魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~   作:無淵玄白

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注意としては、とりあえずまだ分からない点もあれども、それでも『こうだろう』というシーンが含まれていますが、その辺はご了承いただければとは思います。

あとで反省会的なものでも活動報告にあげようかとおもったぐらいです。

本当に長くしすぎた。申し訳ない限り。


第290話『色彩-Ⅹ』

戦い終わって日が暮れて―――そもそも、戦いが始まった時点で既に夜中であったことを思い出して、水平線の向こう側を見るとすでに薄明が登りつつある……。

 

戦場と化した場所の中心に降り立つ。

 

対星宝具を受けて完全に陥没した大地に、一人の男が立っていた。

 

名前も顔も存じていない。だが、伝え聞く所によれば―――この男こそが……。

 

「感謝しておく筋合い―――なのかな?」

 

「いいえ、どうせ―――楽しんで(・・・・)いたでしょ?」

 

問いかけとも確認ともどちらとも取れる言葉に、刹那はそんな返しにしておくのだった。

 

「ふむ。予想通りとはいえ、ここまで簡素に言われると、実に不愉快と愉快の中間で、何とも言い難いな。しかしトレビアンな闘劇は―――楽しませてもらったな」

 

古めかしい貴族の服にマントを羽織った、眼を閉じた美麗の男。

 

その正体は――――。

 

「ズェピア・エルトナム・オベローン―――」

 

「やぁシオン。ヘルメス越しではない対面での話というのも実に新鮮だな。肉声を使って対話することに、少しばかり感動しているよ―――」

 

先生も出会ったことがある、アトラス院の歴代院長の一人であった。

 

そんな院長様は、『娘』との対話を早々に切り上げて、違う話を切り出してきた。

 

「しかし、元凶である私が言うのも何だが、乱痴気騒ぎ(演目のテーマ)が二転三転というのは忙しない限りだったな。君たちが見ていないところでの、多くの諸君ら(マルチアングル)の活躍を見せてもらっていたので―――まぁ良しとしよう。縦軸の演目だけでなく、横軸の演目もまた観客を楽しませるものだ」

 

何か今回のことでダメ出し食らっている気分にもなる。とはいえ、言わんとしていることは理解できる……。

 

「シオン、キミのやり方は決して間違いではない。

間違いではないが、少々拙速が過ぎた。もう少し―――人の世を知ってから、より良き未来を見出すべきだったね―――と、この世界では会えなかった真祖の姫君からもアレコレ言われていたわけだし、私まで言わなくてもいいだろう。これでも私は娘想いなんだ」

 

娘―――シオンに対して講評は止そう。自愛しなさいという態度であるズェピア……。

 

目は開いてはいない。その言葉の後にその美麗の貌が向いた先にいたのは―――、一人の男だった。

 

「さて、アレコレと思い悩むのは演者たちでいいだろう。いま必要なのは大演劇に対する閉幕の合図。本当の意味でこの夜にフィナーレを刻むためにも、タツヤ・ヨツバ君―――キミの眼で私を殺したまえ」

 

「父さん……!」

 

悲しさなのかそれとも孤独を恐れたのかは分からないが……少しだけ前のめりになるシオンを見て、達也は口を開いた。

 

「……理由をお聞かせ願えますか?」

 

「タタリの駆動式をこの時間軸に留めているのは、オリジナル(二十七祖)と同位たる私、ズェピア・エルトナム・オベローンが、この軸にいるからだ。その私に獣の尖兵やそれに混じった魔神柱の残滓だのがくっつき―――ああ、我が身はアダムダム固守卵の如き様だ。実に不愉快極まりなかった―――だからこそ、最後の死は―――同じ眼で安らかに逝きたいのだよ……」

 

 

長広舌をぶっている。訳が分かるようでわからないようで、されど重要なことは何気なく「分かる」。

 

「私が消滅すれば―――彼女(・・)の姿をようやく魔宝使いの眼にも写すこともできよう。色々と理由はあるが―――いい加減、死なせてくれ」

 

―――端的に言えば介錯人の要求であった。

 

「―――俺とアナタには何のゆかりもないんですけど……」

 

「しかし、キミの叔母の不幸の原因となった『フリズスキャルヴ』―――またの名をヘルメスは、ワタシの発案だ。残骸は好きに使い給え―――」

 

「俺のダチが言っていた通りならば、アンタたちの武器は――――――『オレ』は使いたくないよ」

 

世界を焼き尽くす武器なんていらない。

 

そういう想いで、『達也』(かずや)の持つ短刀はズェピアという『死徒』の肉体を消去していた。

 

「人格を任意で変えられるわけではないようだが―――まぁ及第点としておこう……ああ、どうやらとうとう天から迎えが来たようだ……私は『英霊の座』にいかなければならない……」

 

先生曰く『稀代の演出家』という名に恥じぬ(?)ショーで、多くの天使たちに連れられて天(?)へと登っていく姿が見える。

 

ズェピアが滂沱の涙を流して昇天しているところ悪いが、かなり衝撃的なことを口走られたような気がするのだが……もうその辺りは何も言わないでおくことにした。

 

なんせ真祖までサーヴァントとして召喚しちゃう聖杯戦争まであるのだ。

 

しかし、それ以上に物申したいことがある……。

 

「……なんでアイツだけ昇天シーンがゴージャスなんだ?」

「C公明か?」

「ブチャ○ティか?」

 

半眼で呻くような『和也』の言葉に、思わず同調して2人ほどが呟いた。

 

そして―――。

 

「ちなみに魔宝使い『遠坂刹那』くん。シオンとラニたち―――残された私の娘たちのことは任せたよ!! よろしく!!」

 

「ま、待て! とんでもないことをサラリと託して逝くんじゃなーーーい!! 英霊の座よりカムバ――――ック!!!!」

 

手を伸ばしても無理だということは分かっていたが、好青年のような一言を最後にズェピアは―――本人の申告通りならば、英霊の座に召し上げられたようだ―――いや、本当か?

 

嘘か真か分からぬ自己申告を聞いて―――そして、他の自己申告…… 自分にだけ見えない『幽霊』の存在を示唆されていた。

 

何となくズェピアが佇んでいた場所を見ると、そこにはメタリックな姿をした美女がいた。

 

服なのか肌なのかは分からない―――全身が硬質で、されど伸縮性はありそうなもので包まれた―――女性。

 

伸びる髪は―――『銀色』。

 

美女は自分を見つめていた。

 

「――――――」

 

「――――――」

 

 

言葉は―――ない。だが言いたいことは理解できていた。

 

何故かは分からない。魔術師としての第六感としか言えない。けれど――――。

 

「アリガトウ。アナタの記憶にいたワタシは―――すごく幸せそうだった。その『未来』を見れただけで―――ワタシは……もう一度戦える」

 

「―――ダメだ。戦うな……アンタは……」

 

戦える人じゃないはずだ。

誰であるかはもはや察した。

察したからこそ直視することは出来ない。

俯いて、言葉を続ける。

 

そんな刹那に対して、言葉は続く。

 

「セツナ、アナタのためにやったことは―――結果的にアナタを苦しめてしまったわ。ワタシはいつもそうね……こうしよう。ああしよう。こうしたい。ああしたい―――そう思ったことが、いつも裏目に出てばかり……願望(ねがい)なんて持つものじゃないって思った」

 

柔らかな声だ。あの頃には、いつでも聞いていた声だ。

 

どれだけ世界が過酷であって、魔道の災害が人々を苦しめたとしても、そこだけは柔らかな庭だった。

 

刹那が和らげる庭園……。

 

「―――――」

 

思い出して涙が溢れそうになる。

 

「………セツナ―――ワタシと共に戦ってくれる? アナタの手助けがワタシには必要なの―――」

 

俯いていた刹那の心が揺れる。きっと彼女は、『どこか』へと行く。その旅路はきっと……辛いものだ。支えてあげなければならない。

 

いつでも泣いていた人を、姉さんを助けるために―――差し出された手を取るなんて簡単だったはず。

 

それでも―――伸ばした手が、その手を取ることはなかった。

重なろうとしていた手を、寸前で握りしめて拳を作る。

 

「……」

 

「―――――」

 

その拒絶を見ても、柔らかな笑みが消えることはない。ようやく顔を上げて見た

姉さんの顔は―――いつも、刹那が困っている時に、少しだけ手助けをしてくれる時の顔だった。

 

「オルガマリー……」

 

「アナタが見ていたオルガマリーは少しどころか、幸せそうで嫉妬してしまいそうだった。現代魔術科のミス・ライネスと交流したり、降霊科のファムルソローネとか、色んなヒトと繋がることが出来た―――そういうヒト……」

 

銀色の髪が朝陽の中で映える美女―――恐らくハタチほどの歳のオルガマリーの姿があった。

 

着ている衣服は、好んで着ていたディグリーローブではない。しかし―――それでも……。

 

「けれど今は―――ちゃんと他の人達と繋がること! アナタがやるべき事は、ウェイバー先生の教えを繋ぐための触媒としての役割。そして―――ちゃんとした……カノジョと一緒になって……が、がんばるのよ!! あなたの―――前途を祈るわ―――ありがとう……ワタシではないけど、私が嬉しいと思える想い出をくれて―――」

 

「姉さん!!!」

 

もはや俯いて見ないでいることなど出来ずに、涙を流しながらも喜色を見せる姉の顔。その頬に手をやるも―――そこに確かな感触は無かった。

 

消滅。いや、何処かへと転移しようとしていることを理解した。

 

「――――――アナタに最後の希望を与える。忘れないで、大切なのは、ただ一人による救済ではない」

 

「必要なのは、絶望から解放されること……それは絶望をなくすことじゃない」

 

「利益ならみなで分け合える。けれど責任は誰ひとり引き受けない。そんな単純な原理を―――アナタは間違っていると言える人よ。それでも最後にはぐれる(・・・・)としても――――」

 

「俺は、みんなから託されたものを理解している―――大丈夫さ。己の身の丈で責任を果たす。手の届かないところを、手の届かないまま怒るのではなく。それだけだ。俺の身の丈は、思っているよりも高くて太いらしいからな―――しばらくは超人として―――戦うさ」

 

いつまでも続くものではない。

いつかは終わるものだ。

 

永遠に生きられるわけではないならば、その戦いにも終わりは来るだろう。

 

「――――ありがとう。それが分かっている人で良かったわ……迷惑を掛けたお礼だけど、ダ・ヴィンチとロマニの方に預けておいたわ。あとで迎えにいってあげて――――私も時計塔で、講師職にでも就いておけばよかったなー……南極なんか行くんじゃなかった……」

 

その「線」では、行かざるを得なかった状況だと思うが……この人にとってその講師職が一番の状況だったというのが、なんとも……。

「なんかどこのアンタでも愚痴っぽいつーか、まぁ……その調子ならば、大丈夫そうだな」

 

そういうのが一番、マズイと思う心情もあるのだが………見えてきた線、ダ・ヴィンチからも言われてきた通りならば、きっとそこには―――。

 

「それじゃあね。がんばりなさい。セツナはきっと――――――どこでも一生懸命になれる男の子だって私は理解しているから」

 

笑顔を見せながらも、どこか淋しげな顔をする義姉の輪郭が徐々に溶けていく。

 

最後の呼びかけ。何を言えばいいのかは分からない。それでも―――。

 

「オルガ」

 

名前を呼ぶことに意味はあるはずだったのに……。

マリーと続ける前に、朝陽の中に消え去る銀髪の美女。

 

……思わず泣き出したくなりそうだ。

 

先程から背中の衣服をきつく掴んで、顔を埋めながら離さないでいるリーナに悪いが、それでも涙が出てしまうのは―――懐かしすぎる顔で、昔の恋人だからだ……。

 

朝陽の光で、涙を融かしていた刹那の前に現れるは―――。

 

 

「で―――次はアンタか。アルクェイドさん」

 

「彼女の願いは達された。それは私がいなくなる予兆よ……」

 

ミニスカートの金髪美女。冬らしい装いである吸血姫、その姿を見たあとに『弓塚さつき』は、手招きに応じてアルクェイドさんの側に行く。

 

「シオンとリーズが消滅したのは『舞台装置』の変更よ。恐らく私とさっちんの『世界』が少しだけ変わったの。だからあの2人がああなったのね」

 

「何となく理解できた……そう考えると、アンタ規格外すぎやせんか?」

 

「それが真祖の姫たるゆえん―――なんて偉ぶるつもりはないわ。けど、ここいらで舞台を降りるわ―――その前に、刹那―――今回の事件解決のお礼に、キスしてあげようか?」

 

「いやー結構です。もう色んな意味でお腹一杯なんで、それどころかお腹一髪な状態です………」

 

ギリギリギリと腹を後ろから締め上げるリーナから、サダイジャのような締め付けをこれ以上食らうと、なんか色々と危険が危ないのだ。

 

オルガマリーまでは『セーフ』でも、アルクェイドは完全に『アウト』判定のようだ。

 

どうでもいいことだが。

 

そんな様子に満足したのか、アルクェイド・ブリュンスタッドは眼を閉じてから破顔して、こちらに踵を返すのだった。

 

「冗談よ。私の唇は安くないからね―――それじゃ帰りましょうか。志貴の待つ『総耶』の街にね」

 

ソウヤという聞き覚えの無い単語。自分の記憶を垣間見た連中も、遠野家という混血の魔がいるのが『三咲町』であるということは分かっていただけに、驚愕しているようだ……。

 

(このアルクェイド・ブリュンスタッドには、2つの軸での記憶が存在している……)

 

恐らく、新たに観測された新しい『枝葉』(世界の形)といったところかもしれない。まぁあのジジイが観測した時点で、それは確定した事象なのだから、さもありなん。

 

「刹那――――――また会うことがあるかどうか知れないけど、それでも―――私との縁も多少は気にしなさいよ。いつか気がつく―――アナタの生には意味があったのだと」

 

アルクェイドが捨て台詞ともイヤな再会の予感とも言える言葉を告げた瞬間、『手はず』を最初から整えていたかのように、刹那の手の中にある『宝石剣』が自動に起動をし―――、吸血姫と吸血鬼をどこかへと飛ばすのだった。

 

 

 

―――夕焼けに染まる世界。人の気配が殆どなくなっていた校舎に……一人の少女の姿を発見した。

 

いつも通りに保健室から帰ってきて、教室には誰もいないと思っていたのに、まさか―――。

 

いるとは思っていなかった少女は、机に突っ伏して少しだけ魘されているようすだった。

 

よってやるべきことはただ一つであった。

 

「弓塚さん。弓塚さん―――」

 

起きてとまでは言わなかったのは、最近自分が『メイド』によって起こされている立場になってしまったからかもしれない。

 

要は―――気後れしてしまったのだ。

 

「うん? ううんん――――わわっ!! と、遠野くん!? ええええっと!! ど、どうしたの!?」

 

「いや、どうしたのは、こっちのセリフかな? 俺は悲しいことに、いつもどおりの保健室帰り。カバンを取りに来ただけなんだけど……居眠りしている弓塚さんを見たからね。起こした方がいいかと思って」

 

仮にもしも、このまま『夜中』まで気づかない―――なんてことはなくとも、部活での夜帰宅も無い彼女が『万が一の危険』に晒されるのは忍びないのだ。

 

「あ、ありがとうね……夢見は最悪―――ううん。よくも悪くも変な夢だったなぁ」

 

「どんな夢を見ていたの? 話したくないならばいいけど」

 

予想に反して嬉しそうな顔をする弓塚さつきに言うと、すると少しだけ焦る様子。

 

「そんなことないよ。ただ……荒唐無稽かもしれないから話半分に聞いてね。ブログとかSNSとかにも書かないでね!」

 

「大丈夫」

 

もはや『有間』の家とは違い、現在の住居にはインターネット関連の環境は無いのだ。

 

何だか『割烹着』の方の使用人の離れにはありそうなのだけど―――。

 

(せめてなぁ秋葉にはスマートフォンを持たせてくれるように、直談判すべきかなぁ)

 

しかし、そうなった場合、容易に秋葉が『兄さん! いまどこでどなたと一緒なのですか!?』などと連続コールをして、夜ふかし不可能状態になりかねない。

 

ついでにいえば隣りにいるだろう金髪吸血鬼が『志貴ー、誰からー?』などと気楽に話してくれやがる。

 

色んな意味で難儀な『じっかぐらし』なのだった。涙がちょちょ切れそうだ。

 

「ええとね……なんていうか私が吸血鬼になっちゃう話だったんだよ」

 

「――――――――――――」

 

自分の世知辛さなど一発で吹き飛ぶ話であった。弓塚さつきの話は続く…。

 

「それで、長い三編みおさげで―――紫色の髪をした物凄い美人な女の子、銀髪をポニーテールにしたこれまた男装が似合いそうな美人さんと―――――――」

 

「と?」

 

「ろ、ろ、路地裏で生活しちゃっていたんだよ……もうワケわかんないよね。しかも本格的なホームレス生活で」

 

人差し指を突き合わせて、都会のJKにあるまじきそれを恥ずかしがっていたのだが……。

 

「それでも……」

 

「それでも?」

 

「楽しかったんだ……最初はそのおさげの女の子と2人だけだったんだけど、そのうち、銀髪の子とも一緒に路地裏生活するようになって―――うん。色々ドタバタした日常を暮らしたり、ヒドイときにはおさげの子の計算間違いで変な話になったり、旦那様みたいな銀髪の子と空を飛んだり――――言い尽くせ無いなぁ」

 

「俺は弓塚さんが魘されているように見えたんだけどね」

 

「そんなことはないよ。多分―――ううん。とにかく、どこかでまた出会えたらなぁとは思うよ」

 

その言葉を、晴れやかな笑顔とともに夕焼けに吐き出す弓塚さつきの姿を見て―――。

 

「家まで送るよ。最近は、総耶も何かと物騒だし、今にも夜になりそうなのに、一人はマズイだろ?」

 

「いいの? なら―――遠野君にエスコートお任せしちゃいます」

 

「はい。任されました」

 

女学生らしいイマドキなバッグを肩に担ぐ弓塚に戯けて応えながら、遠野志貴は家路に就くのだった。

 

その際に志貴の眼に一瞬だけだが、弓塚が言うところの『おさげの子』と『銀髪ポニー』が見えた。

 

弓塚の後ろ―――教室の窓辺辺りに立っていた2人の姿は、見間違えだったかのように、ふっ、と煙のように消え去るのだった。

 

ただその眼は弓塚さつきという少女を労るかのようで、決して害意がないことは間違いないのだった……。

 

 

 

「は―――どっと、疲れた! 何だか一ヶ月程度の騒動だったのに、一年と半年近くも騒動が続いていた気分だ!」

 

まるで作者が利き腕を骨折。連載漫画がストップして、作中の人物も三ヶ月間は驚愕の顔を取り続けて固まっていたかのように―――本当に騒動が長すぎた。

 

いや、そのように感じるだけで凡そ一月の騒動だったわけだが……まぁ色々とありすぎたことは間違いなかった。

 

伸びをして固まった身体を解しておく。でなければ、また……泣いてしまいそうだったからだ。

 

「ダイジョウブ? 無理してるのわかるワ」

 

「……まぁ多少はね。問題ないさ」

 

後ろからしがみつくようにしていたリーナが、労るように背中を擦っているのが分かる。

 

朝陽の中に消えていった様々な顔が、どうしても眼に焼き付いてしまう。けれど進まなければならない。

 

そう。戦う。進む。けれど―――。

 

時には後ろを振り返り、自分を見てくれていた人、支えてくれた人を労り―――そして抱きしめ合い瞳を見つめることも必要なのだ――――――。

 

 

 

それが―――7人分もあるとは予想外ではあったが。

 

「チョット―――!! あの場面(シーン)では、ワタシがセツナの背中に抱きついていたんだから、ワタシが抱擁されるのがスジでしょうが!! 何で割り込む!?」

 

「おだまりなさい!! アンジェリーナ!! やはりシンクロゲイザーよろしくマルスの剣を振り下ろしましたが、私こそセルナを癒やすべきオンナなのですわ!!」

 

「キッド〜♪ ほめて ほめて〜♪」

 

「私だってがんばりましたよ! セツナ!! もう一回本当のジュテームを!」

 

「アタシは既にアンタのサーヴァントだからな……けれど、何かリーナとだけ抱擁するのは納得いかないぞセツナ!!」

 

胸の前に殺到する五人(シアは飛びながら首に抱きついている)とは違い、シオンと栞は、セツナの腕に抱きついている。

 

恐るべき策士である。似たようなところでは、レオが同じような目にあっている。宇佐美に見られたらば大目玉だろう。マジカル紙袋と沓子が抱きつき、ラニ=Ⅴとが抱きつこうとしている。

 

 

「なんというかしまらない(閉まらない)オチですね……」

 

刹那の腕の中が『しまらない』と掛けた、達也会心の掛詞だったのだが。

 

「うむ。愛とは尊いものだな」

 

座り込みながら言う達也の愚痴るような言葉だと思ったのか、ズレた返答をする十文字克人。

ともあれ、これにて一件落着で『解散』を指示してほしかったのだが―――。

 

「解散指示で帰りたいだろう気持ちはわかる―――しかし、悪いが、まだ事後処理が残っているぞ達也」

 

克人よりも年上の男からの言葉が戦場跡に響く。

 

「少佐?」

 

独立魔装部隊では上官である風間玄信の出現は、特に変ではないのだが、その言葉の不穏当さに、ちょっとだけ冬の寒気(かんき)とは違う寒気(さむけ)を達也は感じるのだった。

 

「考えてみろ。事情を知らない人間から見れば、『きのう都内の公園で『何か』があって、園内から数kmが更地になった』だ。このままほうっておけば、まっ先に怪しまれるのはお前たちだぞ」

 

『……あ……』 

 

思わず同時に声を上げる当事者たち。

 

言われてみれば、騒動が大きくなりすぎて、あらゆる関係機関が動き出すのは当たり前だった。しかも前日には、代議士主催のパーティーを行ったホテルでとんでもない大虐殺があったのだ……。

 

「とりあえずそのあたりのことは、私及び国防軍がなんとかするが── いずれにしてもお前たち―――特に『主要メンバー』たちには、いろいろ証言してもらわなければならんからな。まずは魔法師協会を通してあちこちに連絡して──事情聴取に現場検証。

多分、ひと月くらいはかかるだろうな。受験生もいる中、悪いとは思うが、乗りかかった舟だ。つき合ってもらうぞ」 

 

言って、にまりっ、と、ひとの悪い笑みを風間は浮かべた。 

 

その言葉に、十文字や七草も含めて騒動に最初っから参加していた連中は、真っ白になるのだった。

 

──かくて──東京都内を襲った死徒二十七祖『ワラキアの夜』の脅威は去った……。 

 

このフレーズが使えるのは、どうやらまだまだ先のことになりそうである……。

 

結局なにごとも、事態を解決するよりもその後の処理が肝要なのだから―――。

 

 

 

 

 

「ところで少佐……風間さん。不機嫌そうですけど―――仲間外れがイヤだったんですか?」

 

「達也―――そういうことは察していても、あえて言うな。言わぬが花だ」

 

そんなオチもついたりするのだった。

 

 

 

 

 

 




長かった……ともあれ来訪者編のエピローグは、『卒業編』という形で書いていこうかと思います。

まぁ達也たちの卒業編ではないんですが、そういうタイトルを付けたかったということで。
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