魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~ 作:無淵玄白
出来ることならば、『霊長の抑止力』というものが、働いてくれて、そういう存在を抹殺してくれればいいのにと想わんばかり。
私は和田 竜 氏の書いた『のぼうの城』は好きだ――――しかし、相手が『国とは民あってこそ』と考える礼節と人徳を重んじる石田三成だからこそ抗戦したとはいえ成田家は過酷な責任(切腹、斬首)を取らされることもなく、領土を安堵されたのだが。
話が通じない相手ではこんなことにもなる。
本当に……夢想ではあるが、『アラヤ』の意思が、破滅を食い止めないかと思ってしまう。
「とりあえず死ねぇ!!!」
「ワン、ツー!!」
思わず『正気か!?』と刹那とリーナ以外の誰もが驚く行動。岬がいた『お立ち台』を、拳でぶっ叩く。
やられた方も驚きの行動ではあるが、振動を与えられたことで態勢が崩れた。そこに――――。
「止まってもらいますよ!!!」
深雪の氷結が、全員を凍てつかせようとしたのだが―――
現象がキャンセルされてしまう。相手のエイドスを改変しようとしたというのに、それが無為に帰したのだ。
「最近、現代魔法の掛かりが悪いですよね……」
深雪の現代魔法師としての干渉力は、超一級のはずだが。最近では対策されっぱなしだ。
これは、皮肉なことに刹那が主催したエルメロイレッスンにおいて
つまり相手よりも『強い干渉力』を持とうだなんて無理なのだから。相手の術に対して『相性勝ち』をするなり、何かの
そう述べてきたのだ。これはCAD頼みであった現代魔法師にとって、かなり画期的なものであった。
あきらかに干渉力が高い魔法師と
「こうなれば、直接殴ってあげますよ!!!」
こんな行動に出る切っ掛けになっていた。ドレス姿の美少女がナックルガードをどっからか出して殴りかかる光景は、ちょっとしたサイコホラーではあろう。
スリットを入れたのか、蹴り技も入れてくる。かなりの魔力を込めた攻撃なのだが……。
赤髪を複雑にまとめた気の強そうな女性、ショートパンツ姿がそれに対応する。
ステゴロで挑む深雪に対して、逆手に握った二刀のナイフとダンシングブレイズとも移動魔法とも言えるナイフ乱舞で撹乱する。
深雪が展開した防御障壁の前では、打ち落されるのだが……。
(硬いな)
魔法師だからと全てが戦闘に特化しているわけではないが、それでも深雪が相対している相手は随分と硬い様子で拳に対抗する。
何かが変だ。だが明朗なものはなにもない。重要施設を壊さないように『肉弾戦』で挑んだだけに、少々……窮屈な戦いではある。
(エレメンタルサイトならば何か分かるか?)
深雪に迫る刃物の群れを分解しながら、達也は進人類フロントの面子を『スキャン』する。
すると……。
「そういうトリックか」
「気付かれましたか、四葉達也どの!!」
こちらの『スキャン』を理解したのか、岬がこちらに襲いかかる。あちらは、そもそも
イタチごっこである。
「お前たちは『単体』ではなく、『一丸の集団』となってサポートしあっている……『わたつみ』の亜種、もしくは三研の魔法か」
「我々は『アルゴス』と称していますよっ!!」
百眼の魔人を自称するに足るだけの魔法だ。人間の集まりによって通常では敵わない相手にも対抗しようという―――互助ともいえる魔法ではある。
これならば、条件付きとはいえ格上の相手とも戦うことは可能だろう。
なるほど。これならば、自信満々にここで迎え撃った理由も分かる。
だが―――。
(アーチャー……ガーンディーヴァの持ち主、アルジュナとの戦いでも試したことだが……)
それをこの場で行う。あの時は刹那が終戦をリズにさせたことで終わったが……。
あのままいけば、インドラから譲られたという炎神の弓を『分解』出来たはずだ。
全身に走る『魔力線』を叩き起こす。同時に自らの身体を……『一つの魔法』と化す。最近では、もはや無用の長物と化しつつある『戦略級魔法』を自身に
その様子に危機意識を持ったのか、岬は無差別な攻撃魔法の繰り出しをやめて、距離をとってから―――『螺旋』の『剣』だろうものを取り出した。
「
剣製の魔術師としての刹那が即座に、その武器の名前を告げる。本人は、メンバーの男をガンドで風邪を引かせたようにしてから、バインドで拘束していた。
負けてられないという想いで、加勢しようとする刹那を手で制して岬に相対する。
「たとえ気絶させて拘束したとしても、私とシュウのリンクは途切れることはありませんよ」
「ああ、一人以上の魔法師の演算領域や魔力容量のようですね……しかも、持つのは英雄フェルグス・マック・ロイの剣か」
どこでそんなものを手に入れたのか……そういう疑問は多いのだが、
「おおおおっ!!!!!」
裂帛の気合と共に、宝具を手に突きかかる岬寛。
とてつもない圧だ。足さばきも一級品。剣さばきもとんでもない。
軍人など、治安機関の職業としての教練をした人間特有の動きだ。
そして持っている得物も一級品。もっとも……ただの人間では……どれだけの
(真名開放は不可能……)
だが、通常の武器として振るうならば、コレほどまでに脅威の
魔力の圧が、そのまま空間を圧迫する物理破壊力に転化する。コレ以上はマズイと想いながら、達也は前進を果たした。
「死に場所を定めたか!」
巨大な螺旋剣。それが回転しながら達也を貫こうとした時に、達也の手はそれを掴みとっていた。
本来ならば、そんなことは出来ない。だが―――。
「!!!!!」
マテリアル・バーストの本質とは、莫大なエネルギーを少量の物質から作り出すことだ。有る意味では、世界に対する最大のペテンだ。
魔術師の等価交換の原則からは外れている。
東京魔導災害で、シオンがこれを最大の禁忌と称した理由も、今では分かる。だが―――。
(己の中にエネルギーを留める。要するに全てを自分の体内に留めておくならば、それを単純な肉体駆動のエネルギーに
サーヴァント級の実力者ともガチンコで戦える。
岬の宝具は達也のエネルギーハンドを無力化してはいる。だが、無力化すると同時にほぼコンマゼロ秒程度の誤差ですぐさまエネルギーが充填される。
「くっ! ただの肉体強化でここまで!!」
「終わらせる」
強烈なエネルギーの総量をカラドボルグの抑え込みに使いながら、眼を『直死』に変更して、線をなぞりカラドボルグを『殺した』。
「バカな……レナ様から賜りし宝剣の一振りが……がはぁっ!!!」
手の中にある重量を失い呆然としていた岬の胸に、掌底を打ち込み気絶させる。
それと同時に、進人類フロントという集団の全てが打ち倒されたのだった。
残る戦いは――――。
「獲ったあああああ!!!!」
ドレス姿のSAKIMORIが、アメリカンなカウガールに突っ込んだが―――。
として、首の皮一枚の所で槍を突きつけられた上で、戦いは止まった。銃を落としてホールドアップするカウガールは、恐怖を覚えていないのか、ランサーを真っ直ぐに見ている。
「どういう意味ですか? アーチャー?」
「言葉通りの意味だよ。タイガー・ロングテイル。私はただの『雇われ』だもの。雇用主が倒れた今―――私が意地を張る意味は無いってこと☆」
不敵に笑うアーチャーことカラミティ・ジェーンに、異様なものを覚える。
当然だ。先程まで、戦いをやっていた相手をいきなり見過ごせと言われて、見過ごすほどこちらも暇ではないのだが……。
「この後に、お前はどうするんだ?」
「そうだねー……他の魔術師や組織に雇われてもいいんだけど、私の相棒は『正義のバウンティハンター』を自称する女の子だから、岬くんみたいな人間にはもう雇われたくないナー」
そこで刹那に眼を向けたカラミティ・ジェーン。受けたことで、刹那は……。
「アナタと仮に契約したとして、何か利益はあるのだろうか?」
「タイガーほどじゃないけど、ワタシもサーヴァント♪ 強いよー☆役に立つよー☆おっぱい大きいよー☆ Jカップだよー♡」
言いながら、胸を持ち上げてセックスアピールするサーヴァント。
どんな自己PRなんだよ。リクルーターとして、どうなんだと思っていると―――。
「ソーユーのは間に合ってるわヨ! セツナが大好きなのは、ワタシに
憤慨するように言いながら、刹那の首に必死に巻き付くリーナ。身体を密着させる辺り、本当にコイツは……
「男というのは移り気なもんだよー。ほら、ハンバーグデラックス弁当ばかり食べていると、ハイパーデラックス弁当を食べたくなるというか。まぁ―――私と契約してくれない?」
そうして、少しだけ縋るような、淋しげな視線を刹那に寄越すカラミティ・ジェーン……。
その言葉の後に刹那は、ひと悶着ありつつも、カラミティ・ジェーンという英霊と契約を果たし……岬及び進人類フロントという団体の野望は終わった。
その様子を知られずに見るものが、そこにいた……。
「サーヴァントユニバースが、この時空に関与するとは……まぁ、それはどうでもいいでしょう。ですが―――このセカイを正すア■■■ア属の召喚の為の礎が、彼にある以上―――セツナ、アナタの運命はまだまだ落ち着きませんね……」
長い小豆色の髪をして、それが愉快なことであるかのように語る美女は、近傍の『海』という依り代からそれを見て『くすくす』と笑みを浮かべる。
「いずれ私もアナタの運命に帯同するでしょうが、いまは……ちょこっとだけ、お母さんの一人として、ティーンエイジャー生活を送るセツナを何も言わずに見守りましょう。けれど、あんまり節操ないことしないようにね〜」
聞こえているわけが無いのだが、そんな言葉を掛けつつ、見えてるはずが無いのに、ひらひらと手を振って、地下室から霧のように消え去るのであった――――。
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後日談的ではあるが、結局の所『岬寛』及び彼に同調したメンバーたちは、全員が逮捕された。
情状酌量の余地もないほどの脅迫及び恫喝行為を行ったので当然だが、それでも寿和さんが『ワッパ』を掛ける前に食べさせた佛跳牆麺・佛跳牆飯を涙を流しながら食べる姿に……出来ることならば、更生してほしいと想うのだった。
彼が、FEHRとの関わりがあったかどうかと言えば、正直―――無いというのが事実らしい。
岬曰く教主様の『使い』という存在が、進人類フロントに接触をしてきて、あの剣を寄越したとのこと。
当初は、『教主様』が自分のことを見てくれていたと思っていたそうだが……正直、あの女が事を起こそうとする手駒(捨て駒)に、そこまで思い入れを持っているとは思えない。
というのが刹那の率直な感想だが、そこはどうでもよくて……カラドボルグの出どころだけは何とか知りたいところだったのだが……無理な話であった。
春先の縁起の悪い事件は、特に大きな騒動に発展することもなく、ちょっとしたアンラッキーなこととして都内を賑わせつつも―――。
時は進んでいき……。
満開の桜が咲き誇る歩道を歩く男女があった。
2人の男女は、静かに歩を進めていく。その先には巨大な学舎がある……そこを目指して、それでもそこにあるものを目に焼き付けながら……。
「一年前は、ここを色んな想いで通ったんだよな」
「ええ、本当にエブリデイがカーニバルみたいな一年間だったわ……」
万感の想いをきっと数時間後に、ここを通る
桜並木の中、落ちていく桜の花弁を身に受けながら、木々の狭間から差し込む陽光を一身に浴びながら感じる。
「今年も平穏無事だなんてことにはならないだろうが、それもまた人生だな……」
自分の『喪失』の起源が最後に残すものは何なのか分からないぐらいに色んなものを得て、失ってきた一年間だった。
怒涛の日々とも言えるし、スラップスティックな日常とも言える。
だから―――。
「ダイジョウブよ。イマのアナタは―――ただ一人の魔宝使いじゃないんだからネ?」
一番、
「頼りにさせてもらうよ。リーナ」
「存分に頼りにしちゃって♪ セツナ」
そうして―――1年前とは違い、新入生を迎える『入学式』に『在校生』として、参加するのだった。
そこにどんな存在がいたとしても、どのような障害となり立ちふさがろうとも……。
(越えていけるもんさ)
ケ・セラ・セラ。
そういう心地も悪くはない。
どんなことでも―――あまり大げさに考えないほうがいいのだ。
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「入試の時に見たな」
「ええ、不器用なエスコートありがとうございました。おかげで、試験には間に合いましたので、とりあえずは感謝を」
なんだか素直に感謝していますとは言い難い物言いに、レオとしては苦笑してしまう。
まぁどうでもいいことだった。一高の入試日。
アルビオンに入る前に山岳部に荷物を取りに行こうとしたレオの前に、彼女がいたのだった。
最初は何かの宗教の勧誘なのではないかと想うほどに、『女学生』という衣装ではなかったシスター服の少女が駅前にいた。
最寄りのコミューターに乗ろうとした際に……。
『もし、そこの方―――魔法大学付属へと向かわれる?』
そう言われた際にシスターの持ち物としては、似つかわしくない電子端末での受験票を示してきた。
そうして少しの問答ありつつも、銀髪のシスターを同乗させて、一高に向かうのだった。
女の子と同乗して学校に向かう。友人2人ならば、殆ど毎日そうなのだろうが、レオにとっては少しだけ新鮮なものであった。
「あの時は、野獣のような体格をした先輩にいつ襲われるのだろうと、内心ワクワクしていたのですけどね」
「うん。感想が180度違うと俺は想うな」
とはいえ、どうやら銀髪のシスターは一高に合格出来たらしく、今年度よりレオの後輩となるとのことだ。
彼女の制服……少し改造されているが、確かに一高の制服だ。校章は……紛れもなく一科のものであり、レオの着る『ノーリッジ』の校章とは違う。
「私としては、アルス・ノーリッジに入って、ロード・エルメロイⅡ世の授業を受けたかったんですけどね」
「刹那の授業ではなく?」
何となくではあるが、この娘も刹那狙いかな?という思いで言ったレオではあったが……。
「度し難い勘違いですね。決して同じモノだなんて思わないでください」
その言葉の意味する所は、刹那狙いの『浅い女』はたまた『軽い女』と一緒にするなという物言いだと理解できた。
悪かったなと軽く言いながら―――ふと名前を聞いていなかったことを思い出す。
「俺は西城レオンハルト、とっくにご存知だろうが、キミの一年先輩にあたる人間だ」
よろしくと快活に言ってから……。
「―――西城先輩―――というのは、なんかフレンドリーさが感じられないので、ここは一つ『レオン先輩』とでも呼ばせてもらいましょう」
とは言うが、『もしくは『ダケン』で』という、どういう漢字を当てるのか分からぬ呟きを足す銀髪に金眼の少女は……。
「―――コトミネ・カレン。と申します―――以後お願いしますね。セーンパイっ♪」
「うわっ、すっげぇ似合わねぇ」
わざとらしく乙女チックな調子を出してきた女子に対して、レオにしてはとても『口汚い』言葉が出てきた。
気心が知れたエリカなどであれば、分かることだ。だが、殆ど知らない相手に対してこんな調子になるなど―――。
ニコニコ笑顔(作ったもの)でいるカレンに驚愕していたのだが……。
「入学式まではまだ時間はありますので、お相手願えますか?」
「いや、これでも役員の一人だから、すぐに見回りに戻らなきゃならない」
「では、それに着いていきます。私のように、少しばかり道に迷った子羊を導くレオン先輩の巡礼に着いていきましょう」
祈りの所作のように、手を組み合わせて目を閉じるシスター少女。
どうしても退かないカレン後輩にどうしたものかと想うも、コレ以上の問答は彼女を退かせられないだろうと結論づけて、連れ立っていけばどこかで気の合う
そして―――その少女が、本年度の主席でありながら次席である『七草泉美』に答辞を譲った人間であることなど、露ほども知らぬ事実であった。