魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~ 作:無淵玄白
待っていた方々に対しては申しわけないです。原典から大幅に改編した上に、とんでもないパロディ満載。(爆)
本来であれば最初の敵はミノタウロスの所を『アームドゴルゴーン』に跨るステンノと言う風にしたかったが、繋がり薄いんでこっちにした次第。
久々に路地裏さつきを見ると、『あー…この感じなついわー』などと和んでいながらも、書き上げたキャラ崩壊満載の外伝第参話どうぞ。
「ふむ。それは極めて興味深い話だね。しかし、夢も見そうにない君が、そんなことになるとはね」
「自分とて夢は見ますよ。まさか寝ながら眼でも開けてるわけじゃないんですから」
「ごもっともだ。しかし、夢というのは時に、一番身近な魔法なのかもしれないな」
「と、言いますと?」
朝の日課。九重寺での修練を終えて、いつも通りの四方山話を師匠としていると、不意に師は面白い事を言い出した。
夢―――。かつては、多くの人間にとっては意味不明なものであり、一種の性格指針などにも用いられ、オカルト的な面では予知夢などもあったのだが。
実を言うと既に人類は夢のプロセスを理解している。人間の脳をコンピュータに見立てた場合、睡眠中の人間の脳は休みながらもすさまじい『計算』を行っている。
即ち『断片情報の整理・統合』。人間が日常で拾った断片情報……ひとつひとつは意味のないものが、睡眠中の記憶整理の過程で『隠された意味』を導き出すのだ。
「俗に予知夢と呼ばれているものだね。まぁ君のそれは『明晰夢』に近い気がするが……」
「けれど不可解なんですよ。あんな双子に見覚えありませんし、『七草の双子』や『お袋と叔母』とも違うでしょうし」
前者に関しては見たことは無いのだが―――何故か絶対に違うと思えた。そして後者に関してはあり得ない。見間違える可能性すらあり得ない。
「まぁ今は様子見としておいた方がいいんじゃないかな? 君に対して掛けられた、精神干渉魔法ということもあり得るのだしね」
「随分とユニークな夢すぎやしませんかね」
そんなやり取りで終わったのだが、その日の夜に見た夢は夢で中々にカオスだった。
ファンタジックな中世世界で、当初こそ例の『双子』は、出てこなかったが……何故か会頭が『国王』で、服部副会長が騎士隊長で―――入学時のプレイバックのように馬上槍試合をやるはめに……。
うん。馬上槍試合だったはずなのだが……。
「カーラ(?)が育ててくれたこのサイコ・ザク号に掛けて、お前を倒す!!
「とどめだ!! ダリル・ローレンツ!! このアトラスガンダム号(?)のお裁きを受けろ!!」
最後の方には、何故か宇宙空間で、機動兵器(?)を駆って戦う感じになっていたのである。
とはいえ、平手を服部に見舞う形で戦いは終了。呆気ない戦いの幕切れであった
そして最後には前回と同じく妹とのキスシーン――――頼む双子の魔法使いたちよ。この空間を壊してくれ!!!
という願いは、かなえられず「こんなシナリオは没だ!! 佐島先生―――(?)!!」という感情の限りでの声で窮地を脱したのである。
「解せぬ」
寝覚めの悪さゆえに、今日の刹那とリーナには何故か文句を言いたい気分で登校―――若干、双子と会うことを楽しみに想う達也でありながらも、三日目の夜の夢は―――遂にがっつり出てきたのである。
† † †
夢のスタート地点はいつでも唐突だが、ここまで物語が進んだ『途中のセーブデータ』開始するとなると、一日目、二日目とは少し状況が違いすぎた。
そして何より立ち位置も、いつもと違っていた。
一日目は、将軍の遺児にして一度は放逐された身ながらも、王国のピンチに救国を強いられた貴種流離譚的な主人公。
二日目は、地方領主の後継者だったのだが、何やかんやあって三千人もの兵を指揮して魔王を討伐する任務を受けた王国一の将軍。
一日目がアルス○ーン戦記ならば、二日目は魔弾の○と
そんな感想を述べながらも、今回の立ち位置は―――どちらかといえば、ダークヒーローとでも言えばいいのか、勇者パーティーの中での『暗殺者』という立ち位置だった。
「アサシン・タツヤ」そういうデフォルトネームであり、魔大陸(?)で待ってくれているだろうかと思う程に、少し主人公役である『深雪』からは冷遇されていた。
そんな妹に対して、沖縄以前の頃を想いだしつつも、それが『四葉』の後継としては当たり前の態度だな。とも思えていた……少しだけ悲しいが、そういうものだ。
外にて野営をしている面子。どうやら現在時間の警備担当は男三人であり、女三人は設営したテントで休んでいるようだ。
焚火を絶やさないように注意しながらも……達也の意識は先鋭化を果たす。
「レオ、敵襲だ。幹比古、女性陣を起こしてやってくれ」
「おうっ!」
「分かったよタツヤ」
いつものタツヤならば、恐らく敵の出鼻を挫くために単独行動を取っていただろうが、迫ってくる相手は尋常ではない。
分かったからこそ全員での迎撃を選択したのだが……何故か幹比古はつんのめって、女性陣のテントに突撃をかますのだった。
「ぎょわー! どこ触ってるのよミキ!!」
「エリカ、そういうこと言っている場合じゃ! ―――はっ!! シスター・ミヅキ! こ、これは誤解なんだ!」
「やっぱり幼なじみどうしでひ、惹かれあうんでしょうか。ミナヅキ(?)、ミカヅキ(?)ダメな母を許して!!」
「な、何の話だか知らないけど、それは本当に誤解だからな―――!! 2人とも―――!!」
誰に言い訳しているんだか分からぬ幹比古の言葉……つんのめった原因は、あのロードス島でいえば『スレイン』のような裾が長いローブを着ていたからだ。
せめてクラスチェンジできれば、『キャスターリンボ・ミキヒコ』になることで、あの衣装をチェンジ出来るのだが―――ともあれ、起き上がった女性陣―――。
『セイバールーラー・ミユキマルタ』
『人斬りセイバー・エリカ』
『マーチャントシスター・ミヅキ』
以上の三人が起き上がって男性陣に合流したことで、戦力の拡充は済んだ。
「またもや魔王の手先だっての!? アタシらみたいな小兵に対して神経質な対応ね!!」
「同時に魔王の城も近いってことだな! 俺のナックルが唸りを上げるぜ!!」
切り込み隊長たる二人の威勢に応えるように―――『魔王の手先』が空から降り立つかのように、自分達が見える場所で止まる。
「よくぞここまでやってきたものね。六人のクリプター。けれど残念ね。あなた達の冒険は、此処で終わるわ」
「誰だ。お前は?」
言葉でしゃらんしゃらん。という軽快な金属音が聞こえ―――同時に夜闇を切り裂くように、一人の美女が『黄金』の輝きを伴いながら、達也たちの目の前に出てきた。
「私の名前は、魔王の『祖母』にして魔宝四天王の一人、『宝石弓のイシュタリン』! かわいい孫娘二人の為にも、あなた達の冒険を終わらせてやるのだわ!!」
「遂に来ましたか、
イシュタリン……という若干、露出が激しい衣装をまとった女。
その衣装の系統はどちらかといえば、エジプトやインドなどの熱帯圏とも言える地方の『女神』を思わせるものだった。
金の細工などが随所に施されているところから推測。黄金の冠を被っているところからも、それを推測しつつ、どういった系統のボスモンスターなのかを類推するが……。
「さぁ跳ぶわよ! マアンナ!!! 優雅に華麗に大胆に! セイバークラスばかりのパーティ構成であることを恨め!! ついでに言えば作者の所有している数少ない☆5アーチャーの実力を思い知れ!!」
メタなことを言いながらも巨大な弓であり船……どっかで見たようなことがあるものを出してきたイシュタリンは、それに乗りながら戦闘をする様子――――。
「来るぞ!!!」
黄金のサイオンであり『魔力』が、夜闇の中にあって昼間を作りだした瞬間―――戦闘は行われるのだった……。
二時間後……。
「ウボァー! エクスクラメーションマークがあるのはちょっと失敗だと思うけど、そのぐらい痛いわ―!!!
なにこの子ら!? ランサークラスに該当するメンバーがいないのに、神性及びアーチャークラスと言う私を倒すその実力!! どういうことなのよ!?」
倒す。うん、確かに倒せたは倒せたのだが、実質負けみたいなものである。
全員、今にも倒れそうなぐらい足がぷるぷる震えているのだ。吹っ飛ばされたはずのイシュタリンは、未だに元気があるように思える。マアンナも健在だ。
とはいえ、RPG的にはこれにて勝利のようである。
「全く以て紙一重の勝利だぜ……」
「そうね。タツヤ様の『なげる』アビリティで使った『ゲイボルク・オルタナティブ』が無ければ、死んでいたかも」
「何ということ、作者の数少ない☆5ランサーの槍を持っていただなんて―――不覚! あら、いけない! 豆腐が出来上がる頃だわ。
待ってなさい! 御祖母ちゃんが、いつも美味しい麻婆豆腐を作ってあげるから―――♪」
きっと、どこかのニシンのパイを嫌う孫とは違って『ガツガツ』食べるんだろうな。そんな感じがするイシュタリンの孫2人の様子を幻視しながらも、イシュタリンの逃走を阻むことは出来なかった。
こちらはボロボロで、余裕がありすぎる敵が残り三人もいるという現状は、軽い危機感を覚える。
RPG的思考でいえば、完全にレベル上げが足りていない。
いざ魔王戦になったとしても「魔王はわらっている」とか言う文字が出てきそうだ。第二段階(?)辺りで死ぬビジョンしかない
「もはや、これ以上は不味い―――ミユキ卿! このまま魔王城に突入しては全滅だ……」
「そうは言いますがタツヤ殿……カツト王から貰った限度額無限のゴールデンブラックカードも、使えない地域に至ってしまいましたし」
最遊○か!? 世知辛い都会っ子の現状に達也は少し頭を痛めつつも、何でそう言う所だけは現実準拠なのだろうと思ってしまう。
そして何より言いたいのが……。リーダー役の勇者であるミユキ卿に対してであった。
「深雪、その手に持っている武器はなんだ?」
「マルタです」
字面だけを聞けば、吸血鬼が蔓延する世界でのメインウェポンに思えるのだが……。
悲しいことに現実世界では妹、こちらではパーティーのリーダーたる勇者ミユキが持つ主武装は――――。
『石像』だった。もうものの見事に石像……十字架状の杖を手に持ちながら佇む(ドヤ顔)の女性の石像を、剣のように装備しているのだった。
「聖人マルタ―――ある土地にて、荒ぶる大海と大地の間に生まれし竜を
それに何か問題でもあるのですか? タツヤ殿?」
「問題ありすぎるわ―!! その霊験あらたかな石像をぶん回しながら攻撃するバチアタリがどこにいるんだー!!」
「ああっ!! なんかこうどっかの誰かとの『感情あるやり取り』を思わせるタツヤ殿のJUST WILD BEAT COMMUNICATION!!
黄金の矢に撃たれながらも、色褪せない想いを抱いていた甲斐がありました―――♪♪」
「いや、あのタツヤ? 今さらな話だよね? これかなり前からミユキ殿は装備していたよ」
マジか。驚きの貌を張り付けているだろう自分に、『エンシェントキャスター・ミキヒコ』は、説明するように語る。
何でもこの『マルタの石像』は、『剣』扱いの武器であったらしく、装備できるのはエリカでは無理でミユキだけという、完全に勇者武装であったらしい。
しかしながら、このマルタの石像。武器としても優秀なだけでなく道具としても使えるらしく、戦闘時に道具として使えば「タラスク」という流星雨の魔法が使える。
平時、フィールド移動中には回復アイテムとしても使える薬草いらず、回復呪文いらずの十徳アイテムだったのだが……。
「けれどな。そのマルタの石像は……何て言えばいいのか、装備したが最後、それ以外の武器が装備できなくなっちまう呪いのアイテムだったんだよ」
「おかげで、最強の武器『メルトリリス』は宝の持ち腐れ。いずれタツヤ殿が撃ち出す機会を今か今かと待つばかり」
レオとエリカの少しだけ嘆くような言葉でパーティーの現状を再認識する。
道理で強力な武器ばかり投げられると思ったらば、そんなオチか。リセットしてやり直した方がいいのではないかと思うセーブデータであった。
魔大陸で永久離脱したシャドウの為にやり直した猛者を見習ってほしいものである。(実話)
「このマルタの石像を持っているだけで私、シャドーボクシングで古木を五本ぐらい叩き折る筋力を手に入れたのです。
『汝、崇高なる使命を持ちし乙女よ―――なんかムカついたから私の代わりに『ステゴロ』やっといて』などありがたい言葉ばかり頭に入って来るのです」
「完全に呪いのアイテムだな。とはいえ、おまぬけアイテムではないから、いいとして―――『特訓・修行・レベルアップ・クラスチェンジ』は必須だ」
「そうだよね。このまま行けば僕たち全滅で、ミユキ卿とタツヤ殿に棺桶を引っ張られるオチしか見えないよ」
何故に俺は生きているのか、定番では、勇者であるミユキだけだろうに―――。ともあれ、皆の心は一致するのだった。倒すべし魔王ブルーアイズ。
そんなブルーアイズはどんな魔王なのだろうと、タツヤが疑問に思うと、パーティーの金勘定担当である『トル○コ』と『ク○フト』を足したような職業のミヅキが答えてくれる。
「なんでも双子の可愛らしい女の子らしいですよ。先代魔王と魔皇后との間に生まれながらも、亡くなられた二人に代わり、立派に魔術の都『ウェイバー・ベルベット市』を切り盛りしているとか」
何でそんな子達をとっちめに行かなければならないのか。寧ろ、好きにさせとけばいいのに、と思うも―――カツト国王も苦渋の決断だったらしい……。
色々と思う所はあれども……。
『アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリーヴェデルチ! (さよならだ)』
などと言って、この辺に迷い込んできたミノタウロスを『素手』で倒したミユキ。
そのナックルを何故先程使わなかったとか思うぐらい、ツッコミどころ満載の『ドリームゲーム』はもう少し続くのだった……。
† † † †
「イシュタリンがやられたようだわ」
「フフフ……ミス・トオサカは四天王の中でも最弱……」
「まぁ姉さんは変な所で甘いですからね。刹那君の同級生に本気がだせなかったんですよ」
上から、エレシュキガリン、アストラヴィア、サクラカーマという、ベルベット市の四強であり、世間一般では魔王の配下と言われている、一人除きの四天王が話し込んでいたのだが……。
『はーい。出来たわよ二人とも。さぁ食べましょう♪』
『『わーい♪ おばあちゃんの麻婆豆腐だー! いただきまーす』』
などとアットホームな様子で真っ赤っかな麻婆豆腐を『平気な顔』で嚥下する三人のツインテールに、何とも言えぬ気分。
誰もが『ほっこり』してしまう様子だが、まぁ色々な気持ちが湧きあがるのだった……。
『みんなも食べよう―――、今日も一日ご苦労様』
『ご飯は大勢で食べたいのだわ―――♪』
まだまだ幼い双子の様子に一度だけ苦笑してから、四天王たちは、ご相伴に預かるのだった……。
預かったことで舌を色々と酷使してしまうオチを着けてしまったことも忘れてはならない。
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……とぅびーこんてぃにゅーど……次話に続く。