魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~   作:無淵玄白

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そろそろバレンタインに入らねば……。

あと、高評価付けてくれた方が多かったからかランキングにも載ってているのは確認しました。

ありがとうございます。これからも見捨てないで読んでいただければ幸いです(必死)


第246話『Farce/melty blood‐9』

 

 

 

卑王鉄槌……ヴォーティガーン。正しくブリテンの化身たる魔竜の吐息も同然に、夜の闇を更に漆黒に塗りたくった鴉を屠り、夜空を更に暗黒に染め上げた……。

 

その様子を終始にいたり至近で見ていた刹那と達也は、その原因を探る。

 

網膜が焼き付くほどの『黒光』の光量全てが晴れると、いつもどおりの夜の闇―――そして周囲が荒野のような様になっていた。

 

斬り上げたのが上空だったから大丈夫というレベルではない。

アルトリア・オルタを中心に、すり鉢状に5mは沈降した公園の路面が威力の程を物語る。

 

範囲としては直径10mはあろうか……。

 

(分かっていたことだが、戦略級魔法のレベルだな)

 

単純な威力を零角度水平に打ち放てば、その途上にあるもの全てが『消却』されてしまう。そんな想像ができる黒光の『破壊現象』であった。

 

もっとも……『宝具』の『名前』を叫ばなかったことが達也に少しの疑念を持たせたのだが、ともあれ石の剣……無骨な巨剣―――確か、刹那の記憶というよりも衛宮士郎(父親)の記憶で見たアインツベルンのバーサーカーが持っていたものが、遮蔽物・防御壁として機能していた。

 

 

「………マズイな。あんな大物を『再演』(アゲイン)させられるなんて―――」

 

「お前のその手の発言は聞き飽きたよ。手練れか?」

 

「君のその眼で見てみろ。規格外だよ」

 

「――――――――――――」

 

アルトリアと『ふたりはロジウラ』の狭間に立つ、コートを着込む巨漢の『男』。

 

冬場に相応しいとはいえ、それでも違和感ばかりが先立つ外国人……。

 

刹那が汗をかいて、そう返す。そうして言われたとおりにした達也は後悔した。

 

長い、本当に長い絶句をしてしまうほどに強烈な『モノ』を見てしまった。

 

今までサーヴァントや幻想種、はたまた『異星人』なんてものを、ありったけ見てきた達也だが、その巨漢は、鋼の心臓を持つ―――と他人から思われている達也でも、思わず目を背けたくなるような、あらゆる『得体のしれないもの』の集合体だった……。

 

あえて名付けるならば『混沌』。そんなものが終始、渦を巻き斑模様(マーブル)を作り上げて、それが溶けると再び違う斑模様(マーブル)を作り出す。

 

それら全てが『眼』を持ち、『牙』を見せつけ、『爪』を研いで―――こちらを見ていた……。

 

マーブリングは全て……『ケモノ』の姿に見えてしまう。ヘルメットの面頬を上げ吐き気を堪える。新鮮な空気は無くとも―――それでも達也は、そうしたかった。

 

 

「なんと面妖な対面となったものだ。私と貴卿は、本来ならば苦界・現世にて相見えることのないものだ。もっとも、『数多の世界』の中にはそういったものもあり得るのだろうが、その場合の『私のカタチ』は、少々違ったのだろうな」

 

「感傷に浸るのはいいが、吸血鬼。お前の事情など私はどうでもいい。その身を『消滅』させることに、私は何の感慨もない。

お前のその身はヴォーティガーンに似て非なるも、『キャスパリーグ』にも通じる『獣』の『業』。この剣で捌かせていただこう……」

 

脅し文句に対しても銀髪の巨漢は臆すること無く、されど敬服を持って騎士王に話しかける。

 

「成程、そう言ってもらえるとは、一つの解を得た気分だ。

いや私も半信半疑だったのだよ。希求するものが神代の叡智。神代の御業。

―――神代にあり得た『回帰』……こうであろう。そうであろう。そう『考える』のは容易く、されど『実物』を見たものなどいないからな。まるで考古学の見地に立つ気分だった」

 

 

地層から発掘される恐竜の化石は、多くの痕跡を残すが、その殆どは骨組みだけなのだ。

 

故に、考古学者はその骨の『用途』から多くの内臓器官を類推し、更に言えば『どのような皮膚』をしていたかも考える。

 

一昔前には、『羽毛恐竜』なんて眉唾であったが、多くの発掘例と最新の解析技術で化石の中に羽毛を見出し、鳥類が恐竜の子孫であることは、児童書にも明記されている。

 

そういった風な『不確かなもの』(未源)『確かにする』(実現)をもとめているという発言に、刹那だけはこの男が、『神代回帰の総本山』出身だと気付いて汗を流す。

 

「本来ならば、交わらない。だからこそ互いの『知っている』ものを『見せ合えない』。

―――『答え合わせ』が出来ない。予測は出来たとしても、所詮ソレは想像の類だ。

私はお前の中に渦巻くものを、良く知っている。かつての『戦い』で私を変質させた混沌嘯(ケイオスタイド)……侵食海洋、混沌の海……『聖杯の泥』と呼ばれるものだ」

 

その言葉を聞いた時に、何かに気付かされたかのような表情。

混沌渦巻く胸……と言っていいのか分からない所、心臓があるかどうかすら不確かなそれに手を当てて感じ入る魔術師上がりの『上級死徒』……。

 

「感謝する。騎士王アーサー・ペンドラゴン……」

 

貴人に対する敬意をもって一礼をする男。されど、丸めたその背中が蠢く様子にアルトリアともども警戒をする。

 

「故に―――その身を食し、己の不確かな体を補充することにしよう。始原の竜の魔術炉心(ヴォーティガーン)……我が身に取り込むのは骨だろうがな」

 

明らかな戦闘態勢に入ったことで2周りは膨張する身体。『混沌なる海』からナニが出てくるか分からぬ。その不確かさに恐怖を覚える……。

 

「名を聞いておこうか。死徒」

 

「我が名は『フォアブロ・ロワイン』―――彷徨海に学び、そして死徒へとなったことで、十番目の冠位を継いだもの。教会通称―――『ネロ・カオス』。お初にしておさらば、だ」

 

そんな『上級死徒』なんていただろうか? という疑問の念を持ちながらも、刹那も戦闘態勢に入ろうとした。

 

宝石を両手に持ち待ち構える姿勢。混沌とした『胎内』から出てきたのは―――。

 

御主人様(マスター)をお守りするのは、メイドの務め!! ヴェスパー(?)最強のバトルアンドロイドをなめるなぁ!!!」

 

―――その前に、台無しにするセリフ。

横っ面を引っ叩く形で現れて、単車に乗りながら往年の西部警察・あぶない刑事のようにライフル銃を撃つメイドオルタの姿。

 

「消音の魔術を敷いていた私も褒めてください」

「師に同じ」

 

バイクに3人乗りの曲芸師よろしく銃撃を放つ三者に対して、ネロ・カオスは、横っ腹から『犀』『アルマジロ』『センザンコウ』―――もしやと思えるのだが『アンキロサウルス』のような『動物』が出てきて銃撃を阻む。

 

「騎士王アーサーが2人だと……!?」

 

使い魔……らしき動物を出していたネロが、驚愕して眼を吊り上げる。

 

その様子に満足したのか、オルタリア()は勝ち誇ったように口を開く。

 

「私が1人などと誰が決めつけた? 騎士王アルトリアは分裂する―――プラナリアのように!! 英霊の座に多くの霊基霊位を持つのだ!」

 

「え゛ええー………?」

 

ナニソレこわい。親父の元カノがそんな恐ろしい貞子(原作版)みたいな存在だとか、息子として受け止めきれない。

 

握り拳を振り上げて意気をあげるオルタリア()にそんな感想を持ちながら、いつぞやのあの言葉は事実だったのか、と驚愕する。

 

そう思いながら、次に響くのは馬蹄の乾いた音。そして馬の嘶きである。

 

戦場の『モダンストレンジカウガール』がやってくる……。

 

「今度は何だ!? この馬の嘶きは幻想種クラスはある……! 手綱を握るジョッキーはユタカ・タケのように巧みだ!!」

 

なんでそんな事が分かるんだ。そう問いかけたくなるネロ教授(?)の、真面目なのだけどボケた発言の後には黒馬が林から飛び出る。

 

「マスターの元に疾く駆け抜け ラムレイ!!! モー孩児!! 『砲撃』を合わせろ!!」

「クラレントにこんな魔砲少女な機能があるなんて聞いてねーぞ、セツナーーー!!!」

 

文句を言いながらもクラレントの七大機能の一つ『大砲』に変形させたモードレッドは、巨大な口径を持つそれからビームと実弾の双方を叩き出して、ネロ・カオスに叩き込む。

 

不意を突かれつつも、数多の『獣』を出してそれらで防御する様子。先程のように硬い獣ではなく、本当に犠牲を強いるように多くの獣を肉の壁としたのだが……。

 

(何か妙だ)

 

爆風に煽られながらも、観察を止めない。相手の手の内を読まなければ、『解体』せねば、真実にはたどり着けないのだ。

 

体内(からだ)に飼っている使い魔を、『混沌の魔力炉』から出してくる吸血鬼。

 

果たして、その認識は『正しい』のか? インスピレーションが働き会話を思い出す。

 

(待て、セイバーは何と言っていた? )

 

侵食海洋、ケイオスタイド、混沌の海……聖杯の泥。

 

それがもたらすものとは『神代回帰』―――。

 

などと考えている間にも『使い魔』たちは、こちらにやってきた。

 

イヌ科の動物。多分、狼だろうものが、こちらに噛みつかんと駆け抜けてくる。

 

「大きいな。恐らくまだ『人狼』が頻繁に人里に降りてきた頃のものか」

 

「野生動物が寒冷化で激減したこの世の中では、溶け込んで欲しいぐらいだがな」

 

刹那の解析に達也が被せてくる。そう考えると、北海道の獣医とやらは、畜産及び乗馬などの患畜ありきであっても経営は上手くいっているのか、ちょっと疑問に思う。

 

ガンドを放ち、魔弾を放つと穴だらけになり崩れ去る『狼』

 

蟠る『泥』―――土に還らず、風に攫われない。

 

その意味―――。

 

「そういうことかっ!!!」

 

蟠る泥に対して攻撃を仕掛ける。単純なまでの破壊術は、泥を細分化していき―――そして―――『鳥』へと変じる。

 

啄みを行おうとしているそれを再び砕く。

 

確信すると同時に―――。今の装備・戦力でも十分に『打破』は可能。

 

寧ろ野に散っては困るものだ。ここで仕留める―――つもりではいる……。

 

「見えたぞ。ネロ・カオス―――お前の正体がな。お前は『オレ』と同じだ!!」

 

「ほぅ。希少な魔眼を持っている。だが少々―――無邪気がすぎるな。嫌いではないが、ぬぅう!!!」

 

こちらの言葉と眼の輝きに反応したネロ・カオスだが、サーヴァント3騎とデミサーヴァント1騎の圧力は無視できるものではない。

 

公園のあちこちを振動させる戦いの余波が、こちらにも伝わる。

 

勢揃いしたアルトリアズは、鬼か竜かという勢いで、ネロ・カオスの『使い魔』(からだ)を削りとっていく。

 

その圧が強まり―――それでも完全には『消滅』させられない。

 

(やはり『総体』を一瞬で消し飛ばさなければならないか。ということは志貴さんが倒した『原生』(プリミティブ)の上級死徒というのは、こいつの『成り損ない』ってことなんだな)

 

混沌と原生。

 

この2つは若干似ている。多くの土地を問わない創世神話において、原初の世界とは『混沌』であるとされている。

 

『そこ』に降り立つ始祖が、切り払い、掻き回し、手で押し固めて……光あれ。そういう『創世』を以て―――『世界』は、形作られたと伝えているのだ。

 

(だとしたらば、こいつはある意味では、彷徨海そのものと同じ性質を持っている。俺より上位の『世界』保持者と言えるか)

 

その魔術比べをしてみたい気持ちはあったが、今は抑えておく。

 

「オルタリア、メイドオルタ、ラントリア!! 『頼む』!!」

 

短いオーダーを入れたことで、更に攻撃の圧を強めるアルトリア達……。

 

防戦一方というか、『移動』出来るほどの質量がアルトリアの敷いた輪の外に出せないのが原因なのだ。

 

不意打ちのように腕を振り上げて出した巨大な鹿角(スタッグホーン)を持つ魔獣―――バイコーンの突き上げも、身体を半ばから出した時点で身体を後脚と前脚の中間で断ち切っていた。

 

返し技のような斬り上げが、下がる歩数を見極めたことで鮮やかに決まる。上昇した身体を下ろすことで斬り下ろしがバイコーンの身体を合計で四分割した。

 

「勝てる……のか?」

 

「そう願いたいが―――」

 

メインフォースとなっているアルトリアたちを、足元や背後から狙おうとする地面を這う蛇や鼠など、『大型』になれない泥の変生を穿つ。

 

これはこれで重要な役目なのだが―――。そう考えてロールスイッチ(前後交代)することも視野に入れた時に、シオンから緊急通信(念話)が入る。

 

(変ですよ。刹那、リーナとランサー・景虎の姿が先程から駆けつけてきません。私達とほぼ同時に公園に入り込んだはずなのに……)

 

「!?」

 

その言葉に寒気を覚える。最大級の悪寒が走った瞬間―――。シオン達が駆け抜けてきた林の中で閃光が輝き、雷鳴が轟く。

 

明らかに景虎の魔力放出ではない轟雷の後には―――。

 

「明日への緊急脱出!!!」

 

林の中から泥に汚れた白馬が、同じく衣装に汚れが見える景虎と共に飛び出してきた。

 

「ミスタークロスJr! しっかり!!!」

「シールズ……お前までその字を使うか。別にいいけどな……」

 

白馬の後ろに乗っていたのは、それなりの怪我を負った十文字克人と少しだけ汚れたリーナであった。

 

「何があった?」

 

即座に3人と1頭を回復させつつ、3人の内の1人に問いかける。

 

「マスター風に言えば、上級死徒がもう一鬼現れました。対魔力を持つ私に雷霆を届かせるほどの魔術師の死徒です――――――無駄ですよ。さつき。アナタが刹那に投擲をしようとしても、私が阻みます」

 

注意を怠っていたか。回復した弓塚さつきとVシオンが立ち上がっていた。

 

恨めしげな眼をする2人の美少女の視線に、降馬した軍神は眼を返す。

 

 

緊迫感あふれる戦場において、どこからともなく声が響く……。

 

『主催者シオン・エルトナム―――これ以上は我が盟友も持たんよ。即時の撤退を推奨する』

 

「―――『欲しいもの』は得られたんですか?」

 

『ああ、よもや『女身』に変化してしまうとは、予想外だった。だが変化をした身体に極上の魔力が貯蔵されていることは間違いない―――。

このチカラをはやく利用したいのですよ』

 

言葉の調子に『男』と『女』が同居したような様子を感じて、林の奥からでも『狙い撃つ』という考えを感じて―――。

 

「ラントリア!!」

「承知 カゲトラ殿に代わり、死徒の迎撃に向かう!! モードレッド!! 頼んだぞ!!」

「おうっ!!!」

 

黒馬ラムレイに跨り林の奥に引き返すランサーアルトリア。その位置に入り込むのはデミサーヴァントも同然のモードレッド・ブラックモア……。

 

振り回すクラレントの圧は、朱雷のほとばしりを見せながら吸血鬼に突き刺さる。

 

「オラオラオラオラオラ!!!!!」

 

その力任せの剛力の限りで宝具を叩きつける攻撃手法に、ネロ・カオスも防御に徹してしまう。

先ほどから見ているに、体躯の大きさの割には肉弾戦は、不得意な印象を持つ。

 

「――――調子に乗るな!! 小娘が!!!! 英霊のチカラを『全て借り受ける』など、あり得ぬ!! 道理に沿わぬ!! そこまで人理の脈動が我らを圧迫するのか!?」

 

雄叫びの限りで叫ぶも、明らかに存在情報に欠損が見えつつあるネロ・カオスの焦り。

本来ならば、こちらが絶望するぐらいの『実力』はあったはずなのだが、この場における―――世界の主役は『英霊側』であることが、やはり『退気』(マイナス)となって……。

 

(倒しきれないのか? ここまで万全を期しても、影法師を倒すには、足りないのか!?)

 

 

宝具の圧を受けても立ち上がり、混沌より復活を果たすネロ・カオスに焦りを覚える。

 

まるで出来の悪いホラー映画のような『不死性の演出』に吐き気を覚える。

 

歯ぎしりをして、右腕をフルドライブ、左腕をフルドライブ―――。

刹那の秘奥中の秘奥。―――『無限の■■』を転か……

 

『焦るな刹那(坊や)、分かっていたはずだ。この死徒は『生物』としての『吸血鬼』じゃない。『第一の亡霊』と同じく、存在濃度によって発生しているものだ。

確かに犠牲が出ているのは紛れもない事実、それを抑えるために尽力したい気持ちは分かる―――。

だが、君がここで全てを擲てば、『揺り戻し』が効かなくなる―――。堪えろ! 『時』は来る! 今は、なるたけ削れ!!!』

 

いきなり刹那に響く緊急通信。幼い頃から魔法のステッキとして、最初の使い魔としてある『人工精霊』であり、英霊のパーソナリティは、刹那を強く戒めた。

 

その声が聞こえたわけではないだろうが、胸の前に手をやり、大きなものを包むようなポーズをした刹那を見て―――。

 

誰もが止まっていた。ネロ・カオスに至っては、明らかに大きく『後退』をしていた。その事実に今さら気付かされたように、足元を見て―――。

 

「―――――――!!!!」

 

雄叫び。凄絶なまでの絶叫の雄叫びの後には―――逃げ去っていった……。

 

脇には、ロジウラをしっかりと抱えた状態でのことが、『力関係』を示していた。

 

そして足元の『ロケットブースター』なんて機構が発動したのを見て―――。

 

―――空を駆ける様子に頭を抱える……。

 

 

「どんな死徒だよ……」

 

決して油断できる相手ではない。刹那には見えていた混沌の中で『咀嚼』された人間の残念は、その食事の凄惨さを物語っていたのだが……。

 

どうにも調子が狂う……。カウンターを絶妙に外されているとでも言えばいいのか、そんな感じである。

 

『マスター、雷霆魔術を放っていた死徒が逃げました。何というか、本当に恐怖を覚えた様子で、『冗談ではない!! アレは『逆光運河』ではないか!』とか言ってから脱兎のごとく去りました……追いますか?』

 

「いや、いい。戻ってきて……」

 

本当に疲れた。完全に自分のせいで―――好機ではないが、それでも死徒を逃してしまったのは事実なので……。

 

 

「達也、俺を一発殴れ」

「理由は察せられるが、文弥と亜夜子―――叔父貴と部下達を殺さずに済ましてもらったんだ。俺には、不義理出来ない」

「んじゃシオン」

「私も計算上、それは不合理と判断します。それとラニを守ってくれたので、感謝はあれど、怨みは無いのですよ」

「……レッドは?」

「同じようなもんだ。『ここ』では決着は着けられない。そう考えれば、あの時点で切り上げたのは決して不合理ではないだろう? アタシも全力の振り抜きなんてしたらば、公園だけでなくて更地の面積が、あちこちのビルにも及ぶ」

 

レッドの踏み込んだ結論に髪を乱雑に掻いてしまう。優雅とは程遠い仕草は、自重できない。

 

縺れて縺れる……現在の状況はとにかく焦燥感ばかりが募る。

 

だが、それでも自棄になれば、先程のごとく危険を察した獣のように逃げられる。

 

(教訓にせねば、な……そして、奴らの『協力者』の姿も見えた)

 

方術・道術使いの『死徒』。灰と塵に還った身体でも衣類と―――『呪具』は残っており、来歴を『はっきり』と示していた。

 

(地下に潜った大亜の連中、真祖の血袋よろしく『進んで下僕』になりさがるか)

 

僵尸(キョンシー)にでもなりゃいいのに、と愚痴ながら、刹那は拳を握りしめて心中で宣言する。

 

絶対に、不老不死の御業(永遠の灰色)を否定してやるのだと―――。

 

 

 

―――よもや、ここまで縺れるとはな。魔宝使いでも難儀する相手か?―――

 

 

―――左様、そも『魔』と『魔』を食い合わせれば、それだけでは『決着』は遠い。『夜魔のモノ』は、純度が強いのだ―――

 

―――『両儀』『巫条』『浅神』……『七夜』、この四つの『韻』を用いて本来ならば、我らは『退魔』を成し得たはずなのだ―――

 

―――今さら愚痴た所でどうにもなるまい……。しかし、何故だ? 北米で発生した『タタリ』が日本に呼び寄せられた理由とは何だ?―――

 

 

―――いずれにせよ。このままでは江戸東京が、穢土凍京になり得る。『力』は欲す、だが怪異はいらぬ。この世界に摂理を乱す化物(ケモノ)はいらんのだ―――

 

 

締めくくりのように大きな声で宣言をした老人。されど、その声には『剛』とした『圧』を感じる。そして、老人は―――。

 

「遠坂が現代魔法師に協力する以上、状況は変わらぬ。『乱数』を入れる。『賽の目』を増やすのだ。

頼めるかな 竜の長よ?」

 

「東道閣下の御意向とあらば、このリズリーリエ、喜んで大聖事として拝命いたしましょう」

 

天使と悪魔が同居する『聖杯の娘』が纏う、赤い『聖骸布』のコートが翻る……。

 

そのコートの赤が、東京の地図に重なり不吉を予感させたが、老人たちは黙っておく……。

 

例えどれだけの日本国民に犠牲が出たとしても、国土と国体の護持こそが、彼らの第一義なのだから……。

 

たとえその血溜まりに自分たちが入っていたとしても、彼らは、それを『良し』とする怪物なのだから―――。

 

 





Q,仮に教授がFate世界にて積極的に活動していれば、どうなるか?

A.多分、抑止力で死んじゃうもしくは滅びが早まる可能性大かな(推測)

まぁそもそも教授に対してロアがアドバイスできるかどうかも不明ですからね。

何代目かのロア辺りでは『この世界じゃ、長く持たない』とか言っていそうかなーぐらいに考えています。

死徒に対して英霊がどれだけの優位を保てるか、嘘つきのこの『ネロには対軍・城宝具ならばイケる』というのも、今では眉唾(疑心暗鬼)な感じもしますからね。

そんなこんなで、何かあれば一筆、感想欄にお願いします。

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