魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~ 作:無淵玄白
カレンイベントで思ったことだが、神霊擬似鯖でも『主人格』がメインになることも在り得る。
つまり! ちょっと前の拙作のイシュタル・エレシュキガルイベントは、ありえない話ではなかったということだ!!(汗)
まぁ―――程度としては振り切ってしまっていたしなぁ。ちょっとカレンとは違うか。
感想返信は、後にやりますので、まぁ今話の感想も、返信なくても書いてどうぞです。
ガシャガシャという金属がすれ違う音が響く。まるで赤穂浪士の討ち入り、本能寺に赴く前の明智軍の如き様子が東京のいち剣術道場で行われていた。
「急げ! 戦いはすでに始まっているのだぞ!」
「「「はっ!!」」」
師範代であり、現在―――この『剣士隊』の総代表となっている国防軍士官『候補生』である千葉修次は、焦燥してしまう心を『門弟』ではあるも、自分よりも軍歴が長い『上官』にぶつけてしまったことを恥じる。
だが、それは仕方ないことではある。そう周りは想っていた。だから何も言わずに戦支度をやっていた。
それを見てから、修次は家の庭に出て遠くを見た。
遠くと言っても都内であることは間違いないのだが。
ここからでも見える―――常人でも視界に入れてしまう強大な魔力のドーム。それは不吉なまでの『結界』として、東京を混乱に陥れていた。
「……現場のモニタリングは出来ないんだよな?」
「ええ、『遠く』で観戦していた藤林さんの作業車でも何も捉えられていない―――あのドーム……魔力の壁の向こうでどんなことが起こっているかは、皆目見当がつかないわね」
修次の疑問に答える金髪の美麗騎士。
以前まで、その姿は多くの女性軍人を魅了するニッポンの聖騎士などと言われていたのだが、『女』であることが分かってからは、ニッポンの姫騎士などと呼ばれている……どちらにせよ人気は高いのだ。
一色
「愛梨ちゃん大丈夫かしら……?」
「僕も妹が心配だ」
本当であれば、今すぐにでも自分たちはあのドームの向こうに飛び込みたいのだ。飛び込めるかどうかはとりあえず置いておくとしても。
だが、ことは既にそういった気侭を候補生2人に許してはくれなかった。
正式な国防軍の作戦という『認可』が降りた以上、修次もランもそういうふうには動けなかったのだ。
ともあれ集結した人員の装備確認は終わり、そこに実姉である早苗と家人たちが『握り飯』を大皿に乗せて道場内に持ってきた。
本格的に赤穂浪士の討ち入りも同然だが、流石に酒は出せないので、水分補給は各自で『適宜』、あちらでの排泄も考えねばならないからだ。
「修次さんもフローラさんも、どうぞ」
「ありがとうございます姉上」
「ご馳走になります」
まだ戦いにも出ていないというのに、腹が減っていたことに修次は苦笑する。緊張しているのだろう。
一際大きな『おむすび』を片手で取って腹に入れる。同じくフローラ……ランもまたかっ喰らって腹に収めた。
コンディションはお互い同じなようだ。そして―――少しだけ中にいる人間たちを慮って修次は重い口を開く。
「姉上、これから赴く戦場には多くの若人たちが戦っております。彼らのためにも―――」
「既に、『保存が利く』ように握った
余計なことは言わず、ただ武家の娘として礼節を正した一礼と同時に姉の言葉。後ろには最新型の弁当容器に収まったものを確認。
道場から出ていく早苗が見えなくなると同時に、ランは『いいお姉さんじゃないか』と言ってくるが―――
だが、それでも……早苗とて本気で
そういう希望が―――弁当にある大型おむすびなのだから。
結ばれた縁は、断つことは容易いが、再び繋ぐことは難しいのだ―――。
と、おセンチに想っていたらば、状況に変化が現れる……。
「ナオツグ! あれ!!」
ランが指で示す空に人型の飛行ユニットを確認。
それは『一点』を目指して夜空を翔けていく。
「空を飛ぶユニット―――独立魔装じゃない……」
「白鳥の羽と槍を持つ乙女、ヴァルキリーなのか?」
ランの言葉で一つの報告を思い出す。それは兄と妹が関わった南の島での最後、実験体の少女たちが纏った英霊の姿だったはず。
乱痴気騒ぎの様相のレベルが、想定よりも高いのだと知れた瞬間であった―――。
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『驚いて声も出ない―――そういった所か。だが、そちらの都合にこちらは関知しない。しかし、一言だけ申せば―――アトラスの錬金術師、お前たちの尽力には感謝しよう。
お前達には世話になった。我々はこの『ヘルメス』に潜み、この日のために営々と力を蓄え続けていた。この巨大な霊子記録媒体は我が身体のよき隠れ蓑であり、記念すべきこの日を迎えられたのも、諸君らの愚鈍さのおかげだ』
「こんなものが……我々のヘルメスに存在していただと!?」
驚愕するシオンは、目を見開いて状況に解を求めようとする。
『然り。だがお前達が気づかぬのも無理はない。何故ならば、我ら魔神柱が潜めたのも1999年―――そう。貴様たちの歴代でも特筆すべき院長『ズェピア・エルトナム・オベローン』が、『ヘルメス』の素体となった瞬間からだったのだ』
「―――どうやら1999年というのは、この世界にとっての『分岐点』だったそうですね……」
1999年―――そこからこの世界の人類史は『変容』を遂げた。
終末を叫ぶ結社の核兵器テロを防いだ『超能力者』のコピーを作ろうと、生命倫理を侵していった。それこそが、アトラス院長の絶望を加速させた―――多分、『早すぎた』というところなのだろう。
『―――未来の惨憺たる『カタチ』に絶望していたズェピア・エルトナム・オベローンが、己をただ一つの生体頭脳として院の装置に供してから、遥か彼方の未来に影響を残す道を選んだ。しかし、ズェピア・エルトナムも理解していなかったのだろう―――
こちらを置いてけぼりにして会話は続くが、何となく理解出来た限りでは―――。
―――アトラス院ザマァ―――
などと言いたくなる。いや、人の不幸を喜んではいけない。そもそも、あいつらには何の害も及んでいないことを考えれば、やられた限りだ。
『しかし、こちらとしても全てが意のままだったわけではない……ズェピア・エルトナムも、霊子分解される中で私に気付き、ある種の『リライト』も行ってきた。つくづく忌々しい限りだ……一秒もない内に私の邪魔をするとは……アトラス院の錬金術師―――』
『前』にも錬金術師に『やられた』らしき発言をするハルファスだが、こちらとしてはわからん限りだ。
『魔法師―――亜麗百種の出来損ないが世界を固定化するというのならば、『変化』の種子をこの世界にもたらすべく、多くの『干渉』がなされた……私や私以上の破滅意志を根絶するべく―――まさしくせめぎ合いの限りだったが、しかし―――私は勝った……』
感慨深く語る魔神柱ハルファスだが、何一つ同意も共感も出来ないままに、話は続き―――。
『そして! 今日!! この時を以て私の仕事……いいや、違う! 私のやろうとしていることは仕事などと言えるものではない!! そう……これはまさしく―――
その宣言とも言える言葉を最後に魔力が高まる。明らかな攻撃準備に対して、こちらも準備万端―――とは全くいっていないのに……。
「遠坂、一旦引き上げることは出来そうか?」
「無理でしょうね。魔神柱は、こちらを敵視しています。同時にあの高さでは、攻撃の全てが東京の建物を薙ぎ払いますよ。水平射撃のブレスの効果範囲がどれほどかは分かりませんが……」
十文字の退却可能かどうかの言葉に対して、そんな説明をする。
あちらとしては、ここで最大戦力を逃すまいと攻撃をしてくる。背中なんぞ見せようものならば、9つの柱がどっからか現れて不意打ちを食らわせてくる。
それでもダメならば、東京全てを巻き込んでの『家探し』を実行するだろう。
「まぁオレ一人を殿にして、皆さんが装備万端で戻ってくるというのならば、やりますが」
「ソンナ事デキるわけないでしょ!! そもそも、それで戻ってこれたとしても、最大戦力がロストした時点でこっちの
「俺もリーナに同感だ。この世界で、お前以外にこの事態に対処出来る存在はいないんだ。お前を失う、お前の能力を損なうことが、最大の敗着の一手だ」
情理含めて、それを否としてきたリーナと達也にほぼ全員が同意をする。
ちょっとどころか、かなり嬉しくて涙が出そうだ。
「……まぁ正直、魔法協会が総力を挙げても石礫投げほどの効果すら無理そうだが」
「それぐらいは、やらなきゃ―――本格的に路傍の石になりかねないわよ」
殆ど全員が戦うことに前向きだが、その一方で戦える力に乏しいものたちもいる。
(守りながらも攻める―――やれるさ)
『この私を倒すために、
明らかな攻撃意思の表明。させない。として阻止行動に入るも……。
「ずべらっ!!」
「進撃は少し待ちなさい。初撃の対処は私がするから、アナタのターンは
足先を引っ掛けられて盛大に転ぶ刹那。やったのはアルクェイドである。
そうしている間にも、竜の鎌首よろしくなハルファスのチカラは高まり―――。
『貴様らの後ろにいるものたちから滅してくれよう』
竜の顎が開かれ、そこから盛大なまでの空気と魔力を吸い込むハルファス。
ドラゴンブレスの威力は伝説に語られている通り。それを再現するのがソロモンの作り上げし伝説の魔神であるなど―――。
鎌首を銃身砲身のようにして、遠くに向けている様子が不吉な限り。
「熱量急速に増大」
その言葉―――誰が放ったものかは分からないが、言葉のあとには放たれる渦巻く火線。
遠くを一直線に狙ったとしても、こちらにも届く熱波熱風とが圧となって周囲を掻き回す。
誰かの悲鳴が聞こえるが、誰もが己の身を守るので精一杯だ。
まるで天変地異のそれは、『あの戦い』でも終ぞ見なかった火術の威力―――。
全てが終わる前から刹那は放たれた方向。咆哮をあげながら放たれた火線の終点を見届けた。
目が乾ききるかのような痛みを覚えつつも、途上の草木を焼灼しながら放たれた場所は―――。
幹比古とレティシアが呪文を唱えていた『舞台』だ。そして広がっただろう惨状に血の気が引き、すぐさま怒りで血が上る。
「―――アルクェイド・ブリュンスタッド!!!」
「ん? なにー?」
この状況を演出した一人である女に掴みかからんと近寄るが、彼女は何一つ意に介していない。
ふざけるな―――と言う前に―――。
「――――セ―――ツ―――ナァアアアア!!! 抱きとめて!! 銀河の果てまでぇええええ!!!」
……今日は何かと落下する連中(ナマモノ、司波兄妹)が多い日だ。そう想いつつも上空から淑女よろしく、パラソルでも広げているように、聖旗を広げながらやってくるのはレティシアであった。
そのレティの後ろからやってくるは、飛行するピクシーに乗る光井と、そのピクシーから延びたアンカーに必死にしがみつく幹比古の姿。
それに比べれば、レティの姿勢は、膝を曲げながらのその着地フォームは令嬢らしいものだが―――。
「自分で着地出来るだろ……」
と、想いつつも、一応の指導役として、レティシア(英霊武装)を空で受け止めてから地上に舞い戻る。
「いやー危機一髪でしたねー。何とか『忠告』に従って『飛んだ』はいいですが、もう少しでウェルダンで焼かれるところでしたよ」
「忠告?」
レティの気楽な言葉に、聞き捨てならないものを覚えて問い返すと―――。
「初撃に最大威力を出す。それが『私』みたいな『力持ち』の典型でしょ? 申し訳ないけど、測らせてもらったわ」
返してきたのはアルクェイドであった。そうして何となく探ると、どうやら彼女なりの『気遣い』が見て取れた。
「それだけじゃなくて、
アルクェイド・ブリュンスタッドの言葉で、東京都内の一画が完全に異界と化していることを認識。これならば、固有結界に取り込まなくても全力で戦闘はできそうだが……。
「そういうこと。けれど、これの維持だけで私もしばらくは精一杯よ。実働は任せたわ」
最大戦力が使えなくなった瞬間だった―――。だが、少しだけ汗をかいて苦しそうな笑みを見せた姫君だからこそ、刹那は戦おうと決めた。
「
「いい顔ね。ただそこは、アルクェイドさんみたいな美人に構われて、妬かれそうだからと言う方がいいわね♪ なんと言っても、今の私はディードリットみたいなものだし」
爪で戦う血なまぐさい『永遠の乙女』とか聞いたことがない。ともあれ、アルクェイド・ブリュンスタッドのサポートも長くはないはずだ。
東京都内のどこかが焦土と化すのも、寝覚めが悪い。ここで終わらせる。
『よもや、私と戦うという決断を下すとはな―――しかし、ここで貴様たちを打ち漏らすという判断は私にもない。『一縷の望み』。残されたか細い
人理焼却の手始めに―――貴様を倒し、その『魔法』を咀嚼するのみだ! 無惨に果てろ『魔法使い』!!』
あちらとしては決戦を挑まれることは半々であったらしいが、こちらとしては明確な黒幕が出てきたことで、矛先を全て向けることが出来るのだ。
ここで終わらせる―――。退却などするものか。
刹那は、その心に従い夢幻召喚を解いて、赤い聖骸布のコートを纏いながら、ルーングローブを嵌め直しながら口を開く。
「――― 人理焼却を求める意思の具現。ソロモン王の欠片『魔神柱ハルファス』。貴様を『永久封印』する!
どっかの『ピーターパン』と同じく、『宿主』が生きてりゃ永久復活なんだろうが、生憎その手のトリックは、俺には通用しない」
猛々しい言葉の応酬。
その間にも戦闘準備は完了していた。
魔神柱9体―――と呼称するのが正しいかは分からないが、恐るべき魔力炉心―――『サイズ』に違いはある―――それを持った存在がいるのだ。
恐怖はある。
だが、それでも世界全てを巻き込む危難がそこにあるというのならば、それに立ち向かうチカラが多少でもあるのならば、立ち向かわざるを得ない。
そういう心が、全員から伝わる。
確認を取るべき人が数名いる―――。
「アンタたちも戦うのか? 路地裏同盟」
死徒との共闘というのは、無かったわけではないが、それでも少しばかりの遺恨を感じて、問い返す。
「当然です。少なくとも、あのような低俗かつ下劣な存在の策略で『呼び出された』など、不愉快極まる―――多くの思惑があったのでしょうが、アレに使われていたなど許せませんね」
拳銃のリロードをしながら、魔神柱に対して心底の嫌悪感を以て語る錬金術師。
「人理の正しい進行こそが、我らが共通の理念―――違うかな少年?」
言葉少なに、ただ戦うとして魔盾を構える銀髪の聖堂騎士。
「よ、よく分からないけど! 私がやったことに、いまさら取り返しはつかないけど―――アレは―――悪いものだって分かったから!! だから、いつかピンチで震えていた私を助けてくれた遠野くんだったら、この場でどうするか、分かるもの!!」
多弁で、少しだけ落ち込みつつも、それでも惚れた男のことを思って震えつつも決断する―――巻き込まれし少女。
ならば、もはや言葉はいらない。全ては戦いの中で決するのみなのだ―――。
重々しい幕引きの時は始まる。