い場所にいたマッドサイエンティスト風の男に向かう。
近くであれば、人間の動体視力で辛うじて影が捉えられる速度。
そして女性は無造作に手を奮った。それだけで果実を木からもぎ取るような気楽さで―――首が宙を舞ったのだ。
首下から噴水のように吹き出る血のシャワーを恵みの雨のように浴びる女性の姿が見えたあとには、カメラが揺れたのか画面が不安定になり、安定した時に……真っ赤な画面。
そして吹き飛んだ首の顔―――死相に染まったものが画面を覗き込んでいた……。
「――ひっ――――きゃあああぁあああああああああ!!!!!!!!」
あまりにもスプラッターなシーンの連続に、隣にいたほのかが達也の右腕を痛いぐらいに掴む。
胸の谷間に挟まる腕に性的興奮は覚えない。というか、まっとうな神経を持っているものであれば、この場面でそれは無い……。
そして……『長いツインテイル』を持つ少女の殺戮は、この後も映し出されることを察して―――。
延髄打ちで『ほのか』を眠らせてから、その体を保護するのだった。
―――たとえそれを左隣にいる深雪(腕は確保済み)に険悪に見られたとしても……。
今は画面に集中せざるをえないのだから……。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「泉美さんが勉強中なのに、いいんですかね?」
申し訳無さそうな言葉を吐く少女は、隣りにいる参考書とにらめっこしている少女がとても気になっているようだが―――。
「いいのいいの。泉美が勉強の虫になっているのは入学総代を取るためなだけ。余裕ってほどじゃないけど、今からそこまで根を詰めなくても、ダイジョウブだよ」
ケラケラ笑いながら手をふる少女の言葉。参考書とにらめっこしている少女とは瓜二つだ。
だが、その言葉には色々と物申すものは多いだろう。
世の中には、魔法科高校に入学したくて必死に理論整備をして、実技訓練に邁進している人間もいるというのに、この言動はどうなんだろう?
事情に詳しいものがいれば、そう言うところだが、周囲にそういうものがいなかったことは幸いだろう。
そもそも、魔法科高校という単語すら出していない時点で、そんなことは論外だったのだが。
丸型のテーブル。そこに三人の美少女が居座りパンケーキをぱくつきながら話し込んでいた。(1人はルーン文字の暗記中)
七草香澄と七草泉美―――ラニ・Ⅷ・ソカリス。都内の中学に通う魔法師の卵3つは、JCトークの真っ最中だったのである……。
そもそも七草の双子が、ラニと知り合ったのは人為的なものであった。
この色々と忙しい時期に転校してきた『エジプトの人間』。日本語は堪能であるが、色々と『特殊なケース』と『能力者』であるだけに、担任教師も自分たちに世話役を頼んできた。
担任教師は俗物ではあったが、かつての『赤色』の『教職員組合』のような思想的偏向もなく、その授業も、クラス全体に対する統制もしっかりしていた……。
娘を溺愛してあらゆる『危険』を遠ざけようとする
その事に弘一も一度は聞いてきたが、それ以上とやかく言うことはなかった。
『仲良く出来るなら仲良くしなさい―――』
それだけであった。必定、面白がりであり女ガキ大将みたいなものである香澄は、率先して世話役を買って出て、それに付いてくる泉美も受験勉強があるとはいえ、それなりの責任感とでラニのチューターをすることになったのだが……。
「ホント、ラニっぱちってば、見ていて飽きないなー。なんていうか、赤ん坊に色々と教えているような気分で新鮮♪」
「それっていいことなんでしょうかね? まぁ私の目には、東京の街並みは色々と眩しい星々の煌めきに見えます……同時に、香澄さんも泉美さんも眩しいです」
「真に輝ける一番星は、シバミユキという星のみ! その真下の星であれば、私はそれでいい!」
勢いよく言うほどのことか? そう唖然とする香澄とラニだが、勉強が一段落したのか泉美もまたこちらの会話に入り込んできた。
「―――ラニさんのお姉さんも一高にいるんですよね?」
「ええ、お二人のお姉さんとも少しお話したと伺っていますよ」
それはラニにとって師父から教えられたことだ。
特に隠し立てすることではない。
そして、十師族が今回の事態をどう思っているかも知らされた。
それに対して『思考』を幾重にも張り巡らせた結果として、現在の事態に陥っているのだ。
(シオン師ならば、今日あたりに全てをお話するでしょうね。『アクトレスアゲイン』の流出も含めて―――)
ならば、2人がこの後『聞くこと』も自ずと知れた……。
「お姉さん。ミス・マユミは香澄さんと泉美さんを危険に巻き込みたくないのです。
『気遣い』、無駄にしないようにしましょう」
「「うぐっ!」」
シンクロして呻く双子をにこやかな笑みで迎えるラニ。
(時々ラニっぱちってば、『鋭い』んだよね……まぁ私達よりも事情に詳しいからかもしれないけど)
なんだかすごい『ネタバレ』を食らっているみたいで、少しやるせない。とはいえ、それで収まるほど、今日の2人は物分りがよくない。
受験シーズン真っ只中とはいえ、ことは自分の姉のことにも関わる。
何より姉もまた魔法大学への進学を目指している身。
―――家族を助けたい―――。
その真摯な願いを双子から吐き出されて、生後■年のラニとしては苦渋を浮かべざるをえないのだ。
2つの話し合いが交錯する時、運命に一つの