魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~   作:無淵玄白

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実をいうと今話……

合計して2回ほどデータが吹っ飛んだ。というかGoogleドキュメントに保存がされずに妙なことになってしまったのだ。

いつぞや言っていた九島家次男の話なのですが、ここまで来ると劇中に出てくる鯖の呪いなのではないかと思うほどであった。

供養の為に今日第三降臨したのだが、それでも一度保存されなかった事態が発生、戦々恐々としながらの執筆であった。こまめにアップロード、バックアップをしていきましたが―――ともあれXDでプリヤコラボあったり、セイバーさん参戦賛否両論だったり、ゴルゴのさいとう先生の訃報―――ご冥福を祈りつつ、本話をどうぞ。

個人的には、人間どうなるか分からないので、奈須さんががんばっているのは理解していても、それでも―――四年後、自分や世の中がどうなっているか、ちょっと考えてほしいなと思ってしまいました。


幕間4
春休み編『騒動の前日譚』妖精騎士●●●●●


 

 

昼間の大阪、その中心街に異質な男女が現れた。

 

多くの人間は往来を興味なさげに歩いていくも、それでもあまりにも異質な女に振り向かざるを得なかった。

 

男は、言っては何だが普通の青年であった。傍目では、その人種が魔法師という存在であるとは、多くの人には認識されず、両手には抱えきれぬほどの袋と箱が持たされていた。

 

そんな青年を供にして意気揚々と歩くのは……紅いゴスロリ服を着こなした、赤髪が眩しい美少女であった。

 

人によっては『どぎつい』、赤色の重複ではあるが、尋常の人ならざる美貌を持つ少女にとっては、それはこの上ない美を持っていた。

 

そこに……どれだけ血の香りを感じさせる酷薄を見たとしても……。

 

「ソウジー、はやくはやく(hurry hurry)ー♪」

 

笑顔でお供の人間を呼びかける姿は、紛れもなく『この世の美』なのだから。

 

「こ、こんなに、君には色んな服や生地を買う必要なんてあるのか? 」

 

「アタシの趣味に合わないクソダサい服なんて、着れるわけないじゃん♪ そういう『女心』の機微が分からない辺り、ソウジってばホント、クソ雑魚よね♪」

 

女心というのにアクセントを加えた赤い美少女―――『紅のアーチャー』の邪悪な笑みと悪罵に九島蒼司は耐える。

 

「魔力供給もおぼつかないマスターなんだ。そんぐらいの楽しみがないとマジやってられないんだぜ♪」

 

自分が三流のマスターであることを認識させられる一言に、蒼司は腕だけでなく体全体が重くなった気持ちで、こうなった経緯を思い出すことで現実逃避するのだった。

 

とある日のことだった。九島家の男3人、現当主 真言の息子がある場所に集められた。

 

九島家所有の秘密研究所―――既に自分たちの『故郷』ともいえる旧第九研究所が『連盟』の攻撃によって破壊されてしまった今、ここだけが九島家の魔法研究の場所ともいえる。

 

しかし、そこで行われているものは、現代魔法師からすれば眉唾なものばかりだと、噂程度のレベルであったが、真言の次男の九島蒼司はそう聞いていた。

 

そして、それが現実であり、行われていたのが疑似サーヴァント製造であると聞かされた時には、遂に連盟に対抗する剣が磨がれたのだと、年甲斐もなく喜色を出してしまった。

 

説明をしてきた祖父・九島烈は厳重なセキュリティをパスしながら、遂に孫3人をサーヴァントに引き合わせた。

 

『3騎の中から1騎を選んで契約を結ぶのだ』

 

昔懐かしの携帯怪獣ゲーム。関西圏でも有名なゲーム会社が世に出したことで知られるもの。

 

その有名なセリフを引用した祖父に、この人も遊んでいたのかと男三人して驚いた気持ちになる。

 

いわゆる『御三家』を選ぶ際の言葉を連想させる言葉で紹介された、『真名知れず』のデミサーヴァント3騎は……女性であった。

 

男としてはちょっとばかり気恥ずかしさを覚えてしまう。

 

手術着に似た簡素な衣服を着た3騎は、虚ろな眼をしていたが、確かに『御三家』を連想させた。

 

簡単な説明をすれば、大中小のサーヴァントで、赤青黄のカラーを持っていた。

 

『黄色』はこの中でも一際巨大な体躯をした―――いわゆる『巨女』と呼べる。

身長だけでなく体躯も一際スゴイ筋肉の塊と言えるが、それでも顔は美女のそれだ。

 

対象的に、『青色』はこの中でも『小さい』。蒼司の生半可な知識だが、こんな幼女が人智を凌駕した英雄の力を発揮出来るのかと不安になるほどだ。

 

そんな2騎に比べれば、『赤色』はこの中でも普通の体躯だ。普通と言うが、2人に挟まれた形では『中』という評価になるが、ぱっと見では身長は170cmはあるだろう。

 

素性が知れぬサーヴァント3騎。その力を感知することは出来ぬ現代魔法師3人。

 

それでも―――信じるしかないのだ。この状況を打開するために。そのための刃に手を伸ばさなければ、九島家は滅ぶのだから……。

 

「光宣、まずはお前から契約したいサーヴァントを選べ。俺と蒼司はお前のあとでいいから」

 

「玄明兄さん……!?」

 

長男ゆえの心なのか、それとも何かあるのか……ともあれ、先に選ぶのが光宣になった。ここであえて抗弁することも出来たが、それは次兄としてみっともないなという、ある種の『プライド』が邪魔をして、結局のところ、一番手である光宣は『青のサーヴァント』を選んだ。

 

個人的な(ゲン)担ぎではあるが、自分の名前と共通した青を選びたい心があったが―――それでも二番手は、蒼司になり……蒼司は『赤のサーヴァント』と契約した。

 

 

契約すると同時に、徐々に自我を覚醒させていく赤のサーヴァント……。

 

クラスがアーチャーであることから、『紅のアーチャー』と仮称しておくことにしたアーチャーだが……。

 

『ワタシを選んだ理由が、恋敵だった男と同じ色だから!? キャハハハハ!! 女々しすぎて、歪みすぎてクソ雑魚すぎるぜ ソウジ!!』

 

『別に恋敵だったわけじゃない……ただ、アイツにやられた過去を呑み下すためにも、キミのマスターとして振る舞いたいだけだ』

 

『そんなんで過去が拭いきれるかよ! けど―――いいじゃない。ワタシ好みのマスターでいてくれて、こちらとしてはやる気がアガるぜ!』

 

邪悪、凶悪、極悪……なんとでも言える笑みで、蒼司がアーチャーを選んだ理由を結論付けてくる。

だが、蒼司にとって古き鬼の王『紅赤朱』を思わせる男は、自分が焦がれた女の子を奪っていたのだ。

 

始まりは、光宣が渡米から帰国した時に見せられた写真でだ。大叔父の孫……疎遠となったもう一つの九島の系譜。

 

見せられた時からある意味、心奪われた。

同時に、光宣より説明を受ける……アンジェリーナが腕を取って顔を寄せている『赤い外套の男子』は何者なのかを……。

 

『ソレで闘いを挑んでガンド一発でやられるとか、ウケる~! 笑いが止まらなくてお腹いたーい!! マジでワタシのマスターってばサイコー!!』

 

完全に悪罵の類だが、ここまで笑われると、もはや色んな意味で、せいせいしてくる。若気の至り。蒼司も既に二十歳過ぎ……この位は呑み込めている。

 

そして、下の弟の方が魔法の腕がいいことも、既に認識出来ている。

 

そんな訳で紅のアーチャーの言葉に心乱されることはない。ただ……心乱されることあるとするならば……。

 

「さーてと、そろそろ家帰って縫製しなきゃね♪ ヒールももっといいものを作らないと。子鹿のように―――」

 

アッシー、メッシー、ドレイドンな蒼司を引き連れての帰還。それを意図したアーチャーが蒼司を振り返った瞬間……。

 

―――周囲から人が一斉にいなくなってしまった。

 

「結界……見事な括り方だな」

 

「ふふん♪ 」

 

感心しながらも警戒をする蒼司とは対象的に、アーチャーはオモシロイことを見つけたかのように、笑みを見せていた。

 

同時にその体に魔力を充足させていくのを感じる。半人前のマスターとはいえ、アーチャーの手助けになればということで、溜め込んでいたものを供給しようとしたのだが……。

 

こちらを向いていたアーチャーの柔らかな指、されど鋭い赤い爪が、蒼司の顎を少しだけ引っ掻くように撫でてくる。

 

絶妙な力加減と、見上げるような笑みが挑戦的なものを作り出す。 背中がぞわっ、と震えるものだ。

 

「いいわよソウジ。多分だけど、この結界の内側には『サーヴァント』はいないわ。出てくるのは恐らく魔獣系統のエネミーね。ワタシの自前魔力(ちょぞうぶん)でナントカするから……ワタシの手助けしたい?」

 

その言葉に、男としてならば助太刀するべきだが……。

 

「手助けはしない。キミの強さを僕に見せてくれ『紅のアーチャー』」

 

「イイじゃない! サーヴァントの端くれとして、その言葉に報いてみせるぜ!!」

 

蒼司が掛けていたパレードで偽装させていた、エルフのような耳が見えるほどの魔力の発露。

瞬間、どすん!どすん!! 大阪の路上を揺るがすように深い震動があたりを沸かしていく。

 

自分たちが歩いてきた方向から追うかのように、巨体が続々と続く。

 

「……牛鬼……!?」

「ビッグオーガー」

 

どちらともいえる判別。ともあれ、現れた巨体は玄明が契約した黄で大のサーヴァントと同格か、それ以上の巨体を揺らしていた。

 

でっぷりとした腹部は力士を連想させるが、それを覆すようにそれ以外の上半身の部位(パーツ)は、筋肉のコブで覆われている。

 

もりあがった筋肉の鎧を支える下半身も太く剛力なものだ。注連縄(しめなわ)付きの回しで股間を隠した―――『大鬼』

 

被り物なのか、それともそれが顔なのかは分からないが、大双角を持つ巨牛の頭を持って荒い息を吐いていた。

 

それが十数体も現れた。本格的に連盟の攻撃が蒼司にも向けられたことに恐怖を覚えるも、それよりも……。

 

「んじゃ―――その身の魔力、全て奪い尽くしてやるわよ!!!」

 

サーヴァントの力を拝見出来ることに興が湧いた。

 

アーチャーの名の通り、弓ないし何かの遠距離武器、はたまた放射攻撃をするかと想っていたのだが……紅のアーチャーは、その予想を裏切って距離を詰めた。

 

瞬発の神速。まさしく音を置き去りにした移動に、蒼司が眼を横から前方に向けた時には―――。

 

「―――ブタ!!!」

 

ぞんぶっ! そんな音で牛鬼の筋肉の鎧を貫いていた。それが鋭利な武器であるならばまだしも、ただの『手刀』。魔力による保護・強化(ブースト)は掛けられているが、それでもその結果に蒼司は驚いた。

 

赤いドレスが血に塗れていく。アーチャーの手刀は正確に、牛鬼の心臓を貫いていたようだ。

 

「ハツもーらいっ!!」

 

心臓を無理やり抉り出す様子。気の弱い一般人。魔法師であっても眼を背けていてもおかしくない光景が目の前にあって、蒼司はそれを『平然』と見ていた。

 

呆気ない死を迎えたことで響く悲鳴は、今日の悪夢にも出てきそうなものだ。

 

血に塗れながらも脈動する心臓を取り出した紅のアーチャーは、()のままのそれを喰らうのか……高く掲げて、滴り落ちる鮮血ですら、彼女のまとう『紅赤朱』の前では、粗悪な色に映る。

 

しかし、蒼司の予想に反して心臓は何かのエネルギーに分解されていく様子がある。その様子から察するに、サイオンよりも純度の高い、サーヴァントの主エネルギーたる『エーテル』であると見た。

 

心臓を喰らったことで完全に絶命したのか、牛鬼の力士4人分はあろうかという自重が、大阪の路上を揺らす。

 

「足りないわね……」

 

食い足りないという意味であることは即座に理解した。それが契機なのか、身体もまたエーテルに分解されてアーチャーの胃袋(そうこ)に収まる。

 

貯蔵魔力を増やすという意味ではいい方法だ……。

 

(サーヴァントがソウルイーター(魔魂喰らい)であることは理解していたが……)

 

どうにも少々『毛色が違う』ように思えるのだ。蒼司が持つハンパな知識でしかないのだが……。

 

とはいえ、そんな闘いぶりが後ろにいる牛鬼たちに戸惑いを生んだのは間違いない。同時に蒼司も見抜く。

 

こいつらは、化生体のような『幻術』ではなく、生物としての『魔獣』なのだと。

 

身すらも食い尽くして、残るは大鉈のような無骨な武器である。

 

それを手に取るアーチャー。重々しく落ちていたそれを、ナイフでも持つように『ひょい』っと軽々と持ったことで、蒼司の現実が少し揺らぐ……しかも持ったあとに響く素振りの『轟々』という風切り音で、見た目通りの重量なのだと気付かされる。

 

牛鬼の丸太のような腕で持たされていた大鉈は、新たな主人を迎えても、その力を発揮することに何の問題もないようだ。

 

「イイものもらっちゃったわ―――♪、しかし一刀じゃカッコがつかないわね」

 

そんな重量物を、その細い腰と腕でどうやって保持しているのか、疑問を覚えた蒼司を置き去りにして、アーチャーは次の牛鬼たちに狙いを着けた。

 

「あのブッ壊れた弓兵(セイギノミカタ)と同じく二刀流になるためにも、アンタの得物を奪ってやんよ!!!」

 

明確に狙いを着けられた牛鬼たち。怯えるもその巨体に似合わない速度で向かってくるのを見て。

 

「串刺しにしてやる!!」

 

アーチャーは空き手から赤い水晶を何十と打ち出す。

 

水晶というがどれもこれも、リットルサイズのペットボトルの大きさ。

色は赤といったが、ルビーというにはあまりにも鮮血を思わせる。

 

血晶魔弾(ブラッドバレット)とでも言うべきものが牛鬼の肌を貫いていく。

 

牽制射撃というレベルではない弾幕。怯んだところに、大鉈を構えながら瞬発するアーチャーは一番手前にいた牛鬼の腕を切り落とした。

 

筋肉のコブが浮き出た丸太のような腕だ。速度も瞬発の超速ならば、そのままに振るわれた剣から発する轟音は、まさしく物理法則の断末魔。

 

「鬼の武器もらったわよ!!」

 

そして、その腕が保持していた大鉈を、もう片方の手に中空でキャッチしたアーチャーは、大鉈に赤い魔力を纏わせる。

 

恐らくこれこそが心臓貫きの攻撃の正体だと察した蒼司は、その後の全ての攻撃を見抜けなかった。

 

膂力と速度。ともに規格外。魔法師ではとてもではないが追いきれぬ速度領域で、爆肉鋼体のもとで赤い大鉈を振るうアーチャーは、その勢いのまま3分もかからずに牛鬼たちを滅殺してのけた。

 

アーチャーはああ言ったが、このあとに本命のサーヴァントが来るのではないかと考えるよりも先に、牛鬼たちの死骸から魔力を吸収しているアーチャーに目をやった。

 

雨のように降り注いでいく鮮血すらも己のものとしていく、鮮血令嬢(エリザベート・バートリー)だけを見てしまった……。

 

アーチャーの血肉へと還元されたのか、牛鬼がいたという痕跡一つ残さずに消え去る。

 

戦利品なのか大鉈―――十数本を、己のものとしたアーチャーは、それを小さなアクセサリーのように『小型化』を果たす。

 

やはり現代魔法とは違った理屈を彼女は内包しているようだ。それらを繋げてネックレスか何かにするつもりなのか、己を御髪(みぐし)を抜いて束ねて、紐としたのだった。

 

「どう? ソウジ、似合っている?」

 

首から下がるそのソードアクセは、首元のリボンよりも、彼女に似合う……アーチャーの魔力を受けたからか、紅く輝く宝石にも似ている。

 

「ああ、似合っているよ。ただ肌を傷つけないか?」

 

「そんなヤワな肌はしちゃいません♪ しかし、初めてサーヴァント(ワタシ)の闘いを見たってのに、ソウジ―――荷物は落とさないのね」

 

「怖がって、怯えていれば、嬉しかったかいアーチャー?」

 

その言葉に挑戦的な笑みが、少しだけ鳴りを潜める。何か彼女に、繋がるものを刺激してしまったのかもしれない。

 

だが―――。

 

「生憎、キミの戦う姿に見とれてしまったよ。正直、怖さよりも、その技も何もない暴力的な闘いにね」

 

何よりアーチャーとしての宝具を出さずに、あれだけ巨大な鬼に立ち向かう姿に―――どうしても目を離すことが出来ずにいたのだ。

 

「アーチャー、キミは僕が知っている女性の中で一番、苛烈で可憐で残酷で■■だ。僕はマスターとして弱体だが、キミが望むことを出来る限りこなそう」

 

それが自分から離れたいということに繋がったとしても、それを受け入れそうになる自分が、嫌になるのだった。

 

聞いたアーチャーは……。

 

「……まぁ及第点としておくわ。けれど、ワタシは真名すら知らぬ不完全なサーヴァント。そのことは覚えておいて」

 

どこか不貞腐れるような、嬉しがるような言葉を言うアーチャー……に蒼司は聞こえたが、本当の気持ちは分からない。

 

それでも少しだけ嬉しかったのは間違いない。

 

「分かった。っと―――」

 

両手に荷物を持っていた蒼司の腕が取られる。アーチャーが自分の腕を絡めてきたのだ。

 

「今回の報酬よ。アナタの片腕分の重みは私が代替してあげるから」

 

その言葉が呪文であったかのように結界は崩れ去り、元々の大阪の路上に復帰した2人。

現実感を無くした戦いの舞台はなくなり、街中に復帰した2人を見る目は―――。

 

 

―――リア充爆発しろ!―――と変化を果たして、主に男の視線が多いも、そんなふうな意味合いの視線に晒されるのだった。

 

「ほら、行くわよソウジ」

 

「うん……」

 

服越しとはいえ、アーチャーの胸部は随分と豊かであり、蒼司は己の腕になりたいと切実に想いながらも、エルフのような耳をした小悪魔系美少女の笑顔を見ているこのポジションも、捨てがたいと想う―――。

 

そんな気持ちで一杯になった蒼司は、既にこの重さを持っていくことに、何の呵責もなかったのだ……。

 

 

 

そんな様子を『鳥の使い魔』を通して見ていたハーフホムンクルスは、どう見ても九島蒼司の契約したサーヴァントが『正調の英雄』には見えないことから推理した。

 

 

(あの魔術、どう考えてもウィッチクラフト系列。だが純度が高すぎる。更に言えば、あの特徴的な耳……純正の魔女(マインスター)の血を惹くものならば、男女問わず場合によっては、発現するものだけど)

 

宝具や固有の武器も使わずに、素手とオオナタだけで全てに決着をつけたアーチャー(?)は、恐らくこちらの遠見(監視)を理解していたと思われる。

 

ハーフホムンクルスとして、およそ魔法師や一般の魔術師からも一線を画す自分に抵抗できるなど、限られている。

 

見えてきたステータスと、スキルから察するに……。

 

「……『妖精』か……。クドウ家も下手を打ったものだ。よもや自分たちが抱えたショッカク(食客)が、毒持ちの存在であることなど分からぬか」

 

妖精の価値観と人間の価値観は相容れぬ。その齟齬がいずれは破滅の一端となる。

仮に御することが出来たとしても、こちらには、相手方を打倒する手段が残されているのだ。

 

だが余裕ぶってもいられない。今のうちに潰せるところは潰しておく。

 

「―――キアラに連絡を、おはぎのフルコースは勘弁だけど、会食には応じると伝えて」

 

『天衣』を着込んだ女は、侍従である側仕えのメイドホムンクルスに頼んでから、畳の上から立ち上がる。

 

 

戦いの時は―――近い。いや、もはやリズリーリエの闘いは始まっているのだ。

などと覚悟を決めた時。その瞬間――――。

 

「さてさて、盤上の遊戯ほど優雅ではないけど、そろそろ窮地よセツ―――――なぁああああああああ!!!!!!????????????」

 

先程までのシリアスをふっとばす素っ頓狂な声に、侍従であるセラスが、おどろ木ももの木さんしょの木で問い返してくる。

 

「お、お嬢様! 如何なされましたか!?」

 

「あ、ああああああ!!! キアラと会食後! 即座に英国に渡るわ!! 準備は頼むわね!!」

 

驚愕の表情と声を上げながら縁側に赴いたリズは、虚空を睨みながら矢継ぎ早に指示を出してきたのだった。

 

「しょ、承知しました! ですが、お嬢様―――何故そのようなお声を上げられたのですか、無知蒙昧なこのセラスにも教えていただければ―――」

 

「……そうね……セラスは、私の分身とはいえ、そちらの因子は持っていないものね。感じ取れなかったのも無理ないか……けど私もまだ明確ではないの―――」

 

なのにあんなに驚かれていたのですか。セラスびっくりです! とでも言うべき『念』を感じて、ジト目を返すとあたふたする侍従。

 

仕方なく返す言葉を繋げていくと……。

 

「――――――セツナはアーサー王の『魔術基盤』を、ブリテンの大地に敷いたわ……」

 

その意味を知るにはまだ時間がかかる。分からない人間ばかりだろうが、これだけは言える。

 

「あの子は……どうやっても私に歯向かう気構えらしいわね」

 

今までは血の繋がりある『姉弟』として多めに見てきたが、今度ばかりは容赦しない。

歯ぎしりしながらも、思考は冷静に、結論は―――。

 

魔宝使い『遠坂刹那』とは、一度、本気でぶつかる必要が出てきたのだ……。

 

 

 

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