魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~   作:無淵玄白

330 / 420
冒険第3巻――――――いやー。そういうことかーと思いつつ、さすがはタイプムーン、さすがは三田先生。

そこにしびれて、あこがれつつ、新話お送りします。


第302話『ハチミツとクローバー』

とんでもない喧騒。政財界の名士から何かしらの協会の長に、この『超高層建築物』に大なり小なり関わった人々が招かれてのこのパーティーの中に、未成年の姿は珍しい。

 

だが、政治家の息子……寺社の跡継ぎなどが、社会経験の一貫としてこういった場に連れてこられる例はなくはない。

 

とりわけ後々(・・)のために『顔を売っておく』という行為は、家の存続にも関わる重大事項だ。

 

氷室市長という母の妙な友人。

柳洞寺住職という父のアッー!な友人。

 

この2人もこういう場に出ていたとか、何とか聞く。

そんな現実逃避をしつつ、窓際にて男2人が固まりながら話をすることに。

 

「一度は欠席を表明したと聞いたが?」

 

スゴイ嫌味なジャブを食らって、少しだけ呻くも、しっかりと言葉を返す。

 

「かかる恥を濯ぐ機会はまたあと、ということで。分かっているくせに、そういう嫌味は止めろよ」

「悪かったよ………」

 

夕焼け空に染まる地上360階の景色のもとで友人と語り合う。この夕焼け空の中で埋没してもおかしくない赤いイブニングスーツを洒脱に着こなす刹那に、達也は苦笑する。壮観な景色を眺めている姿すら画になるズルい男……同輩に達也は諦観の念を持つ。

 

「九島光宣……か……」

 

名前だけは知っていたが、こうして少し遠くから見ていると、たしかに整った顔立ちだ。筋肉を着ければ骨っぽい美形と言えるだろうが、今の彼は長身ではあるが痩身であり、その姿からやはり水波を預けるには……。

 

「九島光宣は病弱というか身体が弱いと聞いていたんだが、随分と健康体に見えるが?」

「魔眼使ってるわけじゃないよな?」

 

男でも女でも無遠慮なピーピングをしかねない友人に釘を差したが、そうではないと返される。

 

「傍目の感想だよ。何というか……ふむ……どういうことだ?」

「俺にも分からん……ただ疑似サーヴァント『蒼のランサー』=『九島ヒカル』と契約してからは、あんな感じらしい」

 

そう達也に語る刹那だが、概ねの推測はあった。それはかつて『衛宮士郎』という男が、アルトリア・ペンドラゴンというサーヴァントと契約したがゆえに起きていた現象と、同一なのだと。

どっかの聖杯戦争では、ホムンクルスが竜殺しの心臓を譲り受けたのと同じく。そういうことである。

 

「話してみないか?」

「……何を話せばいいんだ?」

「聞きたいことは色々とあるだろ。それだよ。具体的には桜井を悲しませないのか、とかな」

 

もはや父親の領域の話ではある。現在、深雪と光井が話している光宣と桜井だが……男2人で話したいと誘えるかどうかが、達也の器量となるわけだが。

まぁ頑張れとしか言えない。その間にどうしたものかと想う。

 

(しかし、今更ながらデカイ建物だよな)

 

かつて東京は地上での開発を終えたあとに、来るべき22世紀への礎として『地下開発』を推し進めてきた。

俗に東京リボーンと呼ばれる開発プロジェクトは、もはや開発困難となった地上部分を諦めたが末の話であった。

その弊害として、高級住宅街の地上部分に影響を及ぼすこともあったが。

日本という国家の心臓部であり大都市は、刹那の生きていた時代には大手術を必要とするぐらいに、物流・交通・通信……あらゆるインフラ整備を必要としていたのだ。

 

新型ウイルス……一歩間違えれば国家が終わる規模のエマージングウイルスにもなり得たものの、流行がネットショッピングからの物流を加速させて、それ以外でも国際港を備えている東京は、あらゆる『流れ』の『発端』であった。

 

(明治政府が、最終的に首都を『東京都』に定め、御所の遷都を決定したのは、徳川家康時代の物流及び情報網が、未だに日本という国には必要だったからだよな)

 

「歴史をひもとけば分かることがある。

それは領土・国家の規模に関わらず、流通と情報を掌握したものが勝つということだ。

メソポタミア、ローマ、秦、モンゴル帝国、徳川幕府、大英帝国、そしてアメリカ合衆国。その時々において覇者となった国家は、必ず流通網を整備し、その勢力圏下における情報の風通しをよくしていた。そうすることでしか、広大な領土において心理的な同一性は確保できないからね」

 

自分の皮肉混じりの考えを見透かしたかのように、隣にやってきた友人の父親が、そんなことを言ってきた。

 

「成程、そう考えると―――これはミスタ・北山なりの現代の『バベルの塔』ということですか?」

 

返す言葉が皮肉気味になりつつも、財界の匠は笑いながら答える。

 

「天上におわす神様たちに怒られないように、気をつけたいね。ただ僕なりに、魔法師との融和を考えたんだ。どちらかと言えば天を目指すというよりも、『地下』に意識を向けたというところだね」

 

(うえ)(した)―――バビロニアにおける神のどちらにも縁がある刹那としては、色々と思うところがありながらも…。

 

「―――1度はお断りを入れておきながら、此度の変節からの出席の受け入れ。ありがたい限りでも、勝手な言い分申し訳ありませんでした」

 

深々と頭を下げることで、仁義を通すしかなかった。

 

「いやいや、構わないよ。少し話したが司波達也…四葉達也くんは、今のところは随分と頑なだからね。こういった場で無ければ、『あの少年』の望みは叶いそうにないからね」

 

「そう言ってくれると気が楽になります」

「僕も紅音と結婚する際にはひと悶着あったからねぇ。ちょっとだけ後押ししたい気持ちはあるんだよ」

 

魔法師と非魔法師……魔術師とそうでない人間と同じく、そういう例での結婚というのは無いわけではない。

ブルー(第5の魔法使い)の師匠にして友人にあたる第一魔法に近しい魔女も、大魔女の母親と大財閥の父親の間に生まれたとのこと。

なべて『異能』を持たない、知り得ない存在との婚姻は、何かの弊害を齎すこともある。だが、それを超えるものは、当の2人だけが持つ想いの丈だけなのだろうから。

 

「―――………」

 

そんなロマン溢れる考えを切り裂くように、潮さんに連れられてきた航くんは、少しだけ機嫌が悪そうな顔をしていた。

 

「どうしたのかな航くん―――と言いつつも、理由は分かるんだな。何というか申し訳ない」

「いえ、その―――遠坂さんが謝る筋じゃないのは理解しています。けれど……姉さんだって―――ぐちゃぐちゃですよ。僕自身……レイモンドさんが、姉さんの恋人とか言われても―――なんか当てつけのようにも思えますし」

 

スゴイことを言われているが、本年度から北山航―――雫の弟も中学生になるわけで、そういった機微も理解してしまったのだろう。

 

「悪い……けれど、俺の進む道は、あんまり世間様に認められるものじゃないよ。雫は、俺のようなオーフェン(孤児)とは違う。そんな風な、俺も憧れてしまうような家族のお嬢さんを巻き込みたくないんだよ」

 

かつて、自分の祖母も聖杯戦争という『異常』にて死んでしまった祖父のことがあって、後を追うように早々と死んでしまった。

直接的な害が及んだわけではないのだが、日常の中に生きる人間には、異常・異端の全ては害になってしまう。

 

先に述べたこととは逆に、そういう不幸な見地に立った時に、刹那の場合は、どうしても雫を巻き込みたくない気持ちが優るのだった。

雫は、ある意味で―――刹那の祖母に近い存在だと認識していたのだから―――。

 

不公平な限りではあるが、似たようなシチュエーションでも、好例ばかりが世の中の道理ではないのだから……。

そんな刹那に対して、まだ言い足りない航くんが口を開こうとした時に――――刹那の後ろに白銀の妖精が舞い降りた。

 

「セツナー、お願いがあるんだけど大丈夫ー?」

「どうしたヒカルちゃん?」

「食べ方が分からないものがあるんだよ。ミノルもミナミもお話し中で、邪魔するのも悪いからさ」

 

桃色がかった銀髪の少女。その外見をした疑似サーヴァントが、そんな風に言いながら刹那にまとわり付く。

偽造されたとはいえ戸籍上の従姉である響子に仕立ててもらったドレスは、彼女の幼い容姿とは裏腹にエロスなものも掻き立てる。

ノースリーブの白系統のワンピースドレス。各所に青薔薇をあしらい、波打つようなスカートの裾と白いニーソックスとの狭間が色々とあれである。

この集められたセレブ達の中に、そういう趣味の人間がいたら困るというぐらいに『際どすぎた』。

 

九島ヒカルのリクエストいわく『もっとセクシーなのがいい』……マセてるなぁと想いつつも、まぁ良しとしよう。

折角だから、航君に紹介しようかと正面を向くと―――。

 

惚けたような顔を赤らめている航君がいた。刹那がようやくのことで、振り向いたことも認識していないようだ。

真っ直ぐに―――ヒカルを見つめる。その視線の意味を理解した。

 

ああ、そうか。

 

 

(ヒトが恋におちる瞬間を―――はじめてみてしまった)

 

まいったなと想いながらも、視線を近くにいた潮パパに向けると、この上ない笑顔で、親指を立てて『4946!』(シクヨロッ!)(古っ!)などと、無言で言っていることが理解できた。

 

「航くん。ヒカルが食べたいものの食べ方を教えてあげてくれないか? 俺はちょっと話さないといけないし、こういう席でのマナーもちょっと拙いからさ」

 

そんな取り繕った言い訳も、今は彼の恋を少しだけ手助けするものとして許してほしい。まぁ当人はそれどころではないようだが。

 

「は、はい……北山航です。よろしくお願いしますっ」

「九島ヒカルです。こちらこそエスコートお願いします―――僕のことはヒカルでいいよ。よろしくね」

 

スカートの裾を少しだけ持ち上げながらの丁寧な一礼。見えちゃわないか少しだけ不安になりながらも、言葉の後半では砕けた調子になるヒカル。

 

「それじゃ頼んだよ」

「任せてくださいっ。それじゃヒカルちゃん案内して」

「うん。こっちだよっ♪」

 

男と見込んで頼んだことが、食事の世話など何となく間尺が合わない気もする。おまけに北山財閥の御曹司に対してなんて―――。

 

「なかなかの男っぷりだな。やはりキミとは―――いい付き合いをしたいものだ」

「恐縮です」

 

息子を小間使いも同然に出されたというのに、肩を組んで再び親指を立ててくる父親の姿に言葉を返しつつも、本題があるのではないかと問いかける。

 

「うん。実を言うとだ―――このタワーの概要は知っているかね?」

「通り一遍程度でしかありませんし、技術的な詳細は微妙な理解で申し訳ありませんが」

「いや、それで構わない。僕が問いたいのは、『地下』に関してだ」

 

四本の柱で2,000mもの巨大構造物を支える『状態』と、そこにある『非常手段』に関して問われると……。

 

「今はまだ大丈夫でしょうが、時を過ごしていけば、少々マズイでしょう」

「ほぅ……詳しく教えてくれるかな?」

「簡単に言えば4つの柱というのは、構造上の問題ではなく縁起が悪いということです。いや、構造上でもあまりいいものではないはずです」

 

魔術。あるいは風水的な力学で言えば、4つの力というのは『内側』に向けるものではなく、『外側』へと向けるものだ。千年王城に代表されるように、昔からの『場』作りにおいて、4つの力―――四神などを配置するようにしてきたのは、それが外敵に対する一つの守護の形であると分かっていたからだ。

 

逆に建築物を支える力とするならば、むしろ四神思想よりも仏教建築に代表される『五大思想』

五重塔に代表されるような、『地』『水』『火』『風』『空』による重石を掛けての安定性。つまり『思想』的な仕組みが必要となるはず。

 

「まぁけど現代日本の建築技術が、技術者たちが、中央部分のフライホイール込みの『それでいい』としたならば、私の見解は見込みハズレでしょうけど」

「……そのフライホイールが止まるという非常事態を想定して常駐している、地下の魔法師たちに関しては?」

「いずれは緩やかな『シフト』を組むために、増員を検討していると見ていますが、それでも……今のままは、ちょっとマズイかもしれません」

「待遇はいい方だと想うのだがね。待機中も、ある程度の飲酒も可とはしている。当然、飲みすぎれば職務に対する怠慢だが……アルコールを即時分解するタブレット錠剤も完備している―――いや、そういうことではないのだね?」

 

そうは言うが、言葉を聞く限り懸念そのものは北山氏も持っていたようだ。

 

「仰るとおりです。地下にいる魔法師たちの業務の内訳は分かりませんが、概ね―――保守業務と言えるものなんでしょうね。総合警備保障とも言えますが……まぁ彼ら全員を地下に押し込めるのは良くないでしょう。勿論、人権的なことを言っているわけではありませんよ。彼らも今の所は、それが職務だと納得しているでしょう」

 

全員ではないだろうけど。と内心でのみ言いつつ、問題点を上げる。

 

「問題点は、やはり地下に『数多のヒト』を常時入れておくという点ですね。業務上致し方ない点があるとはいえ、これが一番マズイです」

「詳しく」

 

言葉少なに話を促す北山潮氏に話す。

 

「どんな集団でも、人間一つどころに集まれば、『好き嫌い』『派閥』というものが生まれるものです。確かに職務を遂行する上で、気の合う合わないを無視出来るものもいますが……これが『陰の気』を生み出す。特に地下という閉鎖空間では尚更です」

 

如何に現代のネットワーク技術が、様々な情報をあらゆる場所へと届けられるとはいえ、外界と隔離された場所というのは、マズイ。

ある程度は、いずれは時間制勤務でのシフトを組めるのかもしれないが……。

 

文明社会から隔離された環境下で、どんなことが起こるかは―――アナタハンの女王事件、ひかりごけ事件……創作ではあるが……ウイリアム・ゴールディングの『蝿の王』など、どれだけ言っても……やはり閉鎖環境というのは、人心に対してどれだけの影響があるかわからないのだ。

 

「いま言ったようなことは、多少はオカルティズムも混じってはいますが……北山さんも、どっか(部下の進言)から耳にして存じていたのでは?」

「その通りだよ。ただ、増員しての緩やかなシフトを組ませることは、後々の解決方法だ。申し訳ない限りだが、今はまだ第一次のメンバーで『回してもらう』しか無い」

 

それは北山潮なりの渾身の掛詞であった。人員の勤務シフトと、フライホイールを、『回してもらう』。

そういう意味だと理解したので、まぁ一応は『洒落てますね』と返すと、少しだけ得意げな顔。一転して真面目な顔もする。

 

「だが前者の方はどうしたものかと想う。実は、地鎮祭(起工式)から新室祭(竣工式)までを取り計らってくれた神社の神主、禰宜、宮司とも言える方も、『あまり土地の気がよろしくないでしょうな』とも言われたよ」

「まぁ東京都の前身『江戸』というのは、神君家康公があらゆる埋立工事をしたから陸地が増えたわけですし、そこから離れた海側に建てたとは言え―――そういう感覚はありましょうね」

 

中々にいい感覚を持った寺社の方だと想いつつ、こればかりはどうしようもない。

とはいえ、ここが地脈の上にあるということは商圏としては、かなり実入りがいいことは確かである。

ここを選んだ北山氏の先見は間違いない。

 

「まぁ何かあった場合、地下が水没しないことが肝要ですね」

「埋立地に安定性はないからね……遠坂君は、何か出来るかね?」

「ちょっとした『嘘くさい』経営コンサルティングぐらいでしたら」

「時折でいいんだ。リーナちゃんとデートするついでぐらいでいいから、キミの言う『気』の調整をしてくれるかい?」

「分かりました。北山社長には、色々と便宜を図ってもらっていますから、微力ながらやらせていただきましょう」

 

地脈の整備をする。地元にて祖父が、商業テナントの地主として、土地代だけでなく、経営コンサルタントとしてテナントのアドバイス―――風水的なものをすることで金銭を得ていたことは、よく教えられた。

または見えぬところで地脈の整備も行っていたのだろうということは、容易に理解できた。

大地主として、それはある種の『貴族的な労働』ではあるが、まさかこの時代の此処(2090年代東京)に来てそういうおはちが回ってくるとは思っていなかった。

 

「それじゃ、謝罪として作ってきた料理―――楽しみにしているよ」

「はい。ただあまり過度な期待をしないでいただければとは想います」

「ははっ、謙遜をしなくていいぞー。なんせ担当の料理長から『伝説の再現を見ましたよ』とか、汗混じりの驚嘆を聞いているからね」

 

耳が早いなと想いつつも、そんな言葉の次には、他のセレブたちに声を掛けていく姿を見送る。

そうしてから喉を潤すために、飲み物を取ろうとパーティーの中心に行こうとしたのだが―――。

 

「ハイ、ドウゾ♪」

「ああ、ありがとう」

 

その前に、自分にグラスジュースを渡してくるリーナ。別にパーティーの中心に行こうというわけではない。

むしろ窓際にいる方が、自分はふさわしい。リーナはちょっと別ではあるが。

真っ赤なスパンコールドレスを着たリーナは、今日はトレードマークのツインテールを下ろして、ストレートヘアにしていた。

 

「お虎は?」

「ヘベレケに酔っぱらっちゃったから放置してきました♪」

 

護衛の役割を何だと思っているんだとしつつも、それなら仕方ないと想っている。

こうして窓際にいると、このパーティーの全図が見える。

 

達也は終始、光宣に話しかけられ、かけていき、それに参加しつつも、深雪と水波はちょっと離れたところで話しつつ、そこに雫と光井が話しかける様子。

そんな雫が、ちょくちょくこっちに眼を向けていることは分かっていたが、何を言えばいいのかわからないのだ。

 

レイモンド・クラークは―――

 

『いずれ、もう一度、ジャパンに来る。ティアを―――シズクに相応しい男になってから―――アイシャルリターンだ』

 

―――などと言っていたことを思い出す。まぁ俺がどうこう言えることではないと思えたのだが、周りは薄情だと感じたかもしれない。

思索を打ち切ってから、他の場所へと眼を向けると……。

 

ヘベレケに酔っ払って、テーブルで酒とツマミを飲み食う戦国武将。一応、あんなんでも美人の類なので声を掛ける男もいるのだが、あやつの酌を受けて酔わずに済む男などいないわけだ。

ライトブルーとホワイトの『鳥』か『天使』をイメージさせる装飾が為されたドレスを着込む、SAKIMORIならぬSAKAMORIである。

 

「そしてスコシ離れたところでは―――……」

 

リーナが刹那に寄りかかりながら、誘導するような視線移動。

それにしたがって見ると、実年齢は恐らく違うのだろうが、同じような背丈ゆえに何か気が合うのか、はたまた光宣と同じくお互いが『保護者気分』なのか―――。

 

「ズイブンとイイ雰囲気(ムード)じゃない?」

 

ニヤついて言うリーナ。自分が後押ししたとはいえ、九島ヒカルこと『蒼のランサー』と、北山 航の2人は、何というか思春期の少年少女らしいやり取りをしているのだった……恋慕と言えるものをハッキリと抱いているのは後者だろうが。

 

「ヒカルを擬似サーヴァントたらしめている英霊って、何者なのカシラ?」

「さて、あんまりレディーの秘密を暴き立てるというのは、俺はしたくないかな」

「アナタはそういうヒトよね。どっかの美少女魔法戦士の正体がバレバレだとしても、それを告げないヒトだもの」

「怒るなよ。っていうか自虐になっちゃってるし」

「ワタシが感じていたヤキモキした想いを、ワタル君にまで味あわせたくないの」

「まぁそれは俺も同意だけどさ―――ヒカル自身もよく分からないらしい。嘘か真かは―――不明だけどね」

 

オレンジジュースを飲み干してから、それでも推測はあるとする。その前から遮音というか言語を乱しての会話をしていたのだが。

 

「渡された映像から察するに、どうにも人間霊が昇華した存在とは思えない。かといって神霊よりも、察するに魔獣や聖獣に近しい存在かもしれないな」

「魔獣、聖獣……グガちゃんみたいな?」

 

今日は家でお留守番しているとはいえ、遠坂家の新たなペット。子豚ならぬ子牛の(てい)で存在しているものを連想したリーナだが、それよりも凶悪なものだろうと推測する。

 

「先生がいれば明確なものが分かるかも知れないが、俺の見立てじゃ、ヒカルは『竜』もしくは『龍』に由来する魔獣・聖獣―――神獣の類だろうな」

Dragon(ドラゴン)……」

 

呆然としたような声を上げながら、ヒカルを見るリーナ。

 

石化の魔眼で有名なメデューサ。マキリ家が冬木で存続していた世界での、桜叔母さんが契約したサーヴァントを思い出したりした後には……。

 

(まぁ太祖竜テュフォンというわけではないだろうな)

 

どうにもヒカルから受ける印象は、ギリシャ・インド系統の存在色(カラー)ではない。どちらかと言えば……。

ブリテンないしフランスなど西欧系統の匂い……。

その正体はいまだ分からないが、ワタル君の慕情のゆくえはどうなるか――――。

 

「とはいえ、ワタル(・・・)と言えばドラゴン使いとして有名だからなぁ」

「ソウね。トラオー(虎王)ウミヒコ(海火子)もいればパーフェクトよね」

 

そっちかいと思いつつも、ユーモラス溢れる彼女に、笑みがこぼれるのが抑えきれない。

そうしてから空腹を覚える。

 

「何か腹に入れておこう。流石に話しっぱなしで空腹だよ」

「それじゃアッチに『小豚の丸焼き』があるから、ワタシに食べ方を教えて♪ 」

「カオルウチュウとは、随分とスゴイもの作ったもんだな。どれ、肉の甘さを引き出せているか検分させてもらおう」

 

そんな上階の喧騒とは裏腹に―――下ではちょっとした暗闘が始まりつつあった……。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。