魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~ 作:無淵玄白
フフフ、今日のfateは―――きっと月姫の『初アニメ化』を発表してくれるはず。
fateじゃねーじゃんという意見は分かる。けども期待せざるを得ない。
EXTRAとCCCのハイグレード移植と同時に月姫ををを。
と思いながら来年は、多くの人が健やかに暮らせるように、健やかな気持ちで私の作品を暇つぶしに読んでいただければと思いつつ、本年はありがとうございました。来年もよろしくおねがいします。
『―――以上が現在のUSNAでの状態だ。ジード・ヘイグを捕縛せんと、現在は関係各所が動いているところだ』
「まぁ『お役所』のショバ争いで取り逃がさなければいいんですけどね」
『抜かるなよ―――とは伝えておいたがな。まぁいい。キミの意見を聞きたい。何故、アトラス院は、こんな『大掛かり』をやったのかをな』
「それは容疑者を確保してから吐かせることですね。ただ一つ言えることは、エドワード・クラーク氏の言う通り、彼らにとっては『人理』の進行こそが主題であって、各々が見てしまった『滅び』を覆すために、とんでもない研究を進めているはずなんですけどね……」
時計塔の魔術師が『魔法』を手に入れることで、霊長の滅びを覆すべく努力している一方で、アトラス院は、人体改造・人造人間の製造・星を焼灼するほどの兵器……etc。様々なもので滅びを否定していこうとする集団だ。
その在り様は、魔術師というよりも科学者と言える。
「シオンが語ったこと―――アトラス院の研究や理念に変化が無い限りは、彼らにとってこの大掛かりな実験は、この世界の人理を『進行』させるために不可欠な行為のはず。犠牲者をこれだけ出して―――いや、もしかしたらば、その犠牲者の中には、
『全ては未定か。だが、アトラスが全てを『読みきった上』で、ここまでをやったことは間違いないのだろうな……今回ばかりは、手のひらで踊らされたなセイエイ?』
「別に俺は、盤面を動かすプレイヤーであった時なんて無いですよ。来た敵を、見据えた敵を叩くのみ……まぁ対処療法でしかないのは理解できます」
画面の向こうで苦笑する
「今更ですが我々の『任務』は未だに続行中なので?」
『どうだろうな。うっかり書類上のミスで『退役処分』『契約終了』なんてことになっているかもしれないぞ?』
笑いながら言うジニーお嬢ちゃんに、刹那の隣にいたリーナが『え゛』と顔を青くする。
退役処分―――除隊処分。不名誉除隊とまではいかないが、言葉尻をとらえるならば『お前クビ』と言われたようなものだ。
組織に切り捨てられてきた刹那にとっては慣れたものだが、リーナにとっては初の体験だろうが―――。
「……そういう『予定』なんですね?」
ヴァージニアの言葉の裏を読むと、苦笑しながら様々な事情が暴露される―――。
『そういうことだ。昨今のUSNAでは、『皮肉』な話だが『FEHR』が、若年の魔法師が軍に強制徴兵されることは、明確な人権侵害であるという主張をしている―――元々、現役・退役軍人の中にもそういう勢力はいたのだがね』
そもそも刹那からすれば、ベトナム戦争を契機に国民の徴兵制に変化が出た米国で、再びの徴兵軍人が出るなど、いささか不可解な話であった。
世界的な寒冷化で、食うに困った国の人間たちが国境を犯して襲いかかることもあるが……。
(まぁ第三次世界大戦というものが、それだけ人的資源を消費する恐ろしいものであったということなのだろう)
……だが、その結論もちょっと妙な気分だ。自分の前の世代―――大凡2000年代前の90年代後半には、武器のハイテク化は当たり前であり、歩兵派遣、陸上部隊の投入とは本当に最終手段。
その陸戦とて、刹那の生きていた時代ですらドローン兵器が戦場で使われていたのだから、ロボット兵器が出てくるのはいつになるかと内心ワクワクしていたのだが―――まぁその前に世界から逃げ出していたわけだが。
(改めて考えると、如何に『汎人類史』とは違う事象が多くあったとはいえ、ちょっと『道理』に沿わないことばかり起こってるよな……)
まるで誰かによって『都合よく』改竄された世界を見ている気分だ。
(だが剪定事象にならない程度には、これもあり得た歴史の一つとして、『宙の理』から認識されているんだろうな)
何気ないことを考えつつ、もしかしたらば―――それこそがシオンの『目的』に繋がるのかもしれないと、考える刹那であった。
『なにはともあれ、今は健闘を祈るとしか言えんな。マクドナル大将やペンウッド元・中将などは、シリウス、いいや……アンジェリーナちゃんを戦場に置きたくなかったんだからな』
その2人の老将は刹那もよく知っていた。自分のようなプライベートアーミーなんぞを呼びつけるなんて、何者だと想っていたが……。
『―――2人はキミのお爺さんと共に戦場にいた存在だ』
結局の所、九島健ことケン=クドウも、WW2の日系人部隊のように合衆国に渡った直後は兵隊として徴用されてしまい、その後に合衆国市民としての永住権―――昔で言えば『グリーンカード』と呼べるものを発行してもらい、ようやくであったそうだ。
鉄血を捧げることで生きる権利を勝ち取った先人の苦労は、浅くとも想像するしか出来ない。
『若年の魔法師徴兵制度なんて、本当に有名無実化していたんだ。何せ、魔法師としてのスジを伸ばすには、相応の教育機関に入れなければならなかったんだからな。言っては何だが日本の十大研究所のように、遺伝子に手を加えたり受精卵に変容を促したり―――強烈にそこまでやりたがる人間はいないんだよ。合衆国はプロテスタントの教書を読み上げる国なんだぞ』
本能的な恐怖を覚えているヴァージニア大佐。この人が『四葉』の関係者と面会したらば、『どうなっていたこと』かと思う。
「そこに―――リーナが現れたと?」
『……運命の皮肉だな。そして、やってきた娘っ子は予想外に兵隊になるために、『やる気満々』すぎた』
「……やる気満々過ぎて訓練施設を全壊させたりもしましたねー……」
「セツナー!!!!????」
『……ああ、それも除隊処分の理由に入れとこう……』
「
完全に涙目どころか泣きながら叫ぶリーナに、何も言えねぇ。
パトレ○バーの太田が実在すれば、こんな感じだろうなどと『皆』して言い合いながら……。
全員から
なんでさ。
『まぁもう少し先の話だ―――それに、アルビオンの盗掘が各所でバレつつあるらしい』
「流石にあからさますぎましたかね」
『そういうことだ。その際にキミの所属がUSNAの兵隊―――傭兵待遇とはいえ、それはマズイ。そして、そこに『シリウス』が着いていたなども更にマズイ―――その辺りも、だな』
総合して考察すると……。
―――USNAは、そのうちアルビオンの盗掘で各国から袋叩きに合うかもしれないから、今のうちにトオサカをフリーランスにしてしまえ―――。
そういう思惑だ。政治の世界の腹蔵ありすぎるもの。
権謀術数渦巻きすぎだが、何となくは理解できた。ただそれだけでシリウスまで手放すというのも、何とも大盤振る舞いな話だ。
予備役扱いで手元にあった方が、色々と面倒はなさそうだろうに……。
『では通信を打ち切る。兵隊の上下の関係ではなく、ただの知り合い同士で話が出来る時を待つよ』
その言葉で通信は終わるのだった……時刻は現在3時すぎ―――。
現在時刻に至るまでにあった話。特筆すべきことは―――。
「まさか本当に四葉だと宣言するとはな……」
「アラ? タツヤとミユキの
「いや、せいぜい『分家筋』程度、『お家騒動に巻き込まれたくない』とか、お茶を濁しておけばいいのにとは想った。まさか深雪が次期当主候補とまで宣言するとは―――」
笑みを浮かべて問いかけるリーナに、そう返しておく。事実、達也にしては随分と明け透けに語ったものだと思う……。それに対する反応は―――。
「幾人かはそれほど衝撃は少なかったな」
あれだけ色々とあったのだ。
特にエリカとレオは、若干ながら正体を看破していたのだから、秘密などあってないようなものだった。
「―――今夜、『何か』が変わるのかもな」
予感でしかないが、『何か』は変わる。それが後々の重しとなるだろうことを予感してしまう。
「シオンは本当に何を目的にしているのかしら? いいえ、ソレ以上に―――」
「ソレ以上に?」
「チアキやエイミィ達に見せていた、アノ姿は
「………」
気鬱を混じらせたリーナの問いに、答えるべき言葉を刹那は出せない。
魔術師としての本道で言えば、シオンの対応は至極『真っ当』だ。だが、それが人間として正しいかどうかは別である。
ロボ研の面子と積極的に交流して、ピクシーを戦闘用ガイノイドにする手際。
対魔人『司波達也』専用兵装の開発に邁進した姿……。
B組の色んな面子と交わり、その長い紫苑色のおさげを弄られていたりしていたその姿……思い出せば、彼女は―――短い期間で既に『友人』と思えていた。
そして、刹那にとっては吸血鬼退治における『戦友』であり―――元の世界との縁を感じさせる子だった。それだけに―――まだ何かを信じたいのだ。
(甘いな。俺は……)
魔術師ならば、
どうしてもそこには至れないのだ……。
そうして思い悩む面子は他にもいるのだった……。
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「僕は―――少しだけ寂しいな」
「ミキ……」
千葉道場に集まりながら呟いた言葉は、この上なく寂しいものを感じさせた。
だが、それは大半の人間が共有している感情であった。並行世界からの
あの四人だけが秘密を共有していたのだ……という事実にショックを受けた。
刹那や達也絡みでこの千葉道場に集まったのは、横浜マジックウォーズの後と同じく。
道場にいる面子に少しの違いはあるものの、あの時と殆ど同じだからこそ、その言葉は寂寥感を持っていた。
「けれど幹比古くん……」
「分かるよ。柴田さんの言わんとしていることも―――………けれど、知り合った時点で打ち明けられるのが、ただ2人だなんて」
慰めるように美月が声を掛けてきたが、幹比古は少しばかり納得できない。
友人だと想っていた。
掛け替えのない繋がりだと想っていた。
一高卒業後は、もしかしたらば会う機会が少なくなるかもしれない。
確かに昔からの通信機器の進展で、言葉を交わすことは容易いかもしれない。
だが、それでも直接の顔を合わせてこそ分かることもあるのだ…ようするにセンチメンタルなのだ。
それなのに、最初っから……。すべての秘密を暴露しろとは言わないが、せめて―――達也は、自分の家のことを―――。
「まぁ色々あったのはミキでも分かるでしょ? 四葉の歴史は血風驟雨の歴史だもの。あんまり語りたくないってものもあるでしょ」
「けれどあそこまで命を預けあったというのに……」
「その気持ちは分かるけどな。けれどよ―――本当に達也と深雪さんが、『有力魔法師』の家系じゃないなんて、誰も想っちゃいなかったろ? 特に一色さんは、ナンバーズの落胤ぐらいに推理は進めていたんだし」
レオの取りなした言葉で話は違う方に向けられる。向けられたのは三高の一色愛梨である。
「そこは司波さんたちの失策ですよね。市井から出てきた強烈な『第1世代』というには、容姿が整いすぎていますしね。
要するに『平凡』を装えていない。せめて織田信長のように『傾いて』『本質』を悟らせないぐらいがいいはず―――もしくは、セルナのように開き直って目立ちまくるぐらいが良かったんですよ」
「いやー、あれはあれで結構、問題はあるような気がするぜ……」
何故か自慢げになる一色愛梨に対して、レオは少しだけ苦笑しながら考える。
結局の所、刹那のやったことは世界全てをペテンにかけた行為……大掛かりな詐欺も同然だ。しかし、この世界に『痕跡』や確かな足跡が無かっただけで、その『歴史』を確実に刹那は見聞きしてきたのだ。
だからこそ、この一年は一日一日がカーニバルも同然であった……。
エルメロイレッスンの主催―――。
全ての魔法科高校に目覚めよという
……刹那の記憶に出てきた『ナマ』のロード・エルメロイⅡ世の言葉が、全員の脳裏に蘇る……。
―――そうしたいならば、そうしろ。
―――『その方がいい』などと『妥協』するような生徒は、私の教室には置かない。
―――ライネスにもそれは徹底させている。
―――刹那、それは
―――ただ、
―――覚えておけ、それは『私の生徒』には最初に禁じていることだ。
―――私の教室に籍を置くからには、自分がなすべきこと、やるべきことは嫌でも考えてもらう。
―――たとえ、その結果が私やライネス、もしくはフラットと反目するものであったとしてもだ。
その心に、同じくして声を張り上げたエルメロイⅡ世の弟子の言葉が蘇る……。
―――みんな……平河も、レオも、エリカも、やりたい事あるんだろう?
―――だったらば、その為の指針ぐらい、俺はだしてやるよ。
―――大きな事は言いたくないが、着いてくる気があるならば、道は俺が切り開く。
―――誰に笑われたっていいさ、笑われても何度でもやってやる。
―――それが出発点からでもな。
―――何も確かめずに、掴めるものがないまま、熱を生まずに過ぎ去る人生なんてイヤなんだよ。
―――俺もお前たちも。
思い出して、あの言葉はロード・エルメロイⅡ世こと、ウェイバー・ベルベットからの言葉を胸に刻みつけてきたからなのだと思えた……。
……そして『アルズベリ村』という吸血鬼の
「……壮大なものよね―――両親を『失った』吉祥寺君や、私みたいな両親から『逃げた』存在とは違うことを思い知らされた―――」
自分が世界で一番不幸だなどとは思わずとも、少しだけ可哀そうな子であると思っていた栞は、見せられた遠坂刹那の半生から己を恥じていた。
「栞……」
「立ち向かうべき運命とか、そういうものがあるかは知らない。今となっては、お父さんやお母さんが佐渡ヶ島での戦いを避けたことを私は責めないし、責められない―――けれど、何か出来るのならば、私はそれを為したいと思う―――正直言えば、おしっこチビリそうなぐらい怖いけど」
「安心せい! ワシも同じじゃ。だが、人の願望を嫌な形・望まぬ形で再現するタタリという死徒は、ワシの心根が許せん。それは伊吹童子の所業も同然。だから戦う!!」
女の子としては少し汚い軽口を叩き、少し眼を伏せつつも前を向いた栞に対して、沓子も同じく激励をする。
千葉道場に集まった面子は、最後の方に遠坂邸にて話していたことを思い出す。
―――昨日以上の惨劇の修羅場が待ち受けているかもしれない―――
―――ついてくるかどうかは、己で考えてくれ。その判断に俺は何も言わない―――
「着いてきてくれ。とは言わないんだよな……」
「ナメられてるねぇ私達は……」
それを優しさと取るかどうかは人それぞれだが、しかし―――。
「まぁ、達也くんにも事情はあるんだろうし、あんまりカリカリしないでおきましょうよ。二年の頃にはどう考えても『バレていた』と思えるもの」
現代魔法師は、秘密主義を魔術師と同じく是としているが、あの2人の場合―――『隠しきれぬ異常』を常々発揮していた。だからこそ、言わずとも気づく時は気づいただろう……。
「それに一色さんの場合、『おまいう』すぎるでしょ?」
「そうですわね。お姉様をお兄様として国防軍に入れていたからには、司波ご兄妹に掛けるべき言葉を持てませんわね」
エリカのからかい半分の言葉を風と流す愛梨。
何はともあれあの兄妹や家に対して『恐怖心』をもたげるには、ちょっとばかり『異常』に慣れすぎた感はある。
四葉は大漢という中華大陸の半分を廃国、国家としての体を完膚なきまでに潰したが……。
根源接続者、サーヴァント、死徒、ビースト、セファール、ヴェルバー……これらが元気いっぱいで一体でも大陸に紛れ込めば……想像に難くない結果だ。
つまりは―――そういうことだ。何か正直、四葉のやったことが矮小化されてしまうぐらいに、この世は広すぎて深すぎるのだ……。
(刹那の説明と坂本さんの言葉によれば、世界には破滅を止める機構が自動的に具わっている。それが英霊などだという話だけど……)
ソレ以外にも、抑止力に後押しされた現世に生きる『只人』『只者』というのも存在している……。それは、自覚症状なしに、そういうことを行う。ひょっとしたらば、四葉達也、四葉深雪という存在に対する抑止力とは―――。
「――――――」
自分で出した仮説だが、それが真実であるという確たる証拠はない。だが―――。
(『どうでもいい』とか言ってきそうだよな)
結局の所、幹比古が小者なのだ。それを自覚しつつも―――どうしても小者としての生き方しか出来ない相手の代弁者になってやろうと思うのだった。
出来うることならば、幹比古もあの四人のように大立者になりたいという願望を持ちながら―――時間は進む……。