魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~ 作:無淵玄白
特に『ケロQ 枕』のアレは、嘘か真か。本当に判断に迷いましたから。
ただ……ニトロ+は、もうエイプリルフールに参加しないんだなぁ。ちょっと悲しいと想いつつ、新話お送りします。
入学式を終えて、新入生の大半があれこれ教室に向かったり、はたまた帰ったり、去年の自分たちを見ている気分でありながらも、何となく新鮮な気分でもある。
「遠坂先輩、お疲れ様でーす♪」
「入学おめでとう。君たちもお疲れ」
校舎への道のりにて新入生。女子の一団から言われて返した。この一年で顔も知れた刹那だけに、こういう対処は普通だ。
時計塔でも、自分より下の基礎科に入ったばかりの後輩たちの様子を思い出してしまう。
手を挙げてそう言うと……。
「「「アンジェリーナ先輩と仲良く―――♪」」」
「キミらのせいで怒り心頭気味だけどね―――!」
刹那の左隣で腕を取る少女が、一際きつく締め付けてくることで伝わる感情があるのだ。
そんな囃し立てるような後輩女子の一団から十分に離れた所で。
「よかったわネー。ベリーキュートな後輩女子から挨拶されてー♪(怒)」
「モテモテの彼氏で、ごめんねごめんね~」
「ぎにゃー!! ナニも言えないこのリフジン! まさしく、ギャッキョウ!!」
などとネコのように言いながらも、刹那の腕に巻き付くことはやめないでいるリーナ。その2人を先程から見ている男子が一人……。
「やっぱり、僕は一人でB組に向かった方が良かったんじゃ……」
呆れつつも、このバカップルを見ているのはなんとなく目の毒だと思いつつ、そんな風に言うが。
「我がB組のニューカマーたる吉田幹比古を紹介する役目を仰せつかった以上、それはダメだ」
「もしかして、ミキも女の子にキャーキャー言われたかったのかしら?」
こういう風な時には、心を共にしてくるバカップルに、何か言い返したい気分。
「妙な
その言葉に「つまんね」という表情をした2人を前に、幹比古は『釘を差しておいてよかった』と想うのだった。
だが、そんな幹比古のB組編入など、一瞬にして消え去るほどの『ビッグ』が飛び込んでくる。
それによって幹比古の影は薄くなり……。
『なんたるFLOWERSな展開』などと言われてしまうのだった。
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「というわけでB組の新しい仲間たる吉田 幹比古くんだ。
既知の人間や知り合いもいるだろうが、新しい仲間を歓迎しよう!」
『『『『OH! YEAAHHH!!!』』』』
『『『『WELCOME TO B-CLASS !!!』』』』
一同揃っての歓迎の挨拶に面食らう幹比古。
「いつも、こんなノリなのかいB組は!?」
おどろ木ももの木さんしょの木な幹比古は、同じく途中組たるレッドとレティに問う。
「アタシとレティが来た際にはもっとすごかったぜ」
「廊下で待機していても聞こえてきましたからね―――刹那だけは、男子に混ざって声を上げてませんでしたけど」
すっかりレッドもレティもB組に馴染んでそんな風に言う辺り、いいことだと思いつつも、割と切実にこのB組は、転科してきた幹比古を歓迎しているのだ。
「いやー吉田殿が来てくれて感謝感謝でござるな。なんせ新学科たる魔工科への転科者が、一科では最多の4名出たでござるし」
「そうなのかい?」
「ああ、シオンがそっちに移ったのも含めてなんだけど、十三束も、そっちに行っちゃったしな」
後藤くんの少しだけ嘆くような説明に対して、詳細なことを言っておく。
「何よりほか二名は女子じゃなくて『男子』だから……こう勢力図的に女子の意見に押されがちになっちゃいそうというか、なんというか」
相津の汗を掻きながらの言葉に、男子一同同意である。
こんな時に限って、女子と男子で別れてにらみ合うのも、このクラス特有の現象でもある。当然、リーナと刹那もその陣営に与する。
なんなんだろうなと思いつつも……。
(中々に楽しいことになりそうだ)
E組にいた時とは違ったものを覚えつつも、少しだけE組にいたときの郷愁を覚えて、それでも……A組よりも、有る意味では『伸び』を持つこのクラスでやってやろうという気持ちになるのだった。
そんな時に教室の前部ドアが開かれる。どうやら担任がやってきたようだ。
「全員、揃ってるね。席についてくれ。いやーてんやわんやすぎて申し訳ないね。吉田も、こんな形で転科させて申し訳ない」
言葉の前半で生徒全員が席に付き(幹比古の指定席は当然ある)、教壇にいるロマン先生を見る。
東京魔導災害などでも見ていたはずだが、何だか久々に見た気がするのは、魔法医としての彼と魔法教師としての彼が違うからだろう。
「新しい仲間を加えて、またこの一年をこの面子で過ごすことになるわけだが、前年の『色々』で、この一高が良くも悪くも今年も魔法師社会の耳目を集めていくことは間違いないわけだ」
その言葉に色んな意味を持った視線が主に刹那に飛ぶ。
色々の内訳に刹那が含まれすぎだからだろう。
「しかし、だからといって己の修養を疎かにしてもダメだし、かといって後輩の面倒を見ていかなければならない立場に君たちも上がったわけだ。自他ともに出来ることは、力を惜しむな。自分や自分に親しいものたちだけが、上がることだけでは―――ダメなんだからな」
『『『『『ハイ!!!ロマン先生!!!』』』』』
去年は色々ありすぎた。その中でも、突き詰めれば騒動の主題は―――。
―――分け合うもの、分かち合うものなくば、『誰とも分かり合えない』のだ―――
そのことを心身に刻まれてきたのだから。
「うん。男女がある意味では仲良すぎるこのクラスが、その先鞭を着けてくれればと願いつつ、実を言うと……知っている人もいると想うが、僕はノーリッジの学年主任になった上に、刹那とアンジェリーナは、教師補として時折、エルメロイ兄妹のサポートに入るわけだ」
周知の事実というほどではない。知らなかった人間もいるわけで、ざわめきも起こる。
「もちろん主に授業を行うのは、ウェイバー・ベルベット、ライネス・エルメロイ・アーチゾルテなんだが……それでも僕も主任だからね。いざという時はノーリッジ側にいかなければならない」
ロマン先生の言う『いざという時』……というのは、実は既に想定されている。
今のところは静かなものであり、刹那に比べれば2人の存在がいかなるものなのか、未だに不確定な他の魔法科高校はまだ何も言っていないが……。
「だからといってB組のことを無視するわけにもいかない。これは当たり前だ……しかし、急遽の異例ではあるが―――『副担任』を着けることが決まった。僕が不在でカリキュラムをやる時は、彼女が実技授業のコーチングをしてくれるはずだ」
その言葉に刹那も『誰だろう?』と思った。彼女ということは女教師か……魔法科高校の教員資格というのは、結構曖昧なものであるが……。
(今後、どうするかは疑問だな)
真面目にそんなことを考えつつ、ロマン先生の招きに応じて少しだけ聞こえた声の質。
聞き覚えのある声が聞こえたと思いつつ、入ってきた女性の姿に誰もが驚きの声を上げた。当然ではある。
昨今まで秘密主義の塊として、その容姿は……まぁ知る人は知る程度であった。
だが、もはや全てが晒された(色んな意味で)とも言える女史の姿に驚きが出るのは、当然―――変装ぐらいしとけばいいのに。という真っ当な意見もあっただろう。
隣のクラスの『姪っ子』がどう考えているか―――なにはともあれ。
「今年度からとりあえず一年間、皆さんを指導していくことになりました。副担任の『四葉 真夜』です。
私も教職に就いたのは初めてなので、至らないこともあると思いますが―――皆さんが至りたいもの、なりたいものの一助になれればと想っていますので、よろしくおねがいします」
((((
一礼をしたスーツ姿の美女に思わず4人ほどが吹き出しながら、ベタフラッシュトーンでも背後に作りそうなのだ。
もうどういうことなんだってばよ。ということで『ご親族』に緊急メール。
「と、遠坂くんがいつになく凄いタイピングでメールを打っている!!」
「明日は槍でも降ってくるのか!?」
相津と斎藤がなにか言っているが、構わず刹那はメールを送った。数秒の待機の後に……。
『すまん。俺も今日になって知ったんだ』
魔工科の主席生から、そんな簡素な言葉の返信であった。
「あらあら、出席番号18番の遠坂君。一応、まだ私の話は終わっていないんだから、そのように他ごとをやるのはどうなのかしら?」
そんな自分の行動は分かっていたらしく、初対面の人間を装いつつ、そんな風に戯けて言うベッキー(正)に謝りつつ、疑問を呈することに。
「これは失礼。ただ……四葉先生が、ここにいる理由を、ご親族に確認を取っていたんです。あなたの処遇に関しては私も関わりになっていただけに、疑問がありますので」
一応は人質身分なだけに、その辺りはどうなんだろうという気持ちで、こちらを見てくる四葉真夜に返した。
「まぁ確かに私は人質ですからね―――ただ、あのまま家猫のように七草家にいるのも……なんというか居候として肩身が狭かったんですよ」
八ツ墓村の井川鶴子のような扱いは受けていないだけマシだが、四葉の家にいた時とは違い、まぁ色々と思うところはあったのだろう―――。
「それに……籠もっていると、弘一さんに昼でも構わずに『求められちゃう』んだもの。悪い気はしないんだけど、こちらから離れることでちょっと節度を保ってほしいのよ」
―――などという、こちらの懸念とか心配をあっさりブレイクしてくれるのだった。
頬を抑えながら、困っている風に見えて、全く困っていない四葉先生の言葉の意味を理解して、大半の生徒は真っ赤。
一人だけ―――。
「
うんうんと目をつむり頷くリーナの言葉に、更にB組一同真っ赤。
ツッコむにツッコめない空気の中。
「あー……ミス四葉。あんまり青少年にアダルトな話題を振らないように」
―――勇気を出したロマン先生に感謝するしかなかった。
「あら、ごめんなさいドクターロマン。けれどこのクラスは『ちんちんかもかも』な魔法科高校でも珍しい学級という話でしたから、私も同じですよと親近感を出したかったんですけどね」
「おもいっきり裏目ではないが……まぁとにかく、知っている人は知っている通り、四葉先生は僕の患者でもあるからね。何かあった時のために、という措置だ。当然、七草前会長の父親からも了承済みだ」
その言葉で、そういえばそうだったと思いつつ、そして十師族の七草といえば前代の生徒会長。今代の新入生総代を想って―――それならば納得と想っておくのだった。
それゆえに。
「はいはーい!! 新任のマヤ先生に質問でーす!!」
「はい。えーと……出席番号2番の明智英美さんですね。
私が答えられることであれば、答えますけど」
にぎやかしのエイミィが、収まりかけた空気の中にそんな混ぜっ返しをするのだが……。
「ズバリ……そのナイスバディの秘訣を知りたいです!! や、やっぱり四葉は精神だけでなく肉体改造の秘術でもあるのでは? このクラスのフラットチェスト代表として、私、気になります!!」
「え、ええー……そんなものはないんですけどね……けどよく考えてみれば『双子』でも、私の方が姉さんよりも大きかったわ」
出産を2度も経験している『姉』のことを考えて、なんか言っているが……それでも伝えることに。
「月並みだけど、牛乳を飲むことかしら? というか、そういうことならば……アンジェリーナさんには聞かなかったの?」
「「「「リーナの育乳なんて、女子の大半は実践出来ませんよぉ!!」」」」
エイミィと桜小路を筆頭にした血を流さんばかりの主張にB組女子の半数が同意して、これ以上この手の話題は『ナシ』だとして、仲裁を図った相津郁夫によって、一応は収まるが……。
「四葉先生の登場で、僕の1科デビューが完全に奪われちゃったなぁ……」
「「「「ドントマインド」」」」
慰めの言葉を掛けられるも、ほろりと悲しき涙を流す幹比古の状態は、正しくFLOWERSの『ヨハネ』なのだった。
そんな賑やかなB組の様子は、超絶な能力者が多すぎるからか、声がチカラを持っているのか、防音壁を越えて隣のクラスにも伝わっていた……。
「
「男女も特色ある人材がいるもんね……」
「一人ぐらいは刹那の周りから女子がいなくなればいいのに」
防音壁越しにも何故か聞こえてくる隣のクラスのにぎやかな声に恨めしい想いを抱くA組の女子3人。
百舌谷教官の、A組こそ2学年のトップであるべきだという、演説なのか説得なのか分からない言葉を右から左に聞き流しつつ、進級してからの初顔合わせは……なんとなく味気ないと思いつつ、その担任教師の『頑なな態度』こそが、のちに大きな混乱となるのであった……。