魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~   作:無淵玄白

301 / 420
今年こそは公式サイトの方で

『シン・ネコアルク』とかいうネタでもあればなーと思いつつも、そっちかー(爆)

そして今年のエイプリルフールの顔は……。


奴だ。

そう――――マフィアだ。

マフィア梶田出すぎだろうが―――!!(歓喜)
確認しただけでもマヴラブオルタネイティブにグッスマのプラモ。

梶田さん―――GJ。それしか言えない。そんなことを思いつつ新話お送りします。





第282話『色彩-Ⅱ』

 アルトリアたちの突撃に追いつきつつも、刹那は思考を巡らす。

 

(処理できた魔神柱は3つ。残り6つだが……)

 

 まるで、ヘラクレスの十二の難行のヒュドラ(多頭蛇)殺しの如く、刈り飛ばした首の根を焼かねば復活するのだろうか。

 

(あるいは―――)

 

炉心供給開始(ドライブスタート)制御弁13解放(バレルオープン)、全てを承認せり―――焼灼されるが良い―――』

 

「I am the bone of my sword.―――」

 

 明らかに魔力を溜め込んで高まるハルファスを見てから刹那は、呪文を唱えて―――。

 

 魔術回路が一つの「宝具」を作り出すことに特化を果たして―――。

 

 ―――歴史侵食 ハルファス―――

 

 言葉はない。だが、そんな名前の攻撃を認識(・・)した。竜種のファイアブレスというには勢いが強すぎて魔力が濃すぎる火線が放たれた。

 

 深雪と双子の干渉など受け付けない『溜め込まれた火炎』は、一切の物理現象の軛など振り切って、世界を焼き尽くしていくはずだったが……。

 

「―――熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)!!!」

 

 刹那が右腕を眼前に突き出しながら紡いだ言葉で、七枚の巨大な花弁が花開いたあとには、層を成していく円盾。

 

 トロイア戦争におけるヘクトールの槍撃を防いだ大アイアスの盾が―――。

 

「―――夢の終わりを祈る聖母(プリドゥエン)!!」

 

 左手を翳しながら言った言葉でアーサー王の盾、精霊刻印と精霊文字―――そして祈りを捧げる聖母の模様の蒼金の盾が出現をする。

 

 今更ながら、それが刹那の大魔術の根源の一端であることを理解したことで、後ろにいた全員が、ある種のインチキ具合(チート)を感じる。

 

 だが、その盾の効果は歴然であった。あらゆる熱気を妨げるように、精霊が作った神造兵装は水のヴェールを次から次へと発生させて、熱線の圧は水によって減衰させられたあとには、アイアスの盾を通過することも出来ずに、焼灼を断念させられた。

 

「ワンパターンなんだよっ!!!」

 

 魔神柱を嘲りながら、刹那は持ってきていた製図ケース(に似た魔導容器)を叩き割って、3つの硬球を宙に浮かべながら、閃雷を迸らせる。

 

 相互干渉を果たす硬球3つの『正体』を、何人かはわかっていた。

 

 だが―――。

 

 

(あの時は硬球一つで十分だった。3つアレば威力は3倍なのか?)

 

 達也のずれた結論。

 

 そしてリーナだけは、理解する。

 

 それは、刹那のもうひとりの母親から託された『秘術』(おくりもの)であるのだと―――。

 

魔神柱(デーモン)に『楔』を打ち込むのね。それにしても、ケドウィンとかいう魔神柱が消滅した後に出てきた幽霊?の顔は、ベンが送ってくれた資料でのフリズスキャルヴのオペレーターの一人であるレイモンドとかいう人だったわね)

 

 年齢ならば、自分たちと同じぐらいだったことを思い出しながら、その幽霊?を思い出しながら刹那を見守る『幽霊』にリーナは―――。

 

(アナタには渡さない! セツナはワタシの、そしてこの世界のソーサラスアデプト全てにとっての『スパダリ』なんだから!! 彼は、いま『変革』していく魔法師世界の先頭に立つべき人なんだから!!)

 

 そう勝手な宣戦布告をしながらリーナは駆け出す。

 

 確かに『幽霊』からすれば、刹那の行状は『嗜める』べき『魔術師としての堕落』なのかもしれない。

 

 けれど、そのお陰で進むべき道を見つけられた人は多いのだ。

 

 たとえ世に認められた王道、正道(Noble Path)ではなくとも、人によっては邪道、逸道(ASTRAY)としか見えないものが、多くの人を―――。

 

 そんなリーナの憤りとは真逆に幽霊は語る。

 

『ごめんなさい―――そんなつもりはないの。そして……安心してっていうのもなんだけど……』

 

 ワタシはあの子(刹那)と関わらなかった世界のワタシだから……。

 

 そんな悲しげで寂しい独白が、リーナの耳朶を打つ。そんな風に言われたならば、どうしようもない。

 自分にとって刹那を巡る恋のライバル―――その最大の敵は……死人であるなど……。

 

 認められなくても、それでもリーナは刹那に追いつくべく駆け出す―――。

 

 ・

 ・

 ・

 ・

 

 静かな病室―――真っ白に染め上げられた部屋に2人の男女がいた。

 

 男は椅子に腰掛け項垂れるように手を組み合わせて、祈るような、後悔するような顔をしていた。

 

 女は寝台に横たわりながら静かな寝息を立てていた。自発呼吸は問題ないが、それでも点滴を打たれた姿に痛ましさを覚える。

 

「………僕は何をやっているんだろうな」

 

 応えるものはいない。だが、それでも答えは既に出ているようなものだった。

 

「―――いま、君はここにはいない。君がいるのは―――あの騒動の中だ。またもや君は―――捕らわれたんだね……」

 

 組み合わせた手を握りつぶさんばかりに、強く握りしめ合う。後悔が身体を包む。

 

 あの日と同じだ。今でも鮮明に思い出せる……弘一にとって終わりの日であり、始まりの日……。

 

 だからこそ、ここで項垂れているだけではダメなのだ。

 

『正義の味方』は、この世界にいないのかもしれない。しかし、だからと自分こそがなろうとも思わない。

 

 けれど―――。

 

「真夜だけの正義の味方にはなれる。今更すぎて、遅すぎる決断だけど―――」

 

 これからは、そうさせてくれ。

 

 卑怯者と罵られても構わない気持ちで、頼りなく動く唇に弘一は、自分の唇を合わせた。

 

 その口から自分のことに関しての文言が出る時こそが、望むものなのだから……。

 

 ―――金に糸目を着けずに入れた個室の病室から出ると、そこには9人の似たような顔が勢揃いしていた……。

 

 もっとも、似たような顔とは言うが、似た者同士の顔を幼い頃から見分けてきた弘一からすれば、誰が誰なのかは髪型や仕草以外からも読み取れる。

 

 夏に南の島から救い出された星を呼ぶ少女たちである。

 

「ココアちゃん……みんなどうしたんだ? ここは僕に任せてホテルにいても良かったんだよ?」

「それじゃダメなのです」

「真夜先生を助けるためにも、私達は行かなきゃならない」

 

 弘一の言葉にハッキリと自分の意志を示す九亜と四亜の2人に少しだけ面食らうが、その言葉の頼もしさで分かることもある。

 存外、真夜はいい先生であり母親代わりをやっていたようだ。その事を嬉しく想いながらも、葉山さんやその他の四葉の家人たちは、この子たちを止めなかったのかと思う。

 

 そして―――その言葉に想うところを出す。

 

「行かなきゃならない?」

 

「先生を囚えているのは、魔神―――いいえ、魔獣の化身……キッドが戦っているところにこそ、そこにいる」

 

 シアちゃんは、言葉と同時に窓の向こうに見える巨大なドームを見た。

 

 それは事態の中心点。ここ数週間、都内を騒がせていた騒動の終局点である。

 

 真夜を意識不明にした原因は、それだと理解できていたが……。

 

「いつでも先生は、弘一師父を待っていた―――だから―――」

 

 ―――真夜先生を迎えに来てくださいね。

 

 そう九人全員から言われた気分で少しだけ茫然自失していたらば、既に九人の女の子の姿は消えていた。

 

 その言葉を疑うわけではない。それでも―――。

 

「最初から行くつもりだったさ」

 

 決意だけは変わらない。そう断じた男は歩み始める。決意した男の後ろ姿、その歩みに『一尾の狐』が気づかれずに帯同していく……。

 

 

 ・

 ・

 ・

 ・

 

 神出鬼没な出現をする魔神柱を前に、一度は距離を詰めて肉薄したはずの刹那たちを、いまは中距離から滅多打ちにしている。

 

 盛大なまでの火力係数の増大。

 

 殆どビームも同然の熱線。

 

 四方八方に撒かれる巨大な魔力球(スフィア)

 

 全てが驚異的だ。ここまでの戦いの中で、何とか対抗出来ている事自体が奇跡だ。

 

 その理由の一つは―――。

 

「リーズ、騎士団に『爆発』を」

 

「分かった」

 

『シオン』の言葉を受けて銀髪の騎士は、己の配下たちに命じたことで、教会式の怪異討伐方法が披露されていく。

 

「魔神柱なる存在は初めて見ますが、どれほど強大化しようと、幻創種・死徒よりもまだまだ『生物』(いきもの)でしかない。ならば―――」

 

 空間爆発を起こして五感を奪ったあとに――――――。

 

「写本展開!!」

 

『『『エル・ナハト!!』』』

 

 空間歪曲によって相手の情報を『曲げる』。

 

 胃界教典と呼ばれる教会秘蔵のアーティファクト『上級死徒エル・ナハト』の(ストマック)

 

 当然、『原本』ではない。写本とはいえ、教会の騎士たちの数名はこれを使用する。

 

 死徒・及び怪異がどれだけ頑健・不死・不朽になっても無視できない要素がある。

 

 特に上級幻想たる死徒は、それぞれで不死へのアプローチ、そして、己の偏愛ゆえに形貌(なりかたち)が違えど、一つの捨てきれないものがある。

 

 それは、彼らがまだ生物(いきもの)であるうちは、生物的特徴は捨て切れないということ。つまり感覚器で情報を取り入れ、中枢神経で情報を判断し、末端神経で身体を動かすということだ。

 筋力がモリモリになり、軽い平手で成人男性の首を一回転させる能力値になったところで、彼らはその性からは逃れられない。

 

 つまり―――。

 

 完全に狙いを着けられない攻撃となったのである。

 まるで見当違いの方向に攻撃が放たれていく。

 

(しかも、魔神柱たちはかなり密集していたわけで―――)

 

 己の見たものを正しく認識できずに、同士討ちとなりえる。

 

「エル・ナハトによって奴らは混乱している。火力を集中させろ」

 

「ならば、一番弱っている小型からだな」

 

 刹那の言葉に反応した達也だが、当の本人は攻撃に参加せずに、雑兵であるシャドウサーヴァントの掃討に向かう。

 

 仮にもしも使い魔であるシャドウの視界をジャックする形で、魔神柱たちが、こちらに対して正しい像を結んで攻撃してくるかもしれない。

 

「時間は然程ありません。有効に」

 

『シオン』の言葉が全員に伝わり、攻撃術が小型の魔神柱2柱に殺到する。

 

 誰よりも早く術を構築して解き放ったのは、スナイパーである真由美である。

 

 彼女の得意手である『フリーズドライ系列』の術ではかすり傷にもならないことを察して、九校戦以来―――密かに研鑽を積んできた『カレイドバレット』―――対消滅弾の連続投射。

 

 同時にそれを『螺旋魔弾』(スペルヘリクス)として、打ち出す。

 真由美が覚えた術式の中でも、これがサーヴァントなど神秘強度が高い存在に対する有効手段である。

 

 効果の程は―――覿面というほどではないが、巨樹のごとき肉の柱の体積を削ることは出来ている。

 

 穴を穿っていく作業に次いで放たれたのは。

 

「吉田、合わせい!!」

「やらせてもらうよ」

 

 沓子と幹比古による術であった。

 

 沓子は、いつの間にか手に持っていた強弓(こわゆみ)に魔力の矢を番えて。

 

 幹比古は呪符型CADから術を読み込んで『掛け合わせる』。

 

 古式魔法に『基盤』を置く2人だけに、放った術は相乗された術式(もの)となって、魔神柱に襲いかかる。

 

 幹比古:「迦楼羅炎」

 沓子:「蒼龍水撃」

 

 迦楼羅―――インド神話の主神インドラの乗騎にして鳥の神獣ガルダの吐く浄化の炎を模した―――否、それを再現したといってもいい劫火が形を持ち襲いかかる。

 

 蒼龍―――四神守護の信仰でいう東を守る神獣『青龍』の放つ大瀑布のごとき水流が、魔神柱の身体を砕いていく。

 

 一見すれば、打ち消し合うような術の使い方だが、火と水の術は重なることはなく、魔神柱にダメージを与えていく。

 

 現代魔法の感覚で言えば『独立情報体』。魔術的な感覚で言えば『高度な使い魔使役』での攻撃。

 

 それが一過性で終わるものかと言えば―――違っていた。

 

 「幻月万華鏡」(カレイドムーン)

 

 美月が魔神柱の根元付近、地面に水たまりのように展開させていた『月鏡』が、下り飛竜のごとき火と水の攻撃を吸い込んだあとには―――。

 

 「解放」(リリース)

 

 身振り手振りで、鏡を操る美月の手練で吸い込まれた迦楼羅と蒼龍が、鏡から出て、今度は天を目指して駆け上がる。

 

 迦楼羅は、その伝説の通りに母をナーガ族から開放するため天上に不老不死の妙薬『アムリタ』を取りに行くように。

 蒼龍は、その身をそれ以上の存在にするべく二度目の登竜門を駆ける昇竜へとなる。

 

『―――――』

 

 凄絶な絶叫を上げる魔神柱―――名前は知らない。だが、そうして叩かれ、焼かれ、解された大質量を前に―――。

 

「大トリが俺とか滾るぜ」

『外すなよ相棒!』

 

 大棍棒を振りかぶるレオの姿。同時に姿が少しばかり変わっており、英霊憑依の状態である様子。

 

 それを理解して、誰もが西城レオンハルトという『真』なる意味で『魔法科高校の劣等生』である男が辿り着いた集大成を見届けた。

 

「―――原初の世界震え崩す神槌!!(トゥアハー・デ・ダナン)

 

 颶風ごと裂くように虚空に対して振るわれた大棍棒。レオのような大男がそれを振るっただけでも、離れているこちらに圧を感じさせた。

 

 指向性など無いかのような攻撃。だが、それが現出するまで時間はかからなかった。

 

『神霊2―――否、三柱(・・)降ろした存在―――それは彷徨―――』

 

 狙われた魔神柱(小)は、その身にいくつもの罅を入れていき、それが自らの崩壊に繋がると分かっているのか、それとも魔神柱としての性なのか、最期まで測定をし続け―――。

 

 身を爆裂四散させる形で弾け飛ぶのだった。魔力と霊子となりて世界に還元されていく魔神柱を見ながらも、驚くべき成長をしたレオにほとんど全員が仰天していた……。

 

 

 

(エルゴさんやグレイ姉弟子(ねえさん)は自分が変わることを嫌がっていたけどな―――)

 

 レオが、それを是としたから『そうなるように指導』したのだが……。

 

(これ以上は先生が居てほしい、ウェイバー先生に指導してもらいたいんだよな…)

 

 神代の術式に通じる降霊術・食神術の類の先を識るには、ロード・エルメロイII世(我が師)が必要であった……。

 

(とはいえ、泣き言を言ってもいられないか。俺もバゼット(母上)から神代刻印を受け継いでしまった身だ)

 

 ある意味では、『人の生』を食らって生きているようなもの。魔術師らしいおぞましい行為だ。

 

 けれど――――――。

 

 指の間に挟んでいた宝石を輝かせ、解き放つための呪文を紡ぐ。

 

Vierzehn, neun, acht. (14番、9番、8番)Drei Schwerter und Zerberuss ,(三連獣の魔剣) Synergie, (相乗)eine Mulde!(抉れ)

 

 刹那の打ち振られた『両手』から、螺旋のごとく重なった光が、魔神柱を直撃する。

 盛大なまでの光が通り過ぎたあとは、地面を焼き付かせた効果なのか、それとも違う魔術的効果なのか、砂礫の全てが様々な色に染まっていた。

 

 だが、そんなことはともかくとして……魔神柱にヒットした結果は―――。

 

「大穴を貫通させるとは―――」

 

 誰の驚愕の声かは分からない。しかし、根元付近の幹の太いところに巨大な穴を穿った刹那の宝石魔術。

 

 その結果を見たレティが―――。

 

「セツナ、昨日の大魔術といいムチャしすぎですよ!!」

 

「ムチャせずに勝てる相手かよ」

 

 言いながらもトドメ役をレティに譲る辺り、やはり『ダメージ』が抜けきっていないと思えた達也。

 

(そもそも刹那に頼りっきりなんだよな)

 

 

 想いながらも達也は強化術で縦横無尽に走り回り、駆けながらシャドウを切り裂いていく。直死の魔眼―――というものではない。

 専門家の言い方ではないが、偽・直死の魔眼といったところに『達也』では成り下がってしまう。

 

 

 しかし―――これを使いこなせれば―――。

 

 

(その時、俺の身体の支配権は『司波達也』のものになるのか?)

 

 

 それを嫌だと思わないのは、今の自分が本来の自分ではないと思えるからだろうか。

 

 かつて、刹那の母親はマラッカ海峡の辺りで『神を喰らった男』を拾った。その男―――青年は、三柱の神をその身に取り入れたことで、ある種の変質を果たした存在だったとのこと。

 

 レオに施術されたものは、それと同じらしいが……ある種、お袋(深夜)の達也に施した改造のアプローチと少しばかり似ている。

 

 それを考えれば、自分も―――ホントウの―――。

 

「達也さん!!!」

 

 思考の渦(ヴォーテックス)に取り込まれていた自分に気付けをする存在。

 

 光井ほのかだった。

 

 眼を輝かせて邪眼―――魔眼の類ではなく、ある種の現代魔法のそれを使って、達也を背後から斬りつけようとしていた存在を縫い付けていた。

 助かる想いと、あまり無茶はしないでほしいという両面の気持ちが発生する。

 

 シャドウサーヴァントの攻撃ぐらいならば、自己の回復でなんとかなる。

 

 しかし――――――。

 

 

「すまない、ほのか―――だがあまり無茶はしないでくれ」

 

「だ、大丈夫です! 達也さんのサポートがしたいんです!!」

 

「―――ピクシー! ほのかの守護を頼む!!」

 

「YES MASTER」

 

 

 嬉しさよりも、どちらかといえば心配が上回った達也の心情が、己のサーヴァントに下知を飛ばした。

 

 その時、正確無比な火炎放射と『鱗弾』とでもいうべき攻撃が魔神柱から放たれる。己の皮膚を飛び道具にするとは、と想いつつも、どうやら位置撹乱も意味を為していないようだ。

 

「対応が早すぎる。学習しているのか?」

 

『否、貴様らが脆弱すぎるだけだ。如何にヒトにあらざる能力を具えようと、その身がホモサピエンスの領域から逸脱・『解脱』出来ないならば、それは人理版図を揺るがすチカラでしかないのだ』

 

 瞬間、ハルファスが発動させたのは、魔術式ではなく『現代魔法』の式であり、達也の本来の眼にそれは視えたのだ。

 

 その魔法式は――――。

 

『ゆえに、貴様ら『擬い物』(まがいもの)に教えてやろう―――『流星群』というものがどういうものか』

 

「「流星群(ミーティアライン)!?」」

 

 

 瞬間、公園の夜空から星々も輝ける月もなくなった。漆黒に塗りたくられた夜空を前に、司波兄妹の声が響く。

 

 夜の帳に更に深い夜の帳が落ちて、そこに―――星の輝きが穿たれる。

 

 場違いなプラネタリウムから絶対必中の『穿穴光線』が飛んでくる。

 

 夜空に隙間なく輝く星が光線を吐き出そうとした―――としか言えない視え方。その実、既に穿穴光線が放たれて穴だらけになったという『事実』が再現されるはずなのだが……。

 

「―――後より出でて先に断つもの(アンサラー)……」

 

 刹那の背後にて浮遊して、回転の円運動を繰り返す『3つの球』が、盛大なスパークを開始する。

 

 下段に構えた拳に呼応して帯電する球が放つ『奇跡』を、夏の夜に自分たちは見ていた。

 

 そして―――。

 

 星輝(シャイン)が落ちてくる絶望的な光景(一部は対魔力でなんとかなる)を前に―――。

 

「―――斬り抉る戦神の大剣(トゥール・フラガラック)!!―――」

 

 アッパーのように伸び切った刹那のパンチングで、打ち出された球。

 

 ―――逆光剣の軌跡が築かれた。

 

 一筋のレーザービームは距離を進むごとに、攻撃範囲を広げていき、同時に途上にある硬球にかち当たるごとに巨大化していく。

 

 

 巨大化していくと同時に、それは『枝分かれ』もしていく。数学の確率で言う所の樹形図。

 それよりも凶悪な『拡散レーザー』が―――団子状に連なった球剣から上昇していく。

 

 さながら田舎に越してきた『姉妹』が出会った、クスノキの森の主の手助けで植えた木がどんどん成長するような様で―――。

 

 

『戦光樹』は、魔神柱たちに下から突き刺さるのだった。

 

 

 絡め取られて、突き刺さる樹の枝の一本一本が鋭利な槍として魔神たちに苦鳴をあげさせる。

 

 誰もが驚愕する結果。魔神が放つ流星群すらキャンセルした上での行為。

 そして、そんなことをやって退けた男の凄さに感嘆した時に―――――――。

 

 位置の関係上、刹那を見るべく振り向いた達也は―――――――。

 

 ―――盛大なまでの『吐血』をして崩れ落ちる刹那(しんゆう)の姿を見てしまった。

 

「――――――!!!!」

 

 リーナが何かを叫んでいる。

 

 それは明朗な名前を言っているわけではない……ように達也には聞こえていた。

 

 聞こえていただけで違うのだ。刹那の名前を絶叫(ハウリング)も同然に叫んでいるのだ。

 

 戦場に木霊するかのようなリーナの吠えたけるような叫び(HOWLING)をバックに戦いは、変化を果たす―――。

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。