魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~   作:無淵玄白

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そろそろ通算UA数10万届くかなぁとか思いながら新話お届けしつつ、次話ぐらいでようやくバトルにこぎつけそうです。

ハンゾー先輩の活躍はカットの方向で(笑)


第17話『昼食――そして誘い、激突の予感』

 待ちに待たない。絶対になってほしくなかった昼休みへと遂に至ってしまった。

 

 

 魔法『青』。詳細こそそこまで知られていないものの、以前逢った時に、『ああ、そういうことか。』と気付けた。

 

 魔法の一端でしかなくて、魔法の全てが分かったわけではない。とはいえ、『結果を先送り』に出来るあれは、確かに……地球(ほし)の延命には、向かない。

 

 宇宙の破滅と同時に地球の破滅―――そういうことだ。

 

 そして自分もこの結果を『先送り』にしたいのだ。

 

 

 閑話休題。

 

 

 それはともかくとして来てしまった昼休み。桜小路、十三束、エイミィ―――そして後藤までも『討ち入りでござるか!?』など言いながら見てくる。

 

 赤穂浪士でもあるまいし、生徒会に討ち入りするほどの仇があるわけでもない。

 

 

「んじゃ行くか」

 

「イヤそうねー。まぁ、ワタシもあまり気乗りしないけど」

 

 

 リーナと目を合わせてからの口頭での応答しあい、三段ほどの重箱を持っての教室からの脱出。昼休みとなったことで一科の教室棟。その廊下に人がそれなりに溢れる。

 

 

「おや? 二人だけのランチタイムかな?」

 

「いいえ、生徒会室への出頭要請。そして、これは山吹色のお菓子です」

 

 

 重箱を上げつつ返すと苦笑しながらの一言。

 

 

「七草は悪代官じゃないんだからさ、まぁがんばって来たまえ」

 

 

 指導教官の一人、我がB組の担任である栗井教官―――人によってはマロン先生―――また人によっては『ドクターロマン』と呼ばれている人間に返しておく。

 

 どう見ても欧米系の顔に豊かな茶髪。もっさりしているといってもいい、第一高校のカラーに合わせてかエメラルドのスーツ一式で揃えている中々に奇特な人間がいた。

 

 教官の前から辞して生徒会室へと歩いていく。昨日の『大立ち回り』を見ていた、聞いていた連中からの様々な視線やひそひそ話じみたのを受け流しつつ、四階まで上がる途中で達也たちと合流。

 

 事情を交換し合う。

 

 

「なんだそっちにも話が行っていたか」

 

「朝っぱら校門で待ち伏せされてな。お前たちも来るって言われたよ」

 

 

 用意周到な。と思いつつ、四階の廊下―――その突き当りにあるは『生徒会室』と木彫りのプレートが埋め込まれていた部屋だった。

 

 

「さて(デーモン)が出るか(ナーガ)が出るか―――」

 

「いや、あれは鬼でもあるし蛇でもあると思うぞ」

 

「同感だ。正直苦手だよ……あの手の人は」

 

 

 セレブが庶民ぶっているのは、正直言って何かしらの『意図』がある。そう邪推するだけに足るものがある。

 

 海千山千の狐狸の類だろう。恐らく『父親』からしてそうなのではないかとさらに邪推。女子の性格形成に父親というのは結構なファクターらしい。

 

 言うなれば基本的に、好悪、どっちであれども父親を意識するのが娘でもある。

 

 

「お兄様も刹那君も容赦ないですね。まぁ擬態であるとは私も思いますが」

 

「似たような人がいた?」

 

「いますね。まぁ無下にも出来ない『身内』なので、どうにもこうにも」

 

 

 歯切れの悪い深雪の脳裏と苦悩する達也の心中には誰がいるのやら、興味を持ちつつもインターホンにも似たもので内部の人間に来たことを伝える。

 

 

 すぐさま応答があり、入ることを了承される。電子式の戸が開かれてそこには―――。

 

 

「―――ようこそ……我がベルベットルームへ……」

 

「いや、そういうのいいですから、別にペルソナ能力とか求めていません」

 

「えー、乗ってくれると思ったのにぃ。ノリ悪いわーこの四人」

 

 

 手組して長机に腕を乗っけていた七草会長がぶー垂れる様子に栗色の髪の、小動物じみた……多分二年生だろう小柄な女子が苦笑い。

 

 次いで嘆息一つの渡辺風紀委員長。そして無表情で変わらぬ様子の少し色黒のクールなイメージを受ける三年生かなと思える女子が一人。

 

 

 覚えている限りでは他の二人も入学式初日に紹介された『生徒会役員共』だと思いだし、もう一人……あの神経質そうなモブ崎ver2。モブ崎がコクッパならば、あれはクッパ大魔王な人間は何処やらと思う。

 

 

「一応紹介し直すけど、こっちのクール系美人さんが会計の市原鈴音、私と同じ三年生―――愛嬌を込めてリンちゃんと呼んであげて」

 

「結構です。そしてそんな風に私を呼ぶのは会長だけですから」

 

 

 同級生と言う割には、随分と上下関係を弁えている人だと思う。長く伸びた青い髪といい、背が高い印象がモデルかキャリアウーマンといったものを想起させる。

 

 そして名前に関しては鈴音先輩かスズ先輩と言うことに決まった瞬間だった。

 自分の内心に気付いたのか隣のリーナは、少し苦笑い。別にいいけど。

 

 

「そして摩利の右隣に座るちびっ子が書記の中条あずさ、二年生。―――親愛を込めてあーちゃん先輩と呼んであげて」

 

「市原先輩と同じこと返すようでなんですが、私をそう呼ぶのは会長だけです。そしてちびっ子とか後輩の前で言わないでください」

 

 

 少しぷりぷり怒る印象の中条先輩は確かに小柄だ。正直―――ギリで中学生か小学生かのラインに思える。

 

 まぁ本人もこういったことで多分、あれこれ悩んでいるだろうから言わないでおく。

 

 

「そしてもう一人二年生の副会長はんぞーくんを加えてが、生徒会メンバー。通称『生徒会役員共』、もしくは『極上生徒会』でもいいわよ」

 

「むぅ…生徒会役員共には惹かれます―――なんでかしら?」

 

「魂が震えるものがあるんだろうよ」

 

 

 リーナの質問はメタすぎるが、とりあえず掛けるように言われて座る。恐らく一番用事があるのが『深雪』、次いで『リーナ』。そして男二人は余分だが、関係性で言えば達也は深雪の隣なので、リーナよりも上座に座るように言う。

 

 一番の下座に陣取った刹那は、矢面に立たずに済んだことを少し喜ぶ。これぞ矢避けの加護のスキル発現である。

 

 

「おや、遠坂。その重箱は何だ?」

 

「大判小判ざっくざくのお代官様の好物―――なわけもなく、昨日あれこれあったし、正直学食の味に満足出来なかったので自炊してきたわけです」

 

 

 今どき珍しい木製の長机の上に置いた重箱三段。それから漂う匂いは食欲を誘う。

 

 

「私達も食事にしましょうか、少し長い話になりそうだしね」

 

 

 というよりも事前に準備していたのかダイニングサーバー、この時代、驚いたことに簡易的な自動配膳機とでも言うべき『調理装置』が存在していた。

 

 無論、どんな家庭でも、どんな学校でもというわけでもない。魔法科高校だからこそあるとんでもないものだ。

 

 

(HARにも驚いたが、ここまで人類が台所から遠ざかるなんてなぁ……)

 

 

 きっとお袋が存命だったら―――『わぁ―――!! なによこれ!? 勝手に料理が出て来たわよ!! ぎゃー!! 今度は洗濯と掃除まで勝手にやってる!! べ、便利だけど……私が触っても爆発しないわよね? 刹那? リーナさん?』

 

 姑との同居生活は、きっと色々と大変だろうなぁ……そう思うと、ある意味、この時代に来たのが自分だけで良かったかもしれない。

 

 

「どうしたの?」

 

「いや君という女性と一緒になった時のあれこれを想像していた」

 

 

 お袋が息災であったならば、という仮定だが……と付け加えると―――。

 

 

「けれどワタシは会いたかったわよ。セツナのお母さん。どんな関係になったのかなー?って考えちゃう」

 

「うーーん。多分、絶対に生活リズムが合わない可能性があるから嫁姑関係はまずまず変な感じかも」

 

 

 機械オンチすぎてセツナ以上にめんどくさいお袋をどう思うか……そこが焦点か。意味の無い想像ではあるが。

 

 そんなこんなしている内に刹那とリーナ除きの食事が出来上がったことで、全員が食事となる。

 

 

 なるのだが……。

 

「「「「「「………」」」」」」

 

 

 香辛料効かせすぎたのか、六つの視線がリーナと刹那の弁当に注がれる。確かに旨そうな匂いだろうし、用意された割り箸を用いての食事をするリーナの満面の笑みは、興味をそそるか……。

 

 

「―――食べます?」

 

「「「「「「いただきます」」」」」」

 

 

 その言葉を皮切りに回される重箱三つ。中身はとりあえず中華系統―――黒い『酢豚』に、カニ卵焼売、エビチリ(有頭)、そしてメインは中華おこわと、乾物を戻した海鮮ミニ饅頭。デザートに三不粘―――。

 

 母から教えられた腕は、鈍っておらず―――そして全女子を絶望させた。

 

 

「こ、これ遠坂君が作ったんですか? シールズさんじゃなくて!?」

 

「ええ、そうですよ中条先輩。あっ、その不格好な焼売はリーナが包んだものです」

 

「教えないでよ。というかいっちゃん最初に食べるとか、本当―――気遣いが嬉しいわ」

 

 

 中条先輩の言葉に答えつつ、受け取った重箱。遠慮したのかプライドが邪魔したのか然程減っていない。

 

 

「くっ、すまないシュウ……私の女子力が足りないばかりに!!!」

 

「女子力って何年前の単語よ摩利……けれど複雑になるわよね。これを男子が作ったなんて―――」

 

 

 誰に謝っているのやらな渡辺先輩に、七草会長が、呆れるようにツッコんでから黒酢と竹炭の酢豚を食べて、『美味しいのに絶望する料理…』などと言い残して顔を覆う。

 

 

「――――人生は分からないものです。まさかここで幻の『サンプーチャン』を食べられるなんて、幻のままでよかったのに」

 

「鈴音先輩、遠慮しなくていいのに」

 

「これから私の事はリンちゃんと呼ぶように」

 

「どういう理屈!? 白状しますが、鬼籍に入った俺の母親も『リン』なんで、勘弁してください!」

 

 

 最後の深雪はと言えば――――。

 

 

「私の淹れるコーヒー以外はこれといって好物としないお兄様まで、貪るように刹那君を食べている……これが逆境というものなんですね……!!」

 

「うん、何からツッコめばいいか分かんないけど、とりあえず第三者が聞いて誤解を招くような単語の抜けを止めなさい。私のステディを穢さないで」

 

 

 深雪に対するツッコミは少し怒っているリーナが担当してくれた。しかし、言わんとしていた達也は、海鮮饅頭が気に入っているようだ。

 

 メインだけにそれなりに数を作ってきた海鮮饅頭が次々と達也の胃袋に収まる。

 

 

「いや、何というかこれが旨いんだよ。それと心が落ち着くというか―――ただナマコやフカヒレの戻しが入っているだけなのになぁ。煮汁も旨いけど」

 

「笑顔で手放しの賛辞!! 深雪はもはやお兄様の妹である自信がなくなりました!!」

 

「なんでさ」

 

 

 2090年代の『妹』というのは色々あるのだなぁと思ってしまいながらも分からぬ理屈に、父から移った口癖が呟かれる。

 

 とはいえ……あまり見ない少し緩んだ表情の達也は初めて見るものだ。

 いわゆる『鎮魂饅頭』。即ち『心安らげる作用』を練り込んだ饅頭を好むとは―――この男、日常生活でよほどのストレスか何かしらの『緊張状態』があるのかと思う。

 

 

 それが色々と倫理観あやしい妹が貞操を狙ってくるとかでなければ、なんなのやらと思う。

 

 

 とはいえ、達也が食っているエビ饅頭を同じく食いながら少しだけ予想外の結果を知り、まぁまずまず昼食は終わりつつあるのだった。

 

 ・

 ・

 ・

 ・

 

 食後の緑茶を飲み一服。色々と女性陣をはっちゃけさせた昼食であるが、見事に重箱は空になってくれた。

 

 大判小判の山吹色のお菓子よりもよかったようで何より―――いや、本当に何かしら宝石のアミュレットを袖の下にしようかと思っていた。

 

 

「さて、刹那君主催の女のプライド砕きの宴も終わった所で―――本題に入りましょう。いやーお腹いっぱいで、正直話さないでもいいかと思っちゃうぐらい至福の時間だったわ」

 

「褒められてるんだか、貶されてるんだかわからない言い方ですね」

 

「やぁね。褒めてるに決まってるわよ。ではでは本題に入りましょうか―――」

 

 

 緩んだ表情と相好を立て直して七草会長が、机に直ったことで後輩である自分達も少し身を乗り出す。

 

 話してきた内容は概ね予想通りであった。刹那は知らないが、普通学校―――特に中等・高等学校ともなると成績優秀者で素行不良も特に見当たらない生徒というのは、学内自治の部門『生徒会』に誘われる。

 

 それは、生徒自治の色が薄い学校でもそれとなく『教職員』が薦めてくるらしい。

 

 

 よって選ばれたのは主席にして今年度の総代である司波深雪ということだ。

 

 

「これは毎年の恒例なのですが、新入生総代を務めた一年生は、生徒会役員になってもらい―――次代。つまり深雪さんたち今年度の新入生が進級する度に、変わる生徒会で一通りの仕事が分かっている人間を置いていく。つまりは後継者育成です」

 

 

 仕事の引き継ぎと同じく、そういう風なのはよくあることだ。ということは―――。

 

 

「中条先輩も、そうなんですか?」

 

「ええ、別にトップを目指したわけではないんですが……まぁ結果的に新入生総代になりました。先日の司波さんほど立派な答辞じゃなくて先輩として自信を失いかけましたよ」

 

「あーちゃん。がんばって! 私の跡を継ぐのはあなたなんだから」

 

「服部君じゃないんですか!?」

 

 

 告げられる衝撃的な事実(?)。どうやら前々から言われていたことではないようだ。頭を悩ませる中条先輩に申し訳ない想いをしながら、達也が『手本通り』の世辞を七草会長に言い、七草会長も『手本通り』の照れを見せて―――。

 

 

「お話は分かりましたが、リーナはなぜここに呼ばれたのでしょうか? 主席として次席のことを少し気に掛けたいのですが」

 

「シールズさんにも実は生徒会役員になってほしいのよ―――リンちゃん」

 

「はい―――こちらを」

 

 

 立ち上がっていた鈴音先輩から書類を受け取るリーナ。そこにあったのは英語の書類。それも公的文章のようだ―――。

 

 それを見せてから七草会長は神妙に切り出す。

 

 

「昨今の魔法師の現状は、知っての通りです。国の垣根を超えて反魔法師のネットワークは形成されて我々を人類社会から隔離しようとするイデオロギー的啓蒙活動は止まることはありません」

 

「………」

 

「魔法師は国外への渡航すら厳密に制限されている中、『アンジェリーナ・クドウ・シールズ』『遠坂刹那』というUSNAからの留学生を得られた好機を利用しないわけにはいきません。あなた達には、国と国―――その中にいる魔法師との橋渡しをしてほしいのです」

 

 

 意味は分かる。そしてこの英語の書類。ざっ、と見た限りではそこそこに専門的なものが書かれており、翻訳機に掛けても要領を得ない変換がされるだろう。

 

 だが、『言葉の裏』で知れることもある―――つまり七草会長は、自分達が『USNA』の政府上位からの命令を受けたスパイなのではないかと疑っている。その上位―――十師族の可能性もあるが。

 

 

 まぁまごうことなくスパイであるのだが―――どちらかと言えば『和合工作活動』……変な言い方だが、それがリーナと刹那が受けた任務でもあるから、問題ないことであるが―――針は入れておく。

 

 

「そいつはいいんですが、こういった活動が下火になっていた理由ぐらいは知っていますよね? いいんですか? USNAとてそこまで信じられる国家ではない可能性もあるんですよ」

 

「というと――――」

 

「少年少女魔法師交流会の惨劇―――大漢崩壊(ダーハンクライシス)

 

 

 ざわっ、と―――そうとしか表現出来ない声無き悲鳴が聞こえるかのようだ。それは触れてはいけないことだ。しかし―――自分の探り針に一番反応したのは……。

 

 

(―――確定ではないが、『関係』はあるといったところか?)

 

 

 勝手な値踏みと踏み込み過ぎたかと少し内省しながら、次の反応の為に空気を霧散させる。

 

 

「まぁ、そんな事を民主主義国家の典型たる我が国がやれば、大亜と『同じ穴のムジナ』になりますからね。あり得ない想像でした」

 

「全く―――とんでもないものを引き込もうとしている気分ね。けれど鋭い指摘だったわ」

 

 

 笑う七草会長だが、どことなく硬いものがある。それほどまでに自分の放った言葉は七草会長をも硬くさせたのだ。

 

 

「それじゃリーナ、何か日本語翻訳で疑問が有ればメールで―――」

 

「待て、まだ話は終わっていない。そして……まさかお前たち『男二人』、このまま何も無しでいられると思うなよ?」

 

『『―――二人?』』

 

 

 妹と彼女―――とりあえず立身出世を祝って万々歳とはいかない達也と刹那がお互いを指さす。

 

 どういうことだ? と目を見合わせてから渡辺委員長に話を聞くと―――。

 

 

 現在、風紀委員の枠が余っており―――そこに、達也と刹那を入れたいとのことであった。

 

 

「あれ? 確か森崎は教職員枠とやらで風紀委員内定とか『えばって』ましたよ」

 

 

 昨夜、あの校門正座の際の渡辺摩利と森崎駿との会話とその日の森崎の言動(聞きたくも無かった)から、一年生からの枠は一席ぐらいは埋まっているはずという事実を類推したのだが……。

 

 

「その森崎の能力に不信感を覚えた連中が多くてね。委員の中にはクイック・ドロウなんて小手先かよ。などと言うのもいたぐらいだ」

 

「俺のは異端の術ですよ?」

 

「そうだな。だが想定外の場面で、千鳥足を演じるようでは―――な。何かしらの反撃を期待したかった」

 

 

 嘆息しての腕組みする風紀委員長。とことん厳しいジャッジである。だが、地力を出せないような状況では無かった。マナも独占していなかったし。

 

 まぁ干渉力で上回っていたのは確かかもしれないが……。

 

 

「―――で、刹那の事情は分かりましたが、何で俺まで? 委員長もご存知かもしれませんが俺は実技が不得意だから二科なんですが?」

 

「確かにな。入試結果を見れば、デスクワークでならば司波やシールズよりも使えそうだが―――、それでも生徒会規約がある。ならばこんな『優秀な人材』はウチで引き取りたいということだ」

 

 

 生徒会規約。淡々と読むスズ先輩の言葉で、一科二科の壁を知る。何だかまだアメリカが南北戦争―――、もしくは『第二次世界大戦中』のような『人種差別』からの『職業規定』にも似た行為だ。

 

 生徒の同意や賛意ゆえのポピュリズムに至っていないが、これはこれで『独裁』『独占』と言ってもいいだろう。

 

 

「外側からの勝手な意見ですが、あまり好きになれそうにないですね」

 

「そうね。私も好きじゃないわ……こんな規定があるから、人は人を差別するのよね……」

 

 

 三年生にも当然の如く一科二科の区別はある。別に七草会長とて二科に友人や友人になりたかった人間がいないわけではないだろう。

 

 昨日の深雪の如く―――だが、最後に彼女が選んだのは『こっち』にいることだった。リーナの言葉に乾いた笑みを見せる。

 

 

(問題の根っこはそこじゃないと思うんだよなぁ……)

 

 

 刹那の勝手な推測を余所に達也と渡辺委員長の言葉は熱を帯びる。

 

 

「司波、お前は言ったな。眼には自信があると―――ならば、それは校内での規定違反の魔法使用が『起きる前』の『カウンター』として使える技能だ」

 

「……風紀委員の仕事の詳細は、まぁ勝手な想像ですが、刹那の立ち回りと先の言葉から何となく分かります」

 

「洞察力もある」

 

 

 面白そうな笑みで褒める委員長に苦い顔のまま話し出す達也。

 

 

「……けれど俺には刹那のように、それを『無効化』する『技能』が無いんです。敵性攻性魔法が放たれたとして、それを防御する手段が無い。それでは犯罪抑止につながりません」

 

 

 ええー?ほんとにござるかぁ? と思うのは、俺だけではない。

 

 何となくではあるが、達也とて『隠し手』ぐらいは持っていそうだと思う。なんせさっきからそんな『兄貴』の生命の危機にも直結することだというのに、深雪はニコニコ笑顔。

 

 

『お兄様ならばきっと勤めを全うできます!』

 

 

 そういう無言でのメッセージを誰もが受信する。―――まぁ気持ちは分かる。入学式前のあの深雪の態度ならば、これは予想できた話だ。

 

 ともあれ、深雪、リーナは生徒会での仕事を了承。

 

 

 結局、達也は放課後、もう一度ここに来いと言われる。腕試しをするということになった。同時に刹那も―――腕試しに巻き込まれる。

 

 

『使い魔以外のお前の『白兵戦能力』が知りたい―――それ次第だな』

 

 

 この人(渡辺摩利)、ただ単に戦いたいだけではなかろうか?―――そう思いながらも、どうするか検討する。

 

 

 その思案が分かったのかリーナは少し不安な顔をして上目遣いの問いかけ。

 

 

「出来うるならば、学校活動でも、そばにいられるような立場でいたい。ダメかな?」

 

「―――分かった。んじゃ風紀委員。やってみますか」

 

 

 ミスリルのガントレットに乗馬鞭に聖銀のコートで『去れ、人蛭』『時計塔の法の下に貴様らを処断する』―――そういったことぐらいは『見てきた』から、まぁ出来なくもないか。

 

 不安がるリーナの頭を叩くと身体を預けてくる。その柔らかさと重さを感じながら廊下を歩くと―――。

 

 

『ぜ、全身が砂糖製造器に!!』

 

『五十里と千代田の後にはこいつらかよ!?』

 

「「「リア充爆発しろ!!」」」

 

「「「リア充爆発の魔法を開発したい!!」」」

 

 

 ……とりあえず一年棟に戻るときには離れ――――られないぐらいに腕を取って来たのでB組に入ると――――。

 

 

「だから自重しろぉおおお!!!」

 

「紅葉の言葉は無視して二人とも! むしろイチャコラしちゃっていいわよ!! B組のクラステーマはあらゆる『愛』なのだから!」

 

「勝手に決めるな。シャーロキアン!」

 

 

 むしろ明智という苗字から、乱歩ファンの方がいいのではないかと思う。桜小路の絶叫交じりの注意を受け流しながら、午後授業の準備をする。

 

 

「で、今日は例の二年生来た?」

 

「五十里先輩だけなんだけど『ちょっと話聞きたかったんだけど残念だなぁ。またの機会を待つよ』とか言っていたよ」

 

 

 準備をしながらトミィに聞くと、何か思うところあったのか五十里先輩だけが教室に来たとのこと。

 

 何用かな? と思いながらも放課後にも予定が入っていて、会えないことが少しだけ申し訳なくなるのだった……。

 

 

 ・

 ・

 ・

 

 

 そして放課後、再び何かの因果か途中で深雪、達也と合流しての生徒会室へと向かうと、そこには昼食時にはいなかった面子が加えられた形で生徒会役員共が存在していた。

 

 

 服部なんちゃらハンゾー。という……面倒なので服部副会長がいて、そのとりあえず甘そうなマスクで深雪に話しかけて、達也を無視。

 

 なんて分かりやすい男……器ちっちゃっ。という感想が出るのは仕方ない。一番怒っているのは深雪なので何も言わないでおくが。

 

 

「五十里と千代田が色々と迷惑掛けているようだが、まぁいずれ会ってくれよ。遠坂君、シールズさん」

 

『『前向きに検討させていただきます』』

 

 

 なんて官僚的答弁。それを分かった苦笑いの七草会長にも関わらず、服部副会長はその言葉を額面通りに受け取ったようだ。

 

 そんなこんなで、風紀委員会本部へ移動。自分と達也を伴って『真下』の部屋へと案内すると言う渡辺摩利に待ったを掛けたものがいる。副会長である。

 

 

 発現の趣旨としては『一年の二科生――ウィードを風紀委員に入れるわけにはいかない』そういうことである。

 

 それに対して一年四人を無視してヒートアップする上級生達。恐らく達也としては、入りたくないが、それでも深雪のことを考えて―――。

 

 そう。刹那がリーナの心を考えて、風紀委員入りを決意したように、達也にとっても越えてはいけない『ボーダーライン』があった。

 

 

 身贔屓、兄の真の実力―――断片的な会話。その中で誰の心が痛んだかを、虎の尾を踏んだことを服部副会長は認識していなかった。

 

 深雪の心が―――悲鳴を上げたところで、身を挺するように達也は二人の間に入りこんだ。

 

 

「服部副会長、俺と模擬戦をしませんか?」

 

 

 言葉だけは丁寧なのだが―――どちらかと言えば、『ワシのスケに生言ってんじゃねぇぞ。そこまでツラ貸せや』(1980年代風)―――ようはメンチを切っているようにしか聞こえない。

 

 そんな言葉の裏を読んだ勘のいい人間達は―――。

 

 

((((今期の新入生、ちょっとキレすぎじゃない!?))))

 

 

 刹那に比べれば導火線が長いように見えた達也もそうであったことに七草会長含めて上級生女子四人の感想が一致した瞬間だった。

 

 それでも無軌道な若者で無い事を喜ぶべきかどうか悩みつつも――――。

 

 

「面白くなってきたわねセツナ!? これがニッポンのバキ道というヤツなのね!」

 

「ああ、その通りだリーナ。男と生まれたからには、誰でも一生の内一度は夢見る『地上最強の男』……」

 

「グラップラーとは、「地上最強の男」を目指す格闘士のことである! 燃えるわ! ファイティンマイセルフ!!」

 

 

 どちらかと言えば深雪の為に戦う達也にそれは違うんじゃないかと思うも、潤んだ眼で達也を見て、睨みあう達也と服部の前では無意味だったが―――。

 

(ようやく見れるな―――)

 

(戦略級魔法師容疑者1号 『タツヤ・シバ』の実力を―――)

 

 

 そんな賑やかさの裏でUSNAスターズの間者である二人の冷静な思考が、達也を射抜きながらも舞台は燃え上がる戦場に移るのだった……。

 

 

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