魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~   作:無淵玄白

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HF第三章公開されたそうですが―――ご存じの通り見に行けてません。(泣)

アクセス悪いんだよなぁ。我が家は―――まぁアクセスが良すぎてもコロナの伝染なんて問題もあるわけだから―――。

気楽にブルーレイを待とう。主演が間桐だけに(爆)

そして投稿日の18時よりイベントが開催! ”待”ってたぜェこの”瞬間”をよォ!(古)

そんなわけで新話どうぞ。


第245話『Farce/melty blood‐8』

(なんたる鳴動だ……。アーサー王が戦うとなると、ここまでの戦いに発展するのか?)

 

 明確ではないが都内3箇所ほどの地点で強烈な魔力の発露を感じる。

 

 近場にいれば、その圧を情報次元だけではなく肌身にも覚えていただろう。

 

 全ての魔法師が感じ取れるというわけではないが、それでも克人とて、どちらかといえば知覚能力が高い人間ではない。

 

 そんな克人ですら感じ取れる時点で、尋常の理屈ではない。

 まぁ魔法師の理屈を尋常の世人が理解できるとは限らないので、正直言えば独りよがりな理屈なのだが。

 

 ともあれ名倉氏と共に、双子の保護の為に車を動かしてきた克人は一点で止まる。

 

「十文字殿?」

 

「泉美と香澄のようです。他にも……色々な人間がいるようですが、とりあえず向かいましょう」

 

 名倉の疑問に答える形で、公園の入口付近で立ち竦んだり座り込んでいる集団を見る。

 

 成人男性―――どこか、軍人にも見える連中が一番疲労困憊している様子。一番元気なのは双子のように見える。

 

「泉美、香澄!!」

「克人さん!!」

 

 公園付近で停車させた車から降りた克人に気付いた香澄が、手を振り回して呼びかけに応えた。

 

 様子から察するに何か乱暴をされた様子ではない。服がボロボロで身体も怪我をしているのは、黒服に仮面など卦体な格好をした連中が主だ。

 

「何があったんだ? 遠坂は?」

 

「そうだ! 遠坂先輩が、何か恐ろしい……邪気とでも言うべきものを放つ連中に襲われる前に、私達を逃してくれたんですよ!!」

「イヤなサイオンの感覚でした……あれが吸血鬼なのでしょうか?」

 

 緊急を告げるように言う香澄に対して、疑問をぶつけつつも恐怖で震える泉美を安堵させるように頭を撫でてから―――。

 

「そうか。分かった」

 

 と、一言だけ安心させてから、公園の向こうを睨みつける克人。

 

 双子を気にしながらも、恐らく遠坂の秘術を狙っただろう集団を少し気にする。

 その内の双子と歳が近いだろう―――同じく双子の姉弟の(容姿)を気にする。そこにあったのは、どことなく知り合いの兄妹の片方を思わせるもの。

 

 特に女子の方は、師族の会議―――モニター越しにちょくちょく見ていた『魔女』に似ていたのだ。

 

(四葉の分家―――詳細は分からないが、そんなところ、か?)

 

 何となくの推測を含めつつ、そう結論づけて―――事情を聞こうとした時に、猛烈な勢いで路肩に留まる車がある。

 

「香澄、泉美! 無事か!?」

「お父さん!」「お父様!?」

 

 兄貴の最速理論(?)を用いて峠の走り屋よろしくのドリフトできっちり止めた男は、顔見知りの人間であった。

 

「無事でよかった。ラニちゃんもすまないね。2人が無茶を言ったみたいで……」

「いえ、悪だくみに加担した時点で私も同罪なのでお構いなく」

 

 弘一は双子を抱きとめつつインド系の美少女にも気遣いをするも、少女は手で制しつつ、振り返って見えない『修羅巷』に目を向ける。

 

 そして、ラニとは対照的に、当然のごとく弘一の眼は妙な集団に向けられる。

 

「彼らは……」

「私の部下と子供たちですよ。手荒な真似は控えていただきたい」

 

 ハードボイルドを気取ろうとしただろう男が立ち上がって、仮面を外して素顔を晒した。

 

 その顔に弘一は心底の驚愕をする。

 

「―――「ミツグ」君……!?」

 

「お久しぶりですね。弘一さん」

 

 顔見知りである大人2人の様子に興味津々である双子2組に対して面倒な想いを覚えた瞬間、結界が張られた場所―――公園中央から『黒い光の柱』が上った。

 

 強烈な力の発露。この波動は横浜でも確認したものだが、感じるものは少し違う。

 

 あれが正調な『流れ』にある『力』。ヒトを守るために使われたものならば―――。

 これは外法の『流れ』にある力。星を守るためにヒトを害するもの。星の絶叫とも感じられた。

 

 そんな克人の疑問に対して、ラニ=Ⅷは答える。

 

「エクスカリバーとは元々、湖の妖精ヴィヴィアンが星の『内海』において鍛造せし、星の外敵を抹消するための防衛機構。しかし、星の外敵を倒すための力とは、決して『ヒト』の世界を守るために存在する力ではない。

エクスカリバーの極光は、星を守るためならば大地を焼き尽くすことも厭わぬ力。その大地に在りし『ヒト』が焼き払われたとしても構わない。そういう無慈悲な力なのです」

 

 どこか寓話・神話の類を読み聞かせるような、滔々としたものを感じさせていた。

 

「英雄の多側面(マルチアングル)と同じく、英雄アルトリアにも秩序の守護者、聖王としての側面もあれば、悪政を行う暴君としての側面もある―――見方しだいなんですよ。

 ヴィヴィアンにも星の守護者としての側面と、人の世を混乱に陥れる邪妖精としての側面がある。ソレ故に、エクスカリバーにも『聖』と『魔』、どちらの属性もあり得るのですよ」

 

「英雄アルトリア……アーサーのオルタナティブとはなんぞやと思っていたらば、そういうことか……」

 

「そういうことです。どうやらお迎えが来たようなので、私は戻ります」

 

 ベレー帽をかぶり直してから『お迎え』とやらを待つ姿勢を整えるラニに対して、疑問符を覚える全員。そしてお迎えというのは……時代錯誤なモーターサイクロンの音を高らかに響かせながら、先程まで弘一と克人が駆け抜けてきた道路に黒い影が赤い残光を残しながらやってきた。

 

「モーターバイク!?」

 

「おかしいですね文弥、私の目には乗っている方の1人が水着にメイド服を着ている……全裸メイドの半端版にしか見えないのですけど……」

 

 驚き顔を赤くした弟とは対照的に姉の方は、その衣装に頭を痛める。

 

 四葉のファッションリーダーを自称する黒羽亜夜子からすれば、何とも『負けた気分』になる衣装であった。

 

 衣装もさることながら、それを着る人間がヒトを超越した『美』を持てば、纏う衣装がなんであれ下品さなど無いのか? 

 そういう嫉妬心を持っていたのだが、亜夜子に構わずエンジンを吹かすことで加速する女性は、真剣な眼をしていた。

 

 ハンドルを握る女性がスロットルを開く度に、恐ろしいまでのバイクの咆哮が響き渡る。

 

 そのバイクのカスタム具合は、もはや機械の乗り物というよりも機械の魔獣(マシンビースト)であった。

 

 同乗して腰にしがみついていた紫髪の女性が同じく紫髪のラニ=Ⅷを捕まえて(糸のようなもので)引っ張り込み、三人乗りという過去・現在―――未来においても許されない交通違反を行いながら、ウイリー走行からのジャンプで公園内に入り込んだのだ。

 

 続いて馬蹄を道路に響かせながら駆け抜けてくるは黒馬と白馬。どちらも知らないわけではない馬と跨る連中だ。

 

 そいつらもまた結界が張られた公園内に容易く侵入を果たす。

 

「―――弘一殿、ここはお任せしました。自分は中に入って、全てを見届けたく思います」

 

「頼んだ」

 

 手勢をつけようかとしていた弘一を制してから、克人は先程の騎馬軍団に比べれば、実に『のろま』な自己加速で公園内部に入らざるを得なかった……。

 

(見届けねばなるまいな)

 

 例え何が出来なくとも、それが人外魔境の戦いで足手まといだとしても……一高の先達として向かわなければいけないのだから。

 

 

 ・

 ・

 ・

 ・

 

「これが『力』か―――ははっ! 素晴らしい!! もっと多くの血をのめばぶぁあああ!!!」

 

「マスター!!」

 

 剣の腹で思いっきり『ぶっぱ』された元・魔法師であろう相手が地面に倒れ伏して、そこに黒鍵が十本は突き刺さる。

 

「火葬式典発動―――主よ。この不浄を清め給え!」

 

 絶叫して焼かれ、そして灰と塵に還る様子に絶命を確認。

 

「疾ッ!!! 爆吐()触葬!!!」

 

 地面を両手で叩いて、目に見える形で毒の沼を波濤のごとく押し寄せてくる死徒に対して、毒の沼を分解する達也。

 

 こちらに押し寄せれば、地面が溶けるだけではすまなかったか。と思って、死徒に対して分解を仕掛ける。

 

 既に動いていない心臓。それがなくても『生きている』という事実に対して、総体全てを分解してやる。という想いで見透した上で轟く音。

 

 もちろん実際に轟音が響いたわけではない。情報次元を圧倒する想子の質量がハンマーのように振り下ろされたのだ。

 

「―――!! がぁ―――――」

 

 断末魔の絶叫すら分解されたのではないかという勢いで、世界から『消去』されるヴァンパイアの姿。

 

 正直言えば、達也からすれば『霊体憑き』たるタタリ・パラサイトに比べればやりやすい相手だ。

 

 そして技量も、あの騎士団連中よりも格下なことも幸いしている。まぁこんなことで安堵するなんて男子としては失格だろうが。

 

「方術と『爪』を複合させて戦うんだ!! マヘーシュヴァラに魔宝使いを我らが配下に加えさせられたならば!!」

 

「―――『親抜け』を画策するには、実力が足りねぇよ!! 冠位(上級・祖)を目指すならば、もうちっと外法・魔導を探求しやがれ!!!」

 

 言うやいなや、横浜での戦いで『登録』したのだろう魔礼青の青雲剣を振り下ろして、幾重もの斬撃を遠間から放つ刹那の攻撃が、死徒たちの身にダメージを与える。

 

「ッ!!!」「―――」「う、腕が再生しないいい!!」

 

「流石に後には仏教四天王にも数えられる仙人の剣。お前達にも相当に効くらしいな」

 

 ただ達也も後に見て聞いただけだが、本来の魔礼青の剣よりも上級(?)になっていた。

 

 太極を示すように刀身の真ん中を狭間にして、黒と白に色分けされた剣が起こす現象は強烈なものだった。斬撃の全てが不治の呪いとして死徒たちを切り刻んだのだ。

 

 そのスキを見逃すアルトリア・ペンドラゴンではない。死徒となって以来の万能性。達也とは別種の『不死性』を利用した雑な戦い方を見抜かれていたようだ。

 

 成人男性サイズの身体を左右に割り砕く大剣の一撃。

 

 矮躯というほどではないが、それでも深雪やリーナと殆ど背格好が変わらないアルトリアの一撃が、そう易易と入る理屈は、黒と赤の魔力が光の刀身を形成、刃渡りを延伸していたのだ。

 

 それゆえに、あの剣ならば3m、いや10mもの巨人であっても『真っ向唐竹割り』を存分に行える―――。

 不死の怪物でも、これだけの魔力で刻まれれば消滅をせざるを得ない。

 

 つまりは―――。

 

「今夜は吸血鬼たちの夜ではなかったということか?」

 

「お前にしちゃ随分と楽観的だな」

 

「暇だしな」

 

 達也が少々嘆息気味にならざるを得ないのは仕方ない。グールも死徒(成り立て)も全て、病葉も同然に斬り裂かれたからだ。

 

 自分たちの出番などあってないようなものであった―――。

 

 だからといって―――。

 

 あからさまな隙に食いつく『間抜け』に後れをとることなど有り得ないのだった。

 

 林の奥よりやってくる弾丸の如き爪撃を、神仙の剣は受け止める。

 

「弓塚さん……!?」

 

「強いなぁ。強すぎるよぉ……けれど―――私も強くなればいいんだぁ!!!」

 

 神仙の剣がギチギチと爪と拮抗する。相変わらず死徒というのは理不尽の限りだ。

 

 魔法師が掴めば少し剣を動かしただけでズバッ! と指を切れるというのに。

 

 やむを得ず胸郭に蹴りを叩き込む刹那。コレ以上の接触を嫌った形だ。

 

(危うかったな……)

 

 吸血鬼の膂力全てに対抗しようとすれば、強化は密にしなければならない。

 

 だが―――今は……違う。

 

「セツナ! 我がマスターに対する狼藉!! 許さぬ!!!」

 

 魔術師的な原則に立てば、己が『最強』である必要など無い。

 

 直接的な戦闘は『使い魔』に任せて、後方支援というのも一つの選択肢だ。

 

 もちろん刹那は、そこまで『学者肌』の魔術師ではない。外法狩りに何度も狩り出されたバリバリの執行者だった。

 

 だが、そんな刹那でも『サーヴァント』という使い魔を得てしまうと、そちらに対する魔力供給で、中々に一杯一杯な部分もある。

 

 ある程度の『倹約』はしているのだが、それでも四体同時契約……どこぞのチビっ子魔法先生のように見目麗しき女子生徒を従者に―――。

 

 それはともかく(閑話休題)、一国の王であった『大食らい(二重の意味)』のトップサーヴァントを基にしたオルタナティブサーヴァント3騎、時代によって評価はまちまちだが概ね『義の武将』という評価が多いサーヴァント……。

 

 四騎ものサーヴァントを運用する以上、刹那も変わらなければいけないのだ。

 

 

「リーズさんよりも騎士らしい格好の女の子!! けど、なんだか『世界観』が違いすぎる!!」

 

「タタリが成した情報体。人理肯定世界の影法師を再生出来るのか。気をつけてください、さつき。彼女の能力値は、真祖・代行者にも迫るものがあります」

 

「ええっ!? シエル先輩やアルクェイドさんレベル!! 勝てないよ!」

 

「―――総力だけならば、真祖には劣りますが、攻勢能力に関しては遜色はないということです」

 

 

 喚くさつきさんに比べれば、Vシオンは随分と冷静だ。一見すれば、こんな風な人たちが連日人喰いをしているなど思えないのだが……どうしても魔眼に見えてしまう吸血の『痕跡』が、甘い対応を許さない。

 

「オルタ!!」

「承知した!!!」

 

 

 魔力をいっそう供給することで、セイバーの攻撃能力を高める。

 

 同時に宝石による縛呪で相手を縛り上げようとする。

 

「ッ!!!」

 

 ここで仕留める。その気迫が伝わったのか、達也もまた妨害するように分解魔法で絶妙なアシストをしてくる。

 

 反転聖剣の魔力斬撃は、とにかく容赦がないものだ。

 

 如何に、2人が死徒として『それなり』であったとしても、『英霊』には勝てない。

 

 一時間後に船が沈没すると分かっていても、船に乗っている人間には、それをどうこうすることは出来ない。

 

 打ち込まれる銃弾の軌道を予測できていたとしても、それを回避するだけの運動性能がない。

 

 尚且つ―――。

 

 

「あの剣! どう見ても私達と『同系統』なのに、なんでこんなに痛いの!?」

 

「元々は聖剣ですからね。如何に『アラヤ』側とは明確に言いきれませんが、それでも人々の幻想(ねがい)を注ぎ込んだ剣でもありますから、私達にとっては毒なんですよ。さつき」

 

「言っている意味はよく分からないけど、とりあえずシエル先輩の黒鍵以上であることは分かったよシオン!!」

 

 シオン・エルトナムは、エーテライトを駆使して『レプリカント』をこちらにぶつけて来る。

 

『糸』で構築された人形は、本物と遜色ない挙動と『機動』で以て、こちらとぶつかり合う。

 

 再生されたのは、リーズバイフェ……『遠野秋葉』『アルクェイド・ブリュンスタッド』―――刹那にとっても既知の人間ばかりだ。

 

「そんな傀儡ごとき」

 

 だが、如何に機動だけは遜色なくパワーも再現されていたのだろうが、決定的に魔力量の圧が違いすぎた。

 そして魔力放出で刃圏にまで踏み込んだアルトリアの光剣が、Vシオンの腕を切り飛ばした。その勢いを借りて、横殴りの一撃が入ろうとする。

 

「させませんっ!!!!!!」

 

 長い足を振り上げて、残った片腕を用いて勢いよく言うシオンの格闘が一撃を器用に防ごうとして、光剣に焼灼される腕と足という結果。―――吹き飛んだ。

 

「―――!!!」

 

 暴風に抗う術を持たぬ板切れのごとく吹き飛ぶ様子。そして、ソレを見た吸血鬼の仲間が、怒りの『投擲』を開始する。

 公園内にある大質量・大重量―――木々を引っこ抜き、片手で持ち上げてぶん投げてくる様子。

 

 街頭も投げ槍も同然にぶつけて来る様は、恐怖を催す。

 

 だが……、そんな鈍重な『砲弾』を食らうアルトリアではない。

 

 鈍重とは言ったが投げたあとに『ドンッ!』という音が遅れて響くということは、亜音速程度の疾さはあるということだ。そんなものを飛礫でも撃ち落とすように弾いている、アルトリアの技量と膂力は並ではない。

 

 ゆえに―――。

 

「強力な宝具は使えないけどな」

 

 吸血鬼に対して有効な武器の一つや二つは作れる。

 Dランク程度の不死殺しの武器を励起状態で叩き込む。

 

 朱輝、蒼輝、黄輝、緑輝、白輝の短剣が殆どダルマとなっているシオンに向かう。友人と同じ顔をしている人間に対して、こんなことをするという心を塗りつぶす。

 

 地面を叩く勢いが、そのままにシオンを血塗れにする。身体のあちこちに突き刺さる刃が、何も知らなければ痛ましさを覚えさせる。

 

「魔宝使い……!!!」

 

 怨嗟の声を憎悪の眼と共に吐き出してくるシオンだが、決着の時は近い。

 

 近いからこそ―――。

 

「セイバー 聖剣に魔力を溜め込め!!」

 

 互いの直感がリンクした形で、サーヴァントに指示を出した。

 

 今まで飛び道具を迎撃していた位置から、半歩を退き聖剣をいつでも振り抜く構えで待つセイバー。

 

「刹那―――!?」

 

 達也の疑問が口を衝く前に―――次の瞬間、あちこちの木々や遊具―――未だに残っていた『止り木』から多くの鳥・鳥・鳥―――数多のソウルキャリヤーが飛び立つ。

 

 眠らない街『東京』。俯瞰風景ならば、煌々と文明の火が灯る街の一画が完全な闇に閉ざされた……。

 

 文明の光を閉ざした場所にて先程まで行われていた『魔人』たちの戦い。

 

 人工衛星をジャックして、その様子をつぶさに上から『見物・見学』していた連中は、思い想いの感情を浮かべながら次の展開を予想していた。

 

 その中で、オートボット(サイバトロン)ディセプティコンズ(デストロン)の戦いでも見ているような気分でいた米国の少年は―――。

 

 ズームインした瞬間、黒赤の魔力の柱―――光の柱が、東京の一画で吹き上がった。

 

 常人であっても視認が出来る巨大な光の柱は、七色の光輝の帯を交えて放たれて、闇を打ち払った。

 

 東京上空に噴き上がる光の柱は、

 

 網膜が焼き付くのではないかという強烈な閃光の圧は、自分が食らった、消滅したという錯覚に陥るほどに凄まじいものだった。

 

 思わず『昼間』にも関わらず大絶叫を上げて、椅子から転げ落ちてしまうほどに、衝撃的だった。

 

 汗が止まらない。動機が静まらない。

 

 既に機能停止をしたヘッドマウントディスプレイを退けて、どういう『理屈』かは分からないが、完全にクラッシュをした大型端末だけが、最後の目撃者となった事実に歯噛みする―――それは他の『オペレーター』も同様なのだが……。

 


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