魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~   作:無淵玄白

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今年のバレンタインは何だろう

ツイのトレンドはバゼットが来ているが……まぁそれはともかくとして我が方にはモルガン陛下もメリュ子もバゲ子もトリ子もいる――――――つまりバレンタインが楽しみだということだ!!

というわけで新話お送りします


第303話『under the fight』

 

 

 

何事にも予定違いというものはあるものだ。それは、どんな職業、事業、計画、企画でも起こり得るもの。

 

計画通りにことを進めていたとしても、不測の事態というものはある。

人間のやることに、絶対などという『手形』はありえないのだ……。

 

人の意思や人の状態が関わることである以上、免れないもの。

 

そんな訳で――――。

 

「父さんから言われたことは、進人類フロントなる魔法師優生思想に傾倒した団体、その中でも強烈な連中を捕縛することで、資金・人の流れを知りたいということだったんだけど」

 

それを吐かせるために、近くにあるハイパービルディングたる東京オフショアタワーへの送電施設を張っていたのだが……。

 

「どう考えても、ここには末端の工作員しか来ないよなぁ―――なんて考えていた時期が、僕にもありました」

 

今夜起こるだろうテロを利用してメンバーを捕縛する。そういう作戦であったが……電源喪失のためにやってきただろう工作員たちは……。

 

明らかに一人ばかり、毛色(・・)の違うものがいて緊張せざるを得なかった。

 

「文弥ってば、楽なオシゴトしたくないからと困難な仕事を望むだなんて、その心に私ってば涙がちょちょ切れそうよ……」

 

「姉さん」

 

「冗談よ。セイバー、あれはサーヴァントなの?」

 

文弥(おとうと)の恨めしげな声に返してから、亜夜子は、自分が契約しているサーヴァントに問いかける。

 

霊体化をしていても、自分の傍にいる時代錯誤な侍は、その言葉に思案をしながらも、違うと返事をしてきた。

 

(私のような存在とは似て非なるものと言えばいいのか、京都で出会った九島の男子たちが契約したという存在に似ていますかね?)

 

疑似サーヴァント。憑依サーヴァント。その手の類だとして、工作員2人に帯同している黒スーツの赤毛を評した。

 

「霊体化は出来ないとは言え、そのチカラは間違いなくサーヴァント級か……」

 

厄介だ。工作員だけをふん縛れればいいのだが、恐らく手出しをすれば、間違いなくあの赤毛は、妨害をしてくるだろう。

 

遠くから離れているだけでも分かる。アレは隠すこともなく自分の存在感を出して、敵を誘うタイプだ。

 

「んでお嬢、坊。どうするんだ?」

 

「有希さんこそ何か妙案はありませんか?」

 

「アタシごとき脳みそで、そんなもの捻り出せるかよ……とはいえ―――無いわけじゃあない」

 

非合法の暗殺組織……伝統的なTTRPGならば『盗賊ギルド』とでも言うべき会社の一員たる榛有希は、驚くべき提案をしてきた。

 

「要は文弥とお嬢が、工作員2人を捕縛するまで、あの化け物を引き離しておけばいいんだろ? なり格好から察するに、アレはアタシと同じ雇われ身分…用心棒とかそんな所だろう? 『でかい花火』を焚けば、そっちに向かわせるんじゃないか?」

 

一考、二考、三考してから……アリかと想う。だが、ただのブラフでは意味があるまい。

 

「セイバー。頼めますか?」

 

相手に脅威と思わせるだけの気迫と逃げの当てがなければ、この役目は果たせない。

 

「やれやれ、再び足止めの囮役ですか。まぁ『戦闘続行』『仕切り直し』のスキル持ちの私だからこそ出来ることでしょう。承りました」

 

「一応、お聞きしますけど『諏訪の若君』、あの赤毛の御仁を倒せませんか?」

 

亜夜子の言葉に苦笑しながら答えたセイバーに対して、文弥は、少しだけ期待をしつつ問うが。

 

「生きるが、勝ちでございます。文弥殿……。弱気・弱虫と誹り、死ぬ気で戦えと仰るならば、亜夜子姫の令呪の一画を頂戴しましょう」

 

「「「……」」」

 

その言葉に、ほか三人は寒気を覚えた。

 

こうして間近で話していると分かることだが、セイバー……自分たちと同年代程度の背格好をしているものが、本物の乱世の武士(もののふ)であると分かる『圧』であった。

 

「とはいえ、今宵はここの霊気が、私のような『坂東武者』を持ち上げてくれますね。まぁ何かの弾みで首を落とせるかもしれません」

 

あまり期待せずに任務を遂行してくれという若君の言葉。散歩のついでに『熊』でも殺すかのような気楽さで腰に帯びる刀を持ち上げるセイバーを見て、遂にツバを飲み込むのだった。

 

 

「では、皆々様方―――ゆめゆめ油断なさらずに(めい)を遂げましょう」

 

 

その笑顔の下での言葉を前に、何故か心がやすらぎつつも、適度な緊張感を持って事に臨むことが出来そうだった。

 

―――真夜中の東京での戦いは繰り広げられるのだった。

 

 

「はい。セツナ、あーんして♪」

 

「ちょっ、こういう場でするべきことか?」

 

焦る刹那だが、言われたとおりにする辺りに、こいつらは……と少し離れたところにいた同級生・下級生一同は、想いながらも……。

 

「ワタル君、あーんして♪」

 

「ヒカルちゃん!! いただきます!!」

 

まねっこのつもりなのか、琥珀色の瞳をした銀髪の美少女が、同じぐらいの背格好の男子の口元に、子豚の皮を挟んだパンを持っていく。

 

高校生とは違って微笑ましすぎる一場面をみてほっこりする。

しかし、女子の方が魔法師の名家『九島』の子で、男子が日本が世界に誇る大財閥ホクザングループの長男では、色々と勘ぐる人間も出てきかねないが………。

 

お互いに食べ合いっこをしている二人の年下を前にして、それは野暮天すぎる考えであった。

 

そんな光景を見つつもリーナと刹那はいつも通りすぎて、遂に一人の女が動き出そうとしていた。

 

「オイシイ?」

 

「言わなくてもいいだろ。ビロード色の皮肉を包んだパンをくれる赤色のドレス美女。最高のコラボだ」

 

「それはつまり――――今夜、ワタシも食べたいという意思表示と受け取ってオッケー?」

 

空気振動を利用したシルヴィア得意の魔法で伝えてきたリーナに、「はいはい」と窘めてから、どうしたものかと思っていると……。

 

「刹那。こんばんわ」

 

挨拶していなかったなと、いまさら気付いて気不味さを覚えつつも、なるたけ平静を保ちつつ返事をする。

 

「こんばんわ雫、1度は断ったのに急遽の出席で悪いな」

 

手を立てつつ、父親とは違ってフレンドリーさを装いつつ返す。

 

「ううん。何となく『理由』は分かるから、そこはいいよ」

 

主催の娘がそんな風に言うものの、刹那としてはドキドキものだ。正直、彼女をフッた時から少々、距離感が掴めないところがある。

 

臆病な心だが、それでも今は色々と話す必要はあるだろう。

 

肝心要のこと。つまり空港での雫の恋人との諍いから会話をすることに。

 

「レイモンド・クラーク……まぁ彼とて東京で起こったことと無関係ではなかったからな。一発は甘んじて受け入れたよ」

 

「レイは言っていたよ。『ティアの心は未だにプリズマキッドに囚われている。僕がきっと取り戻してみせる』ってね」

 

おのれこそ囚われの身で、雫を心配させたというのに―――正体不明の端末を使うという自業自得ではあるも、原因の一端を担ってしまった刹那としては、あれこれ強くは言えない。

 

だから、一発は甘んじて頬に受けたのだ。

 

「……ほのかから聞いたけど、いない間に色々とあったみたいだね」

 

「ああ、まぁ別れもあったが出会いもあった。須らく人生とは、その連続だったかな……雫だってバークレーでは、色々だったろ?」

 

「そうだね……レイと私は―――うまくいくかな?」

 

「それは俺が言えることじゃない。ただ一つ言えることは、キミの両親が安心できる相手ではあるだろうね」

 

「……お母さんだけじゃないかな」

 

「――母親は大事にするもんだよ」

 

そんな少しだけ切ない会話の後に、遂にこの宴席のメインを飾る料理がやってきた。

 

多くのカートに乗せられてやってきた

 

「色々とご迷惑をお掛けしたのでね。俺なりの謝罪の料理だよ。あっちで達也と会話している年下イケメン、モテカワたちと苦心して作ったものさ」

 

「す、すごい匂い―――美味しい匂いがする……」

 

「セレブのキミが、そう感じるということは、これは成功だな」

 

カートに幾つも乗っている酒甕。少し小ぶりの壺ともいえるものから香る匂いは、このパーティー会場にいる人間たちの注意を全て惹いた。

 

最後の仕上げをこのパーティーの厨房総責任者に任せたのは、衛生管理者としてのあれこれがあったのも一つだったが……それ以上に、ここの厨房でも食べられるようになれば、別に問題はなかった。

 

「まぁコンソメのアク抜きも自動でやってくれる辺り、技術の進歩に万々歳だしな」

 

結局、時には食うだけに徹するために、都心の料理のレベルは、もう少しあがってほしいと切実に願うのだった。

 

「けれど、それらが使えない時……大災害に直面した時のために『手』を使うことが重要とは、よく言っていたワ」

 

「電源が喪失して、文明の光が消えた世界は見たくないが、そういうときが来ると考える。そうして想像だけは絶やさずにしておきたいんだよ。俺は」

 

リーナの言葉に言いながら『手こそは神』と言い放った男のことを思い出しながら……『下』で起きている騒動は、カンの鋭い連中には、そろそろ隠しきれないかと想いつつも―――とりあえず壺の料理たる『佛跳牆』の説明をするために、雫からマイクを手渡されるのだった。

 

なんでさ

 

 

―――動いた。

 

有希のチームが打ち出した魔力のパルスが、東京オフショアタワーの電源喪失を目論む工作員たちの『触覚』を刺激したあとの行動だった。

 

釣り出された工作員たちの護衛だか用心棒が、魔力のパルスに引かれて明後日の方向に出ていった。

 

電源管理の施設にいる工作員は、予想通り魔法師であり、用心をしていたが、それでもいつまでも何もせずにはいられないと思ったか、内部での破壊活動に移行する様子。

 

 

黒羽の双子が作戦を開始、疑似瞬間移動で施設内に侵入。まだ感づかれてはいない。

 

即座にCAD……有希からは『メリケンサックにしか見えねーよ』と揶揄されるものを起動させて、工作員たちを外から制圧。施設内部での工作活動は無為に終わった―――。

 

 

「え?」

 

仕事を終えたことで一息ついたと同時に感じた変化。

間抜けた声が女装した文弥から出た。

 

次の瞬間、意識を失った工作員たちが起き上がる。起き上がった工作員二人は……。

 

意識が無いにも関わらず、サイオンを異常活性化。

 

明らかに一個人が出せる量ではない。自分たちの親族『司波達也』なみのサイオン量だ。

 

そして、その工作員達に明確な変化が出る。

 

「――――!!!」

 

雄叫び。ただの雄叫びにしか聞こえないそれで、生気を失った眼のままに、こちらを見てくる工作員2人の肩から大蛇が生えてきた。

 

暗がりでもそれが見えたのは、日頃の訓練の賜物だが、こんな時にはその見えすぎる眼を恨んでしまう。

 

「遠坂先輩だったらば、これだけでアレコレと察するものがあるんだろうけど―――つまり……」

 

両肩から生え出る大蛇。化生体のような幻ではない以上、つまりは……何かしらの憑依術。

 

拙い知識ながらも理解したあとには、答えを詳らかにする。

 

「蛇王ザッハーク!!!!」

 

『『!!!!!!!!!』』

 

咆哮する蛇が顎を一杯に開くと、口中の奥から何かが放たれる。

狭い密室に充満する何かの気体。少し吸い込んだだけでも感じる喉の痛み。鼻孔を突く刺激臭。

 

(毒か!)

 

気付くと同時に室外に出る。姉の覆った極散は既に崩れている。

 

漏れ出した気体……ポイズンブレスが、姉の形成した場を崩したようだ。その異常を察したのか、思念が通じる。

 

(文弥!どうしたの!?)

 

(工作員たちが気を失うと同時に何かの魔術処置が発動。 肩から大蛇を出して毒の息を吐き出してきた)

 

姉…亜夜子側から届く思念は明確だが、文弥が出すとなると、どんな風に聞こえているかは不明だ。

 

前に聞いた通りならば、単語のぶつ切り……舌っ足らずな聞こえ方だったらしい。とはいえ、次にそちらに向かうかという言葉に。

 

(ダメだ。 来るな。 伏兵にも同じ処置がされたならば、姉さんの方にも同じくなる可能性がある。セイバーと合流してくれ)

 

電源施設の扉を蹴破るように出てきた異形の存在は、遠くから見ている亜夜子にも見えたはず。

 

不安を覚えつつも、それでも最後にはセイバーに合流するように駆け出すのだった。

 

すぐに戻ってくるという亜夜子の言葉を疑うわけではないが、この位の窮地は、これから幾らでもある。

 

別に、父のように四葉の当主としての地位に興味があるわけではないが―――。

 

(達也兄さんの前に現れる敵は、これからこんなのばかりになるんだ!! 手助けするためにも、『独り立ちした強さ』を持つ。持ちたいんだ!!)

 

兄と慕う相手を助けるためにも、いまの文弥に必要なのは、そういうチカラだった。

 

ナックルダスター型CADを捨ててから集中する。観月法による瞑想が違う力を引き出す。

 

「ヘアシュテルング」

 

正式な発音ではないだろう。カタカナ発音でしかないだろうが、それでも……。呪文による変化は劇的であった。

 

先程のお返しのごとく、「文弥」の身体を石の殻とでも言うべきものが覆っていく。有り体に言えば『鎧』

しかし、その鎧はあらゆる部分から『スパイク』とも『突起』とも言える鋭い部分が伸びており、防御というよりも攻撃に特化したものに思える。

 

展開が終わったことを示すかのように、文弥は、腰に帯びていた鈍い銅色に赤い血のような刻印が為された剣を抜き払う。

瞬間、文弥を脅威と断定したのか、先程まで姉がいた辺りにいた人間たちが、加勢に来た。

 

伏兵を釣り上げたことに喜ぶこともなく、文弥は瞬発。

 

魔力放出の要領で、大蛇を生やした男に接近。左を狙うと見せかけて体を右に切り替えしての一閃。

 

大蛇を切り落したが―――。

 

(再生するか。拙い知識だけど、そういう伝承だったような気がする)

 

神話や伝説に対するインテリジェンスが足りていないことを嘆くも、とりあえずいまの感触で分かったことがある。

 

(寄生型の術式が深部に存在しているか―――しかも)

 

加勢に来た連中も、腕を蛇にしたり、同じく肩口から大蛇を生やす。これがセイバーの相手サーヴァントの術なのか、それはまだわからないが……。

 

「ダインスレフ―――赤呪剣化」

 

赤く発光する魔剣を手に文弥は動き出した。

 

「「シャァアアアアア!!!」」

 

「「シュアアアアア!!!」」

 

蛇の攻撃は毒霧だけではないようだ。その口からは羽虫……というよりも『刃虫』とでも称するものが吐き出されていき、その他に毒蜂、毒虫の類が雲霞のごとく吐き出される。

 

全くもって悪趣味極まりない。そんな感想を出してから、その制圧攻撃の中を赤剣を振るいながら進んでいき―――。

 

赤剣を蛇人に突き刺す。ぞんっ!と肉を切り裂き、しかしそれで『術式』を砕いた感触を覚えると、肩口の蛇が消え去り、倒れ込む男。

 

死んではいない。魔剣による攻撃が影響を及ぼす可能性もあるが、まぁその時は運が悪かったということだ。

続いて隣りにいた蛇人に斬りかかる。身体を振り回して袈裟斬りに捨てる。再び砕く感触。

 

遠坂刹那によって渡された魔剣……ダインスレフを用いて行われる『新たな術』……『ダイレクト・スレイブ』

 

黒羽及びその本家ともいえる四葉家が得意とするものは、精神に対する干渉であった。しかし、昨今の魔法社会において、精神干渉というものが『効かない』相手が多くなってきたことが、少々色んな意味で苦境に陥らせていた。

 

他家も似たようなものだが、あらゆる手段を講じてサーヴァントないし、それらに準じるチカラを得た『存在』に対して、対抗手段を手に入れようとしている。

 

その一つとして、現代魔法師に協力的な、遠坂刹那という魔術師にして並行世界来訪者(カレイドライナー)に協力して完成を見たものだった。

 

説明をされながら凶悪な魔剣を渡された時には怪訝な気持ちであったが、今となってはこのとんでも魔剣が、黒羽の暗殺魔法にしっくり来ると思えていた。

 

精神ではなく魂へと干渉を果たすためのもの。

 

何より、父や姉が、その剣から漂うオーラから恐れおののくのとは別に、文弥には随分と手に馴染んでいた。

確かに鍔部分と柄の無骨さ……岩、石……もしくは何かの『骨』を直接削り出したようなそれとは別に、剣身の見事さはアンバランス。

 

(だが、心惹かれるものがあった。破滅をもたらす呪いの宝剣。妖刀・魔剣の類であっても―――)

 

それを見た、魅入られたかもしれない文弥は軽快に、ニーベルンゲンの魔剣ダインスレフを振るって―――後に判明するが、キャスターのサーヴァント「ザッハーク」の傀儡となった魔法師を、数秒もしないうちに倒すのだった。

 

 

 

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