魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~   作:無淵玄白

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春休み編『終結する戦い』

 

 

「重要な役目ね―――キチンとこなさないと!」

 

『意気込むのはいいが、君の場合、全力でやるよりも八割の力で十分だから』

 

あんまりはりきりすぎると、斜め上の結果を齎す女。それこそが、アンジェリーナ・クドウ・シールズなのである。

 

その軌道修正をするのが、刹那の役目だったりする。

 

カレイドアローという状態になったオニキスを手に、空を滑空していたリーナは、遂に最上の射撃ポイントに着いた。

 

「イマサラながらとんでもないわよネー……全ての無機物を消滅させるが、有機物ーーー特に生物に関しては、その消滅の対象外だなんて」

 

『まぁ魔法の一端だからねー。さて、おしゃべりはここまでにしておこう。見えてきたぞ』

 

空中にて滞空しながら船を狙うべく、弓弦を引っ張る。その行為の果てに、戦闘の終息・終結があると信じたい―――。

 

(何より、セツナのお母さん(マム)……泣いているのよね……)

 

某忍者漫画の義像巨人のような三柱の女神の内の一柱……刹那が信奉するそれの眼からは、涙が流れているようにリーナには見えた。

 

こんな悲しすぎる戦いを何とか終わらせてほしい。その気持ちで、リーナはきつく絞った弓弦を解き放ち、ブリテン島の蒼穹(そら)に、―――光の柱が生み出された。

 

 

「氷雪八卦!!!―――」

 

巨大な棍棒……九校戦、横浜戦争など大きな『場』で、度々使っていた桜色の棒杖(ワンド)を改良したもので、シャドウサーヴァントをぶっ叩く司波深雪が、草原にて一際目立つ。

 

棍棒を振るう度に吹かれる桜色の雪という風雅なものが、ジャポニズム溢れるサクラフブキ(桜吹雪)と多くの欧米人に誤解されながらも、先陣を切る深雪に数名の魔法師たちが続く。

 

「命は取らねぇ!! が、少々大人しくしてもらうぜ!!」

 

威勢のいい言葉で連盟の陣に入り込んだレッドの剣が、朱雷をまとわせながら、相手の呪符など触媒を叩き切り、防御礼装を病葉に変えていく。

 

「ミヅキ、ミキヒコ頼む!!」

 

「はい! 大人しくしてもらいますよ!!」

 

珍しい組み合わせだが、それでも後衛としての役割を忘れていない柴田美月が鏡から『鎖』を出したあとには、鎖自体が意志を持つかのように自動的に拘束していく。

 

「くそっ!! 簡単にやらせはせんぞ!!!」

 

サーヴァントの維持だけで精一杯な面子もいたが、それでも手練れはいるわけで、サーヴァントたちを戦わせつつも術行使をしてくる術者もいた。

 

美月特有のバインド(拘束)が協会員たちを無力化してくる中、細やかな術で対抗してくる。

 

「させません!!!」

 

美月の邪魔をさせまいと幹比古は術を行使する。迦楼羅の炎を召喚しての細やかな火炎球(ファイアボール)が、幹比古の周囲を飛び回るように出現してから、高速で移動。

 

しかし連盟の術者も対抗術で何とかするも、ここまで踏み込まれた時点で敗着も同然だ。

 

「主よ!! この地を穢す魔を清め給え!!!」

 

更にレティシアの浄化術で、連盟が地面に敷いていた魔力補給陣が破却される。

 

あちこちでガラスが崩れるような音が響き、体内魔力(オド)が頼りになるも、連盟はそれでも崩れない。

 

踏み込んだ自分たちを相手に『粘る』。彼らの意志を手折るには、遠いようだ。

 

『船』の沈没ならぬ落着。そしてリズリーリエの敗北。それが必要だと思っていると―――。

 

『キャバルリィ―――ドゥルヒブルフ ウント ロース!!』

 

特徴的な格好をした……恐らくメイドだろう集団が、各々の武器を手に、魔法科高校愚連隊の側面に展開した。

 

距離は離れているが、横っ腹に付かれたことに少しだけ瞠目する。

 

「アインツベルンのホムンクルス……リーナが戦闘不能にしたはずなのに!!」

 

自動治癒(オートリジェネ)でもあったのか、整列して各々の武器を構える様子。

 

弓または弩を手にしているものが複数いることを確認。それがただの『矢』を一、二本飛ばすならば、まだ何とでも成るが、魔術師の常識は魔法師の常識を覆すもの。

 

自分たちの知識だけでは測れない。

 

決断は、敵の方が早かった。指揮官を担うホムンクルスが、よく通る声で弓隊に指示を出した。

 

並列での一斉射撃。いつぞや同じくホムンクルスたちから受けたレーザービームよりは、威力は劣るだろうが。

 

(数が多い!)

 

打ち込まれた矢弾の数を数える前に、レオは側面から降るものに対して防壁を張った。

 

巨大なカイトシールドを思わせる魔力の盾が、攻撃をシャットアウトする。

 

十文字家の多重防壁『ファランクス』のようにしずやかなものではないが、視覚的に敵を威圧することで、メンタルダメージの効果も期せずして与えているレオの攻撃。

 

ある程度は矢をコントロールできるとはいえ―――。

 

レオのシールドパリィングは、達者な方だ。

 

その防御力の下……。

 

「やれっ! レッド、エリカ!!」

 

「任せとけ!!」「了解!!」

 

剣士2人に『遠距離攻撃』を担わせる。言われた剣士2人はレオの左右に展開して、魔力を剣にチャージ。振り下ろしたことで、斬撃に合わせた光波と光条がホムンクルス集団を直撃。しかし、あちらも防御陣を展開している。

 

全てを防がれたわけではないが、中々の硬さであり、すかさず―――サーヴァント達が展開しようとした瞬間。

 

 

「―――お嬢様!!!!」

 

ホムンクルスたちの中から悲痛な声が響く。その声の原因は―――。

 

「勝ったのか刹那……」

 

少しだけ安堵する幹比古。雪上に落ちるリズリーリエの姿。血に塗れて、全身に刃物を突き刺されたところを目撃。

 

次いで遅れてではあるが、刹那も落下。その容貌は―――第五次聖杯戦争のサーヴァント。彼の母が召喚したアーチャー(英霊エミヤ)に似ていた。

 

ここからでは聞こえにくいが、何かを言い合っている様子。敗北を認めろ的な言葉だろうか―――。

 

そして―――。更に連盟を窮地に陥れる事態を幹比古は見た。上空で広がる白光(びゃっこう)

 

空中にいたリーナによる艦船に対する破壊行動。

光は違えることなく、空中戦艦を破壊して―――船員たちを無事に済ませていた。

 

事前に説明を受けていたとはいえ、非常識すぎる結果に頭を痛めつつも、連盟にとっての敗着の一手となるはずだと思えた。

 

帰る手段をなくした訳ではあるまいが、それでも……。

 

と―――思っていると、『魔法』による保護を無理やり引きちぎった男が、黒竜の頭に乗りながらやってくる。

 

「あれは確か……霧晒―――」

 

古式魔法の中でも聞いたことがある、龍という属性の扱いに長けた家の男。モノリスコードでは十文字克人と一騎打ちを演じた男。

 

そして、九校戦の前の騒動でも刹那とちょっとした戦いを演じた男が、地上に落ちてくると同時に―――。

 

「リズを助ける!! そいつらを足止めしておいてくれ!!」

 

こちらなど眼中に無いように声を張り上げて、その言葉で、連盟員たちに力が戻るかのようだ。

 

そして―――刹那の方にサーヴァント・ヴリトラを伴いながら進んでいく。

 

その進撃する姿に、傷を負いながら着いていくものも増える。どうやらあの男が連盟の副官とでもいうべきもののようだ。

 

瞬間の判断が要求される中で、刹那はこう言っていたことを幹比古は思い出す。

 

―――あちら側が取りすぎた勝ち星を、少しは取り戻しておきたい―――

 

完勝することは不可能だと言っていたのは、こういうことなのだろう。いわゆる『天運』が、リズリーリエ及び連盟にはまだ存在しているのだと……。

 

それならば、いまの幹比古達に出来ることは……。

 

「申し訳ないが、しばらくの間の術行使を不能にさせてもらいますよ!!!」

 

「吉田幹比古!!!」

 

「名前を存じていただき何より! 天地玄宗、万気本根、万精駆逐」

 

言葉に従い、数多もの霊符を召喚しながら、それを拘束した人間たちに貼り付けていく。霊符はたちまち連盟員の手や顔に張り付き、何枚も何枚も重なって、黄色いミイラのようにその体を縛り上げてしまった。

 

ただでさえ身体と魔力活動を拘束されていたところに、術式の一定期間封印をこなしたところで、刹那の方で戦いが始まる……それこそが、終結の合図となる……。

 

 

 

突撃(Los)突撃(ロース)!! 突撃(Los)――――!!! 蹴散らしなさいバーサーカー!!!」

 

『■■■■■――――!!!』

 

いつの間にかシロクマから2m以上の巨漢―――半裸のマッチョの肩に乗っかっているシトナイというサーヴァント。その姿は正しく第五次聖杯戦争のサーヴァント。

 

ヘラクレス=バーサーカーの姿。

 

迫りくるそれを見ながらも、それよりもはやくこちらにやってきたお虎が傷だらけの姿で語る。

 

「申し訳ありませんマスター、仕留めきれませんでした」

 

「アルケイデスは、大英雄の武技を体現したクラス。そしてヘラクレスは、大英雄の凶暴性を体現したクラス。―――お虎にゃ荷が重かったかうわっぷ!!」

 

こちらの言葉に抗議するように、行人包という面相を隠すもの(ズタボロ)を投げてくるが、それだけでは終わらないのが彼女である。

 

「私とていずれは、ぱわーあっぷ(超霊基変更)する時が来ましょう。その時が来た場合、刹那は私にドッキドキですよ―――!!」

 

なんて単純な未来予想図。振り向いた笑顔で『ダブルピース』をしたお虎に―――。

 

「余所見をしていてええのかえ?」

 

鋭い金剛杵―――雷を纏うものが、背中を見せているお虎に対して撃ち出された。

 

「中々の奇襲ですが―――少々、気負いがすぎますねぇヴリトラ!!」

 

しかし金剛杵を撃ち落とした『4つ』の得物、景虎の背後に突き立つものを振り向きざま掴み取った景虎は、立ち向かう。

 

「セツナ!!」

 

「よくやってくれた。これで何とかなるさ」

 

「な、ナルの?」

 

「ああ」

 

不安いっぱいの顔で降りてきたリーナを安堵させておきながら、念話で景虎には『牽制』だけを指示する

 

軍略上手の戦国武将だけにその『意図』を理解したらしく、朱と蒼で色分けされた両穂槍、黄金の穂先を除けば、柄から留め具付近の意匠まで紅で出来た槍を持ち、ヴリトラと戦う。

 

その様子は慣れ親しんだ得物を使うかのように軽快なものだった。というか刹那も使ってみたのだが、かなり使い勝手がいい武器であったことは間違いない。

 

突くというよりも、薙ぎ払うことに特化した槍が『回転』させやすい。

 

「アタシの宝具がパクられた上に、JKとは真逆のガチガチの女武者に使われてるし! 三明の宝剣を好き勝手使わないでほしいんだケド!!」

 

その様子に物申すは、当然のごとく黒ギャルサンタであったりした。同じく双槍の使い手たるスカサハに追い回されながらも、そういうツッコミは忘れていない。

 

「私、『今年』は水着☆5(?)だけでなく『さんたくろーす』も狙っちゃってます! 鈴鹿御前!! アナタの宝具から『ねくすとさんたくろーす』への足がかりを私は掴む!!」

 

「「野望がデカすぎる!!!!」」

 

バックにがびーん! という擬音でもつきそうなツッコミを入れるは、当の鈴鹿御前だけでなく、何故か遠くの方で盛大に豪快に棍棒を振るって大和魂見せてやるな深雪もであったりした。

 

なんでさ。

 

そう想いながらも、猛烈な勢いでやってくるヘラクレスに対して、女神の巨大手(ビッグハンド)が、ヘラクレスを止めた。

 

どがん!!! という盛大な音で止めたあとには、指でヘラクレスを掴もうとする女神の姿。

 

五指で確実にヘラクレスを掴み取ってやろうとする姿を見ると、あれだけ巨大だったヘラクレスも、小人にしか見えない。

 

「あんのツインテール!! バーサーカーに腰を掴まれて拘束されていたことを根に持っていたな!!」

 

「おふくろがそんな小さい女なわけあるか!」

 

怒り心頭のままに、おふくろの『たおやかな巨大指』を剣で切り裂こうとするシトナイに返しながら、魔弾で防ごうとする。

 

「お前はまだリン・トオサカ(貧乏お嬢)を知らない!!!」

 

こちらの攻撃を脅威と見たのか、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンの疑似サーヴァント。シトナイと呼ばれるアイヌの神様が、無骨な屶剣で切り裂いた。

 

その間隙を狙って、リーナがレーザービームを放つ。

 

「このっ!!!」

 

斬り終わりの隙を狙ったそれが直撃せんとしたが、流石はサーヴァントとでもいうべきか、身体を無理やり振り回したそれで切り裂かれた。

 

しかし、返す刀を振り下ろすことで氷列が波のように発生する。

すかさず防御陣を展開。炎の魔法陣は氷を消滅させた上でその勢いを殺した。

 

「――――ッ!!」

 

しかし、流石にここまでの大魔術の展開に、魔術回路が悲鳴を上げる。

 

女神体が不安定になりつつあるが……。

 

『マスター!! キミの魔力供給タンクがやってきたぞ!』

 

「そりゃ助かるが……もういいんだな?」

 

魔法の杖がやってきたことが決定打になったのか、リズリーリエは、刹那が寄越したギアススクロールにサインしていた。目線だけで問うと、疲れたかのように声を届けてくる。

 

「ええ……これ以上、みんなを傷つけさせるわけにはいかないもの―――……全員、これ以上の戦闘は終わりよ。撤収準備に入りなさい」

 

ギアススクロールにサインすると拘束していた破魔武装が無くなり、それでも五体満足とはいえないリズを回復させるべく、霧晒という男が駆け寄る。

 

「……無念です」

 

だが、ここでの戦闘終結は彼としても不本意ではあったが、それでもこちらが追撃してこないということが、今は判断材料になったようだ。

 

「私達は九島など現代魔法師……十師族の連中に負けたわけじゃないわ。刹那……アナタ一人に負けたのよ」

 

「そうかい」

 

負け惜しみではあるだろう。ただ恨み言でもあるので、とりあえずは受け取っておくことにした。

 

「戦力を残してきたとはいえ、カラになった京都・奈良にも攻略組が来ているのでしょうね……」

 

その通りだった。琢磨や光宣がどれだけ上手くやれたかはまだ分からないが、ともあれ……。

 

あまりこちらも、優位を保てているわけではなさそうだ。

 

「二隻目の航空戦艦……!?」

 

再び、この草原に大きな影が差した。先程リーナが消去した船と同じタイプのものが、悠々と飛んできたからだ。

 

これにもサーヴァントが乗っているか、それともサーヴァント級の実力者がいるかは不明だが……。

 

「回収部隊ぐらいは―――進発させておいたのよ」

 

その言葉だけで『賭け』には出れないのだ。

 

抱き上げられながら不敵な笑みを浮かべるリズリーリエ。戦力予測としては、少々……こちらにとって甘かったようだ。

 

「―――この敗北はいずれ濯ぐわ。遠坂(トオサカ)

 

「ああ、その時を待っているさアインツベルン。霧晒さん。その人のこと、お願いします」

 

その言葉を恥知らずなものと思ったのか、それとも何か別の感情があったのか……一礼だけをしてから、神代秘術連盟は撤収を開始するのだった。

 

 

戦い終わって後始末を終えると、すっかり夜となってしまった。今ごろ、アビゲイルとオニキスは、戦場跡から回収できたものを相手に色々と議論を白熱させているだろう。

 

そんな中、男2人して内緒の話をしながらロンドン散策となったのは……まぁ色々と説明しなければいけなかったからだ。

 

「文弥たちは何とか作戦を完遂出来たようだ。あの若武者セイバーも無事だしな」

 

「ん。そりゃ良かった」

 

端末からの連絡を受けた達也の言葉に返す。そちらの結果は分かっていたからだ。

 

夜のロンドン市内を散策しながら達也と男2人で語り合う。

日本の魔法師にとっては異国の地。まさしく異郷……気分は伊達政宗の遣欧使節団の少年武士たちかもしれない。

 

刹那にとっては、そうでもないのだが。

 

結局の所、戦いの結果は痛み分け―――どちらかと言えば、こちらが少しばかり優勢を取れた感じでは有る。

 

倒せたサーヴァント(獲った武将首)は六十騎ばかり。

 

連盟のマスターたちが、ロストサーヴァントを再召喚(リポップ)させるとしても、それには時間はかかるはず。

 

彼らの大半が召喚の基盤(よるべ)としていたリズリーリエ・アインツベルンが、ああなってしまったのだ。

 

「しばらくは大人しくしておいてもらうさ。九島家も、今回のことでしばらく大規模に動くことは出来ないだろうよ」

 

光宣は大丈夫だろうが、蒼司さんと玄明さんは、恐らくキツイ戦いになっただろう。先生の報告によれば、奈良方面は修羅巷の戦いが繰り広げられたそうだから。

 

そんな再従姉弟だか従姉弟だかの安否よりも、達也の重大事項は違う。

 

「戦いの顛末はいいんだ。俺が聞きたいのは、あのお前のお袋さんとか、モトカノ、イマカノを女神像のごとく模した術だよ。リーナが言っていたとおり、何というか某ニンジャ漫画の攻防一体の術(須佐之男)みたいだったんだが……」

 

「ふふふ。実を言えば―――俺も良くわからない!!」

 

自信満々に言い切ったその言葉に、怪訝な視線を見せる達也。だが刹那としても、何であんなものになったのか不明なのだ。

 

嘘をついているわけじゃない。と前置きしてから説明をする。

 

「刻印神船マアンナ……遠坂家の魔術刻印を外部展開した上で、それを『加速器』として宝石魔術を相乗発動させるというのは、お袋の十八番だったんだ」

 

「その辺りは聞いていたかな」

 

「で、俺の場合はあんな風に緻密な術式を維持しておくことは結構得意なんだ。巨大な術式を保持しておけるとでも言えばいいのか」

 

言っていて『ふわっ』とした説明だなと、己で想いつつも話を続ける。

 

「その形は時々で違う。ただ何かしらお袋辺りの縁が、直接的に俺の刻印展開の形を変えていくんだよな」

 

「お前自身では制御出来ない?」

 

「ある程度は、ただ今回のことは『直観』が働いたんだよ。文化祭の時の魔眼を使っての星空の演出、東京魔導災害時での固有結界内で『遠坂凛』の疑似サーヴァントとの出会い―――そして、アルクェイド・ブリュンスタッド、オルガマリー・アニムスフィアとの再会……まぁ何というか、色んな意味でそういった閃き(フラッシュ)が走ったんだ。

理想魔術は『現代』では不可能な領域……しかし、色々とあれこれ工面すれば……出来るんじゃなかろうかと思ってね―――」

 

なんてこと無いように言う刹那に、達也としても頭を抱える。

 

直観、あるいは直感。結局の所、真なる天才とは『理論・理屈』ではなく、まずは『答え』が先んじて出てくる。

 

それを思い知らされる。一見すれば全然、関係ない事象を関連付けて、一つの結果に集約させる。

 

刹那はそういうタイプなのだと分かっていても、何というか敗北感を覚える。

 

「今回使用した『女神術式』は、お袋からのある種の『宿題』というか、親心かもしれないな……蒼輝銀河のバウンティハンター・イシュタリンとか、諸葛凛とかカレイドルビー、マジカル八極拳士、英霊トーサカに……もう遠坂凛(お母様)という存在は、パブリックドメインに思えてきたよ……」

 

見えてきた可能性世界の遠坂凛の中でも『キワモノ』と呼べるものを見てきたことで、刹那としては疲れた様子で、そんな結論に至った。

 

それでも……『当人』が幸せならばとやかく言わないでおこう。そういう心地になるのだった。

 

子心というやつを理解したのか、肩に乗っかる遠坂家の第2のペットたる幼体グガランナ(自称)という、アルビオンで契約した『仔うし』(?)が頬ずりしてくるのだった。

 

ロンドンの空を見上げる。すっかり夜中になったことで、いわゆる『霧の街』としての姿とは違っていたが、それでもあの頃は飽きるぐらいに見てきた星空を見上げた。

 

つられて達也も見る。

 

「とりあえず一件落着とはいいきれない。しかし―――大きな問題を解決するには、どうしても必要なことなのさ。アーサー王の魔術基盤も……連盟の戦力も」

 

「その判断には、歴史の是非が問われるだろうな」

 

そう釘を差しつつも達也としては、それもまた一つかと想いつつ……新学年への移行と、新入生を迎えるべき時期は近づいていた。

 

異国の夜空のむこうを見ながら二人は想う。

 

 

 

 

 

新しい春は―――――すぐそこまで来ている―――。

 

 

 

 

 

next order……

 

 

『ロード・エルメロイⅡ世の授業―――副題 Rental Magica 』

 

 

 

 

 

 




というわけで春休み編は、これで終わり。

次回から原作における『ダブルセブン編』なわけです。

色々と説明不足なところがあったりしますが、それはまぁネタバレ回避なこともあったりするわけで、まぁあとで秋田先生方式で説明するか―――疑問点あればよろしくお願いします。

では、次編もよろしくお願いします。

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