魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~   作:無淵玄白

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第248話『バレンタインパニックⅠ』

 

 

「……しばらく見ない間にすごい女所帯になったわね……」

「色々ありましたから」

「サムシングありましたので」

 

女子寮『衛宮荘』などと、口さがないものから呼ばれていた頃の実家を思い起こさせる姦しさではあろう。そんな風に刹那は考えてしまう。

 

とはいえ、やってきた女性は、初めてリーナと刹那の家にやってきたのだ、色々と各所から聞いてはいたのだろう。藤林響子の訪問の目的は如何様なものかと、刹那とリーナの座るソファーの後ろにヤクザの用心棒よろしく立っているサーヴァント達。

 

抜け目なく響子の一挙手一投足を見ているそれが、緊張感を齎す。

 

「ヤクザの事務所に案内された気分だわ……」

 

「みんなスティだ」

 

その言葉で座布団に座り、用意されていた煎餅を四人一斉に齧る音が実にシュール。というかリーナも真似して正座せんでもいい。

 

「んで、なにか御用なんですか響子さん? 多分、ここに来る前か後には司波邸に赴く用なんでしょうけど」

 

「達也君の方には外交上のアレコレ。まぁ特に報告することも無かったから、義理チョコ渡しが主だった気もするけど」

 

USNA側から暴露されたマイクロ・ブラックホール実験、それによって出現した異次元存在『プロトデビルン』が、現在の日本を騒がせている事態だとする―――公式発表。

 

プロトデビルンは多くの人間を渡り歩く寄生生命体のようであり、パラサイト・デビルとも言われている云々。

 

ソレに対してコメンテーターは『うんうん』唸る。こんな荒唐無稽な話を丸っと信じられるわけがないとして、専門家である『七草 孝次郎』氏の解説を取り敢えず無視して、魔法師は厄介であるというイデオロギー論に持っていく番組を見ながら、どうなんだろうとは想う。

 

 

「……騒動は段々と隠しきれなくなってきてるわね」

 

「別に俺が望んだわけじゃないんですけど」

 

「それを望まない『老人』たちが嘴を差し出してきた……。次に大きな『変化』があれば、たちまち現在の魔法師勢力に歪みが生じる―――」

 

言葉の意味するところを分からないほど、刹那も無垢ではない。しかし、己の描いた『絵図』の通りにいかないからと、こちらの『作業』に茶々を入れるのはどうかと想う。

 

「とはいえ、少々長引いているのは事実か……」

「マァ勢い込んで出たわりには、結果が出ないものね……」

 

夫婦2人してため息。前回とて『もう少し』だったのだ。それなのに、いきなり『無限回復』『無限物量』というチートな死徒を出された上に―――カレー眼鏡の出現。

 

悩ましい限りだ。叩いたチカラで響く音が変わる鐘楼のようだ。

 

だとしたらば、刹那が動くことは逆効果なのでは……。

 

悩ましい考えを見透かしたように、リーナが刹那の頭を抱えて、抱き寄せてきた。

 

柔らかな感触に、癒やされながらも―――。

 

「もう少し場所と状況を考えて……」

「ムリー♪ そういう陰々滅々(インインメツメツ)としたセツナの考えを消して、戦いに赴かせるのがワタシの役目――♪」

 

それはどうかと想うも、顔が見えないものの響子の引き攣った様子を幻視しつつ、返答する。

 

 

「烈のジイさんや、その『上』に言っておいてください。あえて『選択肢』を狭めたいならば、そちらの召集にも応じる。と」

 

「……分かったわ。本当、アナタほど食えない人間はいないわね」

 

「ロクでなしばかりに囲まれて生きてきたもんで」

 

「リーナの胸に顔をうずめながら皮肉を言われてもねぇ。とりあえず少し早いバレンタイン。義理チョコだけど置いておくから」

 

―――毒が入っているのだろうか?―――

 

―――サゲ○ンのオーラが込められているのか?―――

 

刹那とリーナが、真剣な顔で、失礼千万なことを考えているのを察した響子は、額を抑えながら『アンタ達も不幸になれー!!(泣)』で家から出ていくのだった。

 

 

「ちょっといぢめすぎたかな?」

 

「というかキョーコが、さも親戚の家に様子見に来たと見せかけて、『コレ』だもの」

 

リーナが呆れるように『コレ』と言った後には、『監視用の霊体』が、サーヴァント達によって粉微塵にされた。

 

痛みなどのバックフィードがあったかもしれないが、まぁそれぐらいは勘弁願いたいものだ。

 

 

「―――封印礼装『アクトレスアゲイン』……ほんとうの意味での詳細を聞くのを忘れていたな」

 

「可能性の世界を再現する―――ってことじゃないの?」

 

「シオンの説明も結構漠然としたものなんだよな。確かに『タタリ』=『ワラキアの夜』=『ズェピア・エルトナム・オベローン』という死徒の残滓が、あらゆる可能性を再現する。呼び出されたものが、舞台に上がり全てを完遂するまでは、演目が完了しない―――」

 

本来の『タタリ』とは違うなどと言われても、刹那もダ・ヴィンチも『観測』しただけで、『タタリ』なる死徒と対面したわけではないのだ。

 

何も知らないのと変わらない。限定されたコミュニティで流れる『不安や恐怖』を再現するとか言いながらも、残念ながら成功例がある意味『アルトリア』だけなことが、どうしても妙ちきりんな想いを抱かせる。

 

それだけ情報の拡散が『上手くない』ということでもあるのだろうが、何かがおかしいのだ。

 

 

「……もう一度、バランス辺りに聞いてみるか。何がどうなって、ああいった実験を行ったのかをな」

 

 

とはいえ、ある意味では感謝しなければならない。結局、そのお陰で『家族』が増えたのだから―――。

 

(ただし、こんな大食らいの家族が3人も増えるのは予想外だったかも)

 

「セツナ、茶請けが欲しいです。ズバリ言えばお煎餅が」

 

ズバリ言い過ぎなぐらいに空となった皿を見せてくるオルタに、すぐさま歌舞伎揚げをチャージ。

 

三人が歌舞伎揚げを手にして『ボリボリ』と食らう様子に、少しだけほっこりする。中々の大食漢ぶりで何よりである―――。

 

だが。

 

「オヤジと違って、魔力供給は滞りないはずなんだけどなぁ」

 

「魔力だけでも確かに空腹は抑えられる。だが……俗世の食を知ってしまった以上、どうしようもないのだ。申し訳ないマスター」

 

メイドオルタ、オルタリアよりも年上のラントリアはそんな風に言ってくるが、気にはしない。

 

「まぁ昔のブリテンの食は、どんなものか知っているからな。そこに目くじらを立てることはしないさ」

 

「だが、セツナ、我らの食事と違い、奴ら(死徒)の食事は多くの災禍を齎す。早急に対処しないとマズイぞ」

 

「分かっちゃいるんだが、どうにも―――状況がそれを許さない。どこかに引き込めればいいんだがな」

 

結局、この東京という場所は、かなり魔法戦闘がやり辛いところなのだ。一般人に被害を齎さないようにとなると、その戦闘も規模を縮小せねばならなくなる―――。

 

結果的に力は弱め弱め…となることで相手への敗走を許してしまう。そういう理屈は、彼女自身が良くわかっているだろう。エクスカリバーの振り抜きを相手に真正面からとなれば、諸共に高層ビル群が吹き飛ぶ。

 

卑王ヴォーティガーンを倒すために城塞都市に攻め込んだ彼女と言えども、最初っからエクスカリバーを使ったわけではないのだ。

 

 

「君に相応しい戦場を作るのもマスターとしての役目、か」

「その通りだ。頼んだぞ」

 

歌舞伎揚げを噛み砕く竜の姫の不敵な笑みに応える。色々とあったが『策』はあるのだ。

 

『そこ』でならば、この都内でも思う存分に『超常』の戦いを行えると―――。

 

手元にある『カード』を利用して戦域を作り上げる。

―――それだけなのだ。

 

「さて―――話も一段落したことだ。セツナ、特訓をするぞ」

 

「え゛」

 

「数日前の戦いで分かったことだが、お前は戦闘に慣れはしている。私たちのように人間以上の存在との戦いも相当のものだが―――少々弛んでいる。

もう少しいい援護をしてくれなければ、倒せる敵も倒せん」

 

剣のアルトリア(黒)のとてつもない提案。それに簡単に乗るわけにはいかない。

半人前のオヤジ―――衛宮士郎は、甘っちょろい考えで、セイバー…アルトリア・ペンドラゴンを前に出して、後ろにいることを良しとすることが出来なかった。だから、実家(衛宮邸)に併設されている道場にて、何度も竹刀を用いての剣の特訓を受けていた。

 

だが刹那は違う。少なくとも執行者として恐るべき外法魔導と対峙してきた経験値は、いまだに衰えているものではないはずなのだ。

そういう自負をするも、サーヴァントたちは首を縦には振らない。

 

「確かにそれは分かる。だが、誇りも過ぎれば驕りとなる。この世界のメイガス達と比べて満足しているようでは、鍛え上げた名剣も錆びる一方だ。

それは、マスターが良く分かっていることではないか?」

 

図星―――という訳ではないが、確かに『そういう所』はあったかもしれない。

異常戦闘能力者との戦いの多くで前に出てきた刹那だが、あの頃の自分―――横浜マジックウォーズでの戦いの後に、達也と深雪に見せた記憶映像。

 

それとの差異は理解していた……。

 

 

(俺は―――弱い―――)

 

 

『執行者』、『猟犬』としての『遠坂刹那』は確かに『鈍くなっていた』。

 

「ゆえに我らブリテンの騎士王がアナタを鍛え直す」

 

頼もしい一言を発するオルタリア。

 

「セツナ、大丈夫です。エクターから教えられた武技でアナタを鍛え直した後に―――」

 

安心させる年上スマイルなラントリアに安堵をした上で―――。

 

 

 

「我らアルトリア・オルタズ(一名未加入)が、疲れ切った御主人様を快楽の坩堝に落とすぐらいの夜伽をしてやろう。心配するな。殿方の喜ばせ方は、ちゃんと知っている」

 

 

……色んな意味で命の危険を感じるメイドオルタの言葉に、戦慄を覚える。

 

ふんぞり返ってドヤ顔をする黒騎士王たちに、マズイ思いを抱く。

 

「何一つ安心できない」

「照れるな。リーナでは出来ないようなことも存分にしてやろう」

 

言う度に、リーナの不機嫌は上がっていく。というかこんな風なのが、騎士王アルトリアなのだろうか?

 

「と、冗談はそれぐらいにしといて―――」

「騎士王も冗談を言うんだな……」

「私達は反転しているからな。少々、本来の自分(わたし)の欲求とかに素直なのだ」

 

少々……これで? リーナの不機嫌マックスを宥めつつ、まぁ訓練するのはいいだろうと思えた所に……。

 

「―――こちら遠坂邸、御主人様はご在宅だが、今から夜の交合があるので、明日に来てもらいたい」

 

現代の知識が付与されているからなのか、メイドオルタはインターホンに軽快に出て、そう応えた様子に玄関にいる相手は喚き立てている様子だ。

慌てて、メイドオルタから受話器を引ったくると、相手はエリカとエリカブラザーズ(寿和&修次)であった。

 

曰く―――他流試合をしにきたとのこと。随分と急な訪問だが、予想していなかったわけではない。

 

「どうする?」

 

「構わんさ。マスターのついでだ。軽く揉んでやる」

 

「お手柔らかに頼むよ。俺はオヤジと違って、そこまで身体をいじめる趣味はないんだ」

 

あの人のように『鞘』が埋め込まれているわけではないのだから―――。

無理無茶も程度を考えなければならないのだ。

 

 

浮かれ気分のバレンタインデー。あちこちでピンク色の魔力が飛び交っている様子を幻視しながら、甘ったるい空気に嗚咽を覚えそうになる。

 

「アメリカのバレンタインでは、男が女にランジェリーを送ることもあるそうだけど……刹那くんは、そういうことやった?」

 

「普通に日本の風習に則りましたよ。リーナは不満げな顔でしたけど」

 

食堂にて今日の『戦果』を苦い心地で見ながら、『お返し』をどうしたものかと想う。

 

「卒業式のフェアウェルパーティー……略称『追い出しコンパ』での豪勢な料理で勘弁願うしかないな」

 

「あーちゃん言っていたわよ。フェアウェルパーティーを別々の会場でやらせたくないのに、妙案が無いとか頭を唸らせていたのに」

 

「2科生に親しい友人がいない七草先輩からすれば、そっちの方がいいのでは?」

 

「話の腰を折らない。……ともかく『一言』で解決しちゃうだなんて……」

 

そんな話をするためだけに、カフェに呼び出したんかい。そう言いたくなる七草先輩の言動に、あのことかと想う。

 

延々と他の生徒会が唸る様子に、刹那が出した提案とは―――。

 

『―――別々の会場に、『給仕』とその後の『授与』するの『メンドクサイ』んで、一箇所で同時にやってください』

 

調理主任及びエルメロイ講師(末弟子)の呆気ない一言は、『コロンブスの卵』であった。

その後には、保健所の衛生管理スタッフの手配から諸々が決まっていく。結局、そこでまごついていることが刹那には『アホ』に思えて、そうであるならば、優先すべきは『2科生』であると宣言したからだ。

 

「魔術師の感覚で言えば、『第3階位』級の人間がチラホラ出たのが2科生の方だったんですよ。

この功績に対して『祭礼儀式』を執り行わなければ、俺は先生に申し訳が立たない」

 

「長岡君に幸田さん、桐山君、高瀬さん、などなど―――現代魔法って何なのかしら……?」

 

「私が出せる答えではありません。探しものは見つかりませんから」

 

七草先輩が頬杖を突きながら出した名前は、全員エルメロイレッスン以来1科のラインに入り込んできた2科の3年生たちであり、刹那も請われるままに教えてきた人間。

ウェイバー先生が羨望の想いで自分の生徒の背中を見送ってきた気持ちも、少しだけ分かる。

 

その中の1人だった刹那は、彼の功績を―――偉業を伝えるためにも、英霊となった彼が、いつか征服王イスカンダルの陣容の中に―――仏頂面の講師の姿を見るまでは―――。

 

「まぁ俺はロード・エルメロイII世の覇業を伝えるために、現代魔法に一石を投じただけです。同時に、先生がオケアノスを目指す大王の陣にいるようにしたかっただけなんで」

 

「本当に―――大風呂敷野郎とか罵ってやりたいわよ」

 

「全然、罵倒じゃない。そしてお嬢様がそんな言葉使うもんじゃないですよ」

 

とはいえ刹那の母親もお嬢様だったが、アレな人でもあったので、とんだおまいう案件でもあったのだが。

 

「で、もう行っていいすか?」

 

「まぁ待ちなさい。本命は―――実を言うと―――これを渡すためだったのよ♪ 先程、巡回中の達也君には食べてもらったので、今度はグルメでスーパー料理人たる刹那くんに食べてもらいたいんだけど」

 

丁寧にラッピングされた箱を机の上に差し出してくる七草先輩。ソレに対して笑みを浮かべながら答える。

 

「この通り、多くのチョコを貰ったのに先輩を贔屓して最初にいただいたらば、何とも間尺が悪いんですけど」

 

この通りという言葉で、紙袋に収められた多くのチョコ、名前ありでのチョコレート包の全てを示したのだが、先輩は退かなかった。

 

「たまには私を贔屓しなさいよ! 何かといえば、私をやり込めて、いじめて―――うぉおお! なんだこの後輩!! ファーストコンタクトはワーストコンタクトすぎたことを思い出すわよ!!」

 

重症だな。と、紅茶を口に含んで、頭を抱えて嘆く七草真由美を見ておく刹那。

受験のストレスもあるのかもしれないが……。

 

と、思いつつ、差し出された『宝石チョコレート』の数々、箱の中、フィルムシートの上に丁寧に収められたそれを見るに、随分と手の混んだ『擬装』を施したものだと想う。

 

「さっ―――食べてみて♪」

 

あくまの笑みを浮かべて促す七草真由美に対して、刹那は―――。

 

「あっ、結構イケますね。ジュエルチョコって、俺にとって愛すべき宝石を食べるという背徳感がたまらないんですよ。センスありますねー先輩♪」

 

―――何の苦もなく嚥下していくのだった。もっとも宝石に似せているだけに、本当に背徳感を感じていたのだが。

 

「―――え゛……お、美味しいの?」

 

「ええ。何で作った本人が、そこまで驚いているんですか?」

 

眼を見開いて、ありえないものを見たような様子の先輩に『素知らぬ顔』で問う刹那。そんな刹那とは対称的に、狐につままれたような気分になる真由美。

 

どういうことなのか? まさか真由美の『計略』に気付いた双子が、気を利かせて真由美の作るものを教えていたのか。それともすり替えていたのか?

 

様々な疑惑を覚えつつも、真由美は『一つ』と言ってから、ケースからルビーチョコをいただく。

 

手に取り、これは自分が作ったチョコレートだと確信する

 

眩暈がしそうなカカオともコーヒーともつかぬ臭いが、先程の妹に対する失礼な妄想を許さなかった。

 

だが、何事もないように食べる刹那の様子に『好奇心は猫をも殺す』となった真由美は、口に含み、噛み砕いた瞬間―――舌の上に広がる苦味に戦慄を覚える。

 

これが人が作りしものなのか!? 明らかに人が許容できる苦味を超えている!(自業自得)

 

『この世全ての苦味』と称するに相応しいものであった。カカオ95%にエスプレッソパウダーを加えたことで、フルパワー100%中100%の苦味を真由美に与えていたのだ。

 

「ネタバラシしますが、俺ってば、悪くなった食材……傷んだものを食えるようにする『スパイス・マジック』とでも言うべきものを修めていましてね。まぁ苦味を甘味に『孵る』程度は簡単なわけですよ」

 

「お、おのれ、 (はか)ったな! 遠坂刹那!!」

 

「最初にヒトを(たばか)ったのは先輩の方じゃないですか。まぁ宝石チョコの造形に免じて、少しだけ苦味は抑えておきましたけど」

 

真由美としては、何の力の発露も無いようにしか見えなかった。気楽に手にチョコを取って口に放り込む様子しかなかったのだから、色々と相手が悪いとしか思えなかった。

 

(思い出したけど、刹那くんの両腕の魔術刻印は、様々な魔術を一工程で発動させられるんだったわ……両袖の腕は輝いているんでしょうね!!!)

 

内心でのみ憤慨を果たしてから、リンゴジュースを即座に配膳機から選択して飲み干す真由美に構わず、刹那は嚥下をすべて終えて手を叩く。

 

「ごちそうさまでした。まぁお返しは、追い出しコンパを期待しておいてくださいよ」

 

「そりゃどうもお粗末さまでした……全く、達也君は表情筋の変化もなく口に放るわ。アナタは見えない所でズルイことをして―――……2人に関わったことで、何か私は色々とやられっぱなしで、どうしようもないわよ……」

 

やり返すには『年季』が足りない。そう言ってやるのは、簡単だが―――はっきり言えば、そういうのが合わない性分なのだろう。要は謀略家になりきれない。

 

多分、父親に似ているのだ。そう言えば憤慨するだろうから言わないでおくのだが……。

 

そんな風に、そろそろ退席しようと思い、疲れ切って机に突っ伏した真由美に声を掛けたところに―――。

 

 

盛大なまでの爆音が響く。

 

 

「な、なにごと―――!? 刹那くんが、またなにかしたの!?」

「俺はここにいますけどね」

 

とんだ悪評であると抗議してから、騒動の原因のもとに早駆けのルーンで赴くのだった。

 

そこはロボ研の部室の辺りであると―――辛うじて分かる爆心地の辺りにて、刹那の家には無いが、それなりに裕福な家にはあるホームヘルパータイプのロボット……俗にメイドロボ『ピクシー』が、姿勢良く待機状態にあった。

 

だが―――。

 

「何がどうなってこうなったんだ……達也?」

 

「さぁな―――とはいえ、大丈夫か?ほのか―――」

 

「は、はい。それよりもアレは―――」

 

察するにあのメイドロボが、この惨状を生み出したようだ。

 

幸い(?)にも人的被害は、『すす』で汚れた達也と光井のみであり、だがメイドロボは―――。

 

『ピピピ 殲滅スル ――― ソノ武器ヲ捨テロ』

 

明らかに殺意あふれる言葉で、誰かをターゲッティングして―――緊張に晒される刹那たちに対して――――。

 

 

 

 

エプロンドレスの『スカート』をたくし上げる。

 

 

ぎょっ、とする行動の後には、スカートの下からミサイル(ドクロマーク入り)を発射してくる様は―――。

 

 

「南米に住んでいる殺人メイド(革命ゲリラ)か!?」

「喜んでいる場合か―――!!!」

 

刹那が達也にツッコんだ後には、再びの大きな爆発が一高の校舎を揺るがすのだった。

 

 

 

 

 

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