魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~   作:無淵玄白

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月姫リメイク、まだクリアできていないが、ようやく中ボス撃破。

勝敗を分かつ一発の選択肢で、正解を選べた私だが、んなこたぁどうでもいい。

もうアルクェイドの可愛さにやられ放題だよ。ちくせう、これが真祖の姫君か。

そして中ボス……うん。確かに昔から魔剣ニアダークとか、リアル・オブ・ザ・ワールドとかあったけど。ようやく死徒でも武器を使うことが分かって―――いや良かった良かった。

そんなこんなで新話お届けします。


第299話『卒業Ⅲ』

 

 

終わってしまえば後片付けとなるわけだが、卒業生たちの手を煩わせるわけにもいかず、かつ在校生……特に2年生とて二次会に向かう3年生の最後の見送りが残っているわけで――――――。

 

「お前も行ってこい。特に三巨頭には世話になりっぱなしだろ? 最後の見送りは、お前は行くべきだぞ」

 

特に七草に関しては、『これから』もあるかもしれないのだからと無言で付け加えるが。達也は不動でいようとした。

 

「それならば、お前もだと思うが」

 

椅子を保管場所へと持っていく前の消毒作業をしていた達也に、苦笑しながらも言葉を返す。

 

「俺なりの見送りは、『階位付与』と先程までの『卒業料理会』で終わっているさ。いつまでもしつこく顔を出さなくていいだろ? 行って来い達也」

 

テーブルクロスをクリーニングに出す前のたたみ方をしながら、刹那は渋る友人を校門前に行くよう促す。

 

最終的には深雪が腕を引っ張る様子を見せたことで苦笑しながら、頼むと言われて「先輩によろしく」と軽く返すと駆け出す様子だ。

 

見送ってから片付け作業を続けると、流石にサーヴァントを運用したからか、普段の4倍以上もの速度で終わりは見えつつある。

 

 

「―――よし。これで以上だな?」

 

「ああ。しかし、マスターよ。まさか給仕役として召喚されるとは思わなかったぞ」

 

「これも俺なりの訓練さ。それに、あんまりお前さんたちを『出し渋り』するのも悪いかと想ってな」

 

話しかけてきたのは、影の国の女王『スカサハ』。刹那の『心象世界』を介して召喚出来るサーヴァントの中でも、『出現頻度』は高い。

 

「ようやく―――儂たちを積極的に出すことにしたか。よいぞマスター。手札を全て使い切ってこそ戦いというものは決する―――言うなれば、リーグを制してポケ○ンマスターになるためには、6OO族を活用せねばな」

 

何度もうなずく女王の言葉に考える。

 

カ○スリーグは、もう一歩だった。旅の仲間にカワイイ彼女(?)もいるし、ロリもいるし、そのロリの兄貴はジムリーダーだった。

 

ある意味、手持ちだけでなく、フレンドたちもガチパであったのに。

 

愚考を打ち捨てて、スカサハに答える。

 

「流石にな。獣や獣の眷属相手に単体で挑むにゃ、少々無茶がすぎてきたからな」

 

だが、あまりやりすぎて、この世界が許容できる『ゆらぎ』を超えてしまうのが、怖かったのも事実。

 

しかし、それに足踏みしている場面は終わっているのだ。

 

「つまりスカサハ女王とキング・アーサーは、刹那にとってのヌメ○ゴンとカイ○ューみたいなものですか?」

 

などと決心した所に、ひょっこり刹那の横からレティが出てきた。

肩に手を置きながら、刹那を遮蔽物にしてのスカサハとアーサーに対する問いかけ。

 

何の意味があるかは分からんが、レティの、たいへんご立派なお胸が背中に当たっているので、勘弁願いたいものだ。

 

「せめて僕はリ○ードンの方がいいかな。これでも赤龍の化身だしね」

 

テント○ンみたいな声をしているのに、ポ○モンをイメージさせるのは、如何なものかと想いながら、とりあえず説明をする。

 

「確かに2人は、俺の固有結界から出てくれる頻度は高いな。何の縁があるかは分からんのだけど」

 

こういった風なことを考えると、アルテラという存在と縁を持っていた世界線の遠坂刹那がいたというのに、俺はフン族の王であり、セファールの化身を呼べなかったのだ。

 

「俺のオヤジはスカサハの弟子、アイルランドの英雄『クー・フーリン』に一度殺されて、屋敷にて二度目の襲撃で殺されかける。そしてその時、戦争の参加者となっていたオヤジが呼び出したのが、『女』のキング・アーサーたる『アルトリア・ペンドラゴン』……物騒な話だ」

 

推理してみると、オヤジの縁が『反転』しているとも言える。クー・フーリンが女である『世界線』というのは―――まぁ無いのだろう。数多の女性との間に浮名を流しまくったケルト神話のスパダリに、それはありえない話だ。

 

「ふむ。つまり儂とアルトゥールスがジョグレス進化すれば、アルテラが生まれるという道理なのかもしれんな」

 

「なんでさ」

 

得心をしているスカサハに言いながら、そんなことがレティシアの聞きたかったことなのだろうか? そんな風にも感じた。

 

「いえ、そこが主題というわけでもないのですが、いきなりスゴイ術を出してきたので興味津津なんです」

 

略 『お話したいです』 そういうことであった。別にいいけど。

そんな訳で、刹那としても少しばかり話したいことを話すことにした。

 

「レティの内側(なか)にいる聖処女は、まだ離れてはいない?」

 

「そうですね。人理のほころびは取りあえずなんとかなりました。ですが、まだまだ事態全ての解決には至っていませんからね」

 

「いやじゃないの?」

 

「全然、確かに刹那の既知の人間は、己が『違う存在』に書き換わるの(リライト)を厭う人が多かったようですが、私は……なんと言えばいいのか、魂の深部でジャンヌ・ダルクと同じなんだと理解しちゃってますから、『同居人』を邪険にすることはありませんよ」

 

華が綻ぶような顔で、感じ入るように言うレティ。

ある種の転生者とも言えるのが現在の彼女ではあるが、そのことを特にどうとも思わないようだ。

 

「昔っから転生者(リボーン)なんてそんなものでは? ほら破壊神の司祭が、転生したらば大地母神の司祭の家系に生まれたあとには、紆余曲折あって暗黒の島の女王になって―――」

 

「その後には死産しそうな曾孫に転生して……この話題についていける俺は、どこまでも現代魔法師じゃないな……」

 

苦笑しつつ思ったことは、それであった。

 

「―――母国は、アナタを招きたいようです」

 

「無茶なことを言う」

 

話題の転換を感じる文言だが、レティもそんな固い話をしたいわけではないようだ。

 

「ええ、そんなことは『無茶』だと分かっているようです。だから次善の策を用意しています」

 

「……ああ、そういうことか。けれど、いいのか(・・・・)?」

 

「別にお友達との今生の別れでもないんですし―――それに聞きましたよ。リーナも、『ただのアンジェリーナ』になったということを」

 

その隠喩が分からぬほど頭は鈍くない。それよりも知られていたことに、恐るべきフランスと思う。

 

だが―――――――。

 

「無茶があったんだよ。あの娘に銃を持たせようなんて考えがさ」

 

「その心は?」

 

「合わないガラスの靴を履いたって、違う存在にはなりきれないんだ」

 

とどのつまり。『兵隊としては向かない』という判断を、軍上層部は下したということだ。スーパーマン(クラーク・ケント)インビンシブル(マーク・グレイソン)を、兵隊として運用しても無理ということに、ようやく気付いたようだ。

 

あまりにも卓越して、通常の魔法師ではカウンターテロをすることも出来ない存在ならば、どうしても放っておかざるをえない。

あるいは、遺産相続が絡む湯けむり殺人事件でぽっくりやられるとか、嵐のため孤島となった山荘を襲う殺人鬼に殺されるとか……。

 

「どれもこれも現実的じゃないな。まぁなにはともあれ……」

 

「ナニハトモアレ?」

 

「離れてくれない?」

 

「残念ながらそのオーダーに答えることは出来ません! 私は刹那に背中を預けたので、代わりに刹那の背中は私が預かると決めましたので!!」

 

節度を弁えられないのかと思うも、後ろに目をやると肩から覗く顔は喜色満面で、背中に抱きついてくるレティを無理やり引き離すことも出来ない。なんせフランスに帰ることは決まっているのだから。

 

などと想っていた所にシャッター音。ドキリとするような音で振り向くと―――。

 

「スズ先輩……!?」

 

ドキリンコ! とでも表現すべき状況に陥った刹那は、なんでここに? とか、まだいらっしゃったんですか? とかそういう言葉を吐くことを忘れてしまわざるを得なかった。

 

この状況は……色々と不味い!

 

南の方の血が混ざっているのか、褐色の肌が眩しいクールビューティを地で行くお方―――市原 鈴音は、その表情を平素と変えずに、口を開く。

 

「中々に後輩の楽しそうな場面でしたので撮ってあげたのですが……ダンクルベールさん、ちょっと遠坂君お借りしていいですか? 校門での見送り人を彼に頼みたいので」

 

前半の言葉に関しては、『嘘だっ!!』などと、漫画で言えば見開きで、アニメならば絵コンテの枚数が通常以上の、『鬼のような形相』で言ってやりたい衝動に駆られながらも自重する。

 

「どうぞどうぞ♪♪ 刹那、いってらっしゃーい♪♪」

 

こんにゃろと言いたくなるのだが、もはや撮られた写真で生殺与奪の権は握られているので―――。

 

「荷物、お持ちします」

 

平身低頭。侍従よろしく鈴音に帯同するのだった。

 

「はい。ではお任せしますね」

 

昔懐かしの紙袋。刹那が生きていた頃よりも頑丈なものに収められた、卒業証書が入った筒、花束、そしてペーパーナイフの箱……それらを見ながらも、恭しく受け取ったあとには、スズ先輩と連れ立って歩くことになった。

 

校門までの道で、まだまだ満開ではないが、桜の花弁がそれなりに散っている道を歩いていく。

 

(考えてみれば、三年の先輩では一番あれこれと交流が多かった人ではあるか)

 

生徒会の仕事関係というか、リーナが市原、中条といった枠内に入れられて仕事をしてきた関係とか、国外の魔法学校との交流……。それに関わってきたのがこの人なのだから。

 

「スズ先輩には世話になりっぱなしでしたね」

 

そんな感想を述べるも、薄い笑みは変えずに、先輩は自分と関わったことの感想を述べてくる。

 

「そうでしょうか? 寧ろ、私としては仕事が増えて、生徒会役員としてハリが出てきましたからWin-Winというところでは」

 

「……ヒマだったんですか?」

 

その意外な言葉に、少しだけ驚いて聞き返す。

 

「魔法科高校の会計なんて、支出計算で必要になることは、せいぜい論文コンペですからね。部活の予算関係は、部活連の方でどう回すかが決まりますから、同じく九校戦も同様に」

 

バランスシートを見る機会など、そんなに多くないという言葉に苦笑してしまう。両親が通っていた冬木の学校、穂群原でも生徒会だけがそういった予算関連の議決権を持っていて、ある種の騒動もあったらしいが、詳しい所は分からない。

 

ただ寺の住職たる父の親友、一成さんが苦労したというのは聞き及んでいる。

 

「……私はアナタが同じ人間だと想っていました」

 

話題が転換した。少しだけ重い話をする女の顔を見せた鈴音に、心を構えてから問う。

 

「同じ人間?」

 

「遠坂というのは十坂という名前の隠し名だと想っていましたから」

 

その言葉に苦笑を漏らす。確かに魔法師で言うところの、数字落ちの家を思わせたかもしれない。

 

けれど、その正体は―――ただの異世界の『魔法使い』ということである。

 

詳細はまだ全員に知られずとも、それなりに伝わっている部分はあるだろう。そう想いつつスズ先輩に声を掛ける。

 

「期待?させて申し訳なかったですが、それでも……俺は俺ですしね。己の人生を姓名で左右されたくはないですよ」

 

「強いですね。遠坂君は」

 

「スズ先輩だって―――兵隊としての道ぐらいしかない魔法師に、他の道を作りたいんでしょ。それはアナタが求めた強さじゃないですか」

 

「私のはある種のやっかみ・ひがみ根性もありましたから、実技においてアシスタンツたるCADを使うことが常用とされた時代で、私の狂おしい渇きを癒やしてくれる潤い水はありませんでした。ある意味、私は1科にいるよりも2科にいる方が相応しい人間でしたよ」

 

触媒なしでの術。己の身体を使って『高精度』な魔法を行使するスズ先輩は、その反面、CAD使用の魔法が平凡という域に定まっていたのである。

 

CADの本義たる『高速発動』『大規模出力』が、彼女の演算領域とはマッチングしなかったのだ。

 

魔術師としての感覚ならば、すごい話のはずなのだが……魔法師的な感覚では欠点とされるのが、如何ともし難い。

 

改めて考えると妙な話である……本来的なテクノロジーの意義で言えば、市原鈴音のような演算領域が一芸特化の人間でも、その『スキル』を広範囲・高出力で発動出来るように、調整されているべきだったのだが……。

 

「俺が1年疾く入学できていれば、三巨頭じゃなくて『四天王』とか『四皇』とか呼ばれていたかもしれませんね」

 

結局、指導できる人間がおらず、CADにしても簡便なものを用立てられなかったことが原因だった。

変わらず薄い笑みを浮かべながらスズ先輩は答える。

 

「ええ、とはいえ……これで良かったのかもしれませんね。遠坂君は、私の道を悪いものとは思わないでしょう?」

 

「良きも悪しきも俺に判断出来るものではないですから、ただ一つだけ言えることは、出来ることを埋もれさせておきたくないってだけです。勿論、当人がそれを望むかどうかですけどね」

 

「―――大きすぎますね。意外と……『俺の女になれ』とか言われたらば、いまの彼氏を捨てて応えちゃいそうです」

 

まさかスズ先輩にそんな気持ちがあったなんて、おどろ木ももの木さんしょの木ですよと、無言で想う。

 

「大事にしてくださいよ。スズ先輩の今の関係を」

 

「両親以外ではアナタだけですからね。私のことを『スズ』と呼ぶのは」

 

リンちゃんと元・会長が呼んでいるのを聞いてからの意固地な想いだったのだが……意外とこのエキゾチック・ジャパンな女性の琴線には触れていたようだ。

 

そうして校門前へと至ると、そこかしこで最後の別れというわけではないが、別れを惜しんでいる様子だ。

 

その一方で、イケてる先輩メンズの第二ボタンを貰おうとする後輩女子もいたりする。

 

そんな様子を見ながら、自分も鈴音先輩と別れの挨拶となる。

 

残るものと去るものとの境界が刻まれて、並んでいたスズ先輩は、自分と正面で向き合う。

 

「―――『刹那くん』。お元気で……ここ(一高)を頼みましたよ」

 

「っと、……ええ、俺なりに出来ることはやっていきますよ。ご安心を『鈴音さん』―――頼りになる後輩(うしろ)は俺だけじゃないですから―――お元気で」

 

持っていた荷物を受け取る際に、少しだけ抱きつかれるような様子になったが、それ以上はなく、刹那の答えにいつもどおりに微笑を浮かべて―――満足して離れて、そして一高三年のクールビューティーは卒業していった。

 

深い一礼をして鈴音先輩を見送ると、その旅立ちを祝福するかのように桜吹雪が一度だけ彼女を隠すと―――既に姿は見えなくなっていた。

 

顔を上げて何となく感じる違和感。制服の前を探ると、そこには―――。

 

「―――最後に一本取られたかな?」

 

一高制服の前ボタン。その2番目がなくなっているのを感じた。

 

第2ボタンに誓いは無いが、それでも……鈴音先輩は最後まで、刹那にとって侮れなくて抜け目ない先輩だったようだ。

 

苦笑してから遠坂 刹那は校舎側へと戻る。託された側は―――やらなければならないことが多いのだから……。

 

 

「一大イベントとはいえ、あれこれ動きすぎたかなー」

 

「ソウは言っても、やってくれと言われればハンパはやらないでしょ?」

 

そりゃそうだ。家の居間のソファーに深く座りながら、今日のことを考えると、アレやコレやと多くありすぎたのだ。

 

「まぁみんなして等しく疲れたのだから、コレ以上は言わないでおこう」

 

「ワタシは楽しんだほうヨ。レッドとのツインボーカルはそれはそれで楽しめたし」

 

そいつは良かったと想うと同時に、少し硬い話が切られる。始まりはリーナからだった。

 

「先程、軍令部から正式(オフィシャル)な命令が来た。本日を以てアンジー・シリウス及びアンジェリーナ・クドウ・シールズという軍人の軍籍は消滅しました。トーゼン、ちゃんと先日までのお給料とかそれまでの慰労年金なんかは支給されているんダケドネ」

 

少しばかり寂しい想いがあるのだろう。リーナの声は少しだけ低く聞こえている。USNAスターズの面子が全員、シリウス隊長に靡いていたわけではない。

 

小娘が! という悪態をウラでもオモテでも突く人間がいたのだが、それでもいざ除隊(クビ)と言われると、色々と想うところもある。

 

そして現在、最大級にリーナがおもうことは……。

 

「ただナーンカ、すごーく『少ないような』気がするわ……」

 

怪訝な顔をするリーナ。何が少ないのかと考えるに……。

 

お給料(wages)が?」

 

「Yes」

 

それに関しては何となく理解してしまう。退役させるにしたがって、スターズに正式任官してからありったけ軍の備品や施設を壊してきた、クラッシャーリーナの代金を請求してきたのだ。

 

今までは経費として落ちていたものは、ある意味十三使徒のアンジー・シリウスとしてお目溢ししていたからであり、若干はいままでのことを精算してもらおうという米軍全体のケチくさい思惑である。

 

転じて――――――。

 

「ついに無職(ノージョブ)になっちゃったわけダケド……セツナ……」

 

「全部言わなくてもいいさ。養ってやるよ。というより、無職でいた期間は俺のほうが長いくらいだぞ? あんまり気に病むな」

 

「……ウン、アリガトウ……」

 

顔を赤くして、刹那の胸板に頭をあずけるリーナ。その髪を優しく撫でる。

 

―――隣の男に養ってもらえ。という老将軍たちからの老婆心なのだろう。

 

しかし、深く考えるとリーナの両親は、もしかしたらば頼りにしてほしいとか考えているかもしれないので、一報入れておけと伝える。

 

「うーん……パパとママにね……負担かけちゃうのも悪い気がするんダケド」

 

「それでも……キミの両親なんだ。軍を除隊させられたこと。今後も一高に通うこと―――俺との同棲継続。もろもろ伝えておかないとな」

 

「ウン……ちなみに、イチバン重要なのは3つの内のドレかしら?」

 

『にやにや』という表現が似合うリーナの顔に、こやつ……と想いながらも……。

 

「当然、3番目に決まっているだろうが♪」

 

深く抱きついて答えとするのだった。

 

「きゃー♪ オカされるー♪ ゾンビが蔓延した世界で、食料の代価(COST)『抱かせろ』(DO FUCK)と言われたヒロインのごとく、養われる代価にオカされるー♪」

 

「リーナはいつもそうですね……! オレのことなんだと思ってるんだ!?」

 

「最初のセリフはちょっとオリジナルに寄せてるわね♪ 女言葉に聞こえるワ」

 

うるせ、と想いながら、このまま行こうかと見つめ合って想った所に―――。

 

『『『『『刹那くん、リーナちゃん。あーそーぼー♪』』』』』

 

などと、夜の7時にも関わらず魔力を伴った声で来客―――外に友人たちが来たことを理解する。

 

「………まぁ、俺達の二次会がまだではあったか」

 

「ソウネ……入れる?」

 

「―――人との繋がりはなんであれ重要だろ」

 

一応、家全体で遮音などはしているから、ご近所迷惑にはならないようにしているが、それでも―――。

 

「夜中なんだから大声は勘弁してくれ」

 

玄関先で迎えた友人一同に、とりあえず忠告はしておいてから、全員を迎える。

 

 

達也を筆頭にアルコールこそ無いが、様々なものを買い込んできたことに感謝しつつ、夜は―――更けていく……。

 

 

 

『ではお主は受け入れていくべきだと思うのか?』

 

『誠に勝手な推測ですが、遠坂刹那を利用すれば、それも可能かと思われます』

 

『……リスクが高すぎるとは思わんか?』

 

『それはそうとしか言いようがありません。だが、それを承知しなければ―――『事態』は動かないでしょう。そして何より……この国を贄にして『再来』を願うものは多いのですから』

 

『……よかろう。『ソウマ』を入学させるには、まだ年齢(よわい)が足りておらぬ。いざとなれば―――お主で何とかせよ『黒子野』……』

 

『はい。御前……』

 

―――闇の中での談合は始まり、世界は一変していくのだった。

 

 

 

 


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