魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~   作:無淵玄白

332 / 420
ライブアライブ―――リメイク発表。

やったー!!すごいうれしい。アオイホノオでも、この話題を取り扱ってくれることを祈りつつ、新話お送りします、


第304話『災厄の導火線』

 

「確かに俺は、九島 光宣のことを海の物とも山の物ともつかぬ男と称したが……だからと高級スープ。フランス料理のコンソメスープに対するような中華の最高峰『佛跳牆』を作るとはな」

 

「お前がそんなこと言うから、山海の珍味を山のように入れたスープを作ったんだよ。肉は―――チョット前に知り合った北海道の獣医家のおすそ分けだがな」

 

とんだ魔法科高校の料理人である。

海鮮乾貨と山の菜をじっくりと煮詰めた上に、動物系の味まで足した最高のスープ。

 

これだけでもお腹いっぱいになりそうな深い琥珀色のスープであったが。

 

当然それだけで終わるわけもなく、厨房の方で用意されていた玉子麺が入ったドンブリ。一般的な日本風の麺玉がカートに乗ってやってきたり、はたまた『おじや』か『中華粥』風にするための混ぜご飯がやってきたことで、まぁ大宴席料理になってしまった。

 

「―――俺がこの佛跳牆で言いたいことは、頭のいいお前ならば分かるはずだよ? 同時に、今年度の新入生を迎える一高だって、これと同じだ……光宣と水波の関係だってそうだろ?」

 

言いながら佛跳牆麺とでもいうべきものをすする刹那。戻されて解されたフカヒレが麺に絡んでいたり、柔く煮戻されたアワビ、椎茸の戻しをチャーシューよろしく噛みちぎったり……。まぁ美味そうに食うものだ。

 

だからこそ分かる。

 

信長の○ェフよろしく、料理で伝わるメッセージが達也を貫く。

 

多くの食材を煮詰めるがごとく、時間を掛けなければ見えてこない景色が有るのだと。

 

改めて―――学校こそ違えど、今年度からの後輩に向き直ってから達也は言葉を紡ぐ。

 

「九島君……いや光宣、そして水波……俺は刹那とリーナのことをこの一年間よく見てきた。高等学生同士が一つどころで同棲する以上は色々とあるだろう。だが、好き合う時も、喧嘩することもあるだろうが……まず一緒にやっていけるかどうか、やってみろ。だが水波を泣かせることあれば、悪いが我が家で保護させてもらう。例えそれが九島家と『戦争』をすることになってもだ」

 

「はい。気が早いかもしれませんが……水波さんは、僕が幸せにしてみせます」

 

本当に気が早い宣言だと、麺とおじやを食べながらその様子を見守る連中が想う。

 

特に九島ヒカルは『愛を与えることを知らないものに従うことは出来ない!!』などと、ちょっとズレたことを言ったりしている。

 

いやそれは、ある意味では正解なのかもしれないが……。

 

(まぁ一件落着かな……?)

 

なんやかんや光宣と水波の同棲に端を発する達也の悋気は、落ち着いたようだ。その一方で、刹那の魔術回路にビシビシと響くような圧が、下界の方で起こっている。

 

さりげなく窓の方に移動して視力を強化。同時に魔眼を発動。

 

―――知り合い……というか司波兄妹のご親族とが戦っている様子だった。

 

セイバー……■■■■も戦闘中のようで、どうにもいやな予感がするのであった。

 

とはいえ、敵さんは『撤退』に入ったようで、戦闘が終了状態へと移行していったのは間違いなさそうである。

 

 

「先程、刹那は見なかったかもしれないが、葉山さんが来ていてな。ちょっと『色々』話したんだよ」

 

「ほー。達也のご実家の業務に関しては俺はノータッチでいきたい。今回は本当に例外だ」

 

色々の中身に関しては聞かない方が良さそうだ。そんな風な防衛策を講じたのだが。

 

「なんてドライなフレンドだ。まぁ……お前だって分かってないか?」

 

「わざわざ火中の栗を拾う真似も、ついでに言えば栗が弾ける様子を見なくても済むならば、その方がいいだろ」

 

遮音結界をしているとはいえ、中々にとんでもないことを言ってくる友人。男二人で外を見ながらラーメンを啜るという、石原プロの映画のようなワンシーンに、女性陣に変な妄想をされたりしたところで―――。

 

「―――!」

 

何やら騒ぎというほどではないが、パーティー会場に似つかわしくない人間たちが、平身低頭しながらやってきた。

 

スーツの上着などを脱ぐも、ワイシャツとネクタイだけはきっちり締めている『勤め』らしき人間たちと……まごうことなく綜合警備保障の警備員(じゅうぎょういん)のような格好をした一団が、何やら申し訳無さそうな顔でやってきたのだ。

 

代表者なのか、一際大きな体格をした……多分だが退役軍人だろう人間。ヒゲがあれば似合うだろう厳つい男性が、代表して北山 潮に言う。

 

上役だったらしく北山氏も

『どうしたかね? 東郷くん? まぁ理由は分かるけれどね』

 

などと堅苦しくないが、それでも何処か戒めるような声で誰何する北山氏……。

 

『申し訳ありません社長、この部屋から異様な匂い―――いえ、かなり……鼻孔と胃袋を刺激する匂いがしまして、オペレーター部の人間たちと一緒に、ここまで―――職務に戻らせていただきます』

 

端的に言えば、腹減ったと宣う東郷とやらではあるが、最後には理性を取り戻しつつも、腹の音は途絶えない。

地下からここまで来ていてそれは、ちょっと無情に過ぎると思えたのか。

 

「刹那君、大丈夫かい?」

 

「まぁ問題は無いでしょ。今回のパーティーの規模がどれだけなのか分かっていなかったので、司波達也くんに同棲を認めてもらいたい九島君の祖父殿から余分に材料は貰って、その分は作っていましたしね」

 

北山さんの言葉に説明するように答えながらも佛跳牆―――ファッチューションの通りに、階層を超えて多くの人を魅了出来るものが出来たことが少しだけ嬉しいものだ。

 

即座に厨房に連絡を入れた北山氏によって、追加分がやってくる。

 

 

「作った分が無駄にならなくて良かったですよ」

 

「本当に伝説の『佛跳牆』を作っていたんだな……この上階から地下にまで匂いが伝わるとは、いやはや……感心してしまう」

 

行い澄ました僧侶すら現世との垣根を超えて食べに来る福建名菜 伝説のスープの効果をいまさら認識した北山潮の言葉に苦笑しつつ―――。

 

「―――『ガスマスク』でも着けなきゃ、匂いの遮断は出来ないでしょうね」

 

そんな言葉で締めくくりつつ、料理長が持ってきた追加。何か聞きたいことがあるのか呼んでいるので、向かうことに―――。

 

上階での大宴会とは別に、地下ではちょっとした野望が進行しつつあったのだ。

 

 

地下三十五階・魔法師控室

 

緊急時に備えて待機している魔法師達。現在時刻での担当は、班長の名前から『ミサキ班』と呼ばれている面子は、『地上』での企てが上手く行かなかったことを知る。

班長である岬 寛(みさき ひろし)から伝えられて、どんな野望も実行段階では、そんなものだなと感じる。

 

「何事も上手くいくとは考えていません。僕たちの企ても、『どこか』から漏れていたんでしょうね」

 

「みっちゃん……呑気に言っていていいのかよ」

 

リーダーであり昔なじみである男の言いように、部屋にいた男性魔法師はそんな風に言うも、涼やかな笑みを浮かべて『みっちゃん』こと『岬 寛』は言葉を返す。

 

「そう聞こえたか? シュウ」

 

「ちょっとだけね。けれどやることは変わらないんだろ」

 

「当然さ。ここでのことを手土産に『教主』さまからお言葉をいただく―――拝謁を得るんだよ。そして僕たちの時代を始めるんだ」

 

意気揚々・意気軒昂……何とでも表現できる言葉で、立ち向かうことを決める岬とその面子ではあるが……。

 

「―――そんな簡単に上手くいくと想う? どこにでも見込み違いってあるもんだよー」

 

そいつらに冷や水を浴びせるかのような言葉を発する女が一人。

 

バーカウンターの一番端の席にて、ちびちび『バーボンウイスキー』を呑んでいた女。岬もまたカウンター席に座っていたのだが、彼女の存在は……この場では異質だが。

 

バーカウンターで酒を飲む姿は誰よりも似合っていた。

 

「何が言いたいんですかアーチャー(・・・・・)?」

 

リーダーである男性をバカにしたとしか聞こえない言葉に、面子の内の女性魔法師の一人が不機嫌を隠さずに問い詰めるのだが。

 

「うーん。まぁ、あなた達の計画が漏れている時点で、これはBad beatへの一手だと想うんだけど、それでもやるの?」

 

西部劇でもそうそう見かけない『女ガンマン』―――カウボーイならぬカウガール……しかも溢れ出るばかりの色気を惜しげなく露出でさらす美女は、そんな言葉で警告を意味してくる。

 

だがそれでも……やると決めたのだ。現状に大きな不満があるわけではない。しかし、それでも―――こんな塔をそのままにしておきたくはないのだ。

 

「アウトローになる覚悟ってのは、本当に強い気持ちを持たなければならない。賞金首として荒野を彷徨うその覚悟を―――それでもやるの?」

 

その言葉の真剣さに女性魔法師が少しだけ後ずさるも、代わってカウンターから立ち上がった岬 寛が語る。

 

「―――ええ、アーチャー。アナタとて西部開拓時代に多くの艱難辛苦を超えて、そういう人間を『原住民』『開拓民』―――両者に見てきたはずだ。ならば……これは、僕なりのフロンティアスピリットなんですよ」

 

私は厳密にはそっち(・・・)の『災厄』じゃないんだけどね。などと呟くアーチャーという美女は……。

 

「いいでしょう。わたしも『相棒』を見つけるまでは、君たちにお世話になっちゃってるからね―――仮宿の恩は返すわよ。それも荒野の掟だからね」

 

「ありがとうございます。では―――始めましょう」

 

微笑を浮かべつつも、災厄を起こすと決意する男の言葉を皮切りに、この夜の最後を締めくくるビッグトラブルは起こるのだった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。