魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~   作:無淵玄白

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第270話『アクトレスアゲイン―Ⅱ』

家に集まった面子。リビングにて茶菓子を頬張るものたちの顔ぶれは、魔法関係者が見たならば、

 

『戦争準備でもしているのか!?』と邪推するに相応しいものがあった。

 

べつに皇道派を気取るほど愛国心豊かな人間もいないし、慰霊碑に挨拶をすることもない。

 

本当に邪推ではあるのだが―――。

 

「―――まぁ二・二六事件の前日は、魔法大学の受験日ですからね。あんまり騒がしくはしたくないんですけどね」

 

「しかし騒動は大きくなりすぎたな。終結(フィナーレ)は見えてきたか?」

 

「まぁ一応は……こんな『単純な手』に引っかかっていたかと思うと、つくづく自分がアホらしく思える」

 

緑茶を啜る十文字に答えながら、刹那は嘆息する。

 

(舞い上がっていたんだな。姉貴とは違った意味で、『同郷』と言える人間がいてくれたことで……)

 

最初っから『誘導』されていた。そういうことだった。だから落とし前をつけるためにも、 戦うべきなのだ……。

 

「下手人に関しては、なんとかすればいい―――ソレとは別の『本題』に入りたいんだが、遠坂、構わないか?」

 

主に話を聞き出していた十文字克人が、ぐるりと周りを見ながら刹那に問いかけてきた。

 

居並ぶ面子を上げていけば……。

 

十文字、七草の十師族直系の先輩2人。

 

一高の同級生であり友人たち、エリカ、レオ、美月、幹比古……。

 

三高の友人―――愛梨、沓子、栞……。

 

外国からの留学生―――レティシア、レッド。

 

珍しい所では、国防軍から藤林響子と……秘書役なのか愛梨の姉貴(一色華蘭)が同行していた。

 

司波兄妹に関しては既に知られていることを考えれば、ノーカウントでいいだろう。

 

その上で、あそこまでのヒントを出せば、先輩2人は気づくだろう。

 

そして気付いたことに関する答え合わせをしてきたということだ……。

 

殆ど全員が緊張を果たす―――例外は、争うように大量の茶菓子(どら焼き、きんつば、スコーン、バッテンバーグケーキ、鳩の血ゼリー……etc)を頬張るレッドとアルトリア’sであるのだが……そこだけスレ○ヤーズのような様子だ。

 

 

「それを『想定』していなければ―――こうして、聖徳太子の逸話のごとく一斉に話を聞こうとは想いませんでしたよ」

 

「刹那くんとリーナさんが、ベッドの中でイチャコラしているモーニングタイム延長の為だと思っていたわ」

 

びくんっ!! と背筋を張らせることで、あからさまに反応するリーナに、この娘に腹芸は無理だなと思いながら、そういう素直に感情が出やすいところも好ましいのは、惚れた弱みというだけではないだろう。

 

ただし、この場においてはちょっとは隠してほしかった。カップを持つ手を震えさせる面子がいるのだから。

 

そんなわけで話をすすめるのは、十文字克人から七草真由美に代わっていた。

 

「あなたが昨夜、死徒2鬼を倒すために展開した『固有結界』―――『無限の剣星』―――Unlimited Blade Works……すさまじい魔法だったわ。もはや私たちの頭では理解がしきれない―――こんな術を前にして―――現代魔法の価値を値崩れさせられっぱなし―――当然よね。アナタは、タタリ・パラサイト、弓塚さつき、シオン・エルトナム・アトラシアなどと同じく『並行世界』(パラレルワールド)からの『来訪者』なんだもの」

 

インチキだ。とでも断罪しているかのような真由美の言葉だが―――。

 

「そうですよ。いまさら気づきましたか」

 

などと刹那は、平然と返すのだった。

 

返された言葉に『虚』を突かれてしまった真由美は二の句を継げずに、なんとも肩透かしを食らうのだった。

交渉事におけるポーカーフェイスが出来ない彼女は、ちょっとはレディー・ガガの名曲を聞くべきではないかと思うのだった。

 

 

「そ、そういう人って多いのかしら?」

 

なんとか取り戻して聞いた質問だが、どうにも肩透かし感は否めない。だが、一応は答える。

 

「人―――というカテゴリーに当てはまるかどうかは分かりませんが、今回の事件の関係者を外した上で、とりあえず俺を含めて推測ですけど『6人』ほどになりますかね。

1人は皆さんもとっくに御存知の『沙条愛華』になるわけですから、実質は『5人』になるかと思います」

 

並行世界からの来訪者……刹那が確認出来たのはそれだけだが、もしかしたらば他にもいるのかもしれない。そいつが何処にいるかは不明な限りだ……。

 

「ある意味では、TPピクシーのように魂魄だけの存在も含めてもいいかもしれませんね。彼女には、元の世界でのガイノイドとしての意識もあるんですから」

 

「………私の認識力を越えているわね―――根源接続者、英霊、死徒、真祖……宇宙人―――ロマンはあるのかもしれないけど、なんとも……」

 

「心中お察しします」

 

「あなたが言わないでよ」

 

頭を抑えて呻くような様子。受験間近なのに知恵熱起こしそうな七草先輩に返されてしまうも、話は続く。

 

 

「何故、今になって教える気になったんだ? やはりピクシーの言動が原因か?」

 

「それもありますけどね。犠牲者は諸々合わせても1000人単位になってしまった。そして―――オレ自身が『最初』に謀られていた人間だから、その責任を取りたいんですよ」

 

十文字の言葉に、昨日の事件『血のバレンタイン』と命名されたものを報道するキャビネットのニュースサイトを見ながら言う。タタリがしぶといとしても、明らかに攻撃を透かされていた想いは大きい。

 

『誘導』されていたのだ。そして、その結果がコレだ。

 

「お前1人の所為でもないだろう。我が家と七草の家も、一山当てようと山師のごとく動いていたのもあるのだからな」

 

「だが、それでも―――この際だから秘密を暴露しようと思いましてね……特に愛梨は聞きたいだろうからな」

 

昨日の一件の異常性は彼女の中で処理しきれるものではなかっただろう。一夜明ければ、色々と吹き出すものはあったはずだ。

 

「聞いて、見たならば、アキラメテ(give up)ほしいわね―――アナタにセツナの過去(ウルズ)は受け止めきれない。そして託されたものからつなげる現在(ヴェルザンディ)からの未来(スクルド)への福音も……」

 

 

リーナの脅すような言葉に息を呑んだが、それでも上着の胸辺りを掴んでから、それでも告げる言葉。

 

 

「―――教えて下さい。セルナ―――アナタの全てを―――」

 

その言葉に、内心でのみ『嘆息』しておく刹那。同時に周りを見回すと―――心の内、思惑などはそれぞれだろうが、取り敢えず『謎の人物』として知られている『遠坂刹那』の全てを知る機会だと思っていたのだろう。

 

ここにいる全員が閲覧できる刹那の経歴というのは、殆どはUSNAから送られた虚偽のものと、日本に来てからのものでしかない。

 

USNAでは3年前からセイエイ・タイプ・ムーンであり、魔法怪盗プリズマキッドとして、その名前とチカラを世界に刻んで、日本においてはそろそろ1年前になろうかという時に『ロード・エルメロイII世の末弟子』として日本にその名前と能力を披露した―――今では彼の名前を知らない魔法師は、『モグリ』『世間知らず』などとも言われてしまうほどの人物。

 

 

彼が語る15年間ないし16年間の軌跡―――それが外から『完全』な形で見えないことに『もやもや』していた面子は多いのだ。

 

だからこそ……。

 

「事象・意識固定。―――捕捉対象を認識―――転遷・遷移開始―――私は、その心を彼方に()ばす」

 

―――いつぞやのアーネンエルベの時と同じく魔眼が輝き、刹那の過去へと全員の意識は飛んでいくのだった。

 

一時間半後……。

 

衝撃的な過去を全て見せた後に、最初に覚醒したのは―――。

 

 

「セルナ……私がアナタの子供を産みます――――!!! 賑やかな家を作るためにも夢いっぱいの大家族を―――!!」

 

「なんでソウなるのよ!!!」

 

飛びかかるように抱きついてきた一色愛梨の姿であった。

 

下手に押し留めようとすると、怪我させかねないので何もしなかったが。それはそれでマズかったかもしれない。愛梨の体の柔らかさとかは、心地いいのだが……それに甘えているわけにはいかない。

 

「いや、よく考えてくれよ愛梨。先ほど見た通り、俺の運命は望むと望まずとも修羅道だ。戦いに満ちている―――だから、君みたいにご両親が普通にいる家庭のお嬢さんを巻き込む訳にはいかないよ」

 

「美少女魔法戦士プラズマリーナ(笑)は違うと!?」

 

「(笑)ってドウイウ意味ヨ―――!?」

 

「そのまんまの意味です! 」

 

喧々囂々の様を見せる金色の美少女2人とは違い、司波兄妹と『一部例外』を除けば、重い顔とか少しだけ顔を抑えて、眼を時々拭いている様子とかも見えていた。

 

 

(怖がってくれるぐらいはあった方が良かったんだけどな……)

 

 

自分など魔道の中の魔道を歩む『魔人』だ。この世界にあっては確実に異端の類。現代魔法師ともまた違う非人道性の産物こそが、遠坂刹那なのだ。

 

もちろん、刹那の周りにいるのは、できるだけ『世間様』に御迷惑かけないでいきたいと思う連中が多かったが、それでも魔術師なんて利己的な人間ばかりだ。己がのし上がるためならば、他者なんていくらでも犠牲に出来る存在なのだから。

 

そう説明すると、スコーンを手元にジャム、サワークリーム。どちらでいくかを悩んでいた十文字克人が口を開く。

 

「だが、お前はそういうのとは少々毛色が違うようだな。お前の世界の魔術師の酸鼻極まる所業は色々と、見ていられないものはあったから余計に、な―――当然、現代魔法師とて、かつてはそういう面(非人道的行為)もあったわけだが」

 

刹那の世界での『魔術師論』の中には現代魔法師にも通じるものはある。しかし、それを積極的にやるかやらぬか―――そこなのだ。

 

克人の言葉に、そんないいものじゃないと言っておく。

 

「俺は自分ひとりで全てやってきたなんて『烏滸がましく』て言えやしないですけど、それでも……他者を犠牲にしてまで『何か』を求めることが、馬鹿らしく思えたんですよ――――――」

 

それだけですと言っておく。その胸に去来しているものが、たとえ―――家族を捨てて、戦火の中に飛び込んだ父親への反発心であると悟られていても、それを指摘することは誰もしなかった。

 

「―――お前の過去は壮絶だな。正直言えば、そんな風な言葉しか浮かばない……遠坂刹那という男に対する多くの疑問も解決したが―――何故、最初の『世界転移』の先が、USNAだったんだ?」

 

その質問は今更ながら中々に鋭かった。

 

刹那の年齢と容姿の変化(江戸川コナン)よりもそちらが気になるとは、少しだけの着眼点の違いを感じる。

 

まぁ今回は達也と深雪も『解説役』に回ってくれたからこその視点なのかもしれないが……。

 

「そうですよね!! 流石です十文字先輩!! 慧眼です!! ブリテン島にいたセルナがたどり着くのは同じ島国であり、神秘が満ちる第二の故郷たるべき『日本』。それも『うみ』と『りく』で美味しいものが一杯採れる『金沢』が相応のはずですよね!!!」

 

「べつに一色への援護射撃のつもりは無かったんだがな……」

 

両拳を握りながら語る愛梨の満面の笑顔での言葉に、頬をかきながら苦笑いを浮かべる克人は、スコーンにサワークリームをたっぷり乗せる派のようだ。

 

「理屈はいくつか考えられますが、単純に星に走る霊脈の管理の不備とか、小氷期の到来による『ズレ』が、転移先の変動に繋がったと思います。流石に『魔法使い』である大師父(キシュア)が『ちょっかい』を掛けるとしても、そこは捻じ曲げられませんから」

 

もっとも霊脈の関係が無くても、最初の転移先であるボストン―――マサチューセッツ州は魔法研究の一大集積地だ。

 

『ナニカ』はあったかもしれない―――まぁ何であるかは分からないが……。

 

だが、そんな理屈じみたものよりも、リーナにとって重要なことは―――。

 

「そんなロジカルなものよりも端的に説明するならば―――世界と時の境界を越えてワタシとアナタから延びる小指の赤い糸が繋がれた(JOINT)ダケよ♪ これが二ホンの『ムスビ』というラブエモーションなのね♪」

 

「リーナ、皆がコレ以上の『砂糖』はいらないと言わんばかりに見てきてるよ」

 

小指を立てて刹那に見せつけてきたリーナの赤い顔に頭を撫でながら、それも一つかと思っていたのだが……。

 

「この『だら』が、いじっかしいことばかり言って、そんなにまでもセルナを独占したいんか、はがやしいじ!!」

 

「ちょっ! 愛梨ちゃん!! とんでもなく訛った金沢弁が出ちゃってるよ!!!」

 

「姉ちゃんはだまっててね!!」

 

「はいぃ!!」

 

国防軍の女性軍人すら涙目で退かせる愛梨の剣幕。

 

正直、ここまでになるとは―――。正直、生きてる世界が違うから諦めることも選択肢の一つだろうに。

 

そして時間を置いたせいか、刹那の過去を見たことに対する言いたいことが何人かに出てくる。

 

(美月は、どうしたんだ?)

 

美月は刹那に何かを言いたい気分でいるかのように、胸の辺りを抑えて、それでも口を開けないようでいるので、気遣うように喧々囂々の様を見せる金髪美少女2人から離れた瞬間―――家のインターホンが鳴り響く。

 

「刹那、他にも来客の予定があったのか?」

 

「いや、ここにいる全員のはずなんだがな。第一、そうだとすればかなりの遅刻だ」

 

べつに仲間はずれにするわけではないけど、と付け足して、きんつばを頬張る達也に返しておく。

 

インターホンを操作して玄関口に『誰』が来ているかを確認する。

 

見覚えは―――少しだけあった。

 

入学初期―――諸々を終えた後に横浜での秘密の接触。その際に四葉真夜の従者として同行していた人だ。

 

見間違えなければ―――四葉の従者、古臭い言い方で言えば執事、バトラーと呼べる人物である。

 

何気なく達也と深雪を見ると、驚愕したような眼で画面に映る人物を見ていた。

 

彼らからしても、これは予想外だったようだ。

 

どちら様で、何用なのかを礼儀正しく問い質す。

 

 

『突然の来訪で申し訳ありません。遠坂殿―――『あの時』は挨拶出来ませんでしたが、私は四葉家の執事を務める『葉山』と言います』

 

あの時、というのはやはり横浜での御仁であったかと思いつつ、それだけで思い出しているというのは早計ではないかと思うが……誰がいるのか分からない以上は、それぐらいにボカした方がいいという判断だろう。

 

―――とはいえ、四葉の関係者がやってきたという事実にビビる面子は多いのだが……。

 

こちらの面子を知ってか知らずか葉山氏は礼儀正しく一礼をしてから口を開く。

 

『火急の案件につき、一先ず要件を述べさせていただきます。昨夜、午後9時頃において当家の当主『四葉真夜』が意識不明の状態になりました。原因は未だに不明ですが、私の見立てでは、あなたが、この事態に近いと思っております。

なにとぞ当主様を回復させるためのお力添えをいただきたい。遠坂殿』

 

困惑が形を作ったような顔をしている。―――とは絶対に見せないバトラーの鉄面皮に感心する。

 

だが、それを互いに見て・聞いたあとには、どうもよい状況ではないことだと察して、自分の傍に顔を寄せてきた(リーナ)と困惑した顔を見合わせるのだった……。

 

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