魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~   作:無淵玄白

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第250話『バレンタインパニックⅢ』

……騒動の全てが終わり、何とか『修復したロボ研の部室』にて、とりあえず落ち着いたらしきメイドロボ(非武装状態)から事情聴取をするのは、五十里先輩が色々と期待をするエンジニアである達也に任せることとなった。

 

達也としては、刹那を利用したかったのだが、ともあれ被害者である達也の事情聴取に、メイドロボは、特に口ごもることもなく返答をしていく。

 

その返答は色々と問題ありすぎたのだが……。

 

『アナタの従僕(サーヴァント)になりたい―――』

 

『英霊のように超絶な力を持っていれば、アナタの隣にいられるのに』

 

『多くの『念』を『あの時』に受けたワタシは―――その心に従って、群体の中から動き出したのです―――』

 

あの時、というのはアルトリアが一高に現れた日だろう。その際に、飛行デバイスで颯爽と『兄妹』二人で騒動の元に駆けつける様子は羨望をもたらし、少しの仲間外れ感を一人の少女に与えていたのだ。

 

「……つまり、タタリ・パラサイトが顕現を果たして、英霊アルトリアになったのとは別口で、お前は無機物に憑依したのか……」

 

問答全てを達也の横で聞きながら、刹那はカードを宙に並べて星を見ておく。

 

どういう意味があるかは達也には分からないだろうが、まぁ『光井ほのかの強い想いを受けてメイドロボに取り憑きました』なんて公開処刑を、達也と同じくマジマジと聞かなくてもいいだろう。

 

そういう『やさしみ』………。

 

だが光井は、色々言いたいのに深雪とエリカに口を塞がれて、嬲るの漢字の通りになっているのだった。

 

なんでさ。

 

とはいえ、タタリ・パラサイト・ピクシー……長いのでTPピクシーとでも、内心でのみ名付けてから、彼女の告白を聞いておく。

 

『私は、(司波達也)に対する彼女(光井ほのか)の特別に強い想念によって覚醒しました』

 

『私は貴方に従属します』

 

『我々は強い想念に引き寄せられ、その想念を核として「自我」を形成します。その後の目的は種々で違います』

 

『貴方に尽くしたい』

 

『貴方の役に立ちたい』

 

……次から次へと出てくる出てくる、光井の深層心理にあった『願い』を吐いてくるTPピクシー。

 

ある種の公開処刑は続いていく。その一方で、達也も掻き出せる情報を掻き出そうと、質問は明朗かつ闊達―――だが、正直無駄な部分もあるような気がする。

 

ともあれ、その矢継ぎ早の質問が光井を動揺させていたとしても、お構いなしなのはどうかと想う。

 

とはいえ、思いっきり竹箒でぶっ叩かれただけに、危険性を出来るだけ除きたいのかもしれない。所詮は希望的観測でしかないのだが。

 

「だが、それならば俺やほのかを攻撃した理由が分からないんだが……」

 

『オリジナルの『光井ほのか』と『いちゃつく』貴方を『見て』から、私の中に『名状しがたき感情』が生まれました―――これは一種の『嫉妬』というものなのでしょう。ドクター・千秋とアルケミスト・シオン―――アーティスト・レオナルドの開発した―――対『魔人司波達也兵装』を用いて―――襲撃を仕掛けました』

 

なんて無軌道な若者的発言。むしゃくしゃしたからやってしまった。後悔はしていない。

 

そんな所か。だが達也としては、ビームだのレーザーだの、ホーミングビットには興味津々。しかも動力源もかなりの小型で高出力。

 

しかし、いま優先すべきはタタリ・パラサイトとしての彼女(?)の在り方だ。問答は続く。

 

「お前『たち』は―――何を為したいと思っているんだ? その目的がいまいち俺たちには見えてこない」

 

ダ・ヴィンチの推理と観測だけでは証拠不十分とした達也の言葉を受けて、TPピクシーは言葉を紡ぐ。

 

『それには、まずタタリ―――ズェピア・エルトナム・オベローンの自動蘇生式が、何故あるのかを説明しなければならない』

 

野次馬やら様々な人間が、少しだけざわつく。エルトナムという名字が出たが、シオンは変わらずだ。ここで無闇に動揺しても意味はない。むしろ疑念を抱かせる。

 

そういう合理的な考えであると察した。

 

『魔術師上がりの死徒ズェピアが、祖の十三位を受け継ぐ際に、第九位『アルトルージュ・ブリュンスタッド』との間に交わした『契約』に端を発する―――』

 

思わぬ人物の登場に、刹那がやっているカードの捌きに乱れが生じるも、話は続く。

 

『死徒二十七祖第九位『死徒の姫君』『血と契約の支配者』アルトルージュ・ブリュンスタッドとの『契約』の内容は、『千年後の朱い月の時まで現象として存在し続ける』というもの―――元々のタタリの駆動式を補強する形で、ズェピアは限定的な『不老不死』へと到達したのです』

 

周囲の人間は意味不明な単語や人物名の連続で混乱しきりだが、TPピクシーの言葉を遮ろうとは想っていないようだ。それ自体には感謝をしておく。

 

「―――………………」

 

口の中が乾ききったのか、唇を開くことが叶わないでいる達也。深雪も素気なく語られた衝撃の事実に、ほのかを抑えることを忘れた。2人の様子の変化に関しては流石に目聡い連中は気付くが、話の腰は折られぬまま、語りは続いた。

 

『ズェピアでありタタリという現象の目的は、『第六法』へと挑むこと。その為に、かつて第十位が滅び、番外位が滅んだ土地―――極東の一都市『三咲市 三咲町』にてタタリを展開……その土地の最強の存在である『真祖の姫君』『白の満月姫』

 

―――アルクェイド・ブリュンスタッド。

 

彼女の身体を構築することで―――再度、『魔法』へと挑もうとした』

 

「―――失敗したのか……?」

 

深雪が気を利かせて、ウォーターサーバーから出した飲料水を口にした達也が短い質問を発する。

 

『はい。真祖の姫が持つ超抜能力、『空想具現化』(マーブルファンタズム)によって『千年後の朱い月』を無理やり呼び出し、その契約内容を強制的に終結させて、タタリは―――『一応』の終結を見せました』

 

一応。

 

その言葉通りならば、まだ続ける余地はあったということか。

 

こちらの疑念を理解したのか、TPピクシーは補足をする。

 

『しかし、完全に滅んだわけではありません。最初の死徒ズェピアが死んだ際に、タタリとなった霊子が膨大すぎたのです。その後もタタリの残滓が、様々な現象を齎していきました―――』

 

「……今のお前たちの目的は何なんだ?」

 

『タタリは他者に依存しなければ(いき)ることが出来ない存在です。それゆえに、簡単に(いきかた)が決まってしまえば『吸血鬼』としての行為(ゆえつ)を行えない。特にここまで『人理』が発展してしまった世界では、如何に魔的な存在から情報を吸い出したとしても、その在り方は決められてしまう―――吸血鬼タタリにはならないのです』

 

先程からチョココロネを食べているアルトリアズに、最後の方で目線を向けたTPピクシー。

 

『それゆえに、今までこの世界のソーサラス・アデプトである魔法師の脳髄から情報を抜き取り、仮宿とすることで存在してきましたが、現在の状態は―――良くも悪くも『自律的』に動き出しそうなのです』

 

「具体的には?」

 

『最強の『素体』を自律的・自発的に構築する。そしてその霊子を利用できるだけの『高位の術者』がいれば、霊子を思い描く形にも出来ます―――』

 

「……ある意味、刹那が英雄アルトリアの様々な姿が顕現するまで待っていれば、それはそれで事態は収まったか……?」

 

霊子全てを消費するチャンスであったのが、数日前のアルトリア・パニックであったのか、と気づく達也だが……。

 

「千載一遇の好機を逃して申し訳ないね」

 

術者である刹那は不機嫌を隠そうともしないのだ。

 

言葉だけでは謝意を伝えながらも、強い口調で言われたことで、かなりの『失言』であると気づいた達也が軽く手を挙げる。

 

「……それじゃ―――『君』は、ほのかの想念、俺を守りたいという想いだけで、ピクシーに取り憑いたのか?」

 

本当に『それ』だけで? という疑念は達也から拭いきれるものではなかったのだろう。再度の確認、羞恥心から顔を真赤にして、いたたまれなくなったのか、明後日の方向を向いている光井に構わず、達也は疑問をぶつけるのだった。

 

それに対して、TPピクシーは、少しだけ姿に『ブレ』を生じさせながらも、ハッキリと応える。

 

『私の意識の過去……かつてドクターアンバーこと巫浄(ふじょう)琥珀(こはく)が、自身の双子の妹 巫浄(ふじょう)翡翠(ひすい)を模して作り上げたガイノイド―――名を『メカヒスイ』と言います。それも一つの発端です』

 

「メカヒスイか………俺は『君』―――『貴方』が想っていた『遠野志貴』とは違うんだが」

 

『ですが、それでも『光井ほのか』(マインダー)の想いが私をタタリの中から覚醒をさせて―――アナタへの守護の意識へと向かわせた。それだけは紛れもない事実です』

 

あくまでも『この気持ち…まさしく愛だッ!』という立場を貫くTPピクシーに対して、達也も若干ながらたじろいでいる。

 

「……刹那、どうすりゃいいと想う?」

「光井的に言えば、自分が達也のサーヴァント(使い魔)になりたいと想った結果だろうが、何とも妙ちきりんな話になったもんだ」

 

頭を抑えてヘルプを求めた達也に対して、カードを選び終わった刹那はそんな感想をもらしながら、カードの角を人差し指で球のように回していた。

 

そして面白がるように口を開く。

 

「―――使い魔としての隠形は難しいだろうが、ある種の契約を結んでおけばいいんじゃないだろうか?」

 

「つまり?」

 

「使い魔契約をしろということだ」

 

その結論を出してほしくなかったらしき達也の、心底の苦い顔を見る。

 

「仮にも吸血鬼の分け身、俺の魔力量と格で自分より高位の存在を従えられるかよ。お前だって4騎ものサーヴァントを運用してキツイんだろ?」

 

「そうでもないな。使い魔との契約ってのは、術者が必ずしも相手より『上』であるという条件でなくてもいいんだ。使い魔が『欲するもの』や、主が『大切にしているもの』を『贄』に捧げることで、上位存在の力を借り受ける。ある種の儀式魔術ってやつだからな―――」

 

言われて、達也としてもどうしたものかと想う。この場で拙速な結論は出せない。

刹那と使い魔たちとの関係だけならば、飲食に関わることだけを十全にしていればとも考えられるが、TPピクシー……前歴『メカヒスイ』なる『別世界』のメイドロボが達也に求めるものとは―――。

 

意を決して問いかける達也。ただ守りたいというだけでは、こちらとしても答えにくいと言うと―――。

 

『ドクター達の尽力で、私にエネルギー補給は多く必要とはしていません。2つの動力炉を動かす『ツインドライヴシステム』を搭載しておりますので、魔力はいりません』

 

その言動をした後にはロボ研メンバーの平河、シオン、ダ・ヴィンチ(ナマモノまでも眼鏡着用)が、ドヤ顔で眼鏡キラーン!とレンズを白く輝かせてくるのだった。

 

達也としては若干ウザいと想いながらも、魂宿るメイドロボの言葉は続く。

 

『ですが、マスターから何かを頂けるならば、やってほしいことがあります』

 

「それは?」

 

メイドロボの意外な要求に、達也は面食らいつつも問い返すと―――。

 

 

『―――SE○です―――』

 

 

……衝撃的な言葉が出た気がした。部屋の中で全員が沈黙する中、騎士王の咀嚼音だけが殊更大きく響く。

 

 

「……プリーズ、ワンス、モア」

 

頭脳明晰な達也にしては、随分と拙い英語発音が出たが、それだけ混乱をしているということなのかもしれない。

 

ともあれ受けてメイドロボは―――。

 

 

『セ○クスです。私にはそういう『機能』が着いているので、不可能ではないはずです。光井ほのかの究極的な要求とはそれであり―――何より巫浄の家系は』

 

「「大却下に決まってるでしょうが! 何、とんでもない野望持ってるんだこのメイドロボは―――!!??」」

 

深雪と光井の怒りのアブソリュート・デュオでメイドロボの言は途中で断たれたが、メイドロボとて一歩も退かない。

 

『馬鹿な! 22世紀を迎えようとしている時代ともなれば、メイドロボと人間が結ばれるなんてことは常識となっているだろう昨今で、何を怒られることがあるというのですか!?』

 

「「そんな道ならぬ恋が当然の『昨今』は到来していないんですよ!!! 」」

 

喧々囂々の言い争い。メイドロボにガチギレする美少女2人の様子に全員が何も言えない。

 

「……止めなくてイイの?」

 

「俺が何を言えるってんだか、ともあれサーヴァントクラスに収めるならば、出たカードはあるんだがな……」

 

「マッタク仲裁には使えないわネ」

 

「言わないでくれよ」

 

横に来たリーナからのジト目での言葉に頭を掻きながら、不機嫌の理由を察する。察したからこそ―――。

 

 

 

―――生身のくせに生意気な!『人間狩り』(機械伯爵)で剥製にして暖炉の上に飾ってくれる!! ―――

 

―――迷惑千万な『苦悩回路』(ロックマンX)を取り外して、アシモフサーキットをつけてくれる!!―――

 

繰り広げられる惨状に沈黙。

 

そして―――。

 

「―――逃げるか」

「理解してくれて嬉しいわ。マイダーリン♪」

 

もう俺では止められないことを察して、リーナの手を取り修羅場からの逃走を図ることにしたのだった……。

 

例え、達也が大声で『待たんかコラーーー!!!』などと、キャラに合わない叫びをあげていたとしても、それを振り切ってでも……。

 

俺たちは走り始める。長い、長い校外までの道を。

 

 

……そこに例え出待ちをする知り合いの女子がいたとしてもである。

 

 

 

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