魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~   作:無淵玄白

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エリちゃんハロウィンイベントでまさかの、「あ、貴女様は!!」

な存在らしきものを確認。皆鯖版にてエロスの権化だったかのお人がやってくるのか!? アーケードだけでなくアプリ版にも来てほしいな。

というわけで新話どうぞ。


春休み編『キグナスの乙女たちとおいしい食事』

―――俺の経験など、キミに活かされることはないかもしれない―――

 

―――だが、最後に選ぶのは自分自身だ。―――

 

―――自分で自分を決められる宝石(こころ)は、ただ一つだ。―――

 

―――後悔のない人生なんて有り得ないが、それでも選ばなくちゃならないんだ。―――

 

―――個人的な意見だが、命の危険が云々だけで選んだところで、いいものはなにもないよ。せめて東京に来る時は、こっちの厳つい人のオヤジの顔面ぶん殴る気持ちで来たほうがいい―――

 

 

―――安全や安定なんてのは、油断したところで、あっちゅうまに食い破られる。落とし穴はどこにでもあるんだからさ。だったらば―――

 

 

―――自分で選んで後悔するべき。誰にも自分の舵輪は渡すなよ。人生の航海はまだまだ続くんだからな―――

 

 

先週まで『自分の家』を訪れていた、現代の魔法社会だけに留まらず、多くのメディアにしばしば口端に登る少年―――高校生だが、とりあえず『アリサ』もよく知っていた人の言葉がプレイバックする。

 

アリサに教えられた話、その全てを聞き終わった後に、遠坂刹那の語る言葉は―――驚くほどに、アリサに染み入る話だった。

 

父親を殴るかどうかは別だとしても、一度は自分のルーツの一つを辿るというのもいいだろう。

 

腹違いの兄の言うように、『魔法師』としての訓練を受けるかどうかは、ともかくとして―――何より……。

 

「私は……私のことを知りたいんだよね」

 

このまま北の大地で、遠上家の人々にお世話になりながら、その後……義兄とも呼べる相手と結婚して獣医を受け継ぐというのも、一つの道だ。

 

けど、その道を選ぶならば、本当の意味で遠上夫妻の養女になっているべきだった。

茉莉花と遼介と兄妹になっているべきだった。

 

それが出来なかったのは―――。

 

「遠坂さんも……同じだったのかな?」

 

自分のことを知りたい。自分の父親・母親のことを、辿った道筋を知りたい―――そういう気持ちだから、あの人はああなのかもしれない……。

 

「アーシャ……どうするの?」

 

一人だけの思索に思えて、部屋の中にはもう一人がいて、アリサに問いかけてきた。遠上茉莉花……アリサにとって妹も同然の幼なじみに対して―――意を決して答える。

 

「ミーナ……そうね。決めたよ―――魔法師になるかどうかは分からない。 けれど……自分の起源(はじまり)には、一度……真正面から向き合おうと想う。もちろん―――私も死にたがりじゃないから、それなりに自分の力の制御はしていきたいんだよ」

 

「―――けど、東京に……十文字の家に行けば、間違いなく―――『そうなっちゃうよ』……」

 

泣きそうな茉莉花の言わんとする所は、傍から聞けば事情を知らん輩には分かりにくいが、アリサには理解できた。

 

十文字の魔法師になって、結局の所―――妙な権謀術数の世界の姫君になってしまう。そういう未来を危惧しているのだ。

 

貴種流離譚的な観点で行けば、アーシャこと伊庭アリサが、その家の魔法師であり子女になることは、ある種のシンデレラ・ストーリーなのだが……。

 

そんな気持ちはアリサには全く無い。周囲がどう見るかは、別だが。

 

そんな周囲の一人として抗弁する遠上茉莉花は、どうしても納得出来ないのだ。

 

自分とアリサは姉妹も同然に育ってきた。髪の色こそ違うが、それでも半身がいなくなるような気持ちを抱いてしまう。

 

「そうなのかもしれない。けれど―――いざとなれば、同じ『孤児』(オーフェン)として手助けしてあげるって、遠坂さんも言っていたから」

 

「あの男! あんなボインすぎるアメリカンをカノジョにしておきながら、アーシャのスラブ系美女(予定)のボディにまで食指を伸ばそうなんて!!」

 

「ミ、ミーナ……」

 

そりゃ邪推すぎないかと苦笑しながら思うも、義兄たる十文字克人ではなく遠坂刹那に突っかかっていったミーナは、その隔絶した実力に、歯ぎしりして負けを認めざるをえなかったことがあったりする。

 

それ以来、自室にあるサンドバッグには刹那の顔写真を貼り付けて、どこぞのド根性忍者よろしく再戦にむけてのシミュレーションは欠かしていないらしい(無意味)。

 

などと言っていると、何か―――魔法師的な知覚能力とでも言えばいいのか、強烈な『チカラ』を上空に覚えた。

 

ふたりして眼を見開いて、部屋の窓を開けて寒風に晒されながらも、北の大地の空を見上げる。

 

「うわぁ……オオハクチョウの飛去かな……? そういう時期だけど」

 

「確かにミーナの言う通りそろそろ春先だけど……けどあんなに大量に?」

 

いずれは獣医師になろうと想っていた云々以前に北の大地に住まう人間の一人として、少しばかりアリサは疑問を覚える。

 

確かに、越冬のためにオオハクチョウとコハクチョウが『渡り』を行うのは、時季の風物詩である。

 

そして再び元の場所へと帰る姿を捉える……。

 

しかし、それは―――まだまだ地球寒冷化が本格的に行われる以前の話。

 

この時代になると、野生生物の生態も、少しばかり20世紀時代とは違っていた。

 

要は―――こんな大量の野鳥による飛去というのは、『ありえない』のだ。

 

そして、アリサと茉莉花が感じた『チカラ』の発露から……。

 

それでも、白い鳥たち……かつては、不老不死の存在として崇められ、多くの神話伝説において神秘を持ったものとされてきたものたちは、彼方へと消え去った。

 

その姿は道内あちこちで見られて、超常現象ミステリーとして語られるのだが……その中でも興味深い証言の一つとして、その白鳥の群れの中に巨大な『船』の姿を見たと語るものや、そもそも白鳥の群れなどなく、『銀細工が鳥の形を成していた』という摩訶不思議な証言まで出るわけで―――その末のことは、遠くの英国にて結実するのだった……。

 

 

 

地下外出における肝要なことは、つまり心を乱さないことだ。

 

そう、そのために大事な一食は外してはならない。

 

この米国・英国管理のアルビオン監視施設『サタネル』にて、鍋を振るう刹那と料理サーヴァント……一高の卒業式でも見た『若女将』と『ネコ女将』とが作り上げる、アルビオンのサヴァイバー回復のための料理は―――。

 

「出来たぞ。オムレツライスだ」

 

オムライスと言えばいいものを、なぜオムレツライスなどと呼称する。

 

そんな文句は言えないぐらいに、今は空腹状態であった達也など、食堂に集まった一同は……。

 

「「「「なんだと……」」」」

 

オムライスではなく『オムレツ』と『ライス』のみ―――日本食の体をとったのか、味噌汁や香の物(つけもの)もあるのだが、全体的に質素な学生食堂の定食を思わせるものを見て―――なんだかなぁ……と想いつつも、腹はペコちゃんなわけで、いただきますと手を合わせてから、箸をつけるのだった。

 

よく見ればオムレツは、かなりのボリュームであり、そして何より絶妙の半熟具合。

 

玉子を割った瞬間、見えてきたものはチャーシューと長ネギに見えて―――。

 

(竜肉のチャーシューとダンジョン(アルビオン)で取れた野菜か…)

 

しっかりと炒められたそれが、この上なく半熟の卵と絡まって美味い上に―――味付けには……

 

(Zeroウェイバー(味覇)、原点回帰の味! この自動調理が主流となった時代でも覇を唱える、中華調味料の王様!)

 

半練りタイプのそれがたっぷり混ぜ込まれて、実に箸が進みライスが進む。

 

しかもライス―――というかご飯も、少しのだし醤油で炊いた上に白ごまと大根の細切りが混ぜ込まれていて、なんとも心憎い演出だ。

 

それゆえにか、ご飯が味変の役割を果たして巨大なオムレツを飽きさせない。

 

恐らく『若女将』の提案なのだろうが、それにしても、それぞれで一見しただけでは分からない微細な工夫がなされている。

 

「旨すぎるだろコレ……。何だってこんなに微に入り細に入る料理するんだ?」

 

「そりゃダンジョン探索したあとに、味気ない食事じゃイヤだろ。紅閻魔ちゃんやキャットもいることだから、その程度の手間は惜しまないよ」

 

ご飯粒を頬にくっつけたモードレッドに何気なく返すと、厨房から『追加』(おかわり)を持ってきた割烹着姿の少女サーヴァントが、それに対して説明を着ける。

 

「疲れた旅人を心身(ごたい)の芯まで癒す。それこそが、雀のお宿『閻魔亭』のおもてなしの心でち。当世風に言えば『ほすぴたりてぃ』というやつでちね」

 

『『『『若女将!!』』』』

 

『『『『若女将!?』』』』

 

舌足らずな少女の登場と言葉に、一高と三高で反応が別れた。

 

「セルナ、この児童労働違反ギリギリな少女は? 腰に帯びている太刀からサーヴァントなのでしょうが……」

 

いまも、しゃもじを達者に使ってお櫃からご飯をよそっている少女に、知らない三高勢は驚きを隠せない。それゆえにか、早速使役者であり愛する人に問う一色の姿を見る。

 

達也も、あの卒業式の際に「いつの間にこんなサーヴァントを?」と驚いたが、一高女子陣が心酔するが如く、その少女を『若女将』と呼ぶぐらいには、少女は―――やはり若女将なのだった。

 

「セツナ、簡単に真名(NAME)を明かすのはマズくない?」

 

「そういう小姑みたいなイジワルどうかと思うよリーナ。とはいえ、いつまでも『キャプテン・セイバー・スパロウ』と呼ばせるのもアレだしな」

 

なんでキャプテン・ジャック・スパロウ(イケオジボイスな平田広明さん)みたいな呼称なんだよ、とツッコむ前に、ご飯のおかわりをセイバー・スパロウに求めた達也は、ある意味……いままでの英霊の中でも、かなり異質な経歴といえるのではないかと思うのだ。

 

「あちきの名前を知りたいんでちか? 物好きさんでちねー。まぁ隠すことでもないのでおおしえしまちゅが」

 

何というか全体的に舌足らずな言葉遣いと、スキルなのか宝具なのか分からないが、少女の周りで給仕の手伝いをしている、それぞれで色違いの前掛けを着けたデフォルメ雀(巨)で何となくの想像が着くだろうが。

 

「あちきの名前は、『舌切り雀の紅閻魔』。人々に伝わる民話『舌切り雀』をベースとした伝承を元にして『作られた』、ある種の『童話系サーヴァント』でちね。『なーさりー』ちゃんと同じようなものでち」

 

「紅閻魔―――という名前から察するに、閻魔大王に由来するのかの?」

 

(ようじょ)にしてもらったでち。詳しいことはあまりあちきも話したくないのでちゅが、まぁ色々とあちきもあったんでちよ」

 

その(くるわ)言葉と、死んだ年齢がこの容貌通りならば、それは色々(・・)と察することは出来るのであった。

 

沓子の言葉に答える紅閻魔の周りの雀(っぽいもの)たちは……。

 

『チュチュン! あの強欲婆にこき使われてもめげなかった紅閻魔女将には、頭が下がる思いだチュン!!』

 

『宇治拾遺物語に語られる『山中にて人を助ける怪異』。その伝承こそが閻魔亭の原型(アーキタイプ)だチュン!』

 

『存分に英気を養うチュン』

 

などと言って補足をするのだった。

 

そういっている内に、一高での正妻戦争(食戟戦争)を思い出した深雪が、わなわなと震えながら口を開く。

 

「若女将、いえ紅閻魔師匠は恐るべき料理の達人!! 愛情あればそれでいいなんて文句は許さない!! 正しくクッキングサージェント!! おおっ! 正しく食戟のスパロー!」

 

「深雪さん……何があったんでせうか?」

 

あまりにも変わりすぎた愛しき人に、若干引いている将輝が問いかける。

 

「ノーコメントです一条くん……ああ、私は、並行世界に無限にいるだろうお兄様軍団を、皆殺しにしてしまったのです!!」

 

「だからどういう意味なんだー!? ……若女将」

 

嘆きの言葉とは別に、『そっ』と茶碗を差し出す将輝の姿を見たあとには……。

 

「アンジェリーナは、紅閻魔ちゃんの特訓(トレーニング)を受けなかったんですか?」

 

「ソノ時のワタシは、モードレッドとツインボーカルの特訓中だったモノ……まぁグラデュエーション(卒業式)の為の祝賀料理の予行として、『どんなもの』を作るかで、ミユキやレティシアがデプレッションしているのは見ていたワ」

 

「良かったですね。アナタならば『来世からやり直せ』とか言われていたでしょうし」

 

「とてつもないイヤミ!!」

 

一度はリーナを労ろうとするかのような一色であったが、いつもどおりのやり取りに、何か安心感を覚えてしまう。

 

わいわいがやがやの食事風景。

 

そんな中、ようやくのことで刹那に話しかけることが出来た達也は、率直に尋ねるのだった―――。

 

 

「刹那」

 

「なんだ?」

 

「――――――なんでオムライスじゃなくてオムレツライスなんだ?」

 

そこかよ!! と、達也と同じような『疑念』を抱いていた連中がツッコみたい気分を呑み込んで、会話をそれとなく聞いておく。

 

「紅閻魔ちゃんの得意に合わせたのと―――あと単純に俺が、オムライスを作りたいのはリーナだけにしときたかった。そういう個人的な事情だ」

 

「まぁ確かに男から『オムライス』を振る舞われるというのは、料理店ならばともかく友人では―――なんともアレな感じがするか」

 

真実の斜め上ぐらいは突いているかもしれないという、達也の俗っぽい言動に苦笑しつつ、刹那は口を開く。

 

「聞きたいことは分かる。何を企んでいるかってことだろ? お前さん風の邪推の言葉に合わせれば」

 

「茶化すなよ。んじゃ何かの企みが今も走っているんだな?」

 

「まぁな―――ただ予定通り動いてくれるとして、『どこ』に来るか、だ」

 

その言葉で何のことか分からない面子は多いが、それでもアルビオンから出ると同時に、日本から届いたメール(起床後に確認)で理解していた達也は問い返そうとした矢先―――――。

 

食堂の電子扉を蹴破らん勢いで、USNAの軍人……というよりも、刹那とリーナのお姉さんという風情のシルヴィア氏が、荒い息を吐きながら、やってきた。

 

「シルヴィ!? どうしたんですか?」

 

リーナの心配そうな声にも、手を上げてから『大丈夫だ』として口を開くシルヴィア。

 

「―――『船』がやってきました。現在ドーバー海峡を横断して、ここブリテン島へと猛進しています……!」

 

「やはり、か。少し行き違いになったが、海戦系統―――海賊系サーヴァントを展開する許可は『英国政府』から降りなかったが、上陸される前に叩き出せば―――」

 

「ち、違うんですよ! 刹那くん!!」

 

「「??」」

 

すっかり動転したシルヴィアに気圧されるも、疑問は尽きない。

 

どうもそういった状況ではなさそうだと察して、リーナと顔を見合わせた。

 

 

―――同時に、管制室にいた博士は、食堂の連中に状況を伝えるべく、キャビネットに現在の英国―――――『上空』の様子を映し出して、全員を呆然とさせるのだった……。

 

 

 

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