魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~   作:無淵玄白

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衝突する魔眼と魔眼―――打ち勝ったのは―――刹那の方であった。

苦衷に歪む女の顔、次いで―――魔術戦に移行するはずの戦いが……全く始まらなかった。

それどころか。

「ど、どうしたんだ刹那は、全く動かないぞ?」

「いつまであの魔眼投射のポーズを取っているんだ?」

横ピースのような仕草で魔眼を開いている刹那に後ろの「うし」に乗っている面子は全員、疑問符を覚えるのであった。

そして止まっている刹那は刹那で色々と大変だったのだ。

(ううっ、動けん! 魔眼投射を終えたいのに、一ヶ月間もこのポーズのままだったから身体が固まってまるで動けん!! 魔眼が開いたままで眼がしょぼしょぼマンだ。恨むぜ無淵玄白のむぶち(?)のヤロー )

そう汗混じりに考えていたのだが、固まった身体でも何となく、後ろにいるリーナを見ると……。


「はふーん♥ ワタシたちのしましょしましょ♥はじめて♥しましょ! を客観的に見ると、こんな風に見えちゃうのネ♪ はじめては夜闇の中、やさしく抱きしめてくれたネ♥」

「くぎゅっ!! 戦闘の真っ最中になんちゅーもん見ているんだ!! つーか、なんでお袋憑依サーヴァント揃い踏みになっているんだよ!?」

端末に映し出された映像をガン見しているサーヴァントのビジュアルが全員、刹那の母似であることに、もう居たたまれない。

息子として母親に情事を見られるこの恥ずかしさ。嬉しさなんて無いのが普通なのに……。

「血は争えないってことかしら? 全く、親子揃って『こう』なんだから」

どんなことが若き日の両親にあったのかは知れないが、そういったことの集大成が、自分なのだ。

眼を細めつつもガッツリ息子の情事を見ているのに、呆れ返るような言動をする母 遠坂凛(×4)に問いたい気分を抑えつつも、振り返りリズリーリエを見ると……。

(真っ赤っか!!)

しかも鼻血を出している所を見ると、こういう系統―――猥談とかはだめな人なのかもしれない。

「ふふふ、まさかこんな精神攻撃をしてくるとは思っていなかったわ……けれどもそんなことを言っている間に! 身体は解れて目はロートの目薬でも差したかのように、回復してるわよ!!」

「ホ、ホントだ!!」

鼻を押さえているリズ義姉に指摘されて、それを認識したあとには―――。

「では改めてかかってきなさい!! この前書きのバカ話を忘れつつ!!」

「うおおー!! この半端な『天衣の聖女と魔宝の後継』〜4.5〜とでも言うべき話はなかったことにしてください!!」







というわけで往年のキン肉マンネタ。銀魂の『二年後にジャボンディ諸島で』と迷いましたが、まぁともあれ少々短いですが、新話お送りします。前書き含めればそれなりなんですけどね(苦笑)


春休み編『冬木御三家の末裔』

 

サーヴァント戦に移行したことを理解した刹那は、即座にマスター殺しを行うべくリズリーリエに突っかかる。

 

魔眼による戒めは、まだハーフホムンクルスを苛んでいるのか、少しだけ辛そうな様子だが、そこで情けを持つわけにいかない。

 

「投影幻創」(トレースオン)

 

生み出されたるは、柄から穂先まで水晶のような透過物質で鍛造された、さしずめ『クリスタルスピア』とでも言うべきもので、うつむき加減のリズリーリエを刺し貫くべく―――。

 

寸前でその顔がスピアの穂先に見えたことで、スピアを引いた瞬間、細い光条のレーザーがリズリーリエの胸元から何本も放たれる。

 

「不意打ちとは何とも―――!!」

 

近寄る敵を一掃する勢いで放たれるレーザースプレーとでも言うべきものを、スピアを風車のように回転させることで跳ね返す(・・・・)

 

「―――エミヤ的だな! 義姉さん!!」

 

「アンタこそ! コレを予想してそんな武器を持ったんでしょうが!!」

 

リズの胸から何かの奇術よろしく鳩を出すならぬ、髪仕立ての鳥―――エンゲルリート。複雑な綾目を紡いで作られた小鳥が、羽ばたきながらリズの豊かな胸から大量に出てくる。

 

そして、その小鳥はレーザーを次から次へと吐き出してくる。同時に全身に奔る魔術回路が、恐ろしく精緻に魔力を精製する。

 

その様子は完全に人間離れしており、地力を察する。

そして、更に術が行使される。

 

「トレース・オン!」

 

こちらの意趣返しなのか、クリスタルで鍛造された双剣を手にするリズ。

 

魔法師風に言えばマルチキャスト、パラレルキャストなものだが、魔術師ならば特に思わない。特に道具・触媒もなしにそういうことが出来る連中は多い。

 

だが紡がれた魔力量や多数使用する術式の難度次第では、それは驚嘆する並列作動術式として瞠目する。

 

「行くわよ!!!」

 

レーザー鳥に援護射撃させた上での突っかかり、すでに魔眼の影響は脱している様子だ。

 

しかし―――。

 

「―――『グガランナ』!! 援護してくれ!!」

 

ぶぉおおおお!!!!

 

呼びかけに応じて、後ろにいた小山ほどの体躯はある巨牛が叫んだ。

 

まるで大地を鳴動させんがほどの圧が『空間』を揺らして、一直線に走る蒼雷が、リズの鳥たちを焼き尽くした。

 

「アルビオンで契約した魔獣か!?」

 

「そ、その通り! アンタに言うまでもないが『神秘』はより強い『神秘』の前に屈する!! 封印指定のアオザキも、一時期は『金狼』と契約していたらしいからな!!」

 

リズの驚愕混じりの質問に対して、少しだけ動揺しつつも応えた刹那は、クリスタルスピアを投げつける。

 

「壊れた幻想」(ブロークンファンタズム)

 

いきなりな武器爆破、水晶の双剣で打ち払おうとしたリズにとっては不意打ちだったはずが―――。

 

「セツナ! 上!!」

 

リーナの警告を受けると、そこには跳躍で眼前爆破を躱していたリズの姿が。

 

必殺のタイミングであったが、動揺は少ない。

 

返すように落下軌道にあるリズから双剣が投擲される。踏みしめる足場もないというのに、次から次へと剣を打ち出す。

 

強烈なスローイング、放たれる魔力剣の威力に、たまらず回避及び防御。同時に剣を作り出す。

 

地面を陥没させて盛大に土煙をあげさせるそれを前にして無手ではまずい。作り出した長剣で弾きながら落下軌道にあるリズを狙う。

 

下着が見えることもお構いなしなのだろうが、少しだけ気になる。

 

そして落下の勢いと同時に振り下ろす剣がーーー。

 

「ハアアアア!!」

 

裂帛の勢いで向かうそれを前にして、迎撃の刃を振り上げる。

 

一髪千鈞を引く激突は―――振り上げた剣の破断で知れた。

 

落下してきた体重を受け止めたことで、しびれる身体を引きずるように後退。

 

その手に握る得物を見せびらかすように、リズは構えてくる。

 

これ(・・)が何であるか、理解できる刹那?」

     

「天下に仇する無双の剣にして、エミヤの到達点の一つ。千子村正(せんじむらまさ)……」

 

ビーストを抹殺した際に、『神域鍛造投影』で何とか手にすることが出来た『宝具』……鍔も柄もない。素のままの刃を持つリズ。

 

それを見ながらも、魔術回路の回転を止めることはしない。

 

「アナタにはアルトマ・ビーストを倒した際のみに造れたものも、私にとっては、こういうことよ―――さて、それでも刃向かうの?」

 

「あたり前田のクラッカー。力に屈したらば漢の生き方じゃないんだよ。そしてこの闘いは、オレ一人の私戦じゃない―――白旗をあげるには早いんだ」

 

言いながら干将莫耶の陽剣の方を持ち、陰剣の方をリーナに渡す。

 

「―――何より、アンタがエミヤの一つの到達点を手にしてくれて嬉しいぐらいだ。外敵に打ち勝つべき幻想を投影しても、己自身が作り出した『最強の幻想』に相対は出来ない―――オヤジを超えるために鍛ち出してくれる……オレが親父を―――衛宮士郎(剣製)を超えるための……刹那(オレ)幻想(ほうぐ)で!!」

 

それは私戦じゃないだろうか? と苦笑しながらリーナは想うも、刹那の人生で最後まで超えられなかった壁としてあったものが、目の前に出来たようなものだろう。

 

そう理解したからこそ――――。

 

「アナタだけじゃないわ。『ワタシたち』ででしょ?」

 

「―――全くもってその通りだよ♪」

 

刹那が構えていた干将にリーナは己の持つ莫耶を当てて、気付けの金属音が響いた。

 

「リズお義姉さん! 悪いケレド! この場で倒させてもらいますヨ! 主にワタシのハトコたちの安寧のためにも!!」

 

「そう言えば、アナタも九島の人間だったわね。主力を引きずり出したからといって、『居残り戦力』が弱体だと思われるのは心外ね」

 

「「―――」」

 

その言葉に2人して心臓を掴まれた気分になるも、今は目の前のことに集中するしか無い。

 

「さて―――ではさっさとインストールなりポゼッションするなりしなさい。素の状態で私に勝てるとは思っていないでしょ」

 

それは当然だ。だが、その言葉が放たれた瞬間、刹那の魔眼の色が灰色となりて、リーナを『変身』させる。

 

事前情報―――九校戦やその他の戦闘において、彼女が使用してきた英霊を諳んじれていたリズリーリエだが……それに少しばかり変な想いを覚える。

 

(この子は単体でも『夢幻召喚』などもこなせる子だったはず。そして使うのは、ランサークラスが主)

 

ならば、何故―――いまこの場で、刹那による灰かぶりの術式を使う必要がある?

 

常ならぬ危機感がリズに走り、優雅とか闘いの作法とは程遠いが、剣を振るい衝撃と魔力の混合波を浴びせたが。

 

「オレの嫁のドレスアップを邪魔するなよ!!」

 

同じく剣を振るって相殺されてしまう。その間にも、リーナのドレスアップは完了していき、そして―――。

 

「リズお嬢様の手を煩わせるわけにはいかない!!」

 

周囲にホムンクルス兵が寄ってきた時に―――リーナは。

 

「ワタシに不用意に近づくと、冥界送りにしちゃうんだから―――!!!」

 

―――持っていた『槍』であり『牢獄』を地面に突き刺す。

 

そして、赤雷が辺り一面に地面から吹き出す。

 

ホムンクルス兵とて、それなりどころか尋常の魔術師・魔法師などぶっちぎった力を持っていたはず。遇しかた次第ではサーヴァントともやりあえたはずだ。

 

しかし、リーナに掛けた『霊基』は、そういった枠組みにはなかった。

 

「冥界の神……エレシュキガル!! 神霊サーヴァントを宿したのか!?」

 

「モトモト、ワタシはブリュンヒルデとか、ワルキューレなど『格落ち』のカミサマとかに協力されていたからネ!

セツナのマム! リンさんから、縁を譲り受けていたのよ!! 言うなれば―――嫁入り道具!! スピリットオブアース!!」

 

ズルい!!! という数名のオーラを感じる発言だが、言葉通りに変身したリーナの姿は、あの時に見たエレシュキガル・リンのものに似ている。

 

そして霊基も違わないものだ。

 

「ケレド……セツナが「灰の魔眼」を使って、ようやく出来るんですよネ」

 

「ぐぉおおおお! し、しびれた!! お嬢様! このセラスの仇をどうか取ってください!!!」

 

苦笑しながらネタバレするリーナ。しかし放たれたメスラムタエア(宝具)の威力は、周囲にて地に伏せた従者たちから、お察しである。

 

ホムンクルスがぴくぴくと、生体反応よろしく動いているのが生々しい限り。

 

「面白いことをする……だが、それだけではね!!」

 

数多の剣群を一斉に自分の周囲に展開するリズ。それら全てが宝具か、それに準じる概念武装だ。

 

応じるように刹那も―――。

 

投影、弦奏(トレース・オン)――――全投影弦奏待機(シンフォギアソード)

 

魔術回路の猛りのままに、武装展開を果たす。

 

数ではリズに分があり、各武器の質でもリズに軍配が上がる。

 

だが、それでも―――――。

 

(見せてやるぜアインツベルンのエミヤ。オレが体得した剣製の秘奥を!!)

 

手を振り上げる/手を振り上げる

 

互いの手に応じて、剣が射出の態勢を取る。

 

相手を見据える/相手を見つめる

 

そして――――――衛宮の魔術を受け継ぐ魔術師2つの剣製が――――――――。

 

「Shoot!!!」/「Fliegen!!!」

 

振り下ろした手に従いて撃ち出された!

 

激突する剣、槍、斧、槍、剣、剣、大剣、長剣、小剣、細剣、大剣、大剣――――数えるのも馬鹿らしくなるほどに、一つ一つを吟味するのすら阿呆らしくなる魔力の猛りを持った数多の名工が一回の生涯で鍛造できるかどうか分からぬ業物がぶつかりあい盛大に爆裂四散していく。

 

そんな砲撃・爆撃の戦禍の中をものともせずに突っ走る影―――剣製の魔術師は、英雄王のように不動で武器を打ち出すだけではない。

 

その身体をフルに駆動させて相手を切り捨てようと走り出す。

 

撃ち出される剣とは別に自分にとって握りやすい剣を手に―――。

 

「アインツベルン!!」

 

「トオサカ!!」

 

―――冬木御三家の末裔にして、エミヤの姉弟のかなしき剣戟は始まる……。

 

 

 

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