魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~   作:無淵玄白

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ひむてんのぱれっとが休刊……なんてこったい!!

タイミングが、悪すぎる。磨伸先生も言っていたがタイミングが……。

まぁ何はともあれ移籍先はすでに確保されているようで、我々はひむてん、行進曲を追っていく所存でありながらも、冒険3巻の発売を間近にしている事実を胸に新話お送りします。


ダブルセブン編~Seventh Order ロード・エルメロイⅡ世の授業 ~
第301話『春一番の嵐』


 始まりはダヴィンチちゃんの何気ない一言から始まった。

 

 

『何かとお騒がせの(Great)(Teacher)(Servant)三銃士を連れてきたよ』

 

 

『『『GTS三銃士!?』』』

 

 

 

 三年生の魔法大学の受験、その他、国防及び治安維持部門への進学・就職など、それとは関係ない『てんやわんや』の―――進路相談や進路状況の把握で忙しかった職員室にやってきたのは、驚きの人物であった。

 

 

『どっかのロード(君主)を依り代に現世に現れし、最強軍師にして教え上手な諸葛孔明』

『ロードとして呼ぶ時は、Ⅱ世をつけていただきたい』

 

 

 仏頂面の男が、そんなことを言う。

 

 

『どっかのロード(プチデビル)を依り代に現世に舞い降りし、孔明のライバル 司馬懿』

『兄上ほどしゃっちょこばらなくていいので、一つよろしく願おう。最新のマギクスたちよ♪』

 

 

 仏頂面の男とは対象的に、人を惑わす笑顔で言ってくる少女だが……職員室の面々は、それで油断はしない。

 

 

『この女戦士より数多のケルトの英雄は生まれた。同時に死んでしまった戦士も多すぎるマッドサージェント。影の国の女王スカサハ』

どこか(……)で召喚された私ほどではないが、鍛えられる戦士ならば、存分に鍛えよう―――死なない程度にな』

 

 

 赤色のスーツの男。青色の洒落た服を着た少女―――最後に現れた小豆色の髪に、黒色の外出着を着た美女の登場。

 

 

 特に最後の美女に至っては、先の2人と違って、本当の意味で驚愕すべき魔性だ。だが、そんなGTS三銃士の出現に対して声を上げるものが一人。

 

 

『まてまてまってくれ! レオナルド!! キミが、そういうことをするのは理解していたが、『この時期』に唐突すぎるだろ!!』

 

 

『なんだいロマニ? 私は何か間違ったことをしたかい? 外部から講師をスカウトしただけだよ〜?』

 

 

『いや分かる! 分かるぞ!! が、あえて問う!!』

 

 

 ドヤ顔で言うダヴィンチちゃんに、退かない気持ちで言を放つ。教員として、というよりも百山校長が選定した条件にバッチリあう人材だと宣う……確かに来年度から新設される2学科において、この人材は是非ともスカウトしたい人間たちだ。

 

 

 もっとも……現在の時季が時季だけに、後々でも良かったのではないかと、来季の新学科の責任者たるロマニ・アーキマンこと栗井健一は考えていたのだが……。

 

 

『私がレオナルド先生とともに決めたことだよ。ロマン先生、キミの負担を私は減らしたいんだ。何より……彼もいてこそ、本当の意味での改革が行われると、私は信じているよ』

 

 

 

 次いで現れた百山校長の言葉にロマンは、苦い顔のままに返す。

 

 

 

『刹那もアンジェリーナもまだ生徒でしかありませんよ。それなのに……』

 

 

 ロマンの懸念が分からない人間はいない。昨年度は随分とあの2人に負担を掛けてしまった。

 

 

 当初こそ、教師の領分に無断で踏み込んでくる礼儀知らずという想いもあった。無論、2科生を指導できないという現状に対して突っ込まれて、痛い想いもしたからであったが。

 

 

 しかし、そういう当初の想いは薄れていく。

 

 

 自分の授業を聞きに来た相手を無下にしない。果てを目指す。自分が行き着ける・行ける場所に対して適切なアドバイスをしていく、学年を問わずただ真摯にその人物に向き合う姿に、一高の教官たちは恥というものを覚えた。

 

 

 結局の所……自分たちがやっていたことは、ただの責任の放棄でしかないのだと、まざまざと思い知らされたのだから。

 

 

『ともあれ、生徒であるとしても、少しは『上の役職』に就いてもらい、下級生の面倒を見てもらわねばな』

 

 

 校長の言葉にロマンは反論をすることを諦めた。

 

 

 そして、まずはⅡ世に魔法社会の『常識』とかを学んでもらってから、その後でどうするかを決めてもらう。

 

 

 そうするべきだろう。そんなロマンの提案に、ロード・エルメロイⅡ世は、仏頂面のままに答える。

 

 

 

『百山校長にも教えたが、私の『存在年数』など、どうなるか分からない。とはいえ、キミにとっての元上司が残していったのが私だ。刹那のサーヴァントとして動く時もあるだろうが、それまでは……『弟子の尻拭い』ぐらいはやっておくべきだな』

 

 

『……それでいいんだね孔明?』

 

 

『時代を問わぬゲームと葉巻。それこそが私の報酬だよドクターロマン』

 

 

 そんなやり取りありつつも、結局の所……ロマンも折れざるを得なかったようだ。

 

 

 変革の種はこうしてばら撒かれたのであった。

 

 

 ・

 ・

 ・

 ・

 

 

「ワタシたちがいないところで、そんな話があったのネ」

 

 

「まぁ、ロマン先生が言っていたようなことには、ならなくなってしまったけどな」

 

 

 言いながら、ダヴィンチちゃんから送られた『服』に身を通して、お互いに語る。

 

 

 確かにロマン先生が生徒会長選挙の際に言っていたとおりに、俺たちは1科の方の在籍だが、それでも新設される学科―――新古・現代魔術科(アルス・ノーリッジ)とは無関係ではいられない。

 

 

 

「総隊長の役職から開放されたのに、今度は『教師補』(SubTeacher)とは……大丈夫? リーナ」

 

 

 

 面倒くさい軍人としての籍を抜けて『身軽』になった彼女に、再びそのようなものを着けるなど、非常に心苦しいものも刹那にはあった。

 

 

 だが、エルメロイの教えとも言えるものを直に受けていたリーナをその職に就けるのは、妥当ではあれども、納得はいかないと思っていたのだが……。

 

 

 

「アナタ風に言えばモーマンタイ(無問題)よ♪ それに―――中途半端は許されないんじゃない? リンお義母さんの性格からしてもネ」

 

 

「あんまり姑に気遣って、疲れてもしょうがないと想うけど?」

 

 

 そういうことならば、仕方ないなと、からかうように言うが――――。

 

 

「その分、アナタと一緒にいられる時間は増えるんだもの。それは一番の宝物(ジュエル)よ」

 

 

 そんな返しをされてしまうのだった。満面の笑みで、おニューの制服を見せびらかすように『くるっ』と一回転してから、もう一度のスマイルを魅せてくるリーナ。

 

 

 そんなリーナの腰を抱き寄せて、その美しい顔を間近に見る。

 

 

「アッ……セ、セツナ……おニューの制服が、シ、シワになっちゃうワヨ……?」

 

 

 言いながらも押し止めるのではなく、刹那の背中に腕を回す辺り、言行不一致であるが、嬉しさが優る。

 

 

「大丈夫。ちゃんとクリーニングはする。今のキミを抱きしめたいんだ」

 

 

「しょ、ショウガナイわね……ワタシもチョットだけそんな気分になって――――」

 

 

 そんな風にリーナのウエストを掴んでいたのだが……。

 

 

「まだ未成年の学生が!! 休日の真っ昼間からイチャついてるんじゃなーーーーい!!!!」

 

 

 いきなりな来訪者がリビングにいたる通路から飛び出てきて、そんなことを宣う。現れたのは……。

 

 

響子(サゲマン)さん!?」「キョーコ(サゲマン)!?」

 

 

「二人してとんでもないルビ振りをするんじゃないわよ!! そこになおれー!! 歯を食いしばれー!!!」

 

 

 何をする気なのやらと思いつつも、怒りの面相で指差ししてきたことで、からかいすぎたかなとか思いつつ、響子の後ろに控えている面子(2人ほど顔が真っ赤)にも語る。

 

 

「何か用事があったのは、3人……いや、2人の方かな?」

 

 

「ええ……何というか色々と教えていただきたいものでーーーってヒカル! ヨソのお家でいきなりモノを食べようとしない!!」

 

 

「けどカゲトラが、『どうぞ遠慮なく、お煎餅からおはぎにいたるまで、食べちゃってください♪』って言っていたよミノル?」

 

 

 言うやいなや、茶請けから煎餅を食べようとする、短躯・幼童の姿なれども、超絶な美―――妖しさも孕んだ女の子に目をやる。

 

 

 遠坂家のリビングに入り込んできた九島家の面々と、四葉家の家人の姿。そしてその後ろにいる門番であったサーヴァントに眼をやる。

 

 

「番犬代わりも出来ないのかい?」

 

 

「それはヒドイ発言ですね。そもそも、蒼のランサーは、下手に刺激してはマズイことは分かるはず」

 

 

 お虎にそういうと苦笑しながら返されて、どうしようもなくなる。

 

 

「そりゃそうだがね。人としての倫理と■としての倫理は違うからな……来客応対もあるし、着替えよっかリーナ」

 

 

「ソウネ。始業式こそ終えたけど、コレを着るのは入学式からだし、関西(ウエスト)の情勢に関しても何かあるんでしょう」

 

 

 でなければ、こんなメンバーで家に押し寄せてくるわけがない。もしかしたら、蒼のランサーを連れてきたのも、ここに押し入る目的もあったのかもしれない。

 

 

 ……これに関しては邪推だろうが、まぁともあれ―――。

 

 

「茶を淹れるよ。座って待ってろ」

 

 

 そんな言葉を皮切りに、身体を休めていた春の休日は、少しだけ慌ただしいものになるのだった。

 

 

 

 † † † † †

 

 

 

 関西の騒乱はあらゆる意味で痛み分けとなっていた。

 

 

 刹那がロンドンに招き寄せた連盟の主力。しかし、それでも、カラではない戦力は十師族及び数字持ちの家でも『拮抗』に持ち込むのが精々であったとのこと。

 

 

「僕たちが協会で戦ったのは、平景清なる平氏武者でありました。史実とは違い、女性の姿をした……という意味では、上杉謙信殿と同じくなんでしょうが……」

 

 

 今まで中学までに習ってきた歴史教科書及び、興味を持った時代の『偉人』たちなどの話を鑑みると、色々と混乱を招いているだろう光宣の心情。

 

 

 しかし、最後には持ち直して口を開く。

 

 

黒羽さん(亜夜子)のサーヴァント……セイバーが平景清を抑えている間に、僕たちは内部に侵入。協会員たちを昏倒とも洗脳とも言い切れない状態においた、キャスターのサーヴァント『道鏡』を撃退したあとに、協会員たちを救出したのです」

 

 

「その辺りは聞いている。問題は、奈良の方の攻め手になったお兄さん2人の方だな」

 

 

「「はい……(ええ……)」」

 

 

 その言葉に沈痛な面持ちで答える従姉弟どうし……その顔に若干の『類似』『相似』を見たような気がするが、それは、血が近いならば、まぁ当然だろうということで納得をしておいた。

 

 

「手勢を率いて攻め上がったんですが、こちらに戦力がいまして―――」

 

 

「30騎ばかりのサーヴァント。元気いっぱいなのにやられたか……」

 

 

 楽な作戦ではないと九島家も認識していたはずだ。しかし、予想以上に戦力がいたことが、彼らに苦戦を強いた。

 

 

「サーヴァントありで、生きて帰れただけめっけもんだろ。膠着状態……持久戦を強いられれば、苦しくなるのはあっちさ」

 

 

「そうだといいんですけどね……」

 

 

 虎の子の疑似サーヴァントを擁しても、いい戦果をあげられなかったことは、光宣としても少々心苦しいようだ。

 

 

「関西では現代魔法師の協会を他所に設定したわ。そこの協会長に玄明さんが暫定で就いたところ。どれだけ協会員が集まってくれるかは分からないけどね……」

 

 

 サーヴァントたちが戦い、崩壊寸前になった建物。しかもどんなトラップがあるか分からない。そんなものを使うわけにもいかず、大阪の方にある空きテナントを使って、暫定の現代魔法協会として発足させた。

 

 

「傍から聞いていると、南北朝の動乱ですか」

 

 

「言い得て妙。けれど、別に天皇陛下が2人いるわけじゃないしね」

 

 

 お虎の言に返しつつ、この状況こそが、政府にとっても望んでいることなのかと想う。どっかが『調停』するべきなんだろうけど、どこも動いていないというのが、なんか引っかかる。

 

 

「で、それが本題か?」

 

 

「いえ違うんです……その何ていうか、お願いしたいことがあるんです」

 

 

 光宣と水波。ふたりして申し訳無さそうにしているところを見る。そして本題は……中々に難題だった。

 

 

「達也に光宣を認めさせたい、か……けれど、もう前・現当主2人がお前たちの同棲を認めているんだろ」

 

 

「ど、同棲だなんて卑猥な表現、……困ります遠坂先輩」

 

 

「そうですよ! ヒカルもいますし、場合によっては響子姉さんもやってくるんですから」

 

 

 それが何かの言い訳になるのだろうかと思うぐらいに、どうでもいい話ではある。

 

 

「ワタシたちの生活形態って、一般的に何ていうのカシラ?」

 

 

「同棲だろ」

 

 

 再従弟とその恋人の生活スタイルに物申したいだろうリーナに、返しながら深く考える。

 

 

「外野の勝手な見識だけど、達也の許可がいることではないと想う……が、それでも桜井は、ちゃんと達也に関西での同棲を認めてほしいんだな?」

 

 

「はい―――本来ならば、私は深雪さまのガーディアンとして一高に通う予定でしたから、これは当主様なりの親心とも言えますし、目立ちすぎたお2人を、不測の事態からお救いするためもありました。結局の所……お二人共、隠しきれない魔法能力(タレント)で世の衆目を集めたことは、間違いありませんから」

 

 

 後半の言葉は、『迂闊なこと』をした兄妹に対する恨み言にも聞こえたのは気の所為ではあるまい。使用人の立場としては、あまり言いたいことではないだろうが、護衛としてならば、一家言ある。そんなところだろう。

 

 

 

「けれどなぁ。付き合いの長い響子さんや、可愛がられている桜井の説得にも耳を貸さない以上、俺が何か言ったところで達也の意見が変節するかね?」

 

 

 卒業式でもその事に対して、少しばかり話したが、この件に関しては、達也に頑なな印象を刹那は覚えた。

 踏み込みたくはないが、桜井が昔の想い人に似ているからこその拗れた話なのだろう。

 

 

「けれど……アナタの方が付き合いは濃いと想うけど? 何とかならないかしら」

 

 

「ここに来る前に司波家の方には?」

 

 

「アポを取っていなかったのもあるけど、留守だったわ」

 

 

 響子のその言葉に沈黙。察するに、明後日の夜に招かれている『パーティー』の礼服合わせというところかもしれない。

 

 

 イブニングドレス、イブニングスーツぐらいは持っているだろうに、もしかしたらば……こうして顔合わせすることを嫌がったかだ。

 

 

 娘の結婚相手に会うことを嫌がる父親かと思いつつも、引き合わせるだけならば、手はなくはなかったりした。

 

 

 一週間前までならば。

 

 

「……まさか、織田信長と斎藤道三の顔合わせのように、会うわけにもいくまいしな」

 

 

「何か当てはあるんですか?」

 

 

「あるといえばあるんだが……何というか出席の断りを入れちゃったからなぁ……」

 

 

「ソーネ……」

 

 

 ホクザングループ開発の新型高層ビルの落成式というお呼ばれしていたのだが、それに対して『欠席』を表明したのは、色んな理由があった。

 

 

 具体的には……雫の新たな恋を邪魔したくなかったからである。昔想っていた男が、そんなホイホイと傍にいてはマズイと想っていたのだが……。

 

 

「とはいえ、ミスタ・ウシオからは、来てほしいと直電(DirectCall)来ていたものネ」

 

 

「まぁ、冷凍食品開発で『おぜぜ』を貰っている身としては、行かなきゃ不義理だよなぁ……」

 

 

 レイモンド・クラークなる少年と、空港で剣呑だったことは見ていただろうに……。

 ビジネスという戦場で戦う、海千山千の狐狸化生の思惑は見えきれないが……。

 

 

 今更ながら行くこと(GO AHEAD)を表明するのだった。最終的には、弟分のために色んな辛苦を飲み込むことにする。

 

 

 釈明の言葉を頭の中で組み立てつつも、潮氏との電話を何とかこなすことに。

 

 

「達也と深雪が、お呼ばれしているのは既に確認済みだ。そこでお前たちが話すだけでは……中々に許しは得られるか分からないな」

 

 

「そうですね……けれどありがとうございます。少なくとも切っ掛け作りは出来たんですから」

 

 

「達也様の機嫌が直るような、何かがあればいいんですけどね」

 

 

 妹夫婦、弟夫婦……どちらとも言える2人の沈痛な表情に、少しだけ辛い気分になっているところに……。

 

 

「ど、どうしたのかな? ヒカルちゃん?」

 

 

 銀髪の妖しい魅力を称えた幼女―――もはや『妖幼女』とでも造語を作ってしまいそうな疑似サーヴァントが、刹那を見つめていた。

 

 

「ここにあるお菓子は、全部セツナが作ったの?」

 

 

「まさか。煎餅はここいら千束のフォーマルなお菓子だからな。それ以外は俺が作ったものだけど……おかわりか?」

 

 

「うん♪ おいしいからちょーだい♪」

 

 

 カラになった茶請け皿を出してきたヒカルちゃんに、『しょうがないなー♪』という気分で、台所に向かうことにする。

 

 

 後ろにいるリーナから冷視線が届くも、とりあえずお客さんに提供するのは吝かではないのだ。

 

 

「さっきから脇で聞いていたけど、そのタツヤとかいうの随分と強情だなー。交尾し合いたい雌雄がいるならば、一緒の巣にいさせるべきだと思うんだけどなー」

 

 

「なんたる自然界の法則に則った男女の在り方。この2人が致したら、『こいつら交尾したんだ!!』と我々にお伝えしてくれ」

 

 

「「交尾っていわんといて(いわないで)!!」」

 

 

 同棲カップルから勢い込んで反論されてしまう。片方は関西弁が思わず出ちゃってるし。

 

 

 とんだイケメンなにわ男子である(爆)。

 

 

「美味しいものでも食べれば、誰でも気分は良くなるのになー♪ いまのボクみたいに」

 

 

「そんな単純な男であれば、光宣だって苦労は―――」

 

 

 その何気ない一言に―――刹那は、思った―――。

 

 

 閃きが走ったといえばいいのか、司波達也が九島光宣という男に対して下している評価を聞いただけに。

 

 

「……そういう手もあるか」

 

 

 ―――――――それは良策とも思えた。

 

 

「えっ!? 達也様たちを料理で懐柔しようというのですか?」

 

 

 

 料理上手なメイドとして対抗心を燃やしていることは刹那は知っているが、ここでそれを出すとは水波は思っていなかった。

 

 

 

「まぁ、そういうことになるか……考えるよりも行動しろだな。よし、決めた。落成式の祝賀料理という名目で、一鍋振るわせてもらうとしよう」

 

 

「お菓子よりも美味しいものを作るのかいセツナ!? ボクも食べたいな!」

 

 

 食い意地が張るサーヴァントに絡まれるのが、我がさだめかと思いつつも、作るならば早めにしなければならないと考える。

 

 

「刹那、何を作ればいいんですか? 四葉達也さん、四葉深雪さんに認められるためならば協力は惜しみませんよ。響子姉さんも大丈夫ですよね?」

 

 

 眼を輝かせて響子を見てくる弟分に嬉しい苦笑をしながら、自分の出来ることなど、その辺りだろうと思いつつ、疑問を呈する。

 

 

「ええ。私は、その出席するパーティーで着るみんなのイブニングの仕立てかしらね。けれど、そんな都合のいい料理があるの?」

 

 

 どこの料理漫画だと言いたくなるのだが、達也と一年未満でも付き合いの濃い刹那がそう言うのだから、何かあるのだろうが……。

 

 

「達也は、光宣の『色々な情報』を知っていますからね。要は、海の物とも山の物ともつかぬ男が、桜井を奪っていったと思っています」

 

 

「でしょうね」

 

 

「となれば、海の物とも山の物ともつかぬ『料理』を作ることで、ヤツに少しの納得させるだけだ。あとは君たち次第だな」

 

 

 刹那のやることは、切っ掛けのみ、最後の鍵は―――どれだけ桜井……水波と光宣が、よきパートナーとしてやっていけるかである。

 

 

 それを言外に含んで視線をやると。光宣は決心したかのように、桜井に向き直って言葉を紡ぐ。

 

 

「水波さん……ちゃんとお義兄さんに、祝福してもらって関西で一緒に暮らしたいです。ヒカルとともに居られる―――あの生活を続けていきたいんです」

 

 

「光宣さん……私も同じ気持ちです。自分には、四葉の家人として生きていく。そういう道に疑問を持てなかった私に―――違う道を教えてくれたアナタと共に生きていたい……」

 

 

 それは、もしかしたらば『どちらの家』とも決別した生き方なのかもしれない。イバラの道ではある。

 

 

 だが、それでも選んだ生き方なのだから……それを刹那は後押ししたいのだ。

 

 

「トーゼン、ワタシも同意見よ♪」

 

 

「よろしく頼むよ。俺の愛しきマインスター」

 

 

 そんな恋人への言葉を最後に、ホクザングループのパーティー。

 

 

 東京オフショアタワー落成記念パーティーへの参加は、決定するのだった。

 

 

 ただ一番の懸念事項は……。

 

 

「ちなみに……雫へはお前から言っといてくれないかな?」

 

 

「ソーイウ、日和った発言はドーかと思いまーす♪ 」

 

 

 そんな風に言われてしまうも最後にはリーナは、色々とやってくれている女の子なのだった。

 

 

 

 そして、この時は理解していなかったが、このパーティーにちょっとした陰謀が絡むことになるなど、知る由もないまま……事態は進行する。

 

 

 

 

 

 

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