魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~   作:無淵玄白

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勝手ながら、こっちの方の感想返信は一旦ストップさせていただきます。

一応、目は通させていただいてますので、これは答えなければならないな。というもの以外はネタバレを避けるために一旦ストップしていこうかと思います。

ご了承ください。


第288話『色彩-Ⅷ』

 

 

 

「ハッ! ようやく斬りやすくなってくれたな!! その身を―――この剣でたたっ斬る!!!」

 

ズガン! という明らかに剣を振り下ろしたとは思えぬ音が響き、大上段から振り下ろした斬撃が迸る赤雷と共に、巨頭小竜の一体を斬り砕く。

 

同時にモードレッドを最大級の危険と察知したのか寄ってくる小竜たちを―――。

 

「―――雷爆鉄槌(ストライクフレア)!!!」

 

振り下ろした大剣の一撃、その振り下ろしで太陽のフレア放射のごとく『剣』から熱線が吐き出されて、夜の世界が一瞬だけ昼間のごとく明るくなった。

 

そしてその熱線が放たれたあとには何一つ残らない。現代日本の技術で舗装された道路をアメ細工のように溶かしてその下にある埋め立てられた岩土をマグマだまりのように溶かしていた……。

 

放たれた熱量は推して知るべし。

 

『お嬢! テンションが上がるのは理解しているが、射線には気を遣えよ。ジャパンのアーミーと問題起こしたらば、『こと』だぜ!!』

 

「そんなこと気にしていたらば、敵なんざ倒せねぇよ!! ―――と言いたいところだが、流石にガン無視はダメだよな……」

 

注意喚起するほど暇ではないが、相手のチカラを削るチャンスを逃すほど戦場でのカンも悪くないので―――。

 

「そこ退け! そこ退け!! モードレッド様の進撃は、エレン・イェーガーのように止まらないぜ!!」

 

―――言葉で注意をすることにした。

 

吠えたけ叫ぶ美少女。

朱色の光刃を大剣に纏わせながら突き進む英国の騎士。

 

……その様子に国防軍の剣士隊は、色々と複雑な気分だ。

 

最近の事務方。特に背広組及び魔法師に対して微妙な戦術的理解しか無い将校及び兵卒からこんな言葉が出てきたりする。

 

 

剣士(セイバー)なんだから剣からビームぐらい出せるでしょう?』

 

頭痛が痛い。などとアホな表現で返したくなる言葉だが、そんな風な論調になったのも無理はない。

 

遡ること去年の春に非公式ながらも『アーサー王』のエクスカリバーから放たれたビームを観測。無論、当時は『何だこれは?』という程度で、魔法師も遠坂の説明に半信半疑であった。

 

そして夏―――九校戦のアイスピラーズブレイクにおいて、USNAの魔法師の少女と共にアゾット剣を重ねて持ち(巷ではウェディングケーキの術と呼ばれている)、とんでもない色彩豊かなビームを放ったことが、更に――――。

 

『ところでキミ、出せるビームの色は何色?』

 

そんな言葉が吐かれること多すぎる現状に国防軍の魔法剣士たちの胃はキリキリ舞いのリンボーダンスを踊る始末。

 

そして極めつけは、横浜マジックウォーズでのこと……。

 

件の少年 遠坂刹那が出した黄金の剣―――伝説のアーサー王が振るったと伝わる剣から出る黄金の閃光が、大妖狐を消滅させたことで……。

 

『千葉館長。こんな風な術を国防軍ないし警察の魔法剣士たちに教えていただけますか? これも魔法剣術の一種であるというのならば、教えるのは容易いのではないですか?』

 

『はっはっは。我が道場のお得意様たちは無理難題をおっしゃる―――』

 

件の映像を見せられたことと娘・息子たちの伝聞を聞いた後。

千葉丈一郎氏は、バターンとぶっ倒れて、うなされるような様子で三週間近い静養を余儀なくされた。

 

人間、理解力を越えた事象をさも『当たり前』のことかのように語られる。しかも、それが自分の近似のことと同列に語られると、頭を痛めるしかないのだ。

 

結果として、

『ビームを出せない魔法剣士(セイバー)は、魔法剣士じゃない説』

 

……というのが日本の治安維持機関で定着してしまった。

 

これは偏に遠坂刹那が『古臭い』人間であるからこその誤解。

 

現代魔法の発端の一つに古式魔法があるというのならば、現代の魔法剣士にそれが伝わっていないはずはない―――。

 

往々にして人というのは誤解と偏見を備えるものだ。特に自分の専門分野外だとどうしても夢見がちな想像をしてしまうのだ。

 

結果としてこんな風なことが起きてしまうのだった……。

 

(けれど―――刹那クンが、ビームを剣から放つのを私は間近で見てしまった。あの輝き―――夕焼けの中で燦然と輝く黄金の剣を)

 

一色フローラの眼に焼き付いたあの輝きを再現したくて今までやってきたのだ。

 

それを―――。

 

「むっじぃことカンタンにやってくれてるんじゃねー!! えんじょもん(余所者)が―――!!!」

 

「うおっ! セツナの家に来たジャパンアーミーの女軍人(WAVE)さんかよ!?」

 

いきなりモードレッドの横に並走してきた金髪の女子大生程度の年齢だろう相手に驚くのは無理もない。

 

「あなただけがビームを撃てる剣士じゃないことをわたしが証明してやるね!金沢剣士はふりむかんじ!!」

 

「に、日本語なのか!?」

 

大まかな意味は何となく通じるがスゴイ訛り言葉にモードレッドは少しだけ驚く。 だが、そんなモードレッドに構わずフローラは、フルベルタの雷光を収束させて、上段に構える―――そして―――――。

 

「雷火よ 集え!! これぞリナルドの魔剣!! 伝説を束ねし一振り――――波打つ烈華の魔剣(エタンセル・デ・オルドル)!!」

 

振り下ろす前の口上、知る人ぞ知る宝具の真名開放を以て振り下ろした剣に連動して放たれる赫い爆光が──魔竜3体を包んだ。赫光が、魔竜と東京の大地をことごとく灼いた。

 

あとに残るは、灼かれた大地と―――。

 

 

『『『『ビーム撃てるんかーい!!!』』』』

 

剣士隊の皆さんの同僚もしくは隊長に対して嘆くような叫びばかりであった……。

 

 

そんな様子を見ていた一高愚連隊の総代表たる渡辺摩利は、アレが今春から入り、そして正式任官の際に着任を希望する剣士隊、抜刀隊の姫騎士『一色華蘭』かと―――少々ビビっているのだった。

 

「ううむ。刹那君のせいで魔法剣士=ビームを放つ。なんて公式が定着しつつあるぞ……どう思うよ壬生? 私も国防軍に入ったらビームを放つように頑張るべきなのか?」

 

「は、はぁ……まぁとにかく渡辺先輩とか千葉OBの愛の力で剣士の定義を変えるべきなんじゃないですかね?」

 

いきなり話を振られて、返すように言いながらも壬生は遠間から放つ剣戟を絶やさない。

 

その都度、剣戟の軌跡に応じて青色の閃光が魔竜を穿っていく。

 

振り上げた軌跡に応じて地面から波濤のごとき閃光の柱が吹き上がり、横薙ぎの剣戟では扇状に矢のような閃光が同時打ちされていく。

 

その様子はまるでショットガンである。

 

遠間から放たれる蒼い閃光の乱舞が、魔竜の硬い鱗を穿っていくのだ。

 

「バ、バカモノ! そ、そういう風なことを平然と言うな!! 大体にして先程の真由美のオヤジさんといい、刹那くんといい愛ってそんな安い―――うん?」

 

「どうかしました?」

 

「ああ、いやなんでもな―――――――いわけがあるかぁ!! 壬生、何だそのビームソードは!?」

 

遅れて気付いた驚愕の事実。壬生紗耶香(後輩)がいつの間にかジェダイマスター(間違い)になっているのだった。

 

「どうしちゃったんだ壬生? まさか刹那にエッチな改造手術されたついでにビームが出せるように改造されたのでは!?」

 

如何に先輩とは言え、かなり失礼な言動ではないかと思うも、とりあえず紗耶香は少し遠くから耳ざとく聞いていた桐原の安堵と己の名誉のために口を開く。

 

「違いますよ。まぁ詳しく話すと長くなりますから手短にいいますけど。

『アナタのような女との出会いを待っていたわ―――さぁ!! 私のビーム攻撃をラーニングして、宇宙戦艦の異名を受け継ぎなさいハルカちゃん(?)!! 』と私の夢に出てきた赤毛の女性との地獄の特訓を終えた時に―――私はビーム攻撃(?)ができるようになっていたわけです」

 

呆れるように摩利に言う壬生、全然手短ではない言い分ながらも剣からビームを飛ばすことは忘れていない様子だ。

 

聞かされた摩利としては唸らざるを得ないものがある。刹那が何かをしたわけではない。ただこの話を友人である真由美が聞いていれば、その御仁が、何者であるかが一発で分かった。これもまたすれ違いであった。

 

渡辺摩利―――色んな意味ですれ違う女でありそんな少女の様子に不憫を覚えた『ご先祖』は、少しだけ自分の炎を貸すことで戦場で戦えるようにしてあげるのだった……。

 

 

「倒しやすくなったのはいいんだが、それでも火力不足か……」

 

一条将輝の爆裂によって、龍鱗を発破するもさしたるダメージに見えない魔竜。目眩ましとネコがひっかく程度のダメージはあるのだが、最後に必要なのは―――。

 

「というわけでジョージ頼んだ!!」

 

「無茶振りじゃないかなマサキ!」

 

泣くように言いながらも、いつもの印象ではない吉祥寺真紅郎は、いつもならば持っているはずの汎用型デバイス(武器)を持っておらず、代わりに手にあったのは……。

 

棒、杖―――というよりも『棍』という表現が相応しい直径と長さを携えた武器を持っていた。

 

―――戦い方は、オレが教えるさ。安心してくれよ赤の従者さん―――

 

先程から真紅郎にだけ聞こえている少年の声。恐らくこれこそが英霊からの声なのだろうが……。

 

(なんで僕に取り憑くのかな……)

 

正直言えば、現代魔法に通じた真紅郎は遠坂の理論をそこまで有意にしてはいない。

 

確かに現代魔法では及ばない領域のチカラというものがあるのも理解しているし、物理法則だけに作用されないルール、隠された法則こそが『魔』というのも理解はしている。

 

だが、それは真紅郎が目指す頂にあるべきものではない。

 

 

そして望んでいないというのに、オカルティズムの究極たる『憑依魂魄』。つまりは英霊の力を降ろしてしまったのだ……。

 

「イヌヌワン! イヌヌヌヌワワン!!!」

 

これは英霊ではなく現実の『犬』の声。現代の世界では珍しい野良犬―――目つきはどちらかと言えば鋭い方で何かの狩猟犬を思わせるが、丸っこくて白い身体が愛らしい……。

 

そんな白犬が叫んで語った言葉が、恐るべきことに真紅郎には理解できた。

 

『お前は、この国の霊峰の膝下で多くの同胞たちを屠ってきた。その縁とセタンタの縁とが、繋がった結果であるのでお前はワン(わたし)をお世話する義務があるのだワン!!』

 

その言葉で真紅郎は思い出せることが多すぎた。

 

九校戦新人戦スピード・シューティング。

準決勝の相手。

解き放たれる獣性のインタラプトマジック。

そもそも相手に対抗するためにCADに仕掛けたルーン文字。

 

『デタラメだが、ワンカウントの術としては成立している』

 

完全に遠坂刹那のせいでもあったが、その言葉のあとにもう少し聞いておくべきだった。

 

そして、そんなルーンが施された魔導器で犬狼を撃っていった事実。

 

全てが繋がり―――ルーン魔術と言えばケルト神話ないし北欧神話。

 

いくつか考えられるが、少年が犬の『世話』―――という単語で思いつくは―――。

 

「なんで、犬の一人称が沖縄弁なんだよ!? クー・フーリン殿!!!」

 

『あっ、オレまだそちらの領域に達していないから幼名のセタンタでひとつよろしく』

 

「イヌヌワン!!」

 

真名を当てた真紅郎だが、状況はそんな真紅郎の嘆きを聞いてくれる状況ではない。

 

「ジョージ!!」

 

将輝の警告。しかし、それ以前から強化された知覚は、敵の存在を認識して棍は巨頭魔竜に打撃を開始する。

 

 

棍は英霊の武器、巨体を震わせるほどの威力を備えているらしく、いまは『手打ち』だが、腰を入れて打ったならば……。

 

「せいっ!!」

 

正面から鼻腔を打つ形での衝撃が、魔竜を後方に仰け反らせて吹っ飛ばした。

 

(今のは……!?)

 

魔竜と棍は当たってはいなかった。

 

モーションだけは確かに直線打撃のごとく一直線に放ったはずだが……。

 

―――そう、キミの開発したという作用力だけを対象物に与えるものは、オレのようなエリンの戦士にとっては手妻なんだ。―――

 

それはまだまだ神代の影響が強すぎる大地であるがゆえの戦いの技法であった。

 

例えば触れただけで肌身を溶かす毒を持った魔獣。

 

当然、その毒はドワーフ(土妖精)が作った頑丈な武器ですら打ち付けた瞬間に容易く溶かすとなれば、それに対抗する手段が必要となる。

 

あるものは魔術で、あるものは毒にも負けぬ「聖銀」(ミスリル)仕立ての武器の鍛造に―――。

 

そして戦士たちも対抗策を講じることになる。

 

 

―――鱗が強靭すぎる竜、利刀を容易く溶かす毒を持つ魔獣、そもそも存在すら不定形の粘液状生物に悪霊(ゴースト)……―――

 

 

―――人外の魔を相手にすることがエリンの戦士たちには求められた。例え利器や叡智が無くとも、相手を打ち倒すことを―――

 

武器や拳を相手に接触させることなく『死の衝撃』を与える術。

 

魔術などならば容易いが、それでもエリンの戦士たちはそれを目指したのだ。

 

どれだけ人間の能力が退化して、便利な道具に頼ろうとも―――戦士は己の身で『魔』と渡り合えるということを多くの人間に、示さなければならないのだ。

 

 

「―――!!!!!」

 

らしくもなく熱くなる。

 

そもそも魔法師の敵は魔法師であり、そうでなくとも鍛え上げられた軍人ばかりというのが、常だった。

 

しかし、遠坂と関わったことで、理外の存在と敵対することが多くなってしまった。

 

それは元々、世界が抱え込んでいた闇であり、自分の知識が通用しないものばかりだった。

 

そこに将輝を連れていくためにも―――自分の専門外だからと理解を拒んでいてはダメなのだ。

 

 

 

「がんばれ吉祥寺! お主がいまはメインフォースなのじゃぞ!!」

 

僕はジョ○子か!? と言わんばかりの言動を四十九院から掛けられるも、言われるまでもなく―――真紅郎は前に出るつもりだった。

 

「そのつもりだよ!!! いくぞクラン!!」

 

『イヌヌワン!!』

 

魔犬の幼生を引き連れて、魔竜に挑む真紅郎。いつにないプレデトリーな戦いぶり。棍を振るって魔竜を叩きのめす姿にいつもとは違いフォロー役をする将輝は笑みを浮かべる。

 

(いいぜジョージ……いや真紅郎! その気迫! 戦いに対する意志の強さ! 俺はそいつを待っていた!!)

 

別に親友がNo.2でいることに甘んじているわけではなかっただろう。しかし、参謀役ということで自分の後ろに控えている親友を前に引っ張り出すことは、将輝では出来なかった。

 

佐渡ヶ島にて助けたことで、彼を庇護する立場が板についてしまった将輝は、そんな厳しいことは言えなかったのだ。

 

だからこそ、遠坂刹那・司波達也という存在が現れたことは僥倖だった。

 

彼らとの差を感じれば感じるほどに強まる・燃え上がる吉祥寺真紅郎という男の意気と意地。それこそが、新たな戦いの姿を作るのだ!!

 

「リーレイちゃん!! 金と銀を!!」

 

(はい)!!」

 

短い指示だが将輝の意図を理解したリーレイによる攻撃というよりも魔竜の足止めが決まる。

 

『これは!?』

 

驚愕した魔竜。足元に蟠る流体の金属沼に動きを止められたことに驚いたところに―――。

 

(ジン)(イン)―――ダオダオダオ(刃、刀、剣)!!」

 

『『かしこまりました。シャオお嬢様』』

 

リーレイの言葉に従い鋭い刃が林立して、魔竜を足元から貫いていく。

 

流体のゴーレムたる金と銀のゴーレムは、そういう奇襲攻撃も出来るからだ。とはいえ、やられた方はたまったものではない。

 

「―――いけっ真紅郎!!」

 

「将輝!!」

 

棍の片端―――石突ではない方に紅い宝玉を出現させた真紅郎は、膂力や威力を補って魔竜を叩き伏せていく。当然、魔犬たるクランもまた牙と爪を使って、魔竜に痛撃を与えていった。

 

合わせる形の絶妙なコンビネーション。喩えるならば餅つきのように合いの手として爆裂・偏移開放・魔渦竜を入れる将輝の魔法が魔竜たちを倒していく―――最高のバッテリーのごとく……。

 

その一方で珍しいコンビが、この戦場に誕生していたりした。

 

 

 

 

「いきますよレオ君!!」

(ステゴロ未経験だろうに、とんでもない女……)

 

口の上では『あいよ!』と言いながらも内心では、そんなことを思うレオは幻手

を器用に操りながら、魔竜を叩きのめしていく。ある時には魔竜を『投げ飛ばす』ことで事態に対処していた。

 

確かに殴りやすくダメージも通りやすくなったのはいいが、今度は数が脅威となる。昔に比べて贅沢な悩みかつ、傲慢な考えだが――――――。

 

―――あのままやっていれば、いずれレオの『神杖』は魔竜を貫けていたはずだ。―――

 

確たる証拠があるわけではないが、レオの中にある直感が、告げる限りならば、出来たはずなのだが……。

 

(考えてんじゃねぇ! 動け!!)

 

そんなことを振り払うように魔竜の攻撃を幻手で遮断しつつ、敵性術式を打ち砕く。

 

レオが構成する幻手は、その特性上、放出された魔法式・魔術式を砕ける。原理こそ『不明』なれど、その手からも魔法式を放出出来るのだ。

 

今も幹比古と美月の辺りに襲いかかろうとした雷撃を幻手は防いだ。

 

そうした後にレオの拳と同時に振るわれる幻手は、魔竜の頬桁をひったたく。

 

速度を上げて接近しながら拳を使って有り余る膂力で魔竜を粉砕していくレオ、八面六臂ならぬ八腕潜航(ハチワンダイバー)するレオによって魔竜の数が減っていく……。

 

しかし―――。

 

「速すぎる! かといって、足を抑えろとか言えない!!!」

 

その速度は完全にサーヴァント級になった深雪とレオに援護が届けられない。

 

動体視力こそ魔法師ゆえそれなり以上に鍛えられている幹比古でも、それは追いつかない速度だ。完全に伴奏者たる後方を置き去りにした死の舞踏を刻んでいく

……。

 

そこに……。

 

「―――フィッシュ&リリース」

 

気の抜けた声、されど声の主は『可憐な乙女』としか思えないものが聞こえた。

 

聞こえた後には、魔竜たちを頭上から撃つ砲弾が炸裂。

 

こちらにも粉塵と熱と―――妙な気分を届けてくる。

 

そんな攻撃を行っただろう『可憐な乙女』は、ポーンと幹比古の上方を翔んでいくようにして前に出ていく。

 

軽快な動き、軽やかな足さばきに見とれつつも―――幹比古は本日2度めの『はいていない』を目撃してしまい、鼻血を出してしまった。

 

隣の美月に心配されながらも、砲撃を行った存在―――真っ赤な衣服を纏った 乙女は―――レオの下まで翔んでいく―――。

 

 

それを腕の振動で感知したレオは―――。

 

夜空を振り仰ぎ、そこにいるは上品なブラウスを着て、ミニスカート―――かなり丈は危ういものを履いている女(?)だろう人物がいたのだ。

 

「そこのマッスルなお方! 私を抱きしめて!! 銀河の果てまで!! いえ、むしろ

ロックスターのように銀河の彼方まで愛し合いましょう―――!!!」

 

その女は飛びながらもとんでもないことを言ってきた。マッスルなお方―――十文字先輩は離れたところにいるので違うと見当しつつも……。

 

「どういう意味だ―――!?」

 

叫ぶも言いたい意味は分かってしまう。要は誘われているのだ。当然、恋人がいるレオは、その言葉に頷くわけにはいかずに、幻手を使って着地場所を作ってあげるのだった。

 

「――――着地成功。グラッツェと言いたいところですが、私 言いましたよね。

『愛の限り抱きしめて』(アッブラッーチョ)と。耳が遠いんですか? それとも私の声が小さかったんですか? 前者でも後者でも使えない犬だわ」

 

「いやいやいや! お前いきなりムチャクチャ言っているな!? 相手にも色々と事情はあるし、そもそも着地成功とか言った時にポーズを決めている女が言うセリフじゃねえぞ!」

 

「見事な着地を決めたもので、ついうっかり取っちゃいました―――あふれるほどパッション! 震えるほどブルチャーレ!! そんなわけで納得してください」

 

言葉と同時にレオの幻手というお立ち台から降りてきた少女は―――。

 

レオの真正面に立ち―――背丈の差があるからかこちらを伺うようにしていた

 

「んで名前は?」

 

「私の名前は―――ひとまず、マジカル紙袋Ver.3とでも覚えておいてください。マッスルのお方」

 

マジカル紙袋―――名は体を表すを地で行く通りに今では殆ど見かけない大型の紙袋に両目の虚を穿ち口元を描いたものをすっぽり被った少女は―――。

 

「……まぁ、ハイジャックで金を要求するカボチャマスクよりはいいと思っておこう」

 

「チャリティーは必要なものですけどね。でなければ、明日食べるマーボーに入る豆腐の量が減ってしまいます……!!!」

 

紙袋から溢れる『銀髪』から考えて、どういう食生活しているんだろうと想いつつも……。

 

「助太刀してくれるのか?」

「そのつもりデス」

 

その言葉を受けたあとには、もはや言葉はいらなかった。

並ぶようにして駆け出すのみだ。

 

「―――ヴァレンティヌスの聖骸布」

 

言葉で身体に羽織っている紅白の布が、魔竜たちを拘束していく。

 

「今ですマッスルの人! 少しだけ先を行く聖女ムーヴな人!!」

 

締め上げるように拘束したあとに声を掛ける紙袋の言葉を受けて―――。

 

「おうよ!!!」

 

「ヴァレンティヌス? あなた―――とにかく!!!」

 

―――即席ステゴロコンビの打撃が魔竜たちを抹殺していく。

 

「やはり暴力…!! 暴力は全てを解決する…!! 動けない敵を一方的に殴るのはどうかと思いますが」

 

「いや、お前がやらせているんだろうが!! おまいうすぎる!!」

 

「なんだか随分と個性的な子ですね……マルタさんは、『記憶にある』とか言っていますけど――――――」

 

紙袋に抗議するレオと苦笑する深雪―――言葉が途切れた。

 

少しだけ上方に出来上がる巨大な魔力の存在。

 

三者の魔力を循環させて出来上がる魔戦艦。横浜マジックウォーズでも主力を努めた三人が揃って前に出てきたのだった。

 

決着の時はすぐそこである――――――。

 

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