魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~   作:無淵玄白

261 / 420
第242話『Farce/melty blood‐5』

 

「今日はとにかく疲れたな。表向きも裏向きも―――とにかく大事になりすぎだっ」

 

『表』の仕事で横浜に出張していた黒羽貢は、ホテルの部屋に帰ると同時に、ネクタイを緩めながらそんなことを言うしか無かった。

 

 次いでベッドに背中から倒れ込んで、大きく息をつく。

 

 現在の都心部は、あらゆる意味で『魔都』であった。ある種の社会不安が顕在化しつつある前段階。そんなことになった原因を貢はよく分かっている。

 

 クリスマスでのことだ。

 

 あの時、簡単な任務であろう。どうせ息子と娘の手を汚させるならば、社会的に不道徳な相手……要するに下劣な権力者、犯罪者を殺させた方がまだ気は休まる。

 

 如何に貢の子供……双子が大人びているとはいえ、達観しているとはいえ、あの『化け物』とは違い心も魂も柔らかなもので出来ているのだ。

 そういう温情を出したのが仇となった。

 

 倒すべき敵。極道者の中には人外魔境の『魔人』を従者として従えているものがいたのだ。

 結果として、双子は大怪我を負いミッションは二転三転して、妙な結果となってしまった。

 

 状況への見通しが甘かったといえば、その通りだったが、思わず机を叩いて怒りを発散しなければならなかった。

 誰を責めればいいのか分からぬ結果。情報を精査しなかった当主である真夜か? それともそんな甘い判断を下した自分か? はたまたそんな―――魔法師では追い縋れぬ力をこの世にもたらした存在か? 

 

 ぐつぐつ煮えたぎる不満とも、怒りとも、何とも言えぬ感情のままに、今回の死徒騒ぎにおいて率先して動いていた貢だが、ソレ以外の思惑もある。

 大凡の魔法師全てを無力化出来る『使い魔』。時代が生み出した英傑・英雄・奸雄・梟雄……そういった存在を自分のものに出来れば、自分がなれなかった四葉の当主という地位に息子を就けることも出来るはず。

 

 親族が互いに食い合い権力を求めていく構図は世間からすれば生臭い限りだろうが、そもそも『十師族』などという制度が出来なければ、こんなことにはならなかったのだ。

 蛇足的な思考を終えて、貢がベッドから身を起こすと同時に鳴り響く室内の電話に首を捻った。

 

 彼がここに宿を取るということは仕事相手には伝えていない。

 ワイヤレスで何時でも連絡を取れるのだからホテルまで教える必要は無いのである。

 また同じ理由で身内から有線の電話が掛かってくるということはない。裏の仕事関係なら、ホテルのフロントを通す電話など尚更無い。

 

「はい、もしもし」

 だが居留守を使う必要も感じなかった。

 音声のみの電話に、念の為こちらの名を名乗らず応える。

 

『貢さん、今、よろしいかしら』

 

 受話器から流れ出た声を聞いた途端、貢の背筋は意識せず緊張でピンと伸びた。

 

「真夜さんですか……ええ、構いませんとも」

 

 四葉の当主を前にして声に緊張が表れていない自制心は、大したものだと誰もが口をそろえる。その一方で、自分の面従腹背などは見透かされている節はあるだろうが。

 

「お急ぎのご用なのでしょう? どうぞご遠慮なく、何なりとお申し付けください」

『ねえ、貢さん……その芝居がかった言い方、何とかなりませんの?』

「おお、麗しの従姉殿。芝居などとは心外ですな。私は常に大真面目ですぞ」

 

 昔は美人の親戚がいることが誇らしくて、そんな人と一緒になる東京近辺を司る『あの人』を、兄貴分として純粋に慕えていたときもあった。

 

 だが、それが無くなり、なんで来てくれないんだ? という怒りで殴りかかった時に、唯一『見える眼』を瞑って避けようともしないことから白けてしまった。

 

(どうにも僕の人生は、我慢してばかりだな……)

 

 何かとそういうものを呑み込んでしまう性格なのだろう。

 そんなこんなで真夜からの要件を聞くと、随分とアレなことであった。

 

「つまり現在、死徒という吸血鬼が狙っていた寄生霊体タタリ・パラサイトは、宿主など必要とせずに東京都内に漂っている、と?」

 

 それだけならば、現代魔法ではもはや『お手上げ』となるだけなのだが―――事態は予想外の方向に転んでいったようだ。

 予想外の方向を告げられて、貢は受話器を落としそうになるほどのショックを感じるのだった。

 

『最初に『依頼主』(スポンサー)様から受けたものは、それらが寄生している宿主を全て抹殺することで一旦の事態解決に向かわせる―――そういう手はずだったのですけどね……お話した通り、こちらの血腥い思惑を崩す形で、刹那さんとリーナさんがウルトラマンZならぬウルトラCを決めてくれちゃって……』

 

「ランサー長尾景虎の他に三騎のサーヴァント、それもアーサー王の暗黒面(オルタナティブ)を配下に加えたですと……!?」

 

 

 如何な諜報役として、冷静冷徹にして几帳面を貫いてきた貢とて、素っ頓狂な声を出さざるを得ない。

 

『達也さんと深雪さんの大まか(大雑把)な説明でしかありませんけどね』

 

 悩ましげな声から電話口の向こうにて頬に手を当てているらしき真夜を想像したが、とりあえず詳しく聞くと、さらなる混乱が襲うことが予想されたので、書類での転送を願うことにするのだった。

 

 貢は真夜とは反対に額を押さえて、苦虫を噛み潰す。

 

 

「……『チカラ』を持ちすぎですな。彼は―――」

 

『最強のチカラ』を手に入れた者は、何処へ向かい誰と戦うのか?

 現状、魔法師という『人間兵器』として『最強』だろう『甥っ子』を止めえる可能性として、彼には存在していてほしいのだが……という貢の本音はともかくとして話は進む。

 

『貢さんも横浜マジックウォーズでのNANA様…ではなく、景虎さんの戦いぶりは見ましたでしょう? 独自の『カメラ』でも?』

「はて? 真夜さんが、あやしげな伝手を辿って手に入れたものしか、私は拝見していませんよ」

 

 バレていないとは思っていなかったが、あからさまに言ってくる従姉に苦笑してしまう。

 

『まぁいいでしょう。郷土愛というほどではありませんが、四葉が本拠に置いている山梨・長野(甲斐・信濃の国)にとって、景虎さんはある意味『仇敵』ですが……その力はとてつもないものです』

 

 言われて思い出すと、四葉の拠点からすれば、越後の龍は完全に敵の武将であった。

 

 思う所―――と言えるほどはないが、貢とて信州そばも『ほうとう』も昔から食べていたソウルフードであった。

 だから何だという話ではないが、それに付随して真夜は驚きの提案をしてくる

 

 

『ともあれ、刹那さんが霊体を使ってサーヴァント3体を手にしても、まだ3分の2は東京にいるそうです―――』

「それはそれは……で『何をしろ』と仰るので?」

 

 予想はついていた。だが、それは『冗談』であって欲しかった。

 如何に力を持つことが四葉の本懐とは言え―――。

 

『亜夜子さんでも文弥さんでもいいですが―――呼び寄せて『契約』してください。英霊の触媒―――『鉄製の軍配』もお付けしますので―――『特訓』はさせていたのでしょう?』

 

 全てお見通しか、という言葉を呑み込んでから、貢は気を落ち着かせてから口を開く。

 

「………分かりました。では東京に蔓延る霊体を消費させるために、我々『黒羽一門衆』は、サーヴァントを手にしましょう」

『お願いしますね』

 

 その言葉、ある種の親族抜けも辞さないという覚悟を決めた言葉にも、平素の対応をしている真夜からの通信が切れた。

 

 ツーツー…という古めかしい電子音を聞きながら貢は呟く。

 

「分かっているのですか真夜さん。武田家の滅亡は、武田勝頼の無能ではなく、武田勝頼を後継者として本当の意味で家中に示さなかった信玄の二枚舌と―――それに伴う、勝頼に対する不信ゆえの親族衆の離反が原因だったのですよ……」

 

 

 それと同じことが、今の四葉に出ないなどと強弁出来るほど、全ては盤石ではないのだ。

 

 

 ・

 ・

 ・

 ・

 

「んじゃ展開してみてくれ。科学と魔術が交差する、天災(誤字にあらず)すぎるダ・ヴィンチちゃんの発明品には、『失敗』が付き物だからな」

 

「失礼な。流石に『霊衣』を展開する程度の礼装で、『テラフォーミングされた月世界』やニュージランド沖の深海にルルイエな名状しがたきグランドオーダー開始なんてこともないから」

 

 そんなことが、『どこかの世界』で起こっていたようだ。まぁ前に観測した世界だろうが……。

 

 

「まぁここはマスターとリーナのセンスに期待するとしよう」

 

 と、アルトリアオルタは言いながらも、「当世風のファッション。あれは良いものだ」とか言っている。

 

「私はメイド服のままでもいいのですが」

 

 その格好で外に出ようというのかメイドオルタリア(略称)。そういうのは勘弁してほしい刹那である。

 

「私の最終降臨は、青少年たちには眼の害でしょう。他にもバロールの女性に……怪奇乳出し馬女とか呼ばれたくないですからっ」

 

 何かあったのだろうか? そう言いたくなるも、ラントリアオルタ(略称)の真っ赤な顔に、ソレ以上はいけないと思うことにしとくのだった。

 

 ともあれ、霊衣を極小のレイヤーとして被服させる魔術礼装が起動。

 ある種のホログラフィスーツとも言うべき『霊基』にたいするハッキングで、現代風ファッションに身を包む騎士王たち―――。

 

(……美人は何を着ても似合うって本当だよな)

 

 前からわかっていたことを再認識させられてしまう事実。

 

 光に包まれた裸体の上に霊衣として普通の衣装を展開させていた。

 

 その衣装の内訳ーーー。

 

 アルトリアオルタは、『胸元が大胆に空いた黒のキャミソール』に、同じく黒いサマーパーカーを羽織り、これまた下は黒のホットパンツに膝まで延びるロングブーツを履いていた。

 この冬場に寒くないだろうかとは少し思う。

 

 オルタリアは、白のブラウスに赤系統のチェック柄のネクタイに青、黒、灰色を合わせた同じくチェックショートパンツ。その下には黒タイツ。羽織るのは裏地が赤だが表は黒のロングコート……若干、英国の学生服を思わせるデザインだ。

 

 ラントリアは―――。

 

 

「……その竜兜は必須なのか?」

 

「兜というほどではないはず。ただの髪飾りだと思っていただきたいマスター」

 

 ある種のアイデンティティなのかな? と思って容認する考えを持ったのだが……。

 

()よ。頬に『牙』を生やしては、マスターに頬ずり一つ出来ない。唇をつけるつもりでその兜を着けているのだな?」

 

「身体のグンバツさ同様にイヤらしい女だ。こんなのも自分(わたし)だと思うと、嫌気が差すぞ」

 

 小さい方2人からさんざっぱら言われるラントリアは、もはや涙目。

 

 余は悪くないもん! と言わんばかりに刹那に擦り寄るのだった。ケンカはやめなさいと言っておき、下の2人を宥める。(確かに頬部分が、ちょっと痛い)

 

 とはいえ、ラントリアの格好もかなり決まったものだ。

 身体のラインが出るのは仕方ないとはいえ、男装した雰囲気の格好は『デキる女』を思わせる。

 

 だが、実際は『こんな風』(刹那の胸IN)なのだから、手心は必要なんだろう……。

 

 

「いいねーいいねー。流石は私の発明品。そのうち『アルトリアフラッシュ』とか言って、様々なコスチュームに身を包ませることも私には不可能じゃない!!」

 

 その場合、全員がサイボーグ化されているんだが。

 

『メカアルトリア・オルタの逆襲』―――変な電波が流れた。

 

 だが、刹那にはオルタの言う『サーヴァントユニバース』には、『蒸着した』メカアルトリアがいるという風景が見えていた。

 

「それじゃ、今日から新しいメンバーも着けて、何とか事態解決に挑もうか。タタリ・パラサイトという『情報収集体』の霊子総量が大幅に減ったことは僥倖だ。

 けれど、タタリを我がモノとしてこの街を『死都』に変えようとしている路地裏トリオは、現在も何処かに潜伏中。気を引き締めていくとしよう」

 

 夜の巡回―ーー気取った言い方をすれば夜警(ナイトウォッチ)の業務も、かなり慣れてきたが―――そろそろ終わりの道筋が見えてきてもいい頃なのだが。

 

「あれ? シオン―――ラニはどうしたんだ?」

 

「留守番です。確かにホムンクルスとしては魔術的に優秀ですが、肉体機能は14,5歳の少女をベースに作られていますので、すみませんセツナ」

 

「そこは謝らなくていいよ。夜中に連れ回しているのは事実だしな」

 

 シオンとしては、自分のポカミスでこの事態を引き起こしたと思っている分、そういう自責の念はあるのかもしれない。

 

 それならば、『隠していること』をそろそろ教えてほしいものなのだけど、それは中々に難しそうだ。

 今日のメンバーは新規加入の『アルトリア』たちを除けば、シオン、リーナ、景虎、モードレッドである。

 

「レティはお休みと―――己が受けた啓示がものの見事に外されたもんな(?)」

 

 本人としては、ただでさえ自分の容姿が美月の絵画に描かれていたアルトリアと似ていることから、『悪性』の騎士王が呼び出されることを危惧していたのに―――こんな感じになってしまったのだ。

 少し違うが『不貞腐れている』。そういう表現が似合いそうだ。

 

「レティ曰く『その可能性が高かったのに覆された』とか言っていたしな。おまけに……

『何でセツナのイメージでジャンヌ・ダルクやシャルルマーニュを再生しないんですか!? ピンク髪の騎士(?)とかちっちゃいおじさん(?)とかでもいいでしょうに、セツナのバーカバーカ!! スケコマシ―――!!』

 という泣きながらの捨て台詞―――思い出したか?」

 

 犬歯を見せて面白がるように笑うレッドに、思い出したよとは返しておく。

 

 そんなモードレッドは、いつも以上に『ノッている』雰囲気だ。

 まだ6,7割程度の出来のクラレントで試し斬りが出来るからかもしれないが。

 

「しっかし錚々たるメンバーじゃねぇか、英国にいる姉貴や故郷の連中が見たらば、崇め奉る光景だぜ」

 

「やっぱりお前の村ってのは―――アーサー王を1人の人間に再現させようとするところだったんだな?」

 

「ああ。とはいえそういう先祖帰りをするには、もはやサクソン人(大陸人)の血はあっちこっちに入り込んでいる。血を純化させることで、古代ブリテン民族の力を復古させようという試みは難儀をしたもんだ……まぁ結果的には、あんまりいい結果が出なかったわけだ。アタシも―――アーサー王とは似て非なるものみたいだしな」

 

 快活にとんでもないことを暴露するも、最後の方に少しだけ寂しそうな顔でアルトリア達を見るモードレッド。

 名は体を表す。日本の故事に照らし合わせれば、モードレッドは最初っからモードレッドとして作られていたということになる。

 

 刹那は詳しく知らないのだが、日本の退魔組織―――七夜以外の連中の中には、そういう『望んだ万能の人間』を長い年月をかけて作り出そうとしている連中がいたそうな。

 それが報われたかどうかは知らないが、考えてみればフラットさんは、そういうのに『近かった』かもしれない。

 

 親御さんから暗殺者を差し向けられるとか、ちょっと『解釈違い』だった節もあるのだが。

 そんな刹那の内心は口に出さずに、モードレッドのリビングアーマーにして犬か獅子のようなゴーレム『カイゴウ』を犬のように腹をくすぐり『カヴァス3世―――!』などと喜色満面で言っているアルトリアズを呼ぶのだった。

 

『た、助かったぜ少年。まさか誇り高き獅子である俺様、あんな娘っ子たちに絶対負けたりしないという気概だったんだが―――』

「騎士王には勝てなかったか……」

 

 項垂れるその姿に、やはり黒いダウン・ジャケットの獣面(ししめん)を思い出すのだった。

 

「そのアブナイネタはダウトよ!」

 

 リーナのツッコミで、()二人の会話は終わりを告げて状況に対する説明に入る。

 

「カードは揃ってきた。今夜から本格的な死徒の城への攻略を開始する―――」

 

 その言葉に誰もが注目をこちらに寄せてきた。

 遠坂家の居間にピリピリとした空気が走る―――。

 

「これまでの景虎の行ってきた『探り』と『削り』で、包囲網は絞られてきた。今から示すポイントに戦力を配置。徐々に範囲を狭めて奴らを追い詰めていく」

 

 数日前の一高を襲った、怪異と言う名の強烈な魔力の波動はあちらも認識しているはずだ。

 

 ならば、何かのアクションがあるはず―――。

 

 

「キツネ狩り―――いや、ジャパンで言う所の『穴熊狩り』ってところか?」

 

「ああ、ただ『城』に籠もられる可能性もあるからな」

 

「―――その場合は?」

 

 モードレッドの言葉に答えた後に、あがる疑問は当然だった。

 

「宝具による『破壊』を行う。ここいらのロードたる七草家からは言われるだろうが、寝蔵一つぶっ壊すことぐらいは許してもらう!」

 

「おおっ、何たる力強い発言。力こそパワー。やりたいことやったもん勝ち 100%NP(勇気)、でやりきるんだね刹那?」

 

「うん色々とアウトだよ」

 

 とはいえ一々、事前の同意や承諾を取っていたら後手後手になることもあり得る。

 

 ルヴァレが代行者に追い詰められても、結局しぶとく生き残っていたことを考えれば、そういう危惧はあり得るのだ。

 

「マスター、城攻めをする時はサーヴァントを集結させろ。この布陣で言えば、どこかで『円』が重なり合う。

 そこで全戦力を投入すれば、吸血鬼など容易く仕留められるぞ」

 

 ダ・ヴィンチが電子マップに示したものによれば、確かにそうなるはずだ。

 

「サーヴァントの魔力発露を利用すれば、それに敏感に触れたものが何者かを感知できる。そこにて卑王の如き輩を倒すとしよう」

 

「頼もしいなアルトリアオルタ」

 

「だが、現世は人があちこちにごった返している。それはそれで喜ばしいことだが、戦をする上では少々―――厄介だ」

 

 その可能性は、事態が起きてから何度も考えていたことだ。だが、いまはそこを考慮している暇はないのかもしれない。

 

「ソレと、セツナがアルトリア達を手中にしたのは『あちこち』に伝わっている―――作戦に何処かの勢力が介入してくる可能性は大きいわよ」

 

「それもまた懸念の一つだ。正直に話しすぎたことで、一高にいた人間たちの親兄弟にも伝わってる可能性は大きいよな」

 

 別に箝口令を敷くつもりもなかった。

 一番あり得る七草家は、娘が『自主的』に『お口にチャック』している。いずれはバレるだろうけど。

 

 十文字家は、いつぞやの当主との取引ゆえに、手控えてくれる可能性は高い。代わりに春休みに『北海道』に行く予定が立ってしまったのは、出てくれば反故に出来る……。

 

 問題は『四葉』であるか、もしくは―――『九島』……。

 

「まぁ出てくれば、申し訳ないが遠慮なく倒させてもらう」

 

「オー、ジーザス! レツ大伯父様には、深夜徘徊を控えてもらいたいわ」

 

 要介護状態の老人認定はどうかと思うが。リーナにとっては親族に当たるが、この場では、自分の判断を優先させてもらいたい。

 

「では―――開戦と行きましょうか?」

 

「ああ、手筈通りに行こう。慎ましくなっ」

 

 シオンに言いながらも、何かしらの『不確定要素』が、どうしてもこちらの計画を狂わせるだろうことは予想できていた。

 

 先程言っていた魔法の名家という一大勢力以外の『何か』が、起こるのだろうと思えていた……懸念は的中する―――。

 

 

 ・

 ・

 ・

 

「香澄さん、 泉美さん。こちらです」

 

「サンキューラニっぱち!」

 

「こんな深夜に家を抜け出すとか、ちょっとドキドキですね」

 

 月明かりも幽き家の外に友人の『手引き』で出てきた双子の姉妹は、服についた汚れを手で払ってから、家の庭からも完全に出る。

 

「しかし、大丈夫ですか? 家の人が心配するのでは?」

 

「そんなことは今さらだよ。それに―――数日前、多分3,4日前に都内の何処かから放射された魔力の波動の原因―――ボク達も知りたいんだよ」

 

 香澄が興味津々に言うその原因を、ラニはよく知っていた。

 だが、正直には言えない。

 

 そもそも信じられるかどうかすら分かったものではないのだが……。

 

(まぁ適当にその辺りを散策すれば無聊も収まるでしょう)

 

 出来れば何事もありませんように、と思いつつも、被っていたベレー帽から『アミュレット』を取り出して渡しておくことは忘れなかったのだった。

 

 そんなラニの格好に対してコート姿の双子は言いたいことがあった。

 

((デンジャラス……デンジャラス・ビースト!!!))

 

 衣装の際どさと言えばいいのか、ラニ自身が持つエキゾチックエロス(爆)が炸裂しているとでも言えばいいのか、まぁとにかく――――。

 

((ウパニシャッド―――!!!))

 

 と双子は、インド哲学の一つを声高に叫びたい気分だったのだ……。

 

 てくてくと歩いていくJC3人の向かう先が何処であるかは―――『運命の風まかせ』なのである―――。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。