魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~   作:無淵玄白

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レジライリリィか……。

そして煉獄のボイスが! たとえ『レンちゃん』と呼ばれていても、エッチな夢は見せられないはず(多分)

ちなみに今話の後半パートで、九島家のご紹介があったはずなんですが、その辺りの部分が吹っ飛んでしまった。

まぁ主題は『三年組』の卒業だから、いいやと現実逃避しつつ次話をお送りします。

これは言うなれば月姫をやれという啓示と思うのだから(妄想)


第297話『卒業Ⅰ』

「―――無明を漂う彷徨い子よ (まえ)へ」

 

「―――汝 現世に示す己が名を答えるべし」

 

星などを象った杖を手にしたダ・ヴィンチが、『卒業生』に前に出るよう促し、大きなエメラルドを象嵌された杖を持つロマン先生が、前に出た生徒に名を告げるように促した。

 

厳かな言葉が講堂に明朗に響く。それに応えて卒業生は口を開いた。

 

『我が名は長岡早雲。 草木の叡智(ユミナ)によりて新しき地を開拓するものなり』

 

見るものが見れば分かる時計塔の授与式。階位付与の式典。

 

大講堂を使って行われた『第二の卒業式』……一高の卒業証書授与のあとに行われたこの式典の意味は―――誰にでも分かる。

 

これこそが、本当の意味での『旅立ち』なのだと……。

中央の壇上に立つ『ロード』は、前に出た『先輩』に対して神秘の呪文の如く言葉を震わせた。

 

「汝、星の仔よ、今このときを以て 汝は違う大地に一歩を踏み出す。その新たな生に、我、光明を与える――――――」

 

 

髪型・衣装どちらも『正装』した女子であり助手から『記念品』を受け取り、学年では先輩であるも、自分の講座の生徒の卒業のために最後の呪文を刻む。

 

「我はロード・トオサカの名において汝、長岡早雲に『開位』(コーズ)の位を授ける―――」

 

その時、記念品に最後の『仕掛け』が発動して、それは唯一つの『神秘礼装』へとなるのであった。

 

「卒業おめでとうございます―――」

 

一仕事終えた心地で、厳かな言葉を切り、親しみを込めて言うと―――。

 

「ありがとう。なんでだろうな……3年間も、ここ(一高)に通っていたのに、一番思い出せるものが―――君の授業なんだ……」

 

記念品を持ちながら、泣きそうな顔をする先輩が出来てしまった。

 

「それこそ俺の方が、ありがとうと言いたいぐらいです。皆さんが、俺の拙い指導で、己の魔道を伸ばしてくれたからこそ、俺の授業は、潰されず、多くの教えを教授出来たんです。

ですが、まだまだこれからですよ。俺も早雲先輩も半人前から脱却するために『あちらの御仁』から最高のアドバイス(ベストコーチング)を受けてください」

 

泣きそうになっている長岡。

受け取った『記念品』は重要ではある。だが、それ以上に、刹那が手で示した先にいる『本物のロード』の教導が必要なのである―――。

 

明日に続く最後の大判授業を受けさせなければ、心より申し訳ない。

 

「―――遠坂君ありがとう。感謝しか無いよ……」

 

深々と一礼をしてから、記念品を手にして壇上から降りる長岡。

講堂の脇の方に設けられた遮音結界のスペースにて待つ、『ロード・エルメロイII世』のもとに赴く。

 

制服の袖で乱暴に涙を拭った生徒を見送ってから、次の人間たちを呼び上げていく。

 

ここから先は若干の省略はあれども、100名以上もの卒業生たちへの位階付与だ。

 

全ての人間の旅立ち、巣立ちとなるべきイベント。

 

例えどれだけ疲れようとも、全霊を込めるのは当然であった―――。疲れて倒れるならば終わってからだ。

 

(今から気を張っていてダイジョウブ?)

 

刹那のそんな気合を心配するは、この授業にて助手をやってくれていた恋人である。

 

(問題ないさ。キミこそいつもとは違う衣装とかで疲れたならば、控えているレティやレッドに代われよ)

 

(ゆずらないワ。この立ち位置はネ♪)

 

念話で会話しながらも、次の卒業生に対する対応は恙無く行う。

刹那が主催する授業。その殆どにおいて助手役であったリーナが、気合を込めてそう言うのならば何も無かった。

 

「我はロード・トオサカの名において、汝、幸田綾子に『開位』(コーズ)の位を授ける―――」

 

そして、階位付与の儀式は続く。その様子に誰もが拍手を与える。

 

現代魔法師としてのランクではない。それでも、それは確かに『ここ』で行われた授業の『成果』なのだと誰もが誇れるものだ……。

 

―――誰に笑われたっていいさ

 

―――笑われても何度でもやってやる

 

―――それが出発点からでもな

 

そう言った男の全ては、この授業であらゆる熱を生んできて、この日を以て新たなステージに進んでいくことが決まるのだった―――。

 

 

 

「俺としてはカフェテリアで、優雅にコーヒーブレイクでもしながら、端末でも操っていたかったんだがな」

 

「ぼっちになりたかったのか?」

 

「お前と一緒だと手持ち無沙汰にならなくて、俺としては悩みどころだ」

 

「人生の楽しさを教えてやっているんだ。感謝しろ♪」

 

笑顔で言ってくる同級生にしかめっ面を返す、その人生の楽しさとやらが、一ヶ月間の乱痴気騒ぎの大魔道戦争とか頭が痛くなるが―――。

 

(そんなのも悪くないとか想っている俺は、もはや戻れないのかもしれない)

 

麻薬のような男である。危険だと分かっていても、そのそばで歩くことが、どうしてもやめられないのだから。

先程まで大講堂にて、エルメロイレッスンの受講者にして卒業生たちに『位階付与』を行っていた、ロード・トオサカ=遠坂刹那。

 

彼は、この後の卒業生歓談パーティーの料理を用意するはずだったのだが、それは流石にいつぞやの『灼熱のハロウィンパーティー』の時のように女子陣のプライドを煽った。

 

よって今回作るのはメインの卒業祝賀料理だけらしい。調理にかかるにはまだ早いので現在は達也と雑談中というわけだ。

 

「仕事が少ないのも、またいいもんさ」

 

「お前はあれだけのことをやっている中でも……『コレ』を作っていたのか」

 

あれだけのことというのはいまいち分かりにくいが、刹那は達也の言わんとしていることは理解できた。

先日まで関わっていた東京魔道災害に関してのことだろう。

 

だが、そんな問いは愚問である。むしろメモリアル品の方が優先事項だったのだから

 

「刃物はいつでも必要なんだな。電子技術万能の時代とはいえ、紙が無くならないのと同じく」

 

刹那が卒業生たちのメモリアル品として、作り上げたもの……そのサンプルを達也は手に取る。

 

「アゾット剣のペーパーナイフか……一本一振りごとに、お前が鍛造したのか」

 

それは以前、魔術師の見習い卒業の証として渡されるものと、説明されたことを思い出しながら問うと、事もなげに魔法使いは答える。

 

「執刀手術のためのメスを、山奥の刀鍛冶に頼む闇医者もいるんだ。俺もそういうのになりたいものだ」

 

レッドのエクスカリバー・クラレントを作りながらも、これを作っていた―――というよりも、あの三学期最初のレッスンでの講師3人の言い争いを思い出すと、そういうことかと納得する。

 

「で―――何か聞きたいことがあるんじゃないか達也?」

 

「別に用事が無きゃ話さない間柄でもないだろ俺たち」

 

「そういう美月が興奮しそうな言葉はやめろ―――……結局、四葉真夜女史は普通だったわけか」

 

硬い話は、刹那から切り出さざるを得なくなった。刑事ドラマならば、互いにタバコでも咥えながら話す内容と雰囲気だろうか。そんな想像をしながら、会話は始まる。

 

「ああ、俺の予想では幼児退行するんじゃないかとか考えていたんだがな。お袋の掛けた術式を解いた結果は……」

 

聞くところによると、達也が弘一氏に剣を渡して、最初は躊躇するも……首筋に傷を付けたあとには泣き腫らすばかりであったとのこと。

 

35歳の少女(柴咲コウ)にならなくて、良かったのか悪かったのか……」

 

お袋(深夜)に改造されてからの自分(真夜)のことを全て覚えていて、一時は混乱するも……」

 

―――ごめんなさい―――

 

その一言がうつむき泣きながら吐かれた時に、もはや色んな感情や言いたいこととかは吹き飛んだそうだ。親族御一同の心中はお察しする。

 

「……貢叔父貴も大変な舵取りを任されたもんだな。ただ、もはや隠して生きていくことが辛かったからな」

 

家が『軋み』をあげていたと言う達也に同情をしてから、好んでいるコーヒーを淹れてやることにした。

 

「研究所の出資者が、どう考えているかは知らないし、俺も知らないけど―――何も言われないということは、『そういうこと』なんだろうか?」

 

会議室に備えられているコーヒーカップを渡すと、それを飲みながら刹那は口を開く。

 

「全てがそいつらの掌の上だとしたらば、それはそれで恐ろしいな。まぁ四葉家のことはお前たちで解決すべきだろうさ。戦争(跡目相続)するにしたって、今は無理だろ?」

 

「ああ……正直言えば、お前に裁定してもらいたいぐらいだが……それが権力闘争のあるべき姿だな」

 

達也と深雪がある意味、『隠れながら』(意味ない)生きていた生活は終わりを告げた。当初こそ四葉家の直系であることに、一高及び全ての魔法師たちが混乱したが、最後にはあっけなく静かに収まってしまった。

 

その理由は―――おおむね誰もが『それなら納得』と想ったからだ。

一年間であれだけ披露されてきた魔法力の根源を、そういう風に説明されたならば納得をして、そして隠さざるを得なかった理由も、それなりに呑み込めたらしい。

 

このことでたいそう混乱したのは、達也と深雪の親父さんである龍郎氏。連日、マスコミ関係者が再婚相手と住まう家に押し寄せて、やんややんやであったようだ。

 

「まぁその事はいいんだよ。俺が刹那に問いたいのは別口だ」

「ふむ」

 

親子関係が微妙なことは聞いていたから深くは突っ込まない。

広げた話題に対して手を振り打ち切る達也は、少しだけ耳目を惹くことを言ってきた。

 

灼熱のハロウィンパーティーで会った、桜井水波の『今後』に関してらしい。

 

本来ならば、桜井は深雪の『守護者』として、今年度から一高に入学する形で、寄り添う予定であったらしい。これは『前の四葉真夜』が考えていたことのようで、葉山執事もその方面で調整していたそうだが……。

 

「……後夜祭の会場で水波が気にかけていた男子、刹那が話していたのは―――九島 光宣だったんだな」

 

「言ってなかったけ?」

 

うなずく達也。失態を少し戒めていると、そこは重要ではないとしてきた。

 

「水波は、文化祭のあと九島光宣とちょくちょくやり取りしていたようでな。昔風に言えば『メール恋愛』。さらに昔風に言えば『文通恋愛』をな……」

 

「ふむ。で、何? 『ナニカ』の『おねだり』『おねがい』の実験の犠牲にしようっての?」

 

「本家は確かに山梨なのに山ばっかりの土地だが、ゾルディック家じゃねぇ」

 

そんな呆れるような言葉が会議室に響く。いるのは刹那と達也だけだが。

場の空気に対して咳払いをしてから達也は口を開く。光宣が桜井に対して持ちかけた提案、それは―――

 

「―――同棲(ふたりエッチ)か」

 

「いや、相手方の『妹』も住むらしいから、その表現は正確ではないな。そして妙なルビを振るな」

 

達也のツッコミを受けながらも、詳細な説明の中で疑問点が浮かんだ刹那は考えこむ。

 

(ミノルに妹? 九島真言の庶子か?)

 

追い詰められて、そんな人間までどっからか出してきたのか……。

真言氏の年齢は、おおよそ容貌から誰もが察せられる。光宣の年齢からするに、かなり「遅め」の子供だったのに、その「下」にもいたとか、ちょっと『アレ』すぎる。

深雪に対する桜井のように、光宣に着けた私設護衛であれば、そこまでたいそうな仮初の身分を与えなくてもいいはず。

 

疑問を一旦置きながら、達也の話の続きを聞く。

予定通り地元の『二高』に進学する予定の光宣が、そんなことを言って桜井もまた自分が四葉の従者の家だから、そんな自儘なことは出来ないとして、一旦は二高に進学すると同時の『同棲提案』を断ったのだが……。

 

「叔母さんとかは、許しちゃったのか」

 

「……いや、俺も深雪も許してはいない。クドウ・ミノルという(うじ)だけならば、いや、(うじ)だけがご立派な(馬の骨)に水波を簡単に任せるわけにいかない! 第一、近畿は『危険すぎる』。現在は現代魔法師にとって、カラカス、アムステルダム、ティフアナのようなものだ。簡単に行かせられるかよ……」

 

髪をがしがし掻く達也。頭髪痛めることも厭わない様子。察するに桜井は喜んだのだろうが……。反対意見を出したのが、ご兄妹だけということだ。

 

「難儀な話だ。ただそろそろ願書提出もやばい時期だろう? むしろ本来の高校受験ならば過ぎているぐらいだ」

 

「……ああ」

 

昔から日本の高校は、『受験』しても1次で『落ちた場合』の2次募集なども用意されているし、その前に滑り止めもあるが……そもそも「魔法科高校」は、色々と今年度、来季から特殊な制度に変わる予定だったのだ。

 

そこにさらなる「最優秀講師」の登場、そのトリックは色んな意味で半信半疑だったが、ともあれ偽物の類であっても、まずは遠坂の授業は始まるのだ―――。

 

そう納得していたのは分別ある「大人」たちだけで、学生たちにとっては違ったらしくて、願書提出は混乱を極めた。

 

既に地元校に提出した願書を、あらゆる手段で取り消してまでも一高受験者があふれかえるという事態が起こっている。

 

しかも、それは現在進行形であり、色んな混乱が沸き起こっていた。

 

だがそんな事情を全て考慮したとしても、刹那の答えは決まっていた。

 

「……桜井を行かせてやれよ。賢しい選択よりも、時には無理無茶無謀をやることの方が、良きものをもたらすこともあるぜ」

 

「―――水波を近畿介入の「端緒」にしようとしていないか?」

 

「無い。ただ、近畿の現状を正しく認識している上で、「そうしたい」(九島 光宣と同棲)ならば、それは個人の自由として尊重すべきものだろう? それでも、どうしても……桜井が出戻りになってしまうならば、お前たちが快く出迎えてやれよ」

 

刹那の説得の言葉に達也は眼を瞑って熟考―――というよりも、出したくない言葉を出そうと捻りだしているようだ。

 

口をへの字に結んでいる姿はかなりのレアなものであった。

 

達也には悪いが、刹那は「ミノル」との付き合いが長いのだから、ジャッジが、どうしてもそちら寄りになってしまうのだ。

 

そうしながらも、達也から見せられたミノルの妹とやらの姿を再度見る。

端末に映された画像に見える少女の美貌は人間離れしたものがあって、『正体』を少しだけ推察出来た。

 

(「英雄」か「幻想種」か……はたまた「吸血種」かは分からないが、光宣に「強力な使い魔」を着けたか)

 

正解かどうかはまだ分からないが、議論と思考の時間を終えて、そろそろタイムアップであることに気づく。

 

「桜井の進路に関して俺は多くは言えない。先程言った言葉が全てさ」

 

考えてみると、四葉の屋敷に同じく住まう九亜や四亜も、姉貴分が高校進学して離れるかもしれないのに、刹那やリーナにそのことを伝えてこなかったのは、意思を尊重したいという想いがあったからであろう。

 

考えている達也の横で端末を使い、本人たちにショートメールを送ると。

 

『寂しいけど、巣立つときは、いつでもやってくるのです』

『私もキッドと同棲したい♡』

 

などと返ってくる。四亜には悪いが、それは不許可だ。ともあれ―――答えなど一つだろうに。

 

「んじゃそろそろパーティー会場行こうぜ。流石にメイン料理の仕上げと行かなきゃならない」

 

「長々とすまんな。ついでにいえば、祝賀料理は俺たち在校生にも振る舞われるんだろ?」

 

そっちがメインかと苦笑しつつ、美味しいものを食べれば、少しは機嫌が良くなるかも知れない。光宣が桜井と同棲する支援策としよう。

 

そうしてメインパーティー会場に赴くと、入ると同時にとんでもない熱狂が響く。

 

熱狂と同時に打楽器と弦楽器が最大に鳴り響く音が聞こえてきた。

 

「おおっ、やってるねぇ!ガルティー。一時は音楽性の違いから空中解体の危機だったが」

 

Girls Dead Teatime(ガールズ・デッド・ティータイム)―――混ざりすぎだ。どっちかにしろというツッコミも今は昔だな」

 

決まらなければ『Λucifer』(リュシフェル)か『ザ・マッドサタン』にするぞと言っていたガールズバンドは、ツインボーカルに金髪2人と、ベース、ギター、ドラム、シンセサイザー……1科も2科も関係なしの有志の生徒たちによって、その演奏を止まらせないでいた。

 

刹那は目線と念話で、ツインボーカルのモードレッドとリーナに秘密の合図を送ってから、調理室に達也と同時に入る。

 

誰もがこちらに気づかないように、卒業生を盛り上げた2人に感謝である。

 

その勇姿を見ておきたいところだが、今は―――こっちを優先だ。

 

「んじゃ最終工程に入りますか―――」

 

調理室にはかなり多くの女子がいた。どうやら自分の祝賀料理がどのようなものか興味津々といったところだろうか。

 

それに特に緊張することもなく―――。

 

セイロを用意してやるべきことをやるのだった。

 

(ルヴィアさんが、時計塔を卒業して『領地』に帰る時にオヤジとオフクロが作った料理……)

 

それ以来、エルメロイ教室を卒業する生徒たちや祝い事(階位付与)の際に振る舞われるようになった伝統の一つ。

 

そして何より―――その伝統(むかし)を覆して新たなる地平を開拓する。その精神こそが―――人を飛翔させるのだ。

 

ゴルドルフコックコートを着て、衛生に気をつけながら―――刹那の手は美味なる料理を次々と作っていく…。

 

(まさしく魔法科高校の料理人……色んな異名を持ちすぎだろ……)

 

もはや魔術師とか魔法師とかいうところにはいない友人の姿に苦笑をしながらも、調理で香る芳香が達也の胃袋と感情を刺激する。

 

卒業式のフィナーレは近づく……。

 

 

 

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