魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~   作:無淵玄白

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最終巻、出ましたねー。

ですが、まだ読めていません。ただ聞こえてくる限りでは―――何となく賛否両論―――どちらかといえば私の周りでは否が多めな感じも。

からくりサーカス並みに風呂敷広げたから、やっぱり畳むとなると―――。

うん。佐島氏は、藤田先生のようにはなれなかったのである。


第251話『バレンタインパニックⅣ』

「ったく騒がしいものだな。魔法科高校とは」

 

「まぁまぁ神田先生。今日は『パーティー』があるのですから、そう気を立てないでおくべきでしょう」

 

言われて、『今日の予定』を思い出した神田という代議士は、にやにやと笑いながら今日のホテルでのパーティーを想像してから、『それもそうだな』と『秘書』である男を宥める。

 

「支持者の方々は、私が魔法師というものと対決する『絵』がみたいのだからな。まぁ遠坂とかいう小僧と接見出来なかったのは、残念だが……」

 

現在、都内を騒がせている吸血鬼騒ぎ。それに伴う魔法戦闘だろうものの続発は、大きく取り上げれば、支持者の受けはよろしい。

 

マスコミ―――最初は昔懐かしい『スポーツ新聞』系の、有り体に言えば下世話な大衆新聞(ゴシップ)にて、陰謀論などを書き立てればいいだけだ。

 

もちろん、神田としては魔法師と『全面対決』をすることで国の主導権を取り合う……などという思いはない。

 

要は『バランス』なのだ。

 

適度に魔法師の在り方に対してネガキャンを行い、その一方で『その程度』に収めておくことで、魔法師側に対する批判を『抑えた』という『蓋』の役目で魔法師側に恩を売る。

 

俗物根性ではあると自覚はしている。だが、政治など妥協と折衝の連続だ。

 

青臭い理想論など掲げても、絵に描いた餅では誰一人として腹はふくれんのだ。

 

「ともあれセッティングは任せた。来場者の録画録音機器のチェックは密にしておけよ。魔法師に保守的なメディアから突き上げられたくはないからな」

 

「分かりました」

 

恭しく一礼をして、議場へと向かう神田を見送る秘書は、その姿が全て見えなくなると同時に―――『一報』を入れる。

 

「閣下、『エサ』は用意出来ました。運び通りならば、今夜―――『混沌』は現れましょう」

 

『ご苦労だった。手筈通りにタイミングを謀ってこちらに合流しろ。場合によっては、『逃走』が得意なものを送ろう』

 

御意と一言を言ってから通話は途切れる。自分の本当の主である男に報告を終えると、W・P・神田という男の為に奔走するのだった。

 

その変節ぶりを見ているものがいれば、いっそ見事というほかない変わり身であることは追記しておく。

 

 

 

「逃げ出してきたはいいが……」

「校門前が完全にアナザーディメンション! 見た顔がいっぱいいるワー」

 

効果音に『ドドドドド』『ゴゴゴゴゴ』などと、新たなスタンド能力者が出てくる前触れにしか思えないものが、見えて、聞こえているかのようだ。

 

顔見知りがお互いに牽制し合うとまではいかずとも、バチバチと火花を散らす様子に、どうしたものかと想う。

 

(愛梨はともかくとして沓子と宇佐美が完全に睨み合っているかぁ……)

 

出待ちをする中に、明らかに遠方の高校の人間がいるのはどうかと想う。如何に授業終わりと同時に高速輸送システムを利用しても、この時間に校門前は有り得ない。

 

(その女意気に答えたいところだが……)

 

左腕を引っ掴むリーナを相手にしてはどうしようもない。

しかし、校門以外から出るというのは、何というかアレな気分だ。

 

悪いことをしている気分になる。いや、実際その通りではあるのだが。

 

髪型をポニーテールにして物憂げな表情をしているところに悪いが……。

 

エクレールからは逃げられそうにない……。

 

愛梨の他にも、『誰狙い』なのかは分からないが双子がやってきたり、宇佐美の様子を見に来たのか、ラ・フォンのJK―――響と千鍵がやってきたり―――。

 

(いつまでもここにいると、アイドルの出待ちみたいになるわよ!!)

 

もはや覚悟を決めて出るしかないか、もしくはパレードで変装をするか―――。

 

「よし、変装せずに、真正面から堂々と出るぞ!」

 

「マァ、なんか簡単に見破りそうだもんね―――」

 

特に日比乃ひびき(ビッキー)の眼は良すぎる。おそらくだが彼女のような存在はあちこちの世界にいる。

 

―――アーネンエルベは遍在する。どこにでもいるし、どこにでもいない―――

 

そう言える『魔法使いの匣』なのだから、その店員もまともなわけがないのである。

 

嘆息気味に出した結論。だが、ここで恐るべき提案がなされる。

 

「それならば、ポケットの中での手繋ぎプリーズ!」

 

冬のカップルの定番。恋人つなぎの一つ。10月の横浜にて衆目の中でやったせいなのか、一時期は若者のトレンドにもなったことを……。

 

(このバレンタインデーにやれというのか!?)

 

何で火に油を注ぐようなことをしちゃうのだろうか。そう想いながらも、それを「まぁいいだろう」と思ってしまうのは惚れた弱みというやつなのかもしれない。

 

そう考えていたことが甘くて―――。

 

リーナがイタズラな笑みを浮かべると、背後に回る。

 

そして―――恐るべき『列車』が、一高の校門を出るのだった。

 

 

魔法大学付属第一高校。一般的な世間様の呼び名では魔法大学付属と呼ばれる高校の校門前に、ここまで他校の美少女たちが詰めかけるなど、はっきりいって異常事態であった。

 

もちろん、制服から同じ付属でありながらも土地が違うと気付ける人間もいるのだが、そんなことは今のこの場ではなんの意味もない。

 

お互いの恋バナに話題を咲かせたり、いがみ合ったり、牽制したり、傍観したり……校門前が完全に魔境と化していたことを理解できたものは少ない。

 

「サプライズ演出で一言も連絡していなかったのは、少々拙速だったかしら……?」

 

麗しき顔を少しだけ悲しげにしながら頬に手を当てる美少女の姿に、遠間にいた男子たちは、そのため息に当てられたかのように、顔を赤くする。

 

「ううむ。レオンのやつも出てこないし、金沢からやってきた甲斐がない!!」

 

「待つこともいい女の条件。トーコちゃんみたいなお子ちゃまでは、レオは射止めきれない」

 

「ならば待とう!!」

 

宇佐美の言葉に即座に返す沓子の様子に、金沢は三高の面子は苦笑い。

 

三高とラ・フオンティーヌのJKたちが揃い踏み。しかも全員がそんじょそこらの学生モデルなど安っぽく見えるほどのものがあるのだ。

 

約一名は……バーチャルアイドルで、最近ではナマでの仕事も増えて『銀河の妖精』よろしくなのだが。

ともあれ、そんな集団の目的は大方の一高生にとってわかり易すぎた。

 

だから―――。

 

「さぁレッツ&ゴー! ワタシとセツナのミラクル☆トレインは、大江戸を走り抜けるのよ!!」

 

「待て待て待て! 何でこのカタチだー!!??」

 

「メカメイドの真摯な想い……種族の違いも超越して、『無機物』と『有機物』の間でも『愛』を発生させようという意思(エモーション)に当てられちゃいました☆」

 

 

目の前(距離としては結構離れている)を通り過ぎようとした『列車』に思わず一瞬だけ呆然としていた。

 

日本だけでなく世界の魔法師たちが注目している遠坂刹那。ある人はロード・トオサカなどと呼んでいることもある御仁の背後に回り込んでいたのは、同じく世界が注目するブルーサファイア、アンジェリーナ・シールズである。

 

そんな彼女が、背後に回り込んで何をやっていたかと言えば、刹那の真っ赤なコート(洒落たもの)の両方のポケットに腕を入れていた。

 

左右のポケットの中に収められた刹那の手を中で、ぎゅっ、と強く握りしめてきているのだ。

 

「あれは恋人繋ぎの究極系。Choo Choo TRAIN!柔らかな身体を押し付けつつ、手を強く握り合うことで最大級の愛を伝えるアルティメットフォーム!!」

 

いきなり横から声を掛けられたからか、びっくりする2人。十七夜 栞の拳を握っての力説を聞いたリーナは―――

 

「イイエ、違うわよシオリ。これは世界全土を駆け抜ける魔性と愛情の魔術列車―――魔眼蒐集列車『レールツェッペリン』よ! 」

 

言うや否や完全に、連結するように背中に密着するリーナ。

 

何かまた『大きく』なったなと感じる刹那としては―――。

 

「後部連結は無理でも先頭車両への連結は可能です!! セルナの胸板は、私のものです!!」

 

「俺の身体は俺だけのものですが!? というか金沢から来て早速これかよ!?」

 

前後から金髪の美少女に挟まれて―――ハッキリ言えば、嬉しさ100倍ではあるが、のちのあれやこれやが怖くなること間違いない状況ではある。

 

「ともあれ、まぁ久しぶり愛梨―――、正月三が日は悪かったな。1月4日はリーナの誕生日だから、流石にその日まではUSNAに居なきゃな」

 

「その際のやり取りは、スゴく不満でした! アンジェリーナにすごいイジワルされました!!」

 

あっちを立てれば、こっちが立たず。何とも言えぬ状況ではある。

 

「愛梨、刹那くんに会いに来たのは、アンジェリーナさんといがみ合うためじゃないでしょ? 久しぶり」

 

「どうも、お互い元気そうで何よりだ」

 

軽く手を上げた栞の取りなしで離れる愛梨。同時に、リーナも取り敢えず離れてくれた。

 

「何となく要件は察せられるけど、ああその前に沓子、宇佐美―――レオならばもう少しかかる。ステイだ」

 

栞を遮り、いまにも食って掛からんとする両極端な2人にストップを掛けた。

 

何とか落ち着いたところで、栞曰く―――。

 

「はい。本命に近い義理チョコ。今年は色々とお世話になったからね。感謝の気持を込めてるよ」

 

「ありがとう。大切に食べさせてもらうよ」

 

「日持ちするようにはしているけど、早めに食べてもらえると嬉しいかな。もちろん、一人で食べ切れなんて無茶振りはしないから♪」

 

やばい。いい子すぎて、ちょっとばかり心が揺れ動く。

 

とはいえ、そう来ると―――。

 

「はい。遠坂さんにも義理チョコ」

「勘違いしてはならんぞ?」

 

宇佐美と沓子のからかうような笑顔からの義理チョコ渡しに『Thank you』と返してレオはまだかよ。と想う。

そうしてから、エクレール……稲妻の異名を持つ少女は、その字とは違い、ゴロゴロならぬモジモジしていた。

 

一色愛梨という華に焦がれる男が多いというのに、自分が彼女を焦らしているという事実に申し訳無さを抱く。

 

「ご用件は、エクレール・エトワール?」

 

「もうっ!! そういう言い方―――大好きです……。そしてこれが『私の気持ち』です。受け取ってくださいセルナ!!」

 

「ありがとう愛梨。けれど―――その為だけに金沢から来たのか?」

 

「そうです!! 千鶴校長との血で血を洗う戦いに勝利した上で、午前授業の『公欠』を勝ち取り―――こうして11月以来、3ヶ月ぶりにセルナに会えました……」

 

流石は己の意思は腕力で押し通せの三高。考え方が、あまりにも力づくすぎる。

 

そして何より……。

 

「自然と胸板に身体を預けないでくれよ」

「イヤですか?」

「ソコはワタシの指定席(リザーブ)!」

 

その為だけに東京まで来たことを嬉しがるべきか、どうなのか……。

 

「とりあえず開けてみてください。七草さんも『同じチョコ』を作っていたそうですが、私のは自信作ですよ」

 

香澄と泉美が教えただろうその情報どおりに、豪奢な包みを開けて見ると、そこには宝石チョコが形よく置かれていた。

 

「おおっ、凄い造形美♪」

 

「お姉様のジュエルチョコは完全に嫌がらせでしたが、一色先輩のは全然違いますね」

 

そりゃあんな苦味の塊なんざ嫌がらせ以外の何だというのだ。

ひょいっとここぞとばかりに覗き見のごとく顔を見せてきた双子に無言で答える。そうして手を胸の前で組んでこちらを見つめる愛梨の姿に―――。

 

「いただくよ―――普通に美味しいな……」

 

「色々と試行錯誤しましたので♪」

 

恥ずかしがるように眼を伏せて、赤くなった頬に手をやる愛梨。正直、あの七草チョコの苦味は抑えて『変えて』いたとはいえ、全てが変換できていたわけではないのだ。

 

だから、純粋に舌に感じる甘味に喜色を出していたところに―――。

 

ドドドドド! と研究所のケンタロスの群れ。カロスリーグ準優勝、アローラリーグ初代チャンピオンをゲットした如き勢いで、一高側から多くの人間たちがやってきた。

 

土煙を上げてやってきたケンタロスの群れならぬ、魔法師とメイドロボの混合集団。

 

メイドロボは再びジェットスクランダーじみたもので空中を飛んで、先頭を走る達也に深雪と同じく並走している。

深雪もメイドロボに負けじと速度を上げている様子に……。

 

「エスケープは悪手だったか」

 

「いつかのグラデュエーション(卒業式)(?)ではタツヤもやっていそうなんだけどね」

 

メタな未来視をしたリーナのつぶやき。しかし、その民族大移動の中に見知った顔を見た一部が顔を輝かせるも、大方はビックリした顔をしていた。

 

「レティシア!?」

「アイリス 久しぶりですねー! そこの赤コートと青コートを逃さないように拘束しておいてくださーい!!」

 

意外な知人関係が知れたが、ともあれ逃げるは恥だが役に立つという状況でないことに諦めを着けて……。

 

「チカとビッキーがここにいるってことは、『エルベ』は休店か?」

 

「ううん。今日はジョージ店長が先に入っているからね。私達はそこまで急ぎでなくてもいいんだ」

 

普通は学生アルバイトが出勤するまでは店長が店を開いておくべきなのではないかと想うも、喫茶店と言っても半分は『道楽』と『場所の提供』程度でしかないのだから、余計なお世話だった。

 

「来るの?」

 

日比乃ひびきとの会話に入る千鍵に苦笑しながら伝える。

 

「悪い、大人数を捌かせることになるかもしれない。手が足りないならば、無給でいいんで俺も手伝うよ」

 

「そういう訳にいくかっ、まぁどうしてもってんならば、そんときは頼む」

 

気楽に背中を叩きながら眼前にチョコを持ってきた千鍵に『ありがとよ』と返す。

 

「チカちゃんのあとで何だけど私からも、チョコじゃなくてモンブランケーキなんだけどね」

 

「気配り出来る女の子ってポイント高いよな」

 

そうして、夕日の中を強烈な形相で駆けてくる一団を、やんわりとアーネンエルベに連れていけるかどうかを考えるのだった。 

 

いや、本当に。不安しかないのだ。

 

 

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