魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~ 作:無淵玄白
しかし、それ以上にウミノクマの描く男キャラと言えば、やっぱり黒髪だよなーなどと思った私は重症である(爆)
「きっと今日だけなのね。この大学の学食で食事を摂るのは……連日の魔法協会でのレポート作成でロクに受験勉強出来なかった私は、ニー子として実家ぐらしすることになるんだわ……」
「午前の実技でとんでもない点数を出した女が、どの口で言っているんだ」
最後の方で『およよ』などとウソ泣きをする、二人掛けの机の対面の女に返す克人とて、不安が無かったわけではなかった。
しかし、存外に遠坂の荒行に付き合ったことで、地力がアップしたのは事実で、レポート作成という『休暇』を取ったことと、合間合間に時折やっていたメディテーションが、いつになく克人と真由美を高めていたのだ。
魔法大学受験は何事もなく上手くいく―――と思いたい。所詮は過程の話だ。
そして真由美の話。「家庭の話」に首をツッコむことに、のちのちアレコレ言われないための予防線である。
「第一、実家ぐらしと言ったが、お前分かってるのか? 実家に今後住む同居人のことを。お前、大丈夫か?」
「……一人暮らししようかしら……」
(遠坂のように自立出来るならば、いいのだろうがな)
基本的に七草真由美という女の本質は、自堕落的だ。家では妹や父親という目があったからか、母親代わりをしていたからか、それなりに『しっかり』している風だったが……。
竹内や名倉の目から見れば、真由美の『しっかりした姿』など外面だけで、ある種、そういう風に見せているだけだというのが家人たちの評価だった。
もっともその遠坂とて、自室というか工房である場所はとんでもない様相だと、シールズから聞かされていた克人は、何となく場合によれば、二人がナニカあった可能性は―――。
(無いな……)
頭に浮かんだ妄想を打ち消しながら、克人は、自分ももしかしたらば、暫くは家から離れられなくなり、かつ真由美にも構えなくなる可能性を考えた。
(西の騒乱と、北にいる庶子……)
西の騒乱はまだ時間はある。所詮は―――九の不始末・不手際だ。だからといって『九島家縁故のもの全ての首を差し出せ』などという要求は突っぱねるつもりだが。
それこそが事態を円満に解決する術にもなりかねないのが、現在のイリヤ・リズ及び古式伝統派改め『神代秘術連盟』の勢いである。
「………」
こうなることは避けられなかったのだろうか?
何かもう一つあったのではないか。けれど、今の克人の立場ではどうしようもないのだ。
そしていま、克人が考えるべきは『北』にいるという庶子に関してだ。
なぜ、親父が自分ではなく遠坂に対して依頼を出したのか……それはやはり『ジャッジ』が自分では偏ると思えたからだろう。
魔法師の名家で比較的世間様から見れば暖かな家族を持つ自分と―――この世界、元の世界で
「釈然とせんな」
「なにが?」
「今の自分がだよ」
「変なことを考えるわね。克人くんってば、私と同棲するチャンスを棒に振る気?」
「ものぐさ2人がそろって生活してもなぁ。アレでクドウと遠坂はバランス良く家を廻しているのだし。俺たちだと早々にどちらかが家を出るぞ」
結論としては、十文字克人にそこまでの決断は出来なかったということだ。
ましてやオヤジの恋バナ(過去)を聞かされたあとでは、本当にそう思うのだった。
永井荷風先生にあやかり、『カツ丼』をかっくらって午後の理論テストに挑むのだった。
そんな様子を見て真由美は思う……。
(ちなみにカツ丼は3杯目……永井荷風先生のように情熱的に生きるのもいいけど、もうちょっと身体を自愛してもいいんじゃないかしらね)
そして午後の記述テスト―――座学においても特に波乱もなく、滞りなく終わり―――そして、二月二五日の魔法大学受験日程は終わりを告げるのだった。
ただ一つ、いつもと違う点を挙げれば……受験生には見えていないところで―――。
「ふむ。あいつは「それなり」の授業を施していたようだな……いつでも度し難いほどの「才能持ちすぎバカ」だと思っていたが……他人へ
「そこはリンの悪癖をそのままそっくり受け継いでしまったな。とはいえ、荒削りなまま「上げた」後には自力で「磨けていける」だろう―――という態度は、義兄上の教導の成果だろうな?」
「――――場合によりけりだ。ここまで競争が激しく俗世の荒事に「魔」を扱う世界ならば、伸ばせる部分は全て伸ばしていくべきだろう。「パラメーターを伸ばせます」という
まるでゲームのプレイヤーデータ。そのステータスに対する数値振り分けのような物言いをする男は、懐からいつものを吸おうとした。
ブルーデビルのニヤケ顔に対してそういう風に反論した軍師。勝利の一服としていつものタバコを吸おうとした時。
「義兄上。ここは禁煙だ。よしておけ。そしてトリムも灰皿を出さない」
「SORRY my master」
「喫煙者に優しくない社会になったもんだ……」
口さみしい想いをしながら、これならば遠隔での観察でも良かったのではないかと想いつつ、これならば問題ないだろう。しかし、それにしても――――。
(私も理屈や論理を重視するタイプだが、それは「正答」を補強するための「理由付け」でしかない。しかし、この世界のソーサラス・アデプトは、若干どころかかなり頭が硬すぎる……)
人間の脳や「心身領域」をコンピューターも同然に扱っての術行使を是とするやり方。これでは、出来るものと出来ないものとの間でアホほど差が出来るだろう。
必要なのは、世界の根本に「自分」を置くことである。確かに魔術師は己の身体を魔術を行使するための歯車とする執念の塊だが、魔法師の在り方は、少々難儀なものだ。
要するに、あまりにも自分を『蔑ろ』にしすぎているとでも言えばいいのか……自己に対する理解が限りなくお粗末に見える。
「……まぁいい。
「プロフェッサー・カリスマとしての手腕、その覇業、楽しみに(見学)しているぞ義兄上♪」
「お前もやるんだよ! 何で『ボク』だけに丸投げしようとしているんだ!?」
「折角2090年代のTOKYOスイーツを堪能したい妹がいるというのに、その為に身を粉にして働いてくれないというのか我が義兄よ……およよ。これでは夢のスヤリスト生活も夢のまた夢。我が弟子「セツナ・トオサカ」も『お師匠は街中で遊んでいてもいいかと』とか言っていたというのに」
あんなもの社交辞令に過ぎないだろうが、とはいえ憑依元が『研究畑』の人間なので、実戦的な―――というか荒事向きの人間の指導には向かないだろうが。
まぁ教職としてこき使うことは決定である。
「それと、この世界は一度地球規模の寒冷化を起こして、食糧難の時代もあったそうだ。流石に今生では嗜好品が無いとまでは言わんが……」
「味覚レベルの変化は起きているか。まぁ時代が進むにつれて、人々の食の多様化及び舌の嗜好も変わるからな」
唸る女性。英国人として日本の食文化を堪能したかったというのに……。
「そういうことだ。要は―――――」
「あの繊細で、懐に熱い石を入れてゲストを暖めてあげた懐石料理も、いまは昔ということか……」
日本人の『舌のレベル』が下がったという事実に、プチデビル(若干アダルト)戦慄。実際、
「―――まぁそうだな……。3日後ぐらいに行われる、グランドロールならぬ
それは執事の領分ではないかと思いつつも、早速、現代機器である携帯端末を操る義妹に嘆息しつつ、『恋人同士のいちゃつき』を邪魔するなよと窘めつつも、義兄は『イイ笑顔』で送信している義妹を努めて見ないようにするのだった。
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「それにしても、随分と状況が変わっちゃったわよネー。まさかグランパの生家が、そんなことになるなんて……」
「まぁ、しゃあないさ。結局のところ、ある程度は利益を分け合う関係で呑み下せるところはあったんだろうが、そこにガブリと噛みつかれたんだろう。最終的に人の行動を決めるのは、好き嫌いなんだろうな」
醤油と砂糖で甘く炊いた『アゲ』を使って、『お師匠』からのリクエスト品を作っていく。
ノーリッジでの宴会で多くの先輩・同輩・後輩に振る舞うことを是としていたためか、こういう時に多めに作ってしまう辺り、刹那のクセである。
「リーナ、そろそろ『裏返し』の方も作るから、次の酢飯の用意よろしく」
「
なんでそんな風に云うのやら、とはいえ色々とリーナを不安定にしてしまったのは事実なので、そんなことでシアワセになるならば――――――安すぎる心の税金。そして多大すぎる将来への投資である。
エプロン姿でキッチンに立つ姿は他者が見れば――――まるで夫婦と呼べるものであり―――。
「こらお虎! つまみ食いはこっそりしなさい!!」
そこにちょっかいがかかるのは自明の理であった。
「堂々とやってこその軍神スタイル! 私は私を恥じません!! すっかり夫婦空間を作った2人に対する―――これは、嫉妬なんだにゃー!! 何か妙な監視があるので排除してきますので!! おいなり増産お願いしますよ!!」
口にいなり寿司を突っ込みながら、去っていくSAKIMORIならぬINAMORIに少しだけ苦笑する。
「無理してるな……」
「ソレは仕方ないわよ。大切な人だったんでしょうし……」
「ああ、俺の秘蔵酒を毎夜飲んでる量が五割ほど増えてる……」
「ソレも無理に入っちゃうのカシラ?」
考えてみるに、この広い家に一週間前までは多くの人間が住んでいたのだ。
形を変えて取り込まれたものもいたが、それでも失われてみて分かってしまう寂しさに、涙が溢れてしまいそうになる。
結局―――人生そんなものだ。
「刹那、下手人を捕えてきましたー。ついでに来客ですよー♪」
などと思っていると、お虎が大手柄(?)を挙げてきた。来客と言うのは英国の留学生と仏蘭西の留学生。
モードレッド・ブラックモアとレティシア・ダンクルベールである。
「オーッス! 色々と
開口一番とんでもないことを言われるが、それをリーナは風と流すように堂々と返す。
「昨夜は魅惑のバニーガール姿でいたしたワ!! 我が家が
「さ、流石はプレイボーイ発刊の地の娘!! 天然プレイメイツなその心意気と女粋! パリジェンヌとして負けられませんね!!」
「お、お、お前ら!! 学生としての領分を守れよ!! とはいえ……アタシも―――いやいや!! そんな肉体関係からだなんて!!」
金髪少女3人による、かしましくも色々とアダルトな会話に、居たたまれない気分になるよりも先に―――。
「で、そっちの君らよりも若干年齢が高めの女性は何者?」
カイゴウというリビングアーマーにして獅子型のゴーレムによって、首根っこを咥えられた人は目を廻していて、何とも無残な様子であった。
「さぁ? ただ古典的にも隠れてこの家を監視していたので、
気絶している様子であり、これならば簡単に暗示が出来るだろう。久しぶりに魔術師らしい『ワルイこと』が出来ることに喜ぶ
「ふむふむ……国防軍の曹長さんね。面倒な女だが―――『仕事は終わって』『仕事先に帰ってくださいね』」
「はい……」
エーテライトで情報を抜き出したあとに、単純な暗示で所属部署に戻るようにすると、普段どおりの足取り(?)で帰っていく様子だ。
「イイの?」
少し不安そうに問い返すリーナに苦笑してしまう。
「目的は今日の会議の仔細を伝えてほしいとか、そんなところだった。要は裏工作の情報収集だな」
そんなもの、口の軽い協会員にでも鼻薬を嗅がせればよかっただろうに、なぜに俺に話を通そうとするのか。
冠位決議などに通じる情報収集は、根掘り葉掘り様々なところに及ぶ。それもまた政治工作というやつなのだが、どうにも刹那の肌に合わないことだ。
「バッチリ化粧を決めていたところから察するに、刹那を色仕掛けで籠絡してやろうという気持ちだったのでは?」
なんて安い手を使ってくれやがる。そして侮り過ぎである。
ああいう『法政科』系統の女とは、つくづく反りが合わないのである。俺を籠絡したければ『残念な年上美人(実は有能)』を用意しろと言いたくなるのだ。
この家を監視していた女性「遠山つかさ」、またの名を「十山つかさ」。どういう出自であるかは何となく程度ではあるが理解しつつも、随分と『自己』というものがない危うい女性であると思いながら―――今日の師族会議は始まる。
今日はたっぷり話すことが多すぎて、そして関係する人間たちも国籍無秩序状態なのだ―――当然、刹那は全ての議題に参加せざるをえないので色々と気が重いのだが―――そこは今日の議長役である十文字和樹 氏の手腕が問われるところである。
「俺たちゃ何も悪いことはしちゃいない。やるべきこと、なすべきことをやっただけさ。まぁ確かに奸策、謀略とまではいかずとも、色々あったが―――やんなきゃならないことだったのさ」
「それは分かっていますよ。まぁいざとなれば、この大統領令嬢としての手腕を発揮いたしましょう」
権力ってコワイナーなどと思いつつも、何を代価として要求されるか分からない。よって政界の寝業師と呼ばれるフランスの手は、あまり借りたくないのだ。
その気持ちだけは持っておきながら、留学生2人―――1人はちょいと事情ありで協会直行と聞いているので、
「ところでセツナ、いなり寿司美味そうだなー食っていいか?」
流石に目ざといバイキング国家の女、保存ケースに入れる前の昼食に気がついたようだ。
こういった時のことを考えて、刹那は多めに作るクセがついたのかもしれない。
蛇足でしか無いが。
「つまむぐらいならいいぞ。ただ一応、みんなに昼時に振る舞う予定であるから、今からだと感動半分だぞ?」
「いいって、オマエの作った料理はいつ食べてもサイコーだからな♪」
八重歯を見せる快活な笑顔にバッチーン☆とでもいう擬音表現が似合いそうなレッドの言葉に、笑みを浮かべながら諦めるのだった。
きっと―――アルトリア・ペンドラゴンと一緒に住んでいた時の親父は、こんな風な境地だったのだろうから―――。
何はともあれ、そうして『師匠』リクエストのいなり寿司をキャビネットに乗せて、いざ出発となるのであった。
ご近所さんからすれば、「遠坂さんちの坊っちゃんってば、外国人の美人YOUを3人も連れてどこに行くのかしら?」などと思われても仕方ない(被害妄想)
ともあれ、そうして三日ぶりの横浜魔法協会に赴く―――――――。
画面での参加者もいる師族会議だが、今日は近畿地方にいる九島を除けば全員が参加しているようだ。
ことが事だから。というところだろうが……。
「――――――来たか」
協会に入って最初に見えた知り合いは、十文字克人であった。数日前に受験戦争を勝ち抜いた巨漢は恨み言の一つもなく、こちらの手上げの挨拶と吐いた『受験お疲れさまです』という言葉に笑みを零すのであった。
「もしかして俺たちが最遅ですかね?」
「いいや、司波たちがまだだ。
決めたスーツ姿でも着ていると予想していたというのに、自分たちと同じ魔法科高校の制服姿をしているところを察するに、「今日は十師族の十文字克人ではなく一高生徒としての十文字克人だ」という主張に思えるのは、邪推ではないだろう。
あるいは、もう着る機会も少ない制服を着れる時間を惜しんでいるのかもしれないが……。
そして、今回の会議に招集された知り合いの面子が続々とロビーに集まってくる。
「歴史的な場面に立ち会うんだね……何だか殆ど話すことは無いだろうに緊張しちゃうよ」
「後の世で『その時―――吉田は―――思った……』とか田口トモ○ヲ風のナレーションで心情が語られるかも知れないから、存分に緊張しとけ」
「とんだ無茶振り! 国営放送に取り上げられる!! モノクロの静止画像でボクが映し出される!?」
幹比古の鮮明に作り込み過ぎな未来予想図に誰もが苦笑しつつも、そう言われても仕方ないところはある。
それだけ話し合うことは多すぎて、『大きすぎる』のだ。
「セツナ、オレたちも聞いていていいのか?」
「当事者だろ? お前たちも証言しなきゃ意味がないだろ。『地元』から何か言われたか?」
レッドに返しつつも、問うたのはレッドだけではないことを理解してレティが口を開く。
「特に無いですね。何ならば高めの『貸し』を作れぐらいは言われましたよ―――父から」
フランス大統領の娘の発言―――挑戦的な言葉に笑みを浮かべつつ、最後の到着者がやって来た。
司波兄妹である
てっきりこの2人は礼服でも着てくると思っていたのだが、予想に反して一高の制服であった。
グランドロールというには少々締まらないが、決めねばならないことは多い。
日本の冠位決議は始まろうとしていた……。