魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~   作:無淵玄白

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ああ、GWが消えていく。

コロナで遠出なんてできなかったが――――ウマ娘をやりたくて仕方ない自分が芽生えつつある(爆)

これが逆境というものか!!(間違い)


第286話『色彩-Ⅵ』

 

「まさか、一条君がリーレイを迎えに来たことすら『予定調和』だったのかな?」

 

「分からぬが、そも偶然とは隠された神秘の法則を指し示す言葉らしいからな。そういうこともあるのだろう」

 

廃車コース一直線の車。それなりの大きさの車両は、ルーフに老人2人が乗っていても余裕の広さがあり、そこにて酒盛りをしていたのだった。

 

劉 雲徳と九島 烈。生まれた場所は違えども孫子(まごこ)を想う老人という共通点を持ち、かつては多くの干戈を交えて殺し合った2人は、既にお空よりも高いところにいった人間たちを仰天させるはず。

 

「あの時のことを考えるに……資格が無いと言われては悔しい限りだ」

 

「だが仕方あるまい。仙人のように老いることが出来なかった。俗物のままに、人間のままに生きていたことは原因ではないのだろうが……若人に既に世界のキャスティングは託されているのだろう」

 

「時代を動かせ。その言葉で私も若人を焚き付けてきたのだ。時代を、世界を作るのは、若い力だ。個々の若さは弱けれど―――合わせることで時をも動かす強さを産む―――その真理に辿り着くまで、回り道の連続だった」

 

だが、それは烈にとって仕方のない話だった。己の弟―――自分と意見を異にしている。それだけで、国外追放を行ったことを考えれば、ある意味、こんにち(今日)に至るまでの日本の魔法社会の歪みは、烈の先見の明の無さとも言えるだろう。

 

「人種の境は言わずも、その力の多寡、能力の優劣、魔法師・非魔法師であろうと誰隔てなく隣にあることを許すその度量・襟度の広さこそが――――本当の意味で我々が求める『魔法』だったのかもしれない」

 

悔しい話だが、それを持っていたのが並行世界の魔術師であったという事実が、烈を打ちのめして、苦笑ばかりを漏らさせるのだった。

 

「だが、それをするには俺達の時代は国家間での戦いが多すぎた。貧すれば鈍する。衣食住満ち足りぬ世界ばかりでは、自ずと『戦国時代』にならざるをえんのだろうさ」

 

老人たちとて夢見なかったわけではない。

多くの国の魔法師と和する日々。

 

同時に、魔法の使えない人々の異種族を見るような眼を解きほぐす術を持つ時代。

 

だが、それを夢見るには血を流しすぎた時代であった。

 

言わずともそういったシニカルな気持ちをお互いに理解していた老人2人は、献杯をしてから盃を打ち鳴らす。

 

後始末は自分たちで着ける。そこに若人をかかずらわせることもあるまい。

 

その気持ちだけは共有しておくのだった……。

 

 

絶叫混じりの宣言と共に放たれた蒼炎のブレス。全員を焼却するに相応しいその威力の火炎は―――。

 

「熱気すらも受け止めろレオ!!」

「おう!!」

 

巨人の幻手を展開させたレオの『巨盾』が、全ての火炎をシャットアウトさせた。

それどころか―――。

 

「返すぜ!!」

 

火炎を火球に加工して投げ返すのだった。器用な真似をすると想う。

 

『ッ!! 先程の意趣返しのつもりかな!?』

 

「そんなところだ! よくも俺のゲンコツを、刹那への攻撃に使ってくれやがったな!!」

 

『だが、飛行する我に対して貴様の意趣返しはそれだけだな』

 

言われて殆どの連中が呻く。

 

巨大な(でかい)上に飛行能力まで有して、更に言えば飛び道具まで持った存在。ココアたちのように、常時飛行して魔法を使える存在ならばいいのだが。

 

「飛行魔法が使えない……!」

 

当然、それを行い有利なフィールドで戦おうとした深雪の悔しげな声が聞こえたことで、全員が不可能を感じながら、牽制するように魔弾などを撃つが、大した効果は期待出来ていないようだ。

 

『あの魔竜が飛行しているだけで人理版図を圧迫しているんだ。恐らく『飛行』の『権能』を独占されている。となれば―――千秋くん、シオン。予定通りだ!!』

 

「「はい!!」」

 

多くの立体型の魔法陣を指先で操っていた2人が、ダ・ヴィンチちゃんの号令に声を合わせる。

 

何をやるかは分からないが、ともあれ刹那にも指示が飛ぶ。

 

『刹那、キミのやるべき事は、もう一つある! 『力を伝播させていく』。そうすることが求められている』

 

「言われずとも―――と言いたいところだが、その力を―――」

 

どこから捻り出すか。第二魔法の真似事で並行世界から魔力を引き出すこともできるが、それでは―――。

 

「アタシを使えセツナ!! アルトリア様から譲り受けた魔力を全員に受け渡す。それができるのは―――お前だけだ!!」

 

最前線で朱雷を剣から迸らせて攻撃しているモードレッドが叫ぶ。

 

その言葉の意味を間違えない。

 

だからこそ『前』に出るしか無いのだ。

 

と、歩もうとした際に、頬に何かが触れるのを感じる。同時に『何か』が伝うのを感知する。

 

どうやらレティシアが、頬に口付けすることで『こちら』に力を渡したようだ。

 

「本当ならば口に『ジュテーム』したかったのですが、今は喫緊ですし、アイリスに睨まれたくないですからね」

 

「冷静な判断ありがとう」

 

ウインクしながら言われた言葉に感謝しか無い。そして彼女は旗を掲げながら聖歌(チャント)を歌い出す。

 

その効果は、この戦場にいる全員に対する防護・攻撃・耐性強化(オールバッファー)として機能していく。

 

まるで戦士を守護する歌であるかのように……。

 

刹那が走り出すと同時に、起こる変化。

 

空中に鎮座する魔竜に対して難儀していた剣士連中。魔力の波動を大剣から放ったり、ノーパン(!?)で飛び回り跳ねたりしながら魔竜の身に槍撃を放つ非常識極まりない連中に比べれば、『正しい』意味での剣士たちは難儀していたのだが……。

 

『『clowick canaan-vail Ver Gabrielle』』

 

瞬間、千秋とシオンによって唱えられていた呪文が結果として結実する。

全ての地面に効果を発揮した『魔法』が、彼ら剣士隊及び『例外』を除いた全ての魔法師たちを『浮上』させた。

 

「これは!?」

 

決して浮遊術(レビテト)という風な不安定なものではなく、まるで虚空そのものが大地のような感覚を覚えるぐらいに、虚空(ソラ)に確かな足場を感じるのだ。

 

剣士にとっては有り難いが、魔法師としては、この現象に色々な疑問を覚えてしまう。

 

『詳しい説明をしている暇はないから手短に言わせてもらうが、キミたちは現在―――『虚空』という大地に立っている状況だ。『飛行』でも『浮遊』でもない。あえて言えば、この場を『空間歩行』(エアウォーク)といえる現象で縛っている』

 

「―――理屈は分かりませんが、何気なく理解は出来ました。ですが―――あの竜までは―――」

 

如何に同じフィールドに立てたとはいえ、まだまだ遠いわけだ。ドラゴンスレイヤーをやるからには、もう少し魔法の援護がほしいのだが―――。

 

『そりゃ徒歩(かち)だ。ある程度は己で自由な『足場』を設置できるが、現実的な距離まで覆せないんだ。気張りたまえ青年』

 

―――中々にスパルタな事を言われた修次。諦めて、ようやく剣の間合いに入れたことには、感謝をしておく。

 

「全軍抜刀!! 神速で以て接近して斬りつけろ!!」

 

号令を掛けられたことで全員が、デバイスであり、鋭利な武器を抜き払う。中には千葉道場の秘剣である薄()蜉蝣を立たせて持つものもいる。

 

それらを持った人間たちが、四方八方より自己加速魔法を発動しながら、魔竜に斬りかかる。

 

仮想敵として対人・対戦車などを想定している抜刀隊及び剣士隊とて、こんな巨大な生物を相手にするとは思っていなかった―――だが、それでも狙いが着けやすく、鋼の体を持っているわけでもないならば、見える限りでは生物的な肉でしかない。アーマーなどで保護された人体を斬るよりも容易い。

 

現に、斬り裂いているものたち(ミニスカサンタ、黒いドレスの女)がいるではないか。

 

そんな浅い考えを持つものは少なくない。そんな訳で―――。

 

「なっ!?」

 

数名の例外を残して、殆どの人間たちの剣がガラスよりも容易く砕け散る。薄刃蜉蝣など、刀身に厚みが無かったからか、細切れになって空中に攫われたほどだ。

 

(やはり得物の差が大きすぎる! 生物的な強度・魔的な硬度が高すぎるんだ!!)

 

その様子を見届けた数名の例外である修次と華蘭は、魔竜の肉を切り裂くも、瞬時に塞がる様子に歯噛みする。

 

同時に反撃が来る。至近距離から放たれる呪波が、剣士たちを呪おうとしたが……。

 

その刹那、10名程度を襲おうとした呪波が霧散する。

 

達也の放った術式霧散ではあるが、それでも剣士隊全員ではないわけで―――。

 

―――禍津祓い―――

 

神代秘術連盟の術者。仮面と野暮ったいが魔力を秘めたローブを着けて面貌は分からないが、それでも放った術が達也の足りない分を補ってくれた。

 

それを確認した後には達也は小刀を抜き払う。

 

(手応え、感触ぐらいは確かめなければな)

 

飛行魔法では姿勢の不安定さから出来なかったろうが、平河とシオンのサポートで確かな足場がある。今ならば出来ないこともできるはずだ。

 

乱戦混戦の最中で、達也の眼が蒼く輝く。達也の『同居人』が、警告を発してくる。

しかし、脳が焼ききれるかもしれないような負荷の元でも、直死の魔眼は魔獣嚇の死線を見抜いた。

 

巨大な胴体を浮かせた魔獣を解体するべく、達也は接近する。

 

『小賢しいなぁ!!!』

 

別に達也の接近を嫌ったわけではないだろう。粗野な言葉と共に、魔力球に魔力光線が全身から雨あられと放たれる。

 

「ちぃっ! やんなるし!!」

 

やはりサーヴァント(鈴鹿御前)は、その攻撃を非常識にも武器の大回転で霧散させていく。

 

一発一射が戦術級魔法の威力を持っているものを放つ方も、防御する方も人外魔境のそれだ。

 

その中を達也は接近していく。高速で飛来する魔力球を『殺しながら』―――アサシンの如く接近する。

 

認識されたのか、クルミの実ほどのエネルギーボール10発ほどが、誘導されているのか、ゆったりと達也にやって来る。

 

このまま進んだ所で、不規則な散弾に変化―――ということまで考えるも、今はカンに頼るしか無い。

 

(ダ・ヴィンチの説明によれば、ある程度は己で『自由な足場』を設置できる。それは―――恐らくこちらのイメージ力に依存するんだろうな。ならば―――)

 

達也の進行方向―――エネルギーボールを中心にして両側に壁が存在している。高層ビルの路地裏をイメージして……。

 

「―――――そういうことか!」

 

『そういうことだ』

 

ダ・ヴィンチの言葉が聞こえてから、左右の『壁』を足場に交互に蹴り足で進んでいく。殆ど駆け上るようなそれをしながら、エネルギーボールを躱して神速でボールの後ろに躍り出て、魔獣嚇に刃を突き立てられる位置に出た。

 

「その竜身、殺させてもらう」

 

魔獣嚇は理解していないようだ。先程の剣士隊のように魔力付与をしているならばともかく、ましてや概念武装ですらない小刀で、自分を切り裂く道理など無いのだと―――。

 

そう高を括った時に、その身が輪切り寸前にまで斬り裂かれたことで、凄絶な絶叫が上がる。

 

のたうち回る魔獣嚇だが、即座に反撃される。

 

『貴様!!』

 

憤怒の言葉を血まみれの体で聞きながらも、迫りくる壁のような竜身による体当たりを―――。

 

「……!」

 

躱そうとして、身体に動きを命じれないことに気づく。

 

『達也君!?』

 

ダ・ヴィンチの言葉が遠い。此処に来てオーバーヒートを起こしたのは自分の番だった。

 

直視の魔眼を使うことで、ここまでになるとは―――。

 

迫りくる龍尾返しを前に、しびれる体から力を捻り出そうとする前に。どこからともなくやってきた闘士の技が決まるのだった。

 

「―――パンツァー!! あっ、これいいですね。なんていうか殴る前の掛け声としても最適です!! 西城君が使う理由が分かりましたよ!」

 

「いや、俺の代名詞でありCADの起動鍵語を何だと思ってんだ―――!!」

 

達也に迫っていた壁を押し返すように、妹と友人がステゴロ合わせのダブルパンチをするのだった。実際、尾による打擲は押し返されたのだが……。

 

「またもや聖人マルタの霊基が憑依しているのか……」

 

横浜以来の『俺の妹がこんなにマルタなわけがない』状態になったことを、色々と嘆いてしまう。

 

「フフフ! 基本に立ち返ったワンツーこそが世界王者になる『はじめの一歩』! この拳一つでリカルド・マルチネスすらも倒すべし!!」

 

堂に入った構えで常人には見えないワンツーパンチを放つ深雪の姿は、色んな意味でびっくり仰天ものである。

 

「と、まぁさっきからそんな感じなんだな……」

 

スパーリングパートナーかチーフセコンドよろしく、ミット持ちでもしかねないレオに対して返す言葉は―――。

 

「リカルドを目指すのはいいが、深雪の体型的にはストロー級がベストウェイトだと想う」

 

「いや、達也。ズレてるズレてる」

 

器用にも幻手を使って『ちゃうちゃう』とするレオを見るに、ここに来るまでの努力が垣間見える。

 

「お兄様、もはやガーディアン制度は崩れっぱなしな上に、本家の当主は真っ裸(マッパ)を晒しっぱなし!今後は落ち目になること確実な四葉の為にも、私は拳で世界を取る!!」

 

「司波さんが四葉!? ど、どういうことなんだ!?」

 

一番、説明がめんどくさい相手(一条将輝)に聞かれたが、そんな一条の攻撃は尽く魔獣嚇を発破していく。

 

その発破に合わせて深雪は、攻撃(ナックル)を当てていく。先程の刹那の攻撃と同じくだが、『何か』が違うのか魔獣嚇は心底の苦鳴を上げる。

 

「一条、あとで色々と説明してやるから―――今は、深雪とのコラボを楽しんでおけ!」

 

「た、達也お義兄さん!」

 

お前に喜びいっぱいな面でお義兄さんと呼ばれる筋合いは無い。と言ってやる余裕も無いわけで、とりあえずさせるがままにしておく。

 

そして―――来たるべきものを待ち構える。少しだけ待っていると、ようやくやってきた魔宝使いに苦笑する。

 

「―――すまん。遅れてしまったが、クレバーなお前が無茶するもんだな……」

「お前の無茶に比べれば、そうでもないだろ―――そして……」

「うん?」

 

やってきた刹那は何かの霊衣だろう鎧を纏った状態で『力』が充足していた。だが、それ以上に気付いてしまった点がある。

 

「―――唇と頬に、レッドとレティの『濃い魔力』が残っているな」

 

その言葉に明らかにギクリとする刹那を見て、いい加減コイツ背後からアゾられる(?)んじゃなかろうかと思いながらも、その行為こそが逆転の一手になるのだと信じつつ、差し出された手を取る。

 

そして受け取った『力』が、達也を駆動させる。この力は―――。

 

今まで刹那が、この世界で繋いできた縁ゆえんのものだと気づけたのだから。

 

 

―――Interlude―――

 

「―――成った(・・・)ようだなモードレッド」

 

最前線にまで飛んでいったことで、会えた留学生から溢れる王気は、譲り受けた力以外に、彼女が本来持っていたものが呼び覚まされたとも言える。

 

「将棋で言うところの歩の『と金』、チェスで言うところのポーンの『プロモーション』……人間ってのは随分と変化するもんだな」

 

己の手を何度も握りしめて己の体を確かめるモードレッドに、苦笑しながら語る。

 

「成長・進化。なんとでも言える。人間は、孵変る(かわる)生き物さ―――

長話はここまでにしておこう。始めるぞ。告げる―――汝の『メンドクセェ! これで十分(enough)だ!!』は?」

 

コントラクトの為に呪文を紡ごうとした時に、首の後ろに腕を回されて、顔を近づけてしまう。

 

背丈(たっぱ)に差があるとは言え、モードレッドの膂力はサーヴァント級だ。逃れられない急な行為と近づくその顔に動悸が高くなる。

 

「昔、何かの日本漫画(カートゥーン)で見たぜ。魔術師と従者が契約する時はマウストゥマウスだってな」

 

「半世紀以上前の漫画を参考にするn―――」

 

ネコのように眼を細めて言ってくるモードレッドだったが、すぐさま閉じた眼のまま口付けが為される。

 

そして――――――経路(パス)が繋がると同時に。

 

剣の丘に腰を降ろしている一人の男。その背中(せな)で語る姿を幻視する。

 

 

―――凛から聞いてはいる。その世界に私は降り立てない。桜井というマ■ュに似た子を助けた時点で干渉は不可能となった―――

 

 

背中を向けながらでも声が聞こえる。その声を全て聞き逃してはいけない。

 

 

―――さぁ受け取れ刹那。これがオレに出来る精一杯だ―――

 

立ち上がり振り返る錬鉄の英雄。その顔は詳細には見れない。記憶の中での彼は良く見れていたはずなのに……。

 

―――かつて月世界の『戦争』にて、マスターの為に纏った魔鎧―――

 

―――2人の『リン』(イシュタル、エレシュキガル)からの霊子魔力調整(ちょっかい)もあったが……ぶっつけ本番。着てみるがいい―――

 

そんな刹那の戸惑いを、更に加速させる不穏な言葉を聞いた。何、実験動物よろしく、俺にとんでもねーもん寄越そうとしているんだ。

 

―――神話礼装(オーバーコード)顕現(EXTRA)―――

 

 

文句を言う前にビジョンは終わり、レッドとの接触契約は10秒程度であったが、変化は起こる。

 

精神世界(?)とでも言うべき場所から受け取ったものが、身に纏われていた。

 

「セツナ、それは?」

 

「……オヤジとオフクロとが夜なべして作ってくれたものようだ―――とにかく! 『力』を渡していくぞ!!」

 

レッドの疑問に応えつつも、やるべきことは分かっている。

 

「OK! 存分に全員に渡していけ!! アーサー王3騎分の魔力と、レティの魔力―――そしてお前の『虹色の魔力』を混ぜてな!」

 

その言葉と満面の笑顔を受けて、宝石剣を左手に、軍神の剣を右手にしながら刹那は駆け出す。

 

まずは―――。

 

「毎度おなじみ遠坂工務店の到着です」

 

「―――セツナくん!?」

 

最初の攻撃が不発に終わったことで退いた、意気消沈している国防軍の剣士隊に向かうと、反応するように声を上げてきたのはランさんだった。

 

魔剣フルベルタを手に少しだけ途方に暮れていた日本の聖騎士(パラディン)を見てから、やるべきことをやる。

 

「というわけで、武器と魔力のお届けに参りました。投影・現創(トレース・オン)―――投影・現像(トレース・オフ)

 

その言葉で宝石のようなきらびやかな魔力を持つ刹那の分身体たちが、『手渡し』で魔法剣士たちに魔力を届けて、その硬さに絶望感を感じていた最中に剣を目の前に突き立てるのだった。

 

「こ、これは!?」

「今まで使っていた剣よりも馴染む(・・・)……!」

 

手にとった瞬間に理解してしまう。地面(こくう)に突き立てられたその剣は、純粋に、その剣士のために鍛えられたものだった。

 

重さ、バランス、柄の太さまで指の長さにきっちり合わせて作ってある。刃の曲線、厚みも、その剣士が最も好んだ太刀筋を最大限に活かすよう設計されていた。

神域に達した名工でも、一生に何度出来るか分からぬ、『剣士一人』(にんげん)に対して作れる最高位の一振りがそこにあったのだ……。

 

「申し訳ないが、獣性分身(ミラージュウルフ)で触れると同時に、身体情報をスキャンさせてもらいました。存分に護国のためにズンバラリンしてください」

 

「相変わらず。スゴイことをするもんだな―――アルトリア殿たちは……いや、言わないでおこう」

 

修次さんもハッキリと見たわけではないが、どうなったかぐらいは分かったようだ。余計なことを言わずにいるぐらいは弁えているようで……。

 

「―――手を」

「ああ、力を受け取るよ」

 

千葉修次の剣客として磨いてきた『ゴツい』手―――本人の顔の甘さにはない硬さを感じてから、次は一色華蘭(フローラ)さんに対してと思ったのだが……。

 

「―――あの、顔が近いです……」

 

手を差し出せる距離ではない。接近し過ぎな華蘭にたじろいでしまう。

 

「この絶体絶命の状況で、男とキスも出来ないまま、死んだりしたら怨んで祟って出てくるかもしれないよ♪」

 

こわっ。しかしTPOぐらいは弁えてほしい刹那としては、その満面の笑顔での脅迫にどうしたものかと考える。

 

「ラン」

 

短く嗜める修次の言葉も、遠いようで―――。手の甲に口付けをすることで収めてもらうしかない。

 

「―――家門のため、愛妹のために性別を偽ってきた愛深き花神と同じ名前を持ちし姫騎士よ。アナタの愛と騎士道が戦場を駆ける戦士たちを慰撫し、戦わせる―――私はアナタ自身の御武運を(évangile)祈ります。『アムルー』・フローラ」

 

その言葉が通じたのかどうかは、分からないが、それでも長居は出来ない。

 

「それでは」

「刹那くん、これ―――僕の姉から、エリカたちにも渡してくれ!!」

 

踵を返して去ろうとした自分に渡される保存ケース。いわゆるお弁当箱が一纏めにされて、修次さんから投げ渡されるのだった。中身は握り飯だろうと察知してから

 

「どうもです!いただきます!!」

 

受け取りながらも跳ぶように駆け出しながら四方八方に分身を飛ばして、魔力補給の算段を着けていく。

 

―――目指すべきものは最初っから分かっていたのだ。

 

 

快活に戦場を駆け抜けていく後輩を見送ってから、剣士隊の隊長である修次は、ふんどしを締め直す気分で向かうことにする。

 

(魔竜の身は全てが魔力の塊で、その気になれば、どこからでも攻撃できる)

 

となれば、以前にやったウツボの捌き方。暴れるウツボの頭に釘を打ち付け、尻尾を切り落としておとなしくさせてからの腹開き―――なんて方法は早々できない。

 

如何に足場の自在さで高所というアドバンテージは無くなったが、それでもそんなことは出来そうにない。

 

(となれば、大まかに言って筒切りの要領で切っていくのが最善だな)

 

しかし、それも至難の業だろう。だが……。

 

「―――今日のわたしは、もう負けんもん。好きな男の子からあいそらしい勇気をもらったじ! ほやさけ今日のわたしは羅刹(ラクシャーサ)すら凌駕するがいね!!!」

 

(思いっきり金沢弁が出てる……!)

 

同時にテンションアップしたのか、魔剣フルベルタの刀身に描かれた百合の花紋が浮かび上がり、両刃が真っ赤に染まり、雷光を纏うのだ。

 

「護国のために集いし全剣士たちよ!! 私に続け―――!! 我が魔剣フルベルタの輝きを灯明にして進むのだ!!」

 

……エリカもそうだったが、男所帯な共同体では、実力が同格ならば、やはり女の方が人気が高いのか……。

 

そんな風に考えてしまうぐらいに、とんでもない意気を上げて剣士隊は突撃するのだった。

 

 

―――Interlude out―――

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