魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~   作:無淵玄白

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ぐだぐだイベント……そろそろお虎を掘り下げるためにも信玄ちゃんとか直江兼続とか出してもいいと思うんだけどねー。

経験値先生、ウ○娘が流行っている今だからこそ武田騎馬軍団に絡めてワンチャンスありますか?(必死)

などと宣いつつ、立ち絵でのエリちゃんシンデレラの腕なげーなと今更気付く。

新話お届けします。


春休み編『決戦前の説明』

「いやー懐かしいねぇ。キミとリーナの初めての共同作業で出てきた敵も、こんなんだったからねぇ」

 

ケラケラ笑いながら言うアビゲイル・スチューアットに対して、刹那としては若干笑えないものがある。

 

ドーバー海峡を横断してやってきた『空船』は、距離がまだあるとはいえ、サタネルという施設からも既に観測できている。

 

その空船は、かつてボストンにてプラズマリーナと知り合った初期、最後のイベントとして出てきたものであったと記憶している。

 

最終的な出どころは、新ソ連など東欧諸国で開発された『航空戦艦』という代物と判明はしていたが……。

 

「まさか、こんなものを所有していたとはな。さっすっがっにこれは予測してなかったからって責められないよな」

 

強調するように、文字を区切って言ったが、責められるだろうという、達也などからの無言での圧力を感じる。

 

「まぁいいや。どうせ、こうなることは織り込み済みだったからな」

 

いじけるように言うと、そこに食いつくは達也であったりする。

 

「お前は……神代秘術連盟を無理やり闘争の場に引っ張り出すために、今回のことを利用したのか」

 

達也の『信じられない』という言外の言葉を感じつつも、刹那の返事は明朗だった。

 

「そうだ。横浜の会議室でリモートの人間含めてとはいえ、生産性のない話や糾弾をしながら、消極策でおざなりに終わらせるぐらいならば―――『あちら』から『こちら』に出向いてもらう環境にするだけだったということだ」

 

手を振りながら、嘆息と同時に企み・謀略を語る刹那の顔は、ハレバレとしている。

 

全員が呆然とする―――とまでは言わないが、それでも理解力が高い連中は……この作戦の有効性は高いのだと思えた。

 

結局の所、サーヴァントを多数召喚している連盟の本拠……京都・奈良などの地域で穴熊を決め込みながら、あちこち(中国・北陸地方)に攻め込まれたらという予測がキツかった。

 

そもそも論として、九島家が頑迷になって、派兵及び救援要請を出さなかったのが原因でもあるのだが……。

 

(外の道、裏技ばかりの禁じ手なんだろうが、『こうすること』でしか連盟を穴熊から燻り出す方法は無かった)

 

恐らくアーサー王の魔術基盤を打ち付けられたことが、連盟にとって何かの致命打。楔を打ち込むかのごとき事であったのは推測できる。

 

達也には詳しくは分からないが―――それでも―――。

 

「まぁそれでもこいつはラッキーだと思うぜ。わざわざ居城(安全圏)から出てまで、こちら側の手の届くところまでやってきてくれたんだ―――」

 

ドーバー海峡を横断して―――悠々とブリテン島の空を『飛行』する船……。

 

その船の周りには多数の銀糸細工の鳥の群れ……操るは、刹那にとって腹違いの姉だが―――。

 

 

「―――ようやくだが、直接『魔法』(ちから)でぶん殴れるじゃねぇか」

 

 

―――端的かつ挑戦的に、『敵』を叩き潰すという宣言をしてのけたのだった。

 

その言葉に滾るものたちは多い。

 

ただその一方で……。

 

(セツナ、アナタに……リズお義姉さんと殺し合う覚悟はあるの?)

 

リーナにはその事を問うことが出来なかった。

 

やってきた戦力次第では、殺さずというのも不可能ではあるまい。寧ろ、サーヴァントを倒した上で、刹那が固有結界に『登録』してしまえば、よほどの『裏技』を使われない限り、同じクラス、同じ真名、同じサーヴァントの召喚は不可能だ。

 

そうなれば戦力的には減ずる。寧ろ、これがいい手段であることは理解できるのだが。

 

「なんて考えていてもショウガナイわよネ。アナタが考えたことにワタシはついていくもの―――けれど……アナタのお父さんは悲しむワ」

 

「だろうな。けれど―――俺は姉貴のやりようを認められないんだ。リズリーリエのやり方は『王道』じゃないんだから」

 

家族を求めていた男の敵になったのが、他ならぬ半親を同じくする女であるならば、苦衷もあるのだろう。

 

恋人に悲しき選択をさせてしまった、自分の不甲斐なさだけは覚えておくのだった。

 

そうしてから刹那は矢継ぎ早に指示を出す……。

 

「アビゲイル、シルヴィア。悪いが居残り組は残していくから、万が一があれば、必ず無事に返してくれ。発行しておいた英国王室の特権証と、合衆国の外交特権証を、モーニングスターのように振り回してでも出国させてくれ。ついでに言えば、今回の米国の取り分に関しては、すでに纏めている。仔細はロードえるめろっ!!!」

 

言葉が途中で途切れたのは、別に刹那が舌を噛んだりしたわけではない。

紅閻魔ちゃんのように舌を切られたわけではない。

 

「セルナ……この期に及んで、そのように仲間外れや己が失敗したあとのことなど考えないでくださいっ!! 確かに戦うことに忌避感を持つ人間は仕方ありませんが―――それでも、前回のようなことはごめんですよ!」

 

激高した一色愛梨が刹那を引っ叩いて、言葉を途切れさせたのだった。

 

相変わらずの刹那の無用な気遣いは、色んな人に妙な気持ちをさせていく。

 

「刹那の考えは分かるさ。だが、いま……お前だけが犠牲になってなんてのはナシだろ。それに俺としても、四葉の人間として、少しは『失点』を取り返しとかないと、あっちに行った時に、お袋に怒られそうだ」

 

「司波の言う通りだ。連盟が近畿地方を攻め終えれば、その矛先が今度は北陸か中国地方に向く―――その前に戦うチャンスが来たことは、僥倖なんだよ

 

 

「まぁ君ら(達也・将輝)がそういうのは織り込み済みだったさ……まさか愛梨から引っ叩かれるとは思わなかったが」

 

頬を擦りながらも、現状に対して戦うものたちを見た刹那は戦略目標を述べる。

 

「正直言えば、俺もどこまで戦えるかは分からん。だが、それでも―――あちら側が取りすぎた勝ち星を、少しは取り戻しておきたい。そんなところだ」

 

「ここで完勝することは、不可能だと想っているのかい刹那?」

 

アルビオンで『調整』した礼装をチェックした幹比古の発言。それに対して頷く。

 

「そもそも、魔術師の戦い、英霊を使役しての戦闘となると、己の持つ原理(セカイ)の優劣と、生命(イノチ)としての強弱が勝敗を分かつからな」

 

「魔術師としてはリズリーリエの方が優秀なのかい?」

 

「そう見たほうがいい。九校戦の時に他者の衣装を一瞬で変更した手際を思い出すと、あれは真祖の御業に近かったからな。そして、使役しているサーヴァントは、ギリシャ神話で有名な『ヘラクレス』あるいは『アルケイデス』だ。当たり前だが、世界的にもメジャーすぎる英雄だから」

 

真祖という言葉に『あーぱー』を思い出した連中の中に、『ぞわり』としたらしき人を見た。

 

だが、それでも戦うと決めた連中ばかりなのだった。

 

「そもそもなんだが、英国としてはここで戦闘を行われることは了承済みなのか?」

 

達也が向けた疑問に答えるに最適なのは―――モードレッドであり、カノジョも重々しく口を開く。

 

「まぁな。裏向きの事情というわけではないが、英国政府としては、あまり『連盟』が日本の魔法師界で台頭することをよく想っていないのさ。ことは、セツナが来訪する前からの話なんだが、元々、英国は《獣》の招来を理解していたんだよ」

 

達也の疑問に答えるモードレッドの顔は、暗いが真剣なものだ。

 

「連盟の工作活動というのは大掛かりなものだった。日本の政治筋にも関わっている人間が多い上に、更に言えばその影響は海外にまで及んでいたんだからな」

 

ブランシュやエガリテだのよりも巧妙に、彼らは外国にシンパサイザーを作り上げていき、その影響は、あまり日本政府及び世界の主要国が関心を向けていない欧州にて、大きくなりすぎていた。

 

「オレが日本に派遣された理由は、アーサー王の聖遺物たる『エクスカリバー』を手に入れることだったが、その他にもあった。それは、連盟がどれだけ《獣》―――真正悪魔を育てあげているのか。それに抗するだけの『チカラ』を、セツナ・トオサカが持っているのか。その調査もあったのさ」

 

モードレッド曰く、ここまで連盟が大きくなれたのは、日本の官公庁の役人の中には、そういった連盟のシンパないし古式魔法師が所属していたということだ。

 

彼らは『魔法協会』が関知していないモグリの魔法師であり、政府が実施している日本の魔法師の海外渡航の自粛要請を、『公的な理由』であっさりスルーしていったのだ。

 

「外務省や防衛省など国家の安全保障に『ダイレクト』に関わるところでなければ、その辺りの採用基準はかなり緩い。これは軍人さんであるミス・キョーコやミス・フローラも耳にはしていたんじゃないかな?」

 

おどけたように、からかうようにレッドはこの中でも珍しい大人2人に話しかけるのだった。

 

「ええ……農水省や経産省……厚労省……特に医療部門というのは、そういう方針という噂は聞いていたわ」

 

今回の渡航の同行者であり地上からのバックアップとして動いてくれていた響子が苦々しく言う。それは外国人の少女に見透かされていたある種の敗北感もあるのだろうが、今はおいておく。

 

結局の所、どれだけ魔法師の就業規制を縛り付けたとしても、その辺りの緩さはどうしても出てしまう。

 

というよりも……。

 

「日本の魔法師協会及び十師族は、政府に従順な態度を取っているという名目で、『組織』としての存続を許されている。

そうなると、海外での護衛役として『魔法師』が必要な状況でも、簡単に連れていけない。かといって、縦割り行政の日本のお役所仕事じゃ、防衛省や公安当局、警察庁に要請を出してから、魔法師の護衛を連れて行くまで時間がかかる」

 

「ならば、最初っから『魔法師』としての能力を持っている人間を職員として雇っておけば、問題は無いということか……」

 

日本の魔法師が海外渡航を禁じられているという状況であっても、別に日本国が鎖国状態というわけではない。

 

魔法師が籠もっていても世界情勢は日々動いている。変化をしている。そして、日本にいれば、非常事態でも魔法師のガードがある。

されど海外に行けば、海外の魔法師の脅威からは無力となる……。

 

かつて20世紀に政情不安な南米にて、ビジネスを起こそうと海外赴任をした日本の企業戦士たちが、地元の反政府ゲリラの手で殺されるなんて、似たような事態はありえる。

 

「そうして古式魔法師(エンシェント)の一派……『シンゴンタチカワリュウ』という連中が、まるで新興宗教のように、とある『女』を教祖のごとく敬うようになってから、役人の渡航で自由を利かせて布教活動も盛んとなり、海外にも信者が増えていくようになったのさ」

 

溜息を突くようにしてから、レッドも戦闘態勢を取るように英霊武装(フュージョンライズ)をした。

画面によると、どうやら連盟の航空戦艦は真っ直ぐに、このサタネルという施設付近に進出しようとしてきていることからの臨戦態勢。

 

「十師族たるアンタたちがここまで―――『キアラ』を始末しなかったのが原因なんだよ。アタシとレティが来た目的は、刹那よりもあの女を始末することだった……」

 

誰もが息を詰まらせ、それを見たレッドは間を置いてから言い直す。

 

「あの女と、真正悪魔(ビースト)など人理破綻現象を再び呼び込もうとするヴァンパイア(人間主義)教徒どもだ。……もっとも、最初のメサイアは刹那の手で抹殺されたわけだが―――」

 

それだけのことを話しただけで疲れたのか、肩を回して、やれやれと溜息を突いた。

 

「―――以上を以て英国政府の立場は明瞭さ。そもそも、あんな『空飛ぶ船』に好き勝手やらせるほど、オレも郷土愛が無い人間じゃねえんだよ!!」

 

結論・さっさと戦いたい。

 

そういうことだった。掌に拳を何度もぶつけている辺りに、とんだウォーモンガーであり、女は全員ファイターであることを認識する。

 

「んじゃ杞憂は無いな―――ならば行動しようかい」

 

全員の反応を見てから、日本の魔法科高校愚連隊は動く。

 

その陣容は……。

 

一高

遠坂刹那、司波達也、司波深雪、アンジェリーナ・クドウ・シールズ、西城レオンハルト、千葉エリカ、柴田美月、吉田幹比古

 

三高

一条将輝、吉祥寺真紅郎、一色愛梨、十七夜栞、四十九院沓子

 

留学生組

モードレッド・ブラックモア、レティシア・ダンクルベール

 

 

以上で動き出すのだが……。

 

「正直言えば私も同行したいんだが……」

 

金髪の美人ハーフ……もはやサゲマン(響子)の副官みたいになっている一色華蘭が、不安そうに言ってくる。

 

「フローラさん、正式任官も近いでしょ? 今回の『日本の魔法師の学生たちによるアルビオン探索』でのお目付け役というキャリアを汚させるのは、少々気の毒ですよ」

 

「むぅ……」

 

少女のように膨れる一色家の長女。色々と気苦労が多いというよりも、妹を心配している女性を安堵させるには、今の自分は何も言えなかったのだ。

 

そして―――闘いは始まる……。

 

 

 

 

……サタネルから出発。『神牛』に乗って『超特急』でやってきた愚連隊は、相手が『開けた土地』にて待ち構えていたことに、正直どうしたものかと思う。

 

 

「まさか、『ここ』を決戦場所に選ぶとはな……」

 

「ナニカいわくがあるの?」

 

神牛の背中に乗りながら姉貴の意図など考えていた刹那に、リーナは話しかけてきた。

 

今回の彼女は自分の企みにあまり積極的ではない。それは当然だろう。

 

血を同じくする姉弟が殺し合うなど、いままで刹那がリーナに対して言ってきた『かぞくだいじに』とは真逆すぎる対応だからだ。

 

だからこその『心変わり』を誘発せんと、色々と語らせようとしているのは理解していた。

 

 

 

「ここは緯度経度、地脈の状況から、俺の世界では『スラー』があった場所なんだ」

 

ノーリッジの懐かしき故郷。何一つ痕跡など無いし、築かれたものなど無いのだが―――それでも吹き付ける風が、郷愁(ノスタルジア)を誘う。

 

「さて、勢い込んでやってきたが、どうしたものかな―――」

 

郷愁から現実に戻り、対策を考えようとした時に……。

 

『天牛から降りてきなさい。言い訳ぐらいは聞いてあげるわよ』

 

再び、同族であることを利用したテレパシーが放たれて、刹那の頭を刺激した。

 

当然、周囲には聞こえていないのだが、それでも変化はすぐさまであった。

 

三重の魔法陣―――立体構造で繋がれたそれが地上に現れて、そこから明確な像が生まれる。

 

薄く桃色がかった銀色の髪。その量は、恐らく後ろにある編み込まれた『おさげ』の位置が腰を超えて、膝辺りまであるところから察する。

 

その容貌は正しく人間離れしたものだ。

造形の確かさという意味では、非の打ち所がない。そう表現することしか出来ない。

 

なにかひとつを足してもいけないし、なにかひとつを欠いてもいけない。

 

人の領域を超えた、自然にして自然ならざる黄金分割の美に包まれていた。

 

向けている双眸も澄んだ水面を思わせながらも、落陽の光にも似た真紅の瞳―――吸い込まれそうだ。

 

(当然か。彼女はそういう存在なんだ)

 

その有り様は受肉した精霊に近い。いまさらながら、とんでもない美女だ。

 

着ている戦衣装(ドレス)が、赤原礼装を基調としながらも、黒のミニスカートに、黒のニーソックスという……なんとも『アレ』なものでなければ、呑まれていたかもしれないのだから……。

 

 

だが、そこには―――英霊エミヤに連なる存在という証があったのだ。

 

感想を述べながらも草原に降り立った刹那は挑発的に口を開くことにした。

 

「英国に不法入国の上に領海侵犯・領空侵犯……そこまでして、どうしたんだ姉貴。俺の顔でも見たかったか?」

 

挑発的な言葉を受けたリズリーリエは、片目を跳ね上げて、刹那を睨みつける。

 

「うそぶく男になるんじゃないわね刹那。要件は一つよ―――アーサー王の魔術基盤の打ち付けを停止させなさい」

 

その言葉に、予想通りにして計画通りと感じる。同時に、観測班から思念で見えている戦力を聞かされて、叩き潰すことを決定した。

 

「断る。ビースト現象を解決する上で、俺が採った次善の策は、人理破綻の解消となる。同時に、俺にとっても有意義な魔術基盤を作れて大満足なわけだ」

 

「アルトリア・ペンドラゴンに思うところがあるメンドウな男の割に、そういうことは平然とするのか」

 

「まぁね。俺という人間を見誤っているだけさ、アナタは―――神霊基盤設置を邪魔すれば、こうしてやってくると見越していたけれどな」

 

ふぅ……どちらが、あるいはどちらもが吐き出した溜息が、草原の風に溶け込む。

 

姉弟の会話の割には、傍から聞いている限り他人のようにも聞こえるのは、血の繋がりよりも育ってきた環境ゆえだろう。

 

 

互いに眼を瞑っている。少し俯き気味に構えたそれは、まるで撃鉄を起こす前の銃。

 

倒すものと倒されるもの。

 

その境界を刻むべく、互いは互いを正面から射抜(つらぬ)いた。

 

互いの眼球に変化が現れる。

 

魔眼―――最速のシングルアクション(一工程)、視線による術式投射が相手を穿とうと、相手の像を正確に見ようとしている。

 

リズリーリエの魔眼は、本来のものよりも禍々しい深紅色―――に金色の線が走っている。

 

希少な魔猫眼(キャッツアイ)。魅了に特化したそれは、平均以上の魔術師を戒めるのに間違いなく十分すぎるものだ。

 

しかし、刹那もまた魔眼持ち。

 

その眼が様々な色彩を持ちながら変化をしていく。

七輝の魔眼(アウロラ・カーバンクル)

 

次から次へと真っ白なキャンバスに色が塗りつけられるがごとく、眼球が多彩な変化を見せていき―――。

 

衝突する視線(まがん)。お互いを縛り上げようとする視線は交錯しあい。

 

やがて決着を見る。

 

「―――!!」

 

苦衷に歪む女の顔。

 

戒めの鎖は……リズリーリエに掛けられた。

 

胸に矢を穿たれるがごとき感覚が、徐々に身体の末端にまで及んでいく。

 

刹那の眼は既に異質なる変化をしていた。

 

(片目に(ペンタクル)、片目に円環(サークル)……ミクロコスモスとマクロコスモスを作り上げている!!)

 

リズリーリエの驚愕。この弟は、女神の権能の如きものを魔眼に作り上げていたのだ。

一つの小宇宙にも匹敵する圧力がリズリーリエに掛けられる。

 

リズだからこそ耐えられているだけであり、他の人間であれば、このヴィナス・ドライバー(銀河級女神)の圧の前に、廃人どころか、一瞬にして『塩の柱』になること確実だろう。

 

しかし、視線での穿ち合いで終わらせられなかったことは、刹那にとっても予想外。この魔眼はある意味、刹那の『とっておき』であった。

 

バロールの魔眼よりもスマートではないが、それでもこの圧を前にして崩れない姉を見て決意する。

 

このまま打ち合いに徹していれば、どこかで『横槍』が入る。滞空している船の連中も介入する隙を伺っている。

 

その前に―――――――。

 

「遠坂流ガンド術奥義『極死無双』!」

 

絶対死の呪いを叩き込む―――のだったが!

 

「リズお嬢様を、これ以上害させるわけにはいかない!!」

 

視線の交錯する狭間。ガンドの軌道に現れた2mを優に超える巨漢―――ヘラクレスだかアルケイデスが現れた。

 

霊体化を解いたサーヴァントが、地面と『空間』に振動を与えながら現出を果たした影響で、地面が割れる。

 

魔眼とガンドの連射をその『衣服』で受けきったアルケイデスは、割れた地面、隆起する大地をものともせずに、こちらに向かってくる。

 

「お虎!!!」

「――――――承知!!!」

 

瞬間、こちらも霊体化を解いてサーヴァントを現出させる。体格差は歴然の女身のサーヴァントだが、そんなことは何の脅威にも感じないウォーモンガーが向かう。

 

その一方で、自分の中からライダー……アマゾネスの女王が。

 

『出せぇっ!! 出せっ!! 出せっー!』

 

……と狂ったように言っている気がする。

 

まぁ因縁は分からなくもないが、あまり『ノスタルジー』で戦わないで欲しいと思うのであった。

 

『だまれっ! アマゾネス!!』とランサー……影の国の女王と言い争う様子が。コンマゼロ秒以下の刹那の世界(固有結界)で展開されている内に――――。

 

 

御首級(みしるし)―――いただく!!!」

 

「貴様に取られるほど易いものではないぞ!! 人心解さぬ、仏虎よ!!」

 

巨大な石剣を上段から振るう大英雄と、お虎の下から突き上げるような槍が激突しあい。

 

異次元の武芸者の武合が何かの合図であったかのように、船から連盟の戦力が地上に転移して、巨牛―――グガランナの背の上から愚連隊が降りてきて、乱戦へと縺れ込む……。

 

 

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