魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~   作:無淵玄白

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第257話『Fate/stay night(4)』

 ―――固有結界。

 

 自分の心の()り方で世界を塗りつぶす禁呪。禁呪と称されるだけに、エルメロイグリモアには当然載っていなかった。

 

 ここの面子で、詳細を識るものは少ない。刹那から教えられたものとて、それを完全な形で教えられるものはいない。

 

 だが、効果のほどは自分たちに見えているもので一目瞭然だった。

 

 

「死徒か! しかも人理否定世界からの稀人とは、いつでもマスター刹那の戦いは、とんでもないな!!!」

 

「シャルルー、あんまり声を上げるとバレちゃうよ」

 

「そんときは、雪崩込むように戦いの一番槍をいただくまでさ。リナルドもローランもブラダマンテもいる―――オレたちパラディン騎士団が勲をあげるときだぜアストルフォ!! 可愛い女の子(オーディエンス)も多いことだ!! カッコよく決めるぜ!! 」

 

 現・一高会頭の声に、ちょー似ている少年騎士が、明朗快活に意気を上げる。

 

 その後ろに控える多くの綺羅びやかな『魂』を持つ騎士たちも、その言葉に笑みを浮かべる。しかし……。

 

「アーちゃん! 私のヒッポくん、そろそろ返してよ!! ロジェロとタンデムしたいんだからさー!」

 

「そうしたいんだけど、いまのブラダマンテ、ランサーじゃないか。僕がセイバーとして召喚されてうさぎのメイド服を着ていれば、返したんだけどねー」

 

 悪意を感じない笑みを浮かべる『アーちゃん』こと『アストルフォ』……女にしか見えないが、伝承では『男』と伝わる騎士に対して、『貸していたゲームソフト返してよ』というノリで詰め寄るはーーーブラダマンテという世にも珍しい伝説の『女騎士』である。

 

 だが、その姿をマジマジと見ることは出来ない。

 

 そう、その女騎士は―――かなり卑猥な衣装をしていたのだ。俗にハイレグと呼ばれるキワドい衣装の上に、儀礼用の騎士衣を羽織っている―――。

 

 更に言えば金髪をロングのツインテールにしている―――恐ろしく『伝説の騎士』という名目を著しく損するものだ。

 

 だったが―――

 

 1人の少女にとってはそうではなかったようだ。

 

「ア、アナタがシャルルマーニュ伝説12勇士の1人、愛生と勇努の騎士『ブラダマンテ』ですか!?」

 

「うん? そうですよー。みなさんの安全は私達が―――……むむむ? むむむむ?―――デサンダン(子孫)?」

 

 一色愛梨が勢い込んでハイレグ騎士に問うと、問われた方は危険に巻き込まない風な言い様だったが、何かに気づいたのかフランス語で簡潔に問うた。

 

「伝えられるところによると、私の母はエステ家の末裔だったそうです!! お会いできて光栄です!! シュヴァリエ・ブラダマンテ!! シュバリエ・ロジェロ!!」

 

 興奮しきりの一色に対して、シャルルマーニュの伝説の騎士たちは、何故か感涙をしていた。

 

(((な、泣いている―――!?)))

 

 

 伝説に知られる『架空の大王』シャルルマーニュを筆頭に、パラディン騎士たちは滂沱の如き涙を流していたのだ。

 

 

「いやー、すまないね。なんせこの結界をマスターが展開すると、巻き込まれた人々の大半は、『誰ですか?』(フー・アー・ユー)とか言ってくるんだよ。オレたちの知名度は、そこまで地に沈んだのかと、ちょっとどころか悲しかったからね……」

 

「この世界でも私とロジェロの愛の結晶が家を繋いでくれていた。その事実にナミダナミダですよ!! モンジョワー!!」

 

 そんな風なパラディン騎士団と一色のやり取りは、『あちら』には見えていないようだ。

 

 先程から刹那は、吸血鬼に対して歌舞伎役者のように見栄斬りをして、はったと睨みつけている。

 

(しばらく、暫く、しばら〜〜く!! といった所か……)

 

 達也たちは舞台袖で、出番を待つ役者に対して声掛けをしているようなものか……。

 

 そんな結論を出しつつ、他の面子を見るとーーー。

 

 

『『『『ローマ!!! 我が愛しのローマ!!!!』』』』

 

 体全体で大樹を思わせるポーズ、『Yポーズ』をしている集団の姿を見る。X-LAWSならぬ『Y-ROMA』と言った所か。

 

 ローマを讃えよという賛辞。そしていつぞやの一高文化祭『季節外れの灼熱のハロウィンパーティー』で見た赤い衣装のアルトリア顔(Yポーズ)を見る。

 

 つまり―――あそこにいるのは全て『ローマ皇帝』(大シーザー)ということになる。

 

「カオスすぎるな……」

 

 現れた英霊のチカラをマスターとしての透視能力では見えずとも、達也の眼であれば、それは大まかに分かる。

 

 

 獅子の毛皮を被る半裸の女性。

 

 小太り……いや、完全に肥満体な剣士(?)。

 

 青髪に赤い目をした一番『ローマ』らしい格好の筋肉質な男。

 

 先にあげたものとは逆に、赤髪に青い目をした獣のような男。

 銀鎧の上に羽織る皇帝としてのガーブは装飾が凝っていながらも、強壮さを損なわせないものだ。

 

 その衣装と脇に差している大剣には見覚えがあった。

 

(あのサーヴァントは入学時に刹那がインストールした『剣帝』か)

 

 そして、一番見たことがある小野 遥のようなボイスの美少女剣士は、一際大きく「愛しき我がローマ!」と叫んでいるのだ。

 

 

「なんだか全体的にローマ陣営は赤いですね……」

「アレをローマ陣営と認識できるのがオレの妹か……」

「思いっきり口で言っているじゃないですか」

 

 不満顔な妹に謝罪しながらも、その軍団には更に強力なサーヴァントが招来されていく様子だ……。

 

 

「おおっ! 顕現してくださるのか!」

 

 肥満の皇帝が、ローマの中央にて黄金の粒子が集まる様子に感激をしている。

 

「どこに行っていたのですか、我らが始祖。我らが父君!!」

「雷の中に消えたと伝わるアナタを待っていた!!」

 

 ローマ皇帝たちの拍手喝采の声の後に、黄金の粒子が全て集まると、明確な姿をとった。

 人の姿だ。いや、人と言うにはあまりに常軌を逸したオーラを放っていたのだが。

 それは青い長髪を伸ばした偉丈夫であり美丈夫であった。

 

 筋肉質というか、筋肉の塊を適正に詰めた戦士の1つの究極系。

 

 その肉体を動かす上で苦にならない『黄金の羽根鎧』。武器らしきものは見えないが、その肉体だけが武器といっても過言ではない。

 

 そしてその『黄金神闘士』(ゴールドローマ)もまた―――。

 

「ロ―――――マ!!!!!」

 

 と、恒例のポーズとセリフを決めてくるのだった。

 

『『『『神祖ロムルス=クィリヌス(我らが愛しきローマ)の登場だ―――!!!』』』』

 

 ローマ陣営の盛り上がりと同様に、他の陣営も揃い踏みつつある……。

 

 ・

 ・

 ・

 ・

 

 

 

「フハハハハ!! ローマの皇帝方は中々にアットホームだな! 余もそういうのには憧れるぞ!」

 

「大王、『ヘタイロイ』揃いまして、皆―――『軍馬』に乗っております」

 

「うむ。大儀であるエウメネス」

 

 書記官の報告は、巨漢の大男―――重複した表現でなければ表現するに足りない男を満足させた。

 

 しかし、ちょっとした思いつきが発生する。それは大王ならではの稚気であり、いつまでも見果てぬ夢を抱くからこその『遊び』でもあった。

 

『ローマ軍が、あのようになるというのならば、我らも、もう少し軍団を増やそうではないか!」

 

 その言葉に黒髪ロングの書記官、エウメネスは嫌な予感を感じる。軍団を増やす。それ即ち『スカウト』ということだ。

 

「……我らはイスカンダル大王に忠誠を誓っておりますが、他の方々は……」

 

 諫言というには、少々弱いエウメネスの言葉。だが、目の前にいるのは征服王イスカンダル。その溢れるばかりの大望と、見果てぬ夢で多くのものたちを魅了してきた男なのだ。

 

 だからこそプトレマイオス、チャンドラグプタ、セレウコス、メレアグロス、ヘファイスティオンも、その遠征に着いていきたいと思えたのだ。

 

 だが、他の連中がどうであるかは、少々どころかかなりの賭けであると思えた。

 

 我が強すぎる古代ギリシャの英雄たち……。その筆頭でもあるイスカンダルだが……。

 

 そんなイスカンダルが呼び出された大地にて抱いた野望―――それは―――。

 

「古ギリシャ軍団の創設―――手始めに、あそこでペンテシレイア殿に鉄球投げつけられているアキレウスにさそいをかけよう!

 おーい!アキレウス、余と共に戦にゆこうぞ―――!! もちろんペンテシレイア女王も、ご同道せぬかー!?」

 

 無茶な説得フラグを発生させる大王に、家臣一同ハラハラ・ドキドキ!!

 

 イリアスの主人公たる人物に『遊びに行こうぜ』という体で話しかける大王なのだ。

 

 ―――しかし、王ならば! 我らが王ならば!!

 

 不可能を可能にしてくれるはず!!

 

 ……などという皆の期待を背負った大男を見ていた七草真由美は、あれこそが『小国マケドニア』から出て一大帝国を築いたアレクサンドロス大王……別名イスカンダル王とは―――と驚愕の思いに囚われていた。

 

「ウチの父さんも、あれぐらい大きな器だったら良かったのに……」

 

 もう人間としての『格』が違うのは当然だとしても、せめて人物だけでも大物として振る舞ってくれればと思うのは、娘としての過度な期待なのだろうか、とちょっとだけ途方に暮れる。

 

 途方に暮れていたところに……。

 

「とはいえ、アレが死んだ後にディアドコイ戦争などという継承戦争があったことを考えれば、襟度の広さを少しは狭めておくことを覚えてほしかったのだがな」

 

「―――つまり?」

 

 いきなりな『美女』の出現に驚いたが、これも英霊であると考えれば、受け答えは少し緊張した。短い問いかけは、緊張を出すことは弱みになると思えた……。

 

 もっとも、そんなことは現れた絶世の美女からすれば、お見通しに思えたが。

 

「お前の父親とやらとて、色々と考えているのかもしれん。自分という大黒柱が倒れることの意味をな」

 

 目尻にまで掛けて引かれた濃いめのアイシャドウ。同色系統のリップ……衣装は赤系統、へそは出ているし、肩は両側露出している。

 

 だが下品さが見えないのは、全身を締め付けるような赤色のバンドと腰に刺した短剣ゆえか……。

 

ヘテロクロミア(異彩瞳輝)……)

 

 金銀の眼をした古代ギリシャ系統だろう英霊は、背丈の差があるからか、いとも簡単に真由美に化粧を施した。

 

 

「どうにもお前は『良くないもの』を引きつけやすいというか、『不運』気質のようだ。化粧とは、女だけでなく、全ての『生命』(いのち)が生き抜くためのものだぞ―――覚えておくといい」

 

 そう笑みを零しながら言う美女はイスカンダルの陣に入り込んだ―――どうやらあのヒトも大王の臣下らしい。

 

(アレクサンドロス大王の女の臣下か……聞いたことはないけど、アーサー王が『女』の世界もある以上、そういうのもあるのか)

 

 妙な感心をしつつ、真由美としては今日のアーネンエルベで出しつつある『仮説』が『真実』に近づいていると思えた。

 

 因みに言えば、今にもアキレウスという緑髪を殺しそうだったペンテシレイアという半裸の少女を宥めたのは、彼女とケモミミの弓使いだったりする。

 

 

「うむ! これにて古代ギリシャ連合軍は作られた!!

 不肖ながらもこの、征服王イスカンダルが指揮を取らせてもらう―――だが、我ら全て一角の英雄ばかり―――余は、全員を兵士としては扱わん!! 我らは全て―――勇者なり!!!」

 

 

 自らの影に怯えて人を乗せることを拒んでいた猛馬ブケファラスという黒馬に跨りて宣言したことで、ギリシャ陣営の意気が天を衝かんばかりだ。

 

 

 そんな風な刹那の用意した『天幕』にてチカラを蓄える様子に、やはり無性に身体がうずくものたちも多い。

 

 その片方で、どういう英霊であるかを興味深くしているものもいた……。とりわけ―――

 

「グレンデル―――!! アタシたちもマスターの世界でビートを刻むわよ!! 至高のドラゴンデュオをここに結成!! ブラド小父様から決まった衣装を作ってもらっちゃったんだから♡」

 

「エリザベート、私はそこまで騒々しいのは好きじゃないんですけど、デンマーク王の居城がいつまでもうるさくて、人を食い殺していたんですから……」

 

 ポップなアイドル衣装の女の子に対して、今ではほとんど見られなくなっている『ミニスカート』のブレザー制服の女子は、見た目よりも楚々とした性格のようだ。

 

「そんなオソロの衣装も用意したというのに……アタシたちこそが欧州暗黒連合軍(ダークユニオン)の旗頭になれると想ったのに……そんなミニスカJK姿で、はっちゃけたくないだなんて―――」

 

「そ、そこまで落ち込まれると私も、色々と心が痛みますが、うううっ……! 分かりましたよー!!

 私たちの『DRAGON VOICE』を響かせて、ヒプノシスマイクも倒してみせましょう!!!」

 

「いやアレはラップバトルだから……」

 

 泣き落としに弱かったグレンデルというドラゴンJKに、今度はドラゴンアイドルが弱る番であった。

 

 とはいえ、英雄というよりも怪物じみた存在まで幕営に入れているのかと、幹比古はその竜少女たちを見ていたのだが―――。

 

 

「―――舞台(ステージ)が違いすぎたな吸血鬼。不老不死の定義で他人のありかた()に寄生する貴様は、何もかもを違えていたよ」

 

 どうやら、こちらに背中を見せている刹那の方では佳境に入っているようだ。

 

 そんな風に、幹比古が感心と驚愕で正直おしっこちびりそうな状況にて、刹那の背中を少しだけ遠くから見ている存在がいた……。

 

 

 ・

 ・

 ・

 ・

 

 居並ぶ『有象無象』の『英雄』たちの集合。自身も呼び寄せられた『一騎』―――否、『一王』ではあるが、それでも、言うべきことは言う。

 

「ふむ、雑種が徒党を組めば、ここまで凄まじいものになるか。とはいえ―――そういう『ヒト』のチカラを(オレ)も何度か見てきたからな。侮らん」

 

「いい経験だったかい?」

 

「王の従者としての『経験』を積ませたのだ。(オレ)は何一つ変わらん」

 

 王の隣に『対等』に立つ、端正な顔をした『神造の人形』の言葉に、笑みを浮かべて応える『至高の賢王』だが……。

 

 1つだけ気がかりはあった。

 

 今にも開戦の号令はかかるだろう。その場合、くだらなさ満載で言うのもはばかられるぐらいだが、『バビロニア連合軍』において戦力である2人の『女神』が、日陰の女よろしく号令者(マスター)の背中を木陰から『そっと』見ているのだった……。

 

 

「何なのだあの駄女神は、いつもの傲岸不遜さがなく、慈しみを持った真正の女神のようにしおらしくなりおって、調子が狂うぞ」

 

 忌々しく言う王に対して、苦笑気味に人形は推測を述べる。

 

「自覚が出てきたってことじゃないかな? あるいは―――『親心』―――『母心』ってやつかもね」

 

「―――『母心』」

 

 恐ろしい単語が出てきたが、それでも神がただ1人の人間に肩入れすることの『揺り戻し』は大きいのだ。

 

 ここにいる連中―――中でも『神霊適正』があるものたちで、それを分からないものなどいないはずだが……。

 

 

「まぁどうでもよいわ。あの化け物―――死徒とやらは、このどこまでも醜悪な庭(人理世界)を穢す魔物・怪異だ。手ずから―――滅殺する」

 

 黄金の石版魔導書を開いて殺意を滾らせる賢王―――。

 

 

「キミが戦うと決めたならば、僕も戦おう―――ギル」

 

「フンババ退治以来の大仕事だな。 頼りにするぞ(エルキドゥ)よ」

 

 

 トップサーヴァント『2柱』の意気が上がると同時に、号令者―――魔宝使いと縁を結んだ『セイバー』と『ランサー』が駆け出す。

 

 

 雷を『斬り裂いた』あとには、今まで自分たちを隠していたカーテンが開かれる。

 

 

 戦の鐘が誰かの手で鳴り響く……。

 

 




もう少し色んな陣営を書きたかった。

具体的には、中華陣営とか日本陣営(コハエース風)とか、特に日本陣営を見たエリカとの絡みを書きたかったのだが、あんまりごちゃごちゃ書いていてもあれであるし。

モデルとしては刃牙の『全選手入場』、同人界隈では鉄板ネタ。

まひろがアレで同人誌一冊書いたのは伝説だろう。
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