魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~ 作:無淵玄白
あとで活動報告辺りにでも一年次のことをアレコレ書こうかと思います。
何というかこんなに長く書くことになるとは。反省ではある。
ただ、本編と似たり寄ったりでそこに妙な改変で済ます程度だったり、殆ど本編と同じような文章がだけを綴る2次創作にはしたくない。というか完全に規約違反だし、それは。
何やかんやと、私はこっちの方向―――要するに劇場版パトレイバー的な押井テイストで行きたい気持ちがある。
というわけでどうぞ。
東京湾海上国際空港。
かつては羽田・成田とも呼ばれていた空港は、現在ではこのような味気のない名称で呼ばれることが普通になってしまっていた。
(思えば、此処こそが、この一年の始まりだったな……)
ちょくちょく『里帰り』をしていたとはいえ、本格的に日本に帰り、定住するとまでは考えていたわけではない。
実際問題、合衆国筋から離れるにたる動機というのも見つからなかったし、並行世界からの
「果たして追い出されたのか、それとも本当に温情からだけなのか……」
「ジャッジはムズカシイところネ」
だが、気持ちとしては後者であると願いたい。人と人との関係は、決して打算的なものだけに拘泥していてはならないのだから。
多くの人でごった返す中、ハイティーンの男女10名ほどの集団は、少しだけ奇異に見られつつも、時期が時期だけに、『見送り』という想像は行き交う人々の頭の中に出来ていくのだった
だが、『出迎え』という単語が無いのは、また仕方ないことなのかもしれない。
「大統領の娘ってわりには、SPとかいなかったよな」
今更な話題を振るレオに苦笑しつつ返す。
「彼女に取り憑いていたジャンヌ・ダルクとの会話を見聞きされたならば、『アレ』だと想っていたそうだぞ」
その事を周辺警護の人々に正直に話したわけではないだろう。ただ、父親辺りには正直に話して理解を求めたというところだ。
「お前の中のアンリマユはどうなんだ? タロウの息子『タイガ』の依代になった、警備会社新入社員のごとくならないのか?」
二重の意味で『メタなネタ』を振られたレオは、刹那が剥いてやった甘栗を口に入れてから、苦虫を噛み潰すような顔で語る。
「説明がなげーよ。まぁ……基本的にアンリは眠っている。呼びかければ何か答えてくれるのかも知れないけど」
本人曰く『最弱英霊』とやらは、取り憑いた相手のレベルゆえなのか、それとも気を遣っているのかは分からないが、ともあれ……必要とあれば出てくるらしい。
どういう時が『必要』なのかは分からないが、英霊も引きこもりたい時があるのかもしれない。推測だけど。
「しかし、お前はこの春休み、過密スケジュールだな……」
そうこうしていると、レオの視線は、人間離れしたモノを見るかのように目は細められている。
その先にいるのは、刹那である。
事前に話していたことではあった。
米国から雫の出迎えをすると同時に、すぐさま『北海道』に行くことが決まって、その後には『渡欧』という手筈になっているのだ。
「いつものことさ。仕事が無い期間があると、己が鈍る」
だからといって、修羅巷にばかり身を置きたいわけではないが……。
「―――――で、来るのか?」
「ああ、お前とリーナに遅れるが……俺たちも初の『海外旅行』だ」
問いかけたのは対面に座るレオではなく、その後ろの座席に座っていた達也である。カッコつけなのか、振り向くようにして返答してきた達也に観念する。
「霊墓アルビオン……この世界のソーサラス・アデプト達が掘り返さなかった場所。人跡未踏のダンジョンなんてロマンがあるじゃないか」
「ネットアイドル大好きなロマンはいないけどな。けれど実利を考えれば、達也たちは、飛騨高山地方に向かっても良かったんじゃないかね」
軽口を叩くように話したが、それに達也は同意しながらも、進んだ答えを提示してきた。
「確かに―――だが、『あそこ』は既に西の『キッショウイン』だか『セッショウイン』と繋がりを持ったと幹比古から言われたぞ」
「――――――ふむ」
精力的に動くものだ。それだけ現代魔法師を駆逐するだけの『何か』を得ているということなのだろうか。
サーヴァントを運用する。
各魔法家に調略を仕掛ける。
魔術基盤を占有する。
呪体の産出地を抑える。
これだけでもかなり『詰み』とも言える。ある種、戦国の革命児『織田信長』なみに戦略の常道ともいえるやり方だ。
これを姉貴一人でやっているとは思えないが、それでも……中心人物の一人ではあるだろう。
「イマではリズお義姉さんが、鉄血宰相にしか思えないワ」
リーナにすら腕組みさせて唸るように、オットー・フォン・ビスマルクを感じさせる姉貴の最終目標が、現代魔法師全てを屈服させることならば―――。
(その覇業を止めるだけの大義名分は欠けている……)
そも外側から見ている連中かすれば、現代魔法師連中もあちこちで記録に残らない暗闘を行い、時には他家と戦うこともある。
ようは内ゲバにしか見えない人間もいるだろう。だが、それでも止めなければならない線というのもあるのだから。
「リズリーリエ及び連盟が抑えるべきところで抑えてくれるならば、いいんだが、そのための保険は必要だ」
そのためにもアルビオンでの発掘は急務。そう考えていた時に―――。
「みなさ―――ん! ボンジュール! いやー今日もいい日和ですねー♪」
「レティ?」
旅行カバン一つを手に軽い感じでやってきた少女の姿と出で立ちは、言動同様に本当に軽いものだった。
「―――行くのか?」
「ええ、『先乗り』しておく必要があるでしょう? それに、私なりに父母の許可を取らなければいけませんから」
自分たちの近くに寄ってきた明朗な彼女に話しかけるのは、一番に事情が分かっている刹那からだ。
「―――指導役としてそこまで出来ていたわけじゃないから、それは僥倖だが……」
「大丈夫ですよー刹那。何せ来年度からは、私とはもっと濃密な付き合いが始まっちゃうんですから。一度は引き受けたチューター役、覚悟しておくことですね♪♪」
一学年の最優秀生たる深雪を真正面から破っておいて、俺の指導なんて要るのかしら? そんな疑問を持ちつつ、それでも一時の別れを惜しむように、手を差し出される。
「アナタは私にとって、刺激的すぎる日々を与えてくれるスパイスのような男子でした。もう少し日常でも色々とお話したかったんですけど――――」
「それは君の言う通り来年度からでもいいだろう……当然―――リーナが許してくれるならばだけど……」
「そうですよ! なんでリーナは私と刹那の愛のシャンゼリゼ通りを阻むように、刹那と私の間にいるんですか!? 壁か!?」
事実、刹那がレティシアに手を出した瞬間に、リーナはその間に割り込んだのだ。
握手自体は、問題なく出来ているわけだが……。
その奇異な様子に、あちこちから奇異な視線が飛んでくるのだ。
それにも関わらず、腕組みをして勝ち誇ったかのようにヤンキーガールは言う。
「フッフッフ! ワタシもこの一年学んだのよ! マイダーリンは、アチコチにいくつも愛を持っているオトコ!! ソレを完成させないためには、物理的な接触を断つ必要がある! ズバリ言えば、レティの従姉妹がやったイレギュラーキスを阻止するにはコレなのよ!!」
もうちっと他にもやりようはあると思う。俺の前に障壁張ったり、何かリアクティブアーマー的な空気の守備壁を形成したり―――。
そもそも、レティシアがそんなことを考えているという前提は――――。
「アンコワイヤブル! なんで私の狙いが分かっちゃったんですか!?」
ブルータスお前もか。
「この筋力Bの有り余るスペックを利用して、本当のジュテームをしたかったのに!巴里華撃団だって大神華撃団の一員なんですよ!!」
「いでででで!!! 有り余る膂力で腕を思いっきり引っ張るな!! このばか力女!!」
「戦場での旗振り役というのは、現代のカラーガードとは違って過酷なものなんですよ――!!」
「ぎょわー!! 真正面ではなくてセツナの方に向いていてヨカッタ! ワタシ、そういうシュミないもの!」
男子高校生と女子高校生たちのそんなわちゃわちゃとした争いは衆目を集めており、幹比古はどうしたものかと達也に問う。
「達也……」
「なんだ?」
「刹那をめぐる『ああいったこと』を止められるのって、エルメロイ先生以外じゃキミくらいだと思うんだけど……」
「そうなのかもしれんが、俺はこんなつまらんことで自分の生命健康を危険にさらしたくない。第一、人の恋路を邪魔するやつは、
「そう言うと思ってたよ……いや後半は若干、意味不明だけど」
結論としては、達也もこの手のことに関して仲裁することは、不可能と断じているのだった。
(四葉達也に遠坂刹那……全くもってスゴイ人間たちと知り合ったもんだよ)
あの東京魔導災害時点では少しばかり不貞腐れていた幹比古も、もはや自分の中で決意は着いていた。
この2人に追いつく。レオとてその心でアルビオン探索に追いつくのだ。
などと想っていた矢先……。
「―――暫しの別れの挨拶だ。受け取っておけ。我が愛しき剣製の王よ」
刹那のフロントを取ろうとした米仏の争いの中、バックから刹那の首に巻き付き、顔を自分の方に傾けさせて唇を奪う―――赤の剣士。
英国の騎士が一瞬にして刹那の唇を奪ったのだった。
あまりの早業。レティの引っぱりで体が沈んでいたとはいえ
密かに女子陣がモードレッドのその
―――これは使える……!―――
などと妙な天啓を走らせていたのは、ご愛嬌というやつである。
「――――――」
「――――――」
あんぐりしてしまうほどに、見事な奇襲を食らったリーナとレティであり。
「この泥棒猫がぁあああ!!!」
「いやーゴチソウサマー♪ 私掠船免状に基づきセツナの唇を頂いた―――!!」
「この海賊国家が!!」
その言葉を挑発と受け取りレッドに掴みかからんとしたリーナ。その行動が、正しく隙と化して、レティという
「―――――」
「―――――」
英仏のドーバー海峡に派遣されたボルチモア、エンタープライズが両側から砲撃を受けて轟沈するかのような様相である。
本来ならば、守られるべき金剛型戦艦は、もともとの出身が『英国』だからか、被害なしでポーツマスに寄港するような形である。
「むぅうううううう!!!」
「いや、怒りは分かる……俺が隙だらけなのも分かる……いたいいたいいたい」
胸をぽかぽかという擬音表現が似合うもので叩くリーナを従容と受け入れる刹那。
確かに隙だらけだとは想うが、あえて隙を作っているフシはあると達也は思えた。
(その理由は―――まぁあえて言うまい……)
基本的に、刹那が女の子大好きなタラシ野郎であることは周知の事実。
その上で、そんな『諸星あたる』系列の刹那がそうしている理由は―――。
(各国とのパイプ作りというところかな?)
結局、アルビオンの開発にせよそれを運び出すルートなどの確保などでも、欧州各国に『良い風』は送り込んでおきたいというところだろうか。
(表側の政治筋、各国議会では、欧州に太いパイプを持つ政治家たちに任せて、刹那は裏側の財界や魔法師筋に働きかけが出来るようにしておきたい)
そんな所だろうか……まぁそんな陰謀論を抜きにしても、自分に好意を寄せる女子にあまり冷たい態度も取れないのが、刹那の本質かもしれないが――――。
などと想っていると、欧州方面行きの飛行機が出るとアナウンスがされていく。
「んじゃな! セツナ、お前が鍛えて、アルトリア・ペンドラゴンたちが託してくれたもの―――『黄金の輝き』を刺す時までには、ブリテン島に来てくれよな!」
手を振りながらの出発、色々と肌色が多い服装の上から赤いジャケットを羽織ったモードレッドの快活な笑みと言葉に……。
「―――ああ、俺も伝説の立会人の一人にはなりたいからな」
剣が突き立つ瞬間は、魔法師にとっての一大イベントになるはずだ。
「刹那、あなたと共にシャンゼリゼ通りを歩いて凱旋門まで行くことを夢見ていますねー♪
オ・ルヴォワール(また会いましょう)♪」
ウインクしての投げキッスをしながらのレティの言葉だが……。
「リボルバーカノンで巨大な樹木にでも突入しそうだなー」
「me too!!!」
そんなオチを着ける形で、彼女のこれ以上の秋波寄せを躱す辺り、刹那も分かっているオトコであった。
そのやり取りを最後にゲートの向こうへと英仏の留学生たち……黄金の輝きは消えるのだった――――――。
「まぁ来年度から、正式に編入する形で一高に入学するんだけどな」
まずは、ドイツのフランクフルト国際空港へと向かう欧州方面行きの飛行機が飛び立つのを見ながら、刹那は呟いた。
「多くの変化が日本の魔法科高校に出来上がるな……」
「変わらないものが欲しいかい?」
「いいや、全然……この一年で俺も理解してしまったからな。変わらずにいられるものはないってな」
己のことも含めてと、自嘲気味に達也が想っているのを見ながら口を開く。
「全ては不変ではいられないよ。まぁ……今が絶頂であり、寧ろ変わらないでいてほしい。この状態でいたいって人には、迷惑な話だろうけどな」
だが、世界というのは不思議なもので、『どこか』だけが一人勝ちすることを許さないように、プラスマイナスゼロになるよう、帳尻を着けてくる時があるものだ。
経済・社会情勢・教育・国際政治……etc。
それは傍からするとただの『偶然』だと思われがち、妄想主義とも取られかねないが、それでも……。
「―――かの江戸幕府だって、260年間もの安定は奇跡的だったが、それでもその間、平穏無事だったわけじゃないしな」
歴史書には小さなもの程度に書かれているが、『天一坊事件』『由比正雪の乱』など、本当の所はどれだけのことであったかは分からない。
「滅びに抗い、永遠を求める心は邪悪に堕ちるともいえるし、不死の仕組みは、終わりの約束を違えるモノ―――譲れぬもの―――『己』を持ちながら流れ流れて、生きていくしかないのさ」
「大変タメになる教訓だな」
世界は変わる。同時に自分たちも変わらざるを得ない。
流転するように全てが廻り始めた世界で―――どのような結末になるかは、まだ分からない。
だが……それを楽しみに想うことにはしておいた。
そして目下の悩みはといえば……。
(雫が連れてきたあの男子―――恐らく同年だろうオトコは、フリズスキャルヴのオペレーターだったか……)
叔母と同じく囚われていた男がこちらに何を言ってくるのか、こちらに対して剣呑な様子に苦笑しつつも――――、魔宝使いと魔王は全員にわちゃわちゃ対応されている友人と、その彼氏(?)に対して足を向けるのだった。
一つの旅路が終わり、新たな旅路が刻まれる―――などとカッコつけるわけではないが。
「なにはともあれ―――やることやんなきゃ進むも退くも出来ないわけだ」
結局の所、一番正しいことはそんな程度の決意なのだった。