魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~   作:無淵玄白

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とりあえず新しいテレビを買いました。

大画面で色々と見れることのありがたみを感じております。

具体的には、魔王城でおやすみとか(爆)


第264話『Fate/stay night(9)』

 大剣と雷爪とが激突する。

 

 赤き魔宝使いが軍神の剣を斬りかかる。

 

 蒼黒の魔人が爪に雷を纏わせ襲いかかる。

 

 赤き魔宝使いは、目の前の相手の実力を察する。紛れもなく上級死徒の位階。同時に冠位指定の魔術師であることは紛れもない―――だが―――。

 

「ケンカの仕方が分かってねぇんだよ!!」

 

 刹那の言葉に答えるように、巨漢の中の巨漢―――。

 金色の毛皮を羽織る半裸が筋肉の限りを以て打撃を行う。その男、ギリシャ神話を知らずとも星座の逸話に出てくる男……。

 

勇気凛々(ユウキリンリン)元気溌剌(ゲンキハツラツ)! 興味津々(キョウミシンシン)意気揚々(イキヨウヨウ)!!」

 

 その言葉は、歌は、死徒にとって、聖歌(チャント)ではないというのに鼓膜を揺さぶるものだ。あらゆる意味で生への讃歌を歌う『英雄オリオン』の攻撃は、加速に次ぐ加速を果たして吸血鬼を痛打する。

 

「膂力のケタが違いすぎる! 触れただけで肉がちぎれる! 骨が砕ける!!」

 

 如何に復元呪詛を持つ死徒とはいえ、神の加護を受けた強靭なる肉体の元では、病葉も同然だ。

 神の加護……。それは―――。

 

「ダーリーン♪♪ 浮気は許さないわよー♪♪」

 

「いつでも首を締めあげられる位置で加護を与えられる我が身の解放のために、不浄のものよ!! 貴様は滅する!!!」

(上記意訳:他の女サーヴァントに迂闊に目も向けられない現状から脱却するために、お前には死んでもらう!(涙))

 

 常人の身体能力なんぞ余裕でぶっちぎったオリオンの一撃一撃が、死徒を穿つ。

 

「まぁその死徒が女身であるからこそ、アルテミスはああなのだろうがな。だがもはや終わりは近い―――」

 

 分裂した死徒たちが、雷撃の束を放つも、雷で構成された剣を振るうも……。

 対魔力Aを持つ連中が前に出て、『盾』として雷撃を無効化して、その後ろから出てきた他サーヴァントが、『矛』としてカウンターアタックを決めていく。

 

 英雄同士の何も言わずとも以心伝心の上での絶技が披露される。

 

 

「オラァ!!!!!」

「絡繰忍法! ガマ油地獄!!!!」

 

 

 金時の雷戦斧からの雷撃が。段蔵の出す機械仕掛けの大蝦蟇の灼熱が。

 雷の剣を砕き、雷撃を放っていたものを焼き尽くす。

 

 そして―――最後の一体となった―――エレイシア=ロアは、すでに『半欠け』の状態だ。

 それを見たアーサーが駆け出す。眼では決して追いきれない超スピード。黄金の剣の輝きが虚空に無ければ、どんな斬撃を放ったかすら分からなかっただろう。

 

 縦横に一閃ずつ―――十字斬りの軌跡を残して最優の剣士は、死徒を消滅させた―――。

 だが……!! 

 

「ヴォーティガーンもそうだったが、人類史を否定する側というのは―――」

 

 消滅させたはずの『肉体』が寄り集まっていくようだ。肉体とはいうが、それはどちらかといえば『幽子質量』を介した復活に思えた。

 あちこちで倒された死徒軍団にもあった『楔』を利用して、虚空に浮かび上がる全裸のエレイシアの姿。

 

「―――この身体(エレイシア)でなければ、このような復活を遂げることは出来なかっただろうな。星の聖剣による『十字鉄槌』(スレッジハンマー)での死など貴重な体験だった」

 

「遠慮するな。一度と言わず二度、三度と叩き込んでくれる」

 

 聖剣を構えなおすアーサーだが、容易に飛びかかれはしない。そのぐらい―――死徒の様子は変貌しつつある。

 

「―――成程、人理脈動の英霊たちを束ねた軍勢による殲滅魔術―――だが、本気の本気で戦えば『世界』が崩れるのだろうな。『上位魔術』程度ならば、恐らく世界が『負荷』として耐えきれるのは対軍程度が関の山か―――」

 

 看破された事実、上位宝具がどんなものかを知らずとも、分かることもあるのだろう。流石は冠位指定の死徒ということか。

 そして、その『秘術』が披露されようとしている……。

 

「―――13回目の転生(ワタシ)が手に入れた奥義『魔神化』(デーモンライズ)、魔術王ソロモンの力の一端の顕現、72柱の魔神を使役する術のカケラ―――だが、私自身はこれを使おうとは思わなかった―――魔術師たちに与えられた冠位指定の中に潜むことを良しとした魔神共の力は、容易に私を砕くだろう。そして―――我が身を『真正の怪物』と化す」

 

「お前は最初っから怪物だと思うが?」

 

「ああ、そうだ。私は怪物だ。だが、このまま死ぬよりはいい。魂まで焼却される可能性が、敗北する可能性があるならば―――我が身をソロモンの魔神に捧げることで、真正の怪物となることで、貴様らを――――――――」

 

 そこまで聞いた時に、『七色の魔眼による束縛』を仕掛けた上で、周囲にいる英霊たちに突撃を命じる。

 

 刹那の魔眼を初めて見たらしきロアは、驚愕してその顔のままに真正面、両側面、背後―――脳天から多くの得物に貫かれる。

 

 全裸のエレイシアさんの姿が血塗れになり、涜神の聖像を想像させるぐらいには、禁忌的なものを想像させる中……変貌が始まる。

 地に力なく堕ちたエレイシア=ロアの身体を起点に、巨大な霊子が、魔力が、幽子が集まり凝固しつつあるのを確認。

 

 即座にアゾット剣を取り出して駆け寄るリーナが、柄尻に『宝石』を装着させてきた。

 

 瞬間、変身完了(トランスフォーム)寸前でエレイシアの身体に突き刺さるアゾット剣。その柄尻にある『宝石』を見た三女神が驚くのを感じながらも変貌は続いていき―――明確な形で出現してきた。

 

 それは『肉の柱』。いつぞやの『触手』を思い出したのか、リーナが左腕に腕を絡めてくる。

 頭足類(イカ・タコ)の節腕を想像させる巨大な『肉の柱』が、数多の眼を備えながら刹那のセカイに佇立したのだ。

 

 それは人類への悪意だけを備えた最悪の存在。直感だけで分かる脅威を前に―――

 

『魔神()とはね。ゴキブリかと思うぐらい、あちこちに出てくるもんだ! ―――とはいえ、これがラストだ! 魔宝使い『遠坂刹那』! 』

 

 魔法の杖が、刹那の手元にやってきたことで『仕掛け』は終わったことを理解する。

 これならば、『全力』で戦える―――。

 

 

『私は、七十二柱の魔神が一、序列七十一に属するもの、知識魔神(ナレッジデーモン)ダンタリオン。転生せし吸血鬼の中に潜みて、数多の知識に触れし者なり―――』

 

 口上を述べる肉の柱。眼の全ては恐らく魔眼だろう。

 巨大な果実かルビーにも見える眼は何度も瞬くを繰り返す。『皮膚』ともいえるものは大量の人間が折り重なって構成されているようにも見える。

 

 全てが規格外のバケモノ。だが、そんなダンタリオンは―――こちらを見た瞬間、びくんっ!! と柱ごと震えたようにも見える。

 

 それは恐怖か歓喜か……判別できたのは―――。

 

『数多の知識に触れたので―――実に怖い。ミハイル・ロア・バルダムヨォンめ。私にこいつらの相手をしろと? 無茶振りとはこういう事態を言うのだ―――ならば、全てよこせ。まだだ。もっとよこせミハイル!!』

 

 その言葉に応じたのか、『皮膚』の中から苦悶の表情で上半身を晒したエレイシアの裸体が出てきたが、即座にそれが石像か蝋人形のごとく固まるのを見た。

 胸の中央にはオブジェのように突き刺さっているアゾット剣を確認―――。力を増した魔神柱。

 

 そして―――。

 

「ミハイル・ロア・バルダムヨォンの消滅を確認。志貴さんの敵が、こんなにあっけなくいなくなるとは、皮肉だな」

『それがマスターの器量というものだ。オレや殺人貴などのように、死力を振り絞ることでしか倒せない敵ではなかったんだよ』

 

 称賛・慰めのつもりか、取り込んだエドモンからの言葉に更に嘆息してから、その強烈な魔性を前に英霊たちが集結してくる。

 最後の戦いの園に居並ぶ万夫不当の英雄豪傑たちに命じることは一つだった。

 

 

 「魔神柱を滅ぼせ(DAEMON SLAVE)!!!」

 

 

 その言葉を待っていたかのように、猛者たちの遠吠え・咆哮が上がるのだった……! 

 怒号とも砲声、馬蹄の音―――全てが常識外の英雄たちの進撃の中で、一番槍を取ったのは―――

 

「フハハハハ!! いつぞや元帥殿の大海魔とやり合った時を思い出すわ!! いざゆかん!! 見様見真似!『トロイアス・トラゴーイディア』!!!」

 

 ―――先頭に飛び出したのは、『先生』が憧れた英雄であった。

 二頭の神牛と一頭の神馬に牽かれた戦車の英霊―――征服王イスカンダル陛下が、重力を無視した走法で魔神柱の身体を駆け上がる。

 

 当然、その際に強壮な馬蹄と牛蹄とが皮膚と魔眼を踏み潰していく。幻想種による強烈なまでのスタンプを前に必死に光線を放ち、障壁を張ることで防御しようとしても―――その4×3の攻撃を受けた後には、幻想種が牽くに相応しい戦車の車輪(チャリオットホイール)が轢殺の追加を行う。

 

 ご丁寧にも、戦車のサイドにある鎌刃(ギロチン)も皮膚に突き立てた上でのこと。肉を深々と斬り裂き、砕いていく様子。流石に抵抗はあったはずだが、その程度の抵抗もなんのそので駆け上っていくイスカンダルの姿に、幾多もの『英雄』たちが続く。

 

「―――余に続き!! そしてあっぱれな勇者ぶりを見せよ!!!!」

 

『『『『『AAAALaLaLaLaLaie(アァァァララララライッ)!!!』』』』

 

 殆ど直角の柱を登りながら語るイスカンダルに続き、ヘタイロイの面子も、何と馬を駆りて上っていくのだ!

 

 確かにこの空間では、ある程度は普通の馬とて魔術的な側面を持つが、皮膚に突き立てた長槍や剣を支点もしているのだが―――。

 

「鵯越の逆落としの反対バージョン……」

 

 だとしても結構衝撃的なものだ。いや、普通はできない話なのだが……。

 

「主殿! 拙者もあれをやりたい!!」

 

「一応、オレは西国武士の家系だからダメです」

 

「おのれ! 桓武平氏!!」

 

 いつの間にかやってきた深雪みたいな声をした源氏の若武者に返しながら、自分たちも動いていく。

 如何に王の軍勢がすごくても、規格外のバケモノたる魔神柱の再生能力は高い。その再生を終えるためにも! 

 

「根本から刈り取って行け!! 征服王陛下! 少し揺れるがよろしいか!?」

 

 魔神柱の制覇ともいえる登攀であり登坂を続ける征服王に問いかける。今からやることは、彼の覇業の邪魔になるかもしれなかったからだが―――。

 

『構わん! グラニコス川の戦いを経験した我が軍団は馬の扱いは随一!!! 遠慮なくやってくれ! 我が臣下(ウェイバー)の弟子よ! 』

 

 1からスタートして(王位簒奪)足し算を飛ばして掛け算(ガウガメラの戦い)でギリシャ及び東方世界を駆け巡っていった覇者は、この戦いですら、ただの挑戦でしかないのだ。

 

 強大な敵がいて自分の邪魔をする。ならば倒そう。

 

 戦術・戦略・武人としての強さ・英雄としての在り方。全てにおいて自分(オレ)たちの方が『強い』。そう示すためだけの戦いなのだ。

 

 その在り方に眩しさを覚えて、同時に言われた言葉に涙が出る。あの征服王は―――『先生』のことを憶えているのだと。

 魔術回路の励起に力が入る。今までは英霊たちの気分を害さないようにあまり前に出なかったが―――。

 

「行きなさい。いくらでも私たちが援護してあげるわ。友達が心配ならば、そちらを助ける―――」

 

 ―――あなたの行きたい(生きたい)ところにいきなさい。

 

 その言葉が刹那を後押しする。母親から今際の際に言われた言葉でもあったからだ。

 

 だから!!! 

 

 

「シュナイデン!!!!!」

 

 木を伐採するように魔力による斬撃を放つのだった。飛ぶ斬撃は、魔神柱の根本で炸裂。

 

『一気に行くぞ!!!』

 

「そのつもりだ! 空中戦が出来る連中はそのままに、地上戦だけの人間は、根本付近から攻撃だ!!」

 

 手短な指示だが、それだけでも良かった。その指示を受けて魔神柱に対する攻撃が苛烈を極める。

 

「マスターの意気に応えるぜ! オリオン!!!」

「ゴールデン! 俺の棍棒に雷を借りる!!! ―――アルテミス的にこれはセーフだな!」

 

 衆道・男色という判定はされなかったのでホッとするオリオンに、馬にまたがるヒッポリュテが追いついて言う。

 

「懸命な判断だ。私の神気を貸してくれとか言って首が折られる未来を予期していたのだが」

 

「コワイこの娘! 流石は、腰帯と交換でヘラクレスに子供をねだる女!! テリブルッ!!」

 

「若気の至りというやつだ。あまり言わないでくれ―――マスターの開いた穴を拡張する!!! 神気よ!! 赤き剣となれ!!!!」

 

 苦笑したヒッポリュテが腰帯を手に声を上げると、その帯が明確な形を取る。布というものではありえぬ硬度を以て風に吹かれることもなく、直立を果たして剣のようになる。

 

 そしてその赤き大剣を―――ジャベリンのように投げ入れた。魔神柱の魔眼から放つ光線が妨害に動くも、その赤き大剣は魔神柱に直撃。

 その瞬間を狙って巨漢2人が、大きく振りかぶった斧と大剣をそのままに飛びかかった。

 

 振り下ろしの一撃は落下と同時に叩きつけられる。最上段から力任せに振り下ろされる攻撃。

 

「ゴールデンスパーク!!!!!!」

「アルテミスインパクト!!!!!」

 

 連携というほどではないが、月と雷の魔力を込めたパワーの限りの轟撃が、どおおおおん!!! という盛大な音の限りでセカイを揺らしたほどだ。

 そして穿たれた『孔』は、悍ましい惨状を見せながらも大ダメージとして認識できるもの。当然、復元をしようとダンタリオンも魔力を充足させようとするも……。

 

『再生式・復元式・全てが不全―――何故だ』

 

 言葉のとおりに巨大な肉の全てが再生することはない。あの大海魔ですら、宝具の一撃一撃を食らってもアメーバのように再生していたことを考えれば、生物としての機能ではかなり劣っている様子だ。

 

『そりゃそうだ。キミ、廃棄孔に統合されていて直接手合わせしていないとはいえ、一度は敗れたことで、こちら(英霊)はキミらに対する対策はあるのさ』

 

 そんなダンタリオンの疑問に対して攻撃を続行しながらも、刹那が持つ魔法の杖(ダ・ヴィンチちゃん)は語る。

 その言葉に絶句した雰囲気を見せてから予測を出してくるダンタリオン。

 

『―――『神殿での戦い』が、天地の退気で天敵の分を得ているのか?』

 

『なんじゃない? とはいえ、そんなことはどうでもいい。キミに代わったのはミハイル・ロア・バルダムヨォンの失策だね。このセカイで人理側にとって『圧倒的』に有利な相手である『魔神柱』なんて魔術王の『宝具』に全てを委ねれば、こんなことにもなる。まぁ所詮はタタリが構成した偽性の死徒崩れだ。間抜けな結末でも当然と言えるね』

 

 当人の魂は崩れ果てて、既に無いのだが、それにしても無常な結末だ。

 そんな無常な結末を許せないとして、魔神柱ダンタリオンは嗤い声を上げる。

 

『成程、既に我が身は―――『霞』も同然のものであったか。それでは―――霞すらもかき消せる輝きの前では―――』

 

 言いながらも攻撃は続く。既に8割以上の身を砕かれた魔神柱。オーバーキル気味に英霊たちの宝具が叩き込まれていったからだ。

 

 

 アマゾネスの女王が燃える身体で振り回す双鉄球が。

 カラクリ忍者による絡繰忍法の秘技『火遁一号』が。

 仮面を取って素顔を晒した三女神の対星宝具が。

 戦国時代を終わらせた火縄銃(チート兵器)の乱打。

 そこに走る誠の旗を持つ剣客3人の攻撃が魔眼の尽くを砕いていく。

 輝きを放つパラディンたちの聖罰突撃。その中に友人の姿が混じっているのを見た。

 巨大な黒蛇に跨りて幕末の風雲児と共に戦う剣士と法術士の姿を見る。

 

 

 輝ける軍勢の中に在りて彼らは異質だ。力は脆弱。ガイアどころかアラヤの加護すら程遠いだろう。

 

 けれど――――。

 

 戦おうとする意思、生きようとする意思、紛うことなき輝きは―――人理を肯定する英雄たちが認めたものなのだろう。

 

『ならば、このセカイを作っている貴様を狙う!! ハナからそうしておけば良かったのだ。復活式(・・・)駆動―――ムルムル、グレモリー、オセ、アミー。アンドロマリウスに集いしものたちの欠片を消費・燃焼ーーー時間の狭間に捨てられしものたちの無念を使用して新たなる肉を構築する。霊子集積・情報演算―――魔宝使い、お前を最大の障害と断定―――排除ス―――』

 

『―――約束された勝利の剣(エクスカリバー)!!!』

 

 口上を遮る形で、セイバーであるアーサー・ペンドラゴンが振り上げる形で聖剣を抜き放った。

 

 剣に蓄えられた黄金の光は、黄金の閃光となって魔神柱の体積全てを焼灼すべく放たれたのだ。

 

 ある意味、達也並みの卑怯剣(偏見)ではあるが、これだけの英雄たちが勢揃いしている場で七面倒なことをやっていた魔神柱の油断である。

 これが4〜5名程度のパーティーであるならば、それでも良かったかもしれない。あちらが口上を述べている間にこちらも回復できたのだから。

 

『だが、こちらは無限の兵力を持つガーディアンユニオンだ。状況が悪かったよ……若干同情するが、ともあれ作戦のシメは、我がマスターだ! 『逃げ場』は無いぞ!! ミハイル=ダンタリオン!!!』

 

 根本から八割ほどの体積を失った魔神柱だが、まだ死んでいないことはわかっている。

 

 だからこそ、刹那とリーナは飛行魔術で空へと駆け上った。虚空を力なく漂う先端部分の肉塊。その中心にいた人間の身体……エレイシアの蝋人形に生気が宿り、眼を魔神柱の魔眼にしてこちらを見てきた。

 

「このニンゲンどもがああああああ!!!!」

 

 カバラ数秘術の極みなのだろう四つの極大魔法陣―――回転式まで加えているものが、雷を溜め込む。

 同時にエドモンに対して放たれていた結界術式が、刹那とリーナを拘束しようと放たれていく。

 

 恐らくこの強力な結界で相手を縛った上で、魔法陣からの雷霆を食らわす。そういう意図なのだろうが―――。

 

「パンツァー・ルーンブルグ!!!!」

 

 雨あられと飛んできた結界術を阻むのは、下から障壁を飛ばしてきた西城レオンハルト。

 どうやら進化を果たしたようだが、遠坂家とバゼットにとって曰く付きの『サーヴァント』が力を貸しているのを、何となく察した。

 

 そのうち、『我は装甲悪鬼―――善悪相殺を世に敷くものなり』とか言うんじゃないだろうかと、ちょっと不安になるレオの進化を見てから、突き進む。

 

 結界の魔法陣と障壁では魔法陣の方に分はあるのだが、それでも次から次へと展開される大壁(ビッグウォール)は、決してこちらに通らない。

 打ち合いの不毛さに痺れを切らしたのか、四つの大魔法陣が力を吐き出す準備をしていく―――。

 

 来る―――。わかっていたが、いざ目の前にすると結構、怖い―――だが……。

 ソレ以上に怖いのは、リーナを失うかもしれないことだ。そして、リーナもまた刹那を失う不安で何かをやりたいと思うのだ。

 

 

「―――四つの福音を以て、汝を聖別す。怒号をもって神意を示せ!!」

 

 瞬間契約(テンカウント)の術式、高速起動を旨とするゲマトリアを使用しているからか、十小節(テンカウント)にしては短い気もしたが―――それでも放たれる雷霆は紛れもなくテンカウントの威力。

 

 カウレスの使う原始電池よりも強烈な雷圧は、すでにレーザービームの威力を再現していた。

 

 ―――『躱す』ことなど考えていない。その雷圧に真正面から突っ込む。リーナを抱き抱えながら互いに片手を前に突き出す。

 

 接続されたお互いの力のままに放つは―――。

 

 

『ミスティック・メタルバースト!!!』

 

 ―――投影された宝具を媒介にして放たれた光波は、途上に在る『偽性の武器』を力にして倍増しながら直進していく。

 ―――七色の光が雷圧を真正面から打ち消した。

 

 

「―――馬鹿な。蛇の秘奥の一つを!!!」

 

 驚くダンタリオンに七色の光は直進を果たして、アゾット剣の宝石に直撃。

 

「――――!!!!!」

 

 拘束するように七色の光は輪となりて縛り上げる。終わりの時だ。

 

「セツナ!!!」

「受け取れ!!!」

 

 この戦いが始まった時から我が身を炉心として鍛造していた最強の破魔・破邪の剣―――。

 

『干将・莫耶スペリオールアマラ』

 

 あらゆる怪異を討ち滅ぼす人造神剣が此処に開帳……。

 

 金色に輝く陽剣をリーナに渡し、銀色に輝く陰剣を刹那が手にした。英雄のように巨大な剣を構える姿に『トオサカリン』たちは大興奮。

 

(やばい。ウチの息子も嫁も超絶にカッコ良すぎるわ)

 

 

 頭の悪い表現だが、そんな感想しか出ないのだ。

 

 

(士郎、アーチャー……見なさいよ。私たちの求めた宝石剣は、あの通り咲き誇ったのよ(鍛造されたのよ)……)

 

 

 この場に絶対に現れないという意地を張った男2人に対して、嘆きながらも息子夫婦が持つ陰陽の巨大剣は、上下から魔神柱の身を割り砕いた。

 天使の天中殺のように、上から金陽剣を振り下ろしたリーナと、下界から天上への反抗のように銀陰剣を振り上げた刹那の攻撃は紛うことなきトドメの一撃。

 

 

 虚空で斜めにずれる肉塊と、それに埋まっていた女の身体。寸分違わず霊核を斬られたことで、あらゆる霊子が消滅していく様を見ながら―――イシュタル・リンは、向こうの方で―――。

 

 獣が死んだのを察するのだった―――。同時に、それが、このセツナの世界でだけ在り得た奇跡の終わりだと―――。

 

 少しの悲しさを覚えるのだった……。

 

 




当初の予定では、大魔王バーンの『鬼眼王』状態のごとく、心臓に突き刺さるアゾット剣で真っ二つなんてことを考えていたんですが、あれはダイが孤独な戦いに挑んだから、同じく士郎もコトミーに対して『ラスト』『レスト』でやれたのも、そういう孤軍であったからこそと考えて―――、とりあえずこちらはこういう風な終わりになりました。
達也の方は、もう少しお待ち下さい。
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