魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~ 作:無淵玄白
どっと疲れたという訳ではないが、入学式と始業式の連続強行スケジュールは中々に凄かった。
全員がアレコレと動いていたとはいえ、疲労はそれぞれの肩に乗りかかった。
明日、明後日が休日で本当に助かった気分だ。ただリモートで先生方と話し合うことも有り得るだろう。
「今さらながらお互いに進級おめでとう」
「オメデトー♪ 」
テーブルの中央でグラスを打ち合わせながら、お互いの顔を見る。
((疲れが見えている……))
何とか作っている笑顔に、そんなことをお互いに想っていると―――。
「セツナん、リナりん! オメデトー!!」
「少年老い易く学成り難しとも言いますしね。おめでとうございます2人とも……というわけで晩酌させてもらいますよー♪」
二騎のサーヴァントが、祝いの言葉と同時に呑もうとしているのだった。いや、いいけどさ。
「ありがとう。ジェーン、お虎……お虎はともかくとして―――ジェーン、いやアーチャー……リーナがあげた服を着てくれないか?」
露出
「けど今日は
「ジェーン! もう
恋人を惑わすHOTSEXYすぎるアメリカンに対して、同じアメリカンが、理を用いてストップを掛けたのだが―――。
「ナルホド、今日のエールはベッドの上が適切―――」
一言返せば、二言目には、この顛末。ダメだ。この金剛型戦艦……はやく提督(?)に引き取ってもらわなければ。
「いらんわっ! 疲れているんだから普通に―――………寝せてはくれなさそう―――ですかね?」
言葉を紡ぐ都度、恋人リーナと二騎のサーヴァントの眼が『輝く』のを見た気がする。ヤバい。なんか色んな意味で『食われる』未来は確定した気がする。
いやまぁ、魔力供給が必要なのは分かっているが―――。ただアーチャークラスもランサークラスも、燃費という意味では、そこまで必要なのかとか、色んな疑問符は尽きないまま―――。
「と、とりあえずご飯にしよう。グガランナも月毛も『いただきます』を待っているしさ。なっ?」
逃げの一手を打つことで、とりあえずエロスな空気を回避するのだった。
問題の先延ばしとも言う。ともあれ、今日起こったことをお互いに言い合う。
「セツナはイズミの面倒を見ていたわけだけど、なにか変わったことは……ないわよね?」
「いつもどおり、あの子は深雪にべた惚れ状態だからな。ただ気づけたこともある。琢磨のヤツが一高を受験しなかったらしいからな」
何気なく生徒会役員の候補―――主席ではないとはいえ、総代を務めた泉美にお鉢が回るのは当然。
だが、何となく一年生の名簿をざっと流し読み、同時に魔術回路で名簿の名前を精査したが、あの天パ男の名前はなく、何処に行ったかは予想外のところから齎された。
「タクマ・シッポウ―――あのボーイに何度も挑まれていたセツナとしては不服?」
「特にないかな。アイツが親御さんと考えた上で三高にいったというのならば、俺がアレコレ言うことでもない。何より―――『サイノウ』というのは多少はバラけていた方が個別に輝けるもんだ」
一概に言えることではないのだが、一年からエースを張れるような
同じ学校に十人以上もエース級がいれば、埋没してしまう可能性は高い。
もっとも、琢磨の考えには『四葉、七草、九島のいるところでは俺は輝けない』というある種の『逃げ』的なものも見受けられる。
エース、トップを奪い合う争いも、また一つの考えだ。
多くのサイノウを押しのけて自分こそが『頂点』に立つ。そういうガッツある考えもあったのだが、琢磨の場合は完全に逃げである。
そう結論づけた刹那に対して、西京焼き(サバ)を食べていたリーナは口を開く。
「ケド、ソレってエルメロイ教室にいた『アナタ』からすれば『おまいう』すぎないかしら?」
「ご尤も。少数精鋭を誇るエルメロイ教室だが……まぁ結局の所、生徒それぞれで『専攻分野』が違うのに、そいつら全員を「まとめて」指導できる先生がヘンなんだ」
「嬉しそうに言うわネー……」
各学部にいれば、『トップ』を張れる才能の塊。そこから放り出されて、指導を放棄された原石たちを導いてきたのだから、先生の手腕は凄すぎる。
ある意味、エルメロイ教室においてサイノウは『バラけていた』。
「要するに各専門学部が、魔法科高校の1〜9の区分で、そこで『指導しきれない』あるいは『水に合わない』として出された、出てきた連中の受け皿としてエルメロイ教室があったんだな」
もっともこれに関しては草創期の頃の話であり、刹那の親世代の入学者……ルヴィア、綾香なんかは最初っから指導を願い、先生の元に集ったりしている。
「……とんだ
「全く以てその通り」
実際、ロンドンでも日本の『MANGA』は知られており、スラダンの名監督に準える生徒も時計塔にはいたのだ。
「ケド、そんなアンザイセンセーを一高だけで独占しちゃってていいのかしら?」
「ソレに対しても既に腹案は出来ている。ただ、それを各校が受け入れるかどうかなんだよな。まぁいいさ。あんまり今から考えすぎても―――ハゲるだけだ」
刹那の言葉に、『考えすぎてる男』を想像したのか小さく吹き出すリーナ。
「教育を行う場としては、色々と足りていませんでしたからね。エルメロイ師の登壇は色々と不足を補いますかね」
「だろうな。お前も武道系の連中を教導してくれや」
「やりすぎないように、加減せざるをえませんけどね」
お虎も昔は『寺』で色々と学んでいただけに、そういったことは考えてしまうようだ。
「セツナん、ワタシは―――?」
「ジェーンは……まぁ普通で」
森崎や滝川、そして他の魔法スポーツクラブならば、それなりに重宝されるかもしれないが、こんな『バインバイン』なスパロボ演出しかねない女、サークルクラッシャーにしかなりえないので、ちょっと自重してもらうことにしたい気持ちの刹那である。
「ノーマルでってどーいうイミー!? 大体マスターは、ワタシのポテンシャルを分かっていないよ!」
だが、そんな刹那の心を解してくれないのは当たり前で、怒るようにジェーンは言いながらもイカの腑煮込みを掛けたご飯を頬張る。
「ポテンシャルって……別に頼りにしていないわけじゃないって」
実際の所、ジェーンのアーチャーとしての能力値は高い方なのだろう。サーヴァントユニヴァースなるよく分からん所から来ただけに、『本物のカラミティ・ジェーン』ではないのだろうが。
それでもそのチカラは紛れもなくわかるのだ。
「そうじゃなくて! ワタシと絆を深めていけば、違った霊基のワタシに出会えちゃうんだよ♪ 例えばセイバークラスの霊基を得れば、切り裂きジェーンなソードカラミティに!」
「「それ違うカラミティだろうが!!」」
そしてジェーンは、白鯨の方である。どうでもいいことだが。
「ビーストの霊基を得れば、マシュマロ以上のデンジャラスビーストな
「銃ではなく、乳房が4つになるとか物の怪の類になるつもりか、ジェーン」
お虎の中での
「そして―――飛行及び飛翔を可能とするサーヴァントが多数在籍するランサークラスの霊基を得れば!!」
ジェーンの演説はとてつもない熱を帯びていき、夕飯を食べる速度もフェステニア・ミューズ(?)並になる。
喋りながらメシを食うな。と嗜めるべきかと思いつつも、この際だから最後のカラミティを聞こうと想って、そのままにしといた。
そして―――。
「マスターをバリバリ応援しちゃう。最強にCUTE&SEXYなチアリーダー♪ エールカラミティになっちゃうんだからネー♪」
「「「前フリが何一つ掛かっていない!!」」」
どっから出したのかポンポンを持つジェーン。『YEAHー♪』と言ってくる。確かに『跳んでる』が『飛んでない』。どうでもいいトンチを考えてから思考を巡らす。
今さらながらこんな風な英霊までいるとか、サーヴァントユニヴァースってなんなのさ。そこにいるお袋っぽいサーヴァントとか、色んな意味で刹那を困惑させるのだが……。
「そんなにまでもダメ? マスターセツナんのことを応援するのは迷惑?」
いきなり『うるっ』という眼で見てくるジェーンに『弱くなる』。俗にうるうるポーズという拳を2つアゴ近くにやるものをしてくるのだから……。
「め、迷惑じゃないです……色々と応援オナシャス」
「ナンデそこで、強く出れないのよっ! けれど―――本当にソンナこと出来るの?」
「ソレは後々のお楽しみ。そしてユニヴァースの脅威……スペース新陰流のあとに出てきたプロフェッサー・スペースエレガントとの対決のためにも……」
「ためにも?」
何だか脅威の存在を語るジェーンを促すお虎。戦の匂いに敏感な武将であるが。
「マスターにはワタシと絆を高めて、霊基を強化してほしいのデース!!! 具体的にはチアリーダーのキング。チアキングになるぐらいに!」
「きみのぞっ!!」
「中の人が変わっているではないですか」
普通はクイーンなんじゃないかと想うも抱きついてきたジェーンを押しのけられず、その柔らかさに酔ってしまう。お虎のツッコミも何だか遠い。
「うにゃー! セツナの酒池肉林の相手は、妲己な声(?)のワタシだけよ―――!!」
言いながら背中に抱きつくリーナ。頼むから黙ってメシぐらい食わせてくれと思いつつ、それでも……その柔らかさに癒やされるのだった。
そんな騒がしい夕飯時とは違い、静謐を宿した場所においても夕飯は行われていた。
そんな言葉少なな家族団らんの中で衝撃的な発言が飛び出した。
「好意を抱く男性を見つけました」
その言葉で父が呻き呑み込んだマーボーを吹き出しそうになり、母が『あらあら』と少しだけ嬉しそうな顔をするのだった。
「その男……共産主義者ではないだろうな?」
「特に私の信仰に対して物申してはいませんよ」
「そうか、付き合うのか?」
「さて、付き合えるかどうかはまだ分かりません。何せ、彼女持ちらしいので」
「パパはそういう恋愛はよくないと思うな。クラウママとて同じ意見だろう?」
「カレンちゃんが好きだと言うならばいいと思うわ。キレイさん。ダメかしら?」
笑顔を向けながらの妻の答えに『言峰綺礼』は悩む。娘の恋愛という父親にとっての難事が、赴任地である日本……綺礼の故郷で発生するとは想っていなかった。
(これならば女学校に通わせるべきであった)
上の方から下された命令の性質上……仕方ないのだが……
「まぁいい。カレン―――パパは積極的に応援出来ない。そのような恋愛は―――。だが……例え付き合えることになったとしても多くの人を悲しませないようにしなさい」
そんな風な戒告をするも。
「お父さんには、私のダーリンは紹介しません」
そんな言葉で、少しだけ邪険に扱われるも……。
「ただ、それでも本当に連れてきたときには、ちゃんと向き合ってくださいよ」
「カレン……」
少しだけ赤くなった頬のままに、将来のことを語る娘に―――。
(絶対に我が友『ジェームス』の如く、『キミのような男に娘はやらん』と言ってやろう)
そして、そのままに『絶招』を叩き込んでやる。黒鍵を撃ってくれる。
娘を持つ父親が陥る悩みに至っていた神父は、今回の任務を下賜してきた枢機卿を少しだけ恨みに思うのだった。
「カレン、その男の子の名前はなんて言うんデスか?」
「西城レオンハルト先輩です。お母さん」
(
無言での宣言に埼玉住まいの男が少しだけ『ぶるり』と震えたりしながらも―――各々にとって貴重な2日間の休日の後―――遂に、魔法科高校の授業は始まりを迎えて。
「それでは―――授業を始める―――」
伝説の教師の授業も、この世界にて始まりを告げるのであった……。