魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~   作:無淵玄白

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第316話『食戟のセツナ』

 

 

「―――さて、では続きを誰かに朗読してもらおうか……柴田くん。お願い出来―――……む、むうう。まさかまさかの居眠りとは、ダ・ヴィンチちゃんショック!」

 

「いや、そういう意味での居眠りではないと想いますよ。美月は、希少な魔眼を持っているとはいえ、身体スペックは並の人間ですから」

 

体力モリモリ(爆)のレオやエリカとは違い、流石に彼女では、強行スケジュールには対応しきれなかったようだ。

 

猫の手も借りたいほどの忙しさの中、美月も頑張ったわけであるが―――。

 

まぁ動きが少ない魔工科の授業では仕方ない気もする。さりげなく、『精霊の眼』でエルメロイ教室の様子を少し覗いていたらば。ダヴィンチちゃんに怒られもした達也である。

 

「とはいえ、私とて講師であり教師だ。居眠りは許せないぞ。というわけで千秋君、頼めるかい?」

 

了解(ラジャー)デアリマス」

 

何故かロボットのような返事をする平河が、この科では数少ない女子生徒の一員として、美月に接触を果たす。

 

「ミヅキチャン、ミヅキチャンオキテ―――」

 

やはり設定はロボ娘のようだが……少しだけ揺するようにした平河に対して。

 

「うふふ。ごめんね〜それは義理チョコなのよ〜♪ 」

 

「―――」

 

そんな寝言が返されて平河絶句。聞いたクラスメイト全員も絶句。

 

「可哀想、本気にしちゃったのね。私ってとっても罪なオンナ♪」

 

「え゛ええ……」

 

完全にSAN値ピンチな状況に陥った平河。更に美月の寝言は続く。

 

「あっ、もうコンサートの時間ね。ファンの皆が待っているの。私の高速ドラミングあってのザ・マッドサタン(放課後ティータイム)だから〜♪」

 

((((((どんな夢見てるんだ(ですか)?……)))))

 

全魔工科生徒が驚愕しつつも、腕輪から先端にプラグ(接続口)を着けた糸を出したシオンが、美月の頭頂部に突き刺した瞬間。

 

「ぶふほぉっ!!!」

 

かなり『スゴイ』映像を見たらしく吹き出す始末。果たして彼女は何を見たのか!?

 

そして――――。

 

この魔工科(アトラス)の責任者たるレオナルド・ダ・ヴィンチの英霊―――イタズラを思いついたような『イイ顔』のダ・ヴィンチちゃんが美月に近寄っていき……。

 

耳元で囁くように声を…掛けてきた。

 

「帰れ、還れ、カエレ、カエレ、帰れ――――」

 

とたんに『夢見心地』な美月の表情が苦悶に染まる。

 

クリアなボイスでとんでもない武力介入(夢)。ダ・ヴィンチちゃんの悪意が見えるようだ。

 

「ヒ、ヒドイ! 今日はみんな私のために集まってくれたんじゃないの……!? あんまりよ!!」

 

何故にドラマーのために、そこまで集まると想っているんだか。

Y○SHIKIのパフォーマンスのように、ヘッドシェイクがすごくてドラムを破壊するようなことでもありえるのか?

 

……美月の夢には色々とツッコミどころが多かったが……。

 

「「「「「情け容赦ない仕打ちだ……!」」」」」

 

何はともあれ、主任講師は厳しいということに気付かされた魔工科一同は、気を引き締めるのであった。

 

そして美月の夢にジャックインしていたシオンは……。

 

「ヤック・デカルチャー……!」

 

何を見たのやらというゼントランの言葉で驚愕を表すと同時に、チャイムが鳴り響く。

 

「―――などとやっている内に予鈴だな。では、午前はここまで、日直、号令を」

 

美月のイン・マイ・ドリームなドリーム・ゲームを引き裂くように、昼休み時間は始まるのであった―――。

 

 

 

 

―――食堂―――

 

学生たちが屈託なくメシを食べて他愛ない話に興じながら、午後の授業や、その先の話題に華を咲かせる場所。

 

多くの生徒達が交わる場。

 

本来ならば、それが正しい姿なのだが……。

 

「先日は俺の料理人としてのプライドが傷ついたからな。リベンジだ。言峰カレン」

 

「そこまで私を己のハーレムに入れたいとは……呆れた下半身の節操の無さですね。助けてくださいレオン先輩♪

NTRされる前に、私を身も心も虜にして」

 

戦いの場が出来上がっていた。料理マンガならばありがちな展開に、何人かはなんだコレ? と想いつつも、訳知りの人間に事情説明を求めていた。

 

「始業式・入学式の日に俺と刹那が昼食を食べていたところに、一年主席の言峰が現れて、さんざっぱら食っていき、そして『私の好み』ではないとして去っていったんだよ」

 

辛い料理が好みなんだろうとして『山椒』『花椒』山盛りに掛けて食べていたよと、エリカに説明した。

 

「というか私、あの子に見覚えがあるんだけど……気のせいかしら?」

 

「多分だが……魔獣嚇との最終決戦の際にやってきた―――マジカル紙袋だな……やたらとレオと接触(スキンシップ)を取っていた辺りに、何か感じ入るものはあるんだろうな」

 

他人の恋愛ごとにあれこれ言いたいわけではないが、レオがラ・フォンの宇佐美夕姫―――バーチャルアイドル『雪兎ヒメ』と付き合っていることは周知の事実。

 

こんな横恋慕を友人として見過ごしていいのだろうかと想いつつも、人の恋愛に口を出すほど暇ではないので、そこは置いておく。

 

―――と、しておきたいが、それはそれで無情だなと想いながら、刹那が言峰を満足させるために作った料理、おそらく中華だろうというものを楽しみにしておくのであった。

 

「ちなみに、ワタシも今回の調理には参加したワ。マイダーリンの料理をけなした借りは返す。倍返しヨ!」

 

「ご夫婦の愛が私の味覚に影響を及ぼすとは思えませんが、とりあえず期待しておきましょう」

 

何を作ってきたのやら。というかリーナが手伝ったということは―――どんな料理になるのやら。約一部を除いて一高生徒たちは、戦々恐々とする。

 

いつもどおり弁当箱を取り出して、そして―――。

 

「待て、最後の仕上げが残っている」

 

最後の仕上げ。言いながら、刹那は弁当箱を持っていき―――。

 

 

 

「えーと……温めはこれでいいよな」

 

一高生徒で弁当組には御用達な電子レンジを作動するのであった。そんな刹那の少しばかり辿々しい様子を見て。

 

「セツナ、あんまり温めてもカレンが即座に食べられないかもしれないから、これぐらいがベストよ」

 

横から密着する形でリーナが、タイマーを調整するのであった。

 

「そうか。まぁ細かな点はまかせ」

 

「ノンノン! こういう場合は、意中の男子から『ふーふー』してもらうことを意図して、若干熱めにしておくのがセクールですよ!」

 

刹那の言葉が途中で遮られたのは、フランスからの留学生レティシア・ダンクルベールが、刹那の背中に乗っかり、身を乗り出すようにして加熱の設定を変えてきたからだ。

 

「ぶっ! ちょっ、レティ! いきなり背中に乗っかるな!」

 

「私の胸の感触を刹那に覚えてもらおうと想いまして〜。ちゃんと味わってくださいよ〜」

 

流石に鍛えているだけに転ぶことこそなかったが、それが余計にレティとの密着状態を作ってしまっている。

 

毎度思うことだが、どうにも刹那の周りには積極的な女の子ばかりが集まる。それが、このワンサマーな騒動を作り出す。

 

日本の大和撫子的な価値観とは真逆のそれが―――モードレッドが右腕に抱きつこうとした瞬間。

 

「刹那! そういうの真っ昼間からやらない!! 私、今年度から風紀委員だから、そういうのは許せないよ!! いや、今は活動時間外で権限があるわけじゃないけど……女の子を何人も侍らせる!! そういうのは―――良くないよ!!」

 

「すみません! けど俺が主犯じゃないってのに……ちょっとなぁ」

 

まぁ刹那からすれば理不尽な気持ちであろう。そして注意した雫も、その辺りは分かっているからか、注意も厳しくはない……実際、雫も自分の言葉が、半ば嫉妬の類であると理解しているのだろう。

 

「侍らせていたわけじゃないと思うがな。第一、セツナはオレやレティのチューター(指導役)であることは継続中だからな。教師補で指導役―――そんな風なセツナに対するオレ―――アタシたちなりの癒やしなんだぜ」

 

しかし、レッドから思わぬ援護射撃が入る。

 

「そ、そんなことをしなくても……」

 

「ソレ以外にも、刻印や回路を連結させることで、ある程度の情報のやり取りもしている。色々とセツナには世話になんなきゃならないからな。赤軍の暴虐に対抗すべく、東欧の民主主義国家にエクスカリバー(精密誘導兵器)を提供したかつての英国にならっているだけだ。悪いなシズク―――」

 

ちょっとだけレッドの言動がズルくも感じた雫は、完璧に膨れっ面だ。

英国にて、聖剣エクスカリバーの『魔術基盤』を打ち付けた話は、魔法師界隈でのちょっとしたニュースであった。

 

おおっぴらに報じられたわけではないのだが、それでも『何か』を感じ取ったものは多いのだ。

 

そういう意味でも刹那とレッドは色々と関わりを持つ必要がある。それが積極的なスキンシップにまで至るという理由にもつなげるという……。

 

(中々のキレ者だな)

 

それが『真実』でなかったとしても、確かめようがないのだから―――。と達也は考えつつ、そろそろご相伴に預かる頃だと気づいた。

 

「待て待て、雫も職務を遂行しようとしているのは分かっている。俺の仕事の忙しさからこんなことになってしまったのは、申し訳ない。だが、とりあえず今は昼食を摂ることにしようじゃないか。何かA組の連中がボロボロで雫もだからさ。早めに食事にした方がいいよ」

 

「知らない人が傍から聞けば、完全に浮気男の取り繕った言い訳ですね」

 

「ダマレ、後輩」

 

近づいて『ボソッ』と呟く言峰の言葉に刹那は返しつつ、『チーン』という古典的な通知音で、温めが完了したことを理解する。

 

この間、電子レンジを使いたい人々の邪魔になっていたことを考えれば、厨房で鍋を振るって、全員分を作った方がいいのではないかと刹那は想いつつも―――。

 

 

「言峰カレン、これが今の俺とリーナが作れる全力の麻辣中華!!――――ラー油の炒飯だ!!!」

 

弁当箱を開けた瞬間、飛び込んでくる湯気! そして湯気!! 美月や刹晶院の眼鏡が曇るほどにとんでもない熱気。

 

それが晴れた時、その向こうに広がる光景は―――――――。

 

 

「「「「「真っ赤っか!!!!!」」」」」

 

 

一般的な味覚の持ち主ならば、まず恐れおののく『あかいあくま』(真紅の炒飯)が、存在していたのであった………。

 

 

 

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