魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~ 作:無淵玄白
都合、新学期であり新年度が始まってから一週間が過ぎようとしていた。
そして、この辺りで遂に『あること』が始まることを、上級生たちは認識していた。それは高校生活においては、それなりに重要なものであり、そして場合によっては勉学以上に何かを自分の中に残すものである。
要は――――『新入生部活勧誘週間』が、一高において始まろうとしていた。
「副会頭、コンバット部と射撃部が、部活勧誘の順番で不満を漏らしています」
「それならば、同じような『部活』で競合を避けるために、バイアスロン部と共同で、プレゼンの時間帯順番で『連番』にするか、『バラける』か―――バラけるで、そして1,2,3の順で決着着いたはずだろ?」
「それが今さらながら、3部でいがみ合いが発生しています……」
同級生である男子の戸惑う言葉に『止まりそうにないな』と考えたレオは……。
「よし、刹那に連絡してアーチャーを派遣してもらう。『荒野の災厄』に『射撃』で、プレゼンを強さ順で決めてもらおう」
「なんて単純明快な……まぁジェーン特別講師ならば適任か……」
「それでも収まらないならば、アミダでもじゃんけんでも、自分たちで『穏便』に決めるように言ってくれ。この間に『出た目』をひっくり返すならば、後腐れないように決めさせるだけだ」
副会頭という役目に就いた2年F組の西城レオンハルトだが、まさかここまで部活間で、立て続けに『トラブル』が発生しているとは思わなかった。
だが、さもありなん。魔法科高校では魔法競技の関係上『似たような競技種目』がかち合うことが多いのだ。
山岳部で、基本的に他の部と競合することがないレオは、少しばかりカルチャーショックを受けた。
硬式野球と軟式野球の違いとか、同じ硬式でも高校野球前の小中学生時代には『シニア』『ボーイズ』『ヤング』『ポニー』などという風に区分けされていた時代があったように……。
というかその区分けが、そのまま『高校』でもあるのが、魔法科高校だったりするのだ。
格闘系部活とて『マジックアーツ部』も『クロスフィールド部』もある……要は―――『面倒』なのだ。
「随分と大変そうですね」
「そりゃ大変さ。我の強くて自己主張ばかりが激しい魔法師が集まり、高校生活を送るんだからな。ぶつかり合いはしょっちゅうさ」
「ですが、矛を収めるべきところで収める辺り、まだ理性的ですね。汝の隣人を愛せよとは、主の教えですので、デミヒューマンが信仰に目覚めることを祈ります」
布教活動かな? と想うぐらいに、いつの間にか入り込んでいた女子。お家が十字教であることは知っている。
銀髪、金眼の美少女―――何故か、自分に構うその理由は……。
「アモーレというやつなのでしょうね。レオン先輩に対する感情は」
「人の心を読まんでくれ……で、何用だよ言峰?」
「ズバリ言えば―――お手伝いに来ました」
その端的な言葉に、『どういうことだ?』と聞くと。
「ホワンホワンホワン~コシミズ~~~(?)」
魔法の言葉で回想シーンが始まるのだった。
当初、総代答辞こそ断ったものの、一学年主席である可憐で可愛い超絶美少女のカレンちゃんは、パパであるファーザーキレイから……。
『カレンちゃん。パパの手伝いは嬉しいし、有り難いが、 スクールで任された仕事も重要だ。リセイおじいちゃんも、それを願っているはずだ』
そう言われた世界の美少女マジカルシスターカレンちゃんは、『生徒会は泉美で決定だから、部活連でレオを助けてやれや』
そう、魔法師界のスパダリ(駄犬)に言われたことで、ここまでやってきたのである。以下――――――ここまでカレン・コトミネナレーションでお送りしました。
「ということなのです」
「な、なるほど……事情は分かったし、手伝ってくれるなら大助かりだが……」
いまのところ、実力行使が必要な事態も起きていない。風紀委員も順当に活動できているわけであったのだが……。
「心配いりません。その内、騒ぎは起きますよ♪」
「起こさないようにするのが仕事だ――――――」
何かの確信を以て、語る言峰カレン―――レオの傍に近寄る彼女。彼女が近づく度に、レオの『同居人』が――――――
『ちょっ、
などと喚くのだ。何か前世からの因縁でもあるのだろうか。そんな風なことを考えながらも―――事態は、裏で進行しているのだった。
「では、その前に書類仕事を完了させましょうか。チャリティーはあって悪いものではありませんからね」
言いながら、後輩女子と一緒に、書類精査というか予算分配及び各部で要求された予算が適正かどうかを見ていくのであった……。
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「ばきゅーん☆ これが最後のワイルドカード!!」
金髪の美女から放たれた魔弾が、最後の相手……森崎のシュート・ターゲットたる頭皿を撃ち抜いた時に勝敗は決した。
「よし、コンバットシューティング部が1番目、バイアスロン部が2番、操弾部が3番手―――これ以上順番で揉めることがないように」
「「「はい!!!」」」
「おねーさんとの約束ダゾ☆ 守ってね!」
「「「は、はいっ!!」」」
刹那の言葉に応えたのが滝川などの女子部員ならば、ジェーンの言葉に応えたのが男子部員、森崎・五十嵐などである。
レオの要請に従った結果であるのだが……これで収めてくれやと想う。
生徒会役員である泉美から解散を指示されたことで、めいめいの体で去っていく。
「それじゃセツナん。
「はいはい。ありがとう」
ぽん! という軽快な音で、マスコット化したアーチャー=カラミティ・ジェーンが、セツナから離れてどこかに行く。その様子を見ていた泉美は……
「なんというか刹那先輩の
「……真面目?」
これは異なことを言うお嬢さんだこと。思い悩むようになる泉美に、苦笑気味にそう感想を述べつつ、巡回に入る。
「エルメロイ教室は随分と盛況ですね」
「そりゃ当たり前だろ。ウェイバー先生の指導は誰だって受けたいもんさ」
この部活勧誘週間前の日々は凄かった。それなりに、事前勧誘だってあると想っていたのに、それを無視して放課後には、一年生の殆どはエルメロイ先生の執務室に向かうこととなったのだ。
それも1科も2科も関係なく、また2年も3年もあり、やむを得ず整理券を発行することになってしまった。
例外なのは、『3年』であるために、魔工科の授業を受けられないことに嘆いた中条会長が、『ダ・ヴィンチちゃんの工房』に赴いたとか、その程度だ。
「んで、何か聞きたいことがあったんじゃないか?」
「おや? 可愛い後輩女子と放課後の学校廻りが出来ることに、嬉しさはないんですか?」
戯けた言い方に苦笑しつつ、こんな風に見回りをしている原因を言うのであった。
「お前が無理やり『同行者は刹那先輩でお願いします』と指名したんだろうが」
その時のリーナの表情たるや、見れないものであった。
「愛が深いと考えるべきか、それともヤンデレ一歩手前と取るべきか……」
「男としては冥利に尽きるんじゃないですか?」
「まぁそうとも言えるか……だが、こういうことはもう勘弁してくれ」
フォローを入れられない後輩の立場なのだからとは言わずとも、言外の言葉を受け取った泉美は……。
「やれやれ。これだから一途なモテ男は、女子にとって困りますねぇ」
「普通じゃないか」
大げさなポーズを半眼でやる泉美に、『昔はアナーキー』だったことを考えると、色々とウソはついているかと考える。
「で、結局なんなんだよ?」
「実を言うと香澄ちゃんが、最近……エルメロイの男子『刹晶院』って言うヒトと頻繁に会っていまして……」
「他人の恋愛にアレコレ言うつもりは無いんだが、ふむ。少しばかり相手が相手だからな」
ナーバスな話ではあるが、別に一年前のように『誘導』『洗脳』されているわけではないだろう。
少し前に「保健室」に行った際に、カウンセラーのCCさく―――もとい小野遥より『三席の方の七草さんを『風紀委員』やってみないと言ったんだけどねぇ』
当人は風紀委員では自分の『目的』が達成されないなどと宣っていたとのこと……。
「まぁ刹晶院に何か感じたのかもしれない」
「何かって?」
「運命とか。ひと目見てピンと来たのかも知れない。決して分かたれることの無い運命があるんだって」
「え゛え゛え゛……?」
刹那が熱弁を振るう度に、泉美の『怪訝な顔』は深まるばかり。しかし語るべきことは語らなければなるまい。
「感情が語るのは未来への約束!
心が囁くのは永遠の愛!!
血が騒ぐのは―――全細胞の意思!!!」
おおおっ―――!!!
言葉を放った瞬間、歓声と拍手が上がる。なんでさ
何故か、生徒たちが聴衆となって聞いていたわけで、まぁともかく……。
「お前の親父さんだって、30年越しの大恋愛を成就させたようなものだぞ。そういうことだってあり得ないわけないだろ」
「それを言われると反論出来ません。けどそうですよね……。ただなぁ香澄ちゃんが……ですか―――」
己の半身に対して疑義を持つ七草泉美は、天を仰いで何かを言うのを堪えている様子だ。
「まぁ時々は真正面から聞いてみろよ。ただ刹晶院と本気で付き合いたいならば、そん時はお前の親父さんの領分だな」
「ええー……何かサポートしてくれないんですかぁ?」
「こんな後輩の恋愛沙汰で、俺に何を言えるというんだ」
世間一般には美少女である泉美が、とことん崩れた表情をしていることに、彼女のファンたちに申し訳ない気分だが、よくよく考えたらば十文字家の『アレコレ』に関してのことで、介入というか何かを求めているのかもしれない―――。
(だが、あれは最終的には十文字の翁と、和樹当主とが自供したからだしなぁ……)
アリサとのわだかまりが、実は『単純明快な恋愛の綾』であると竜樹君が理解した時に……。
『これ以上ごねたってしょうがないでしょ。第一……なんていうか遠坂さんやレオさん……その周囲の恋愛模様とか見ていると、大人げないって思えたんですよ』
大人になっちゃったんだねなどと言うと、少しだけ不満げな顔をする竜樹君なのであった。
そんな中、遂に件の人物が現れるのであった―――。
「ふふふ!! まさかボクの半身たる泉美に手を着けようだなんて、さすがは魔法師界のスパダリ!! 今宵(午後)! お前の命運は決まったぞ!!!」
「やはり打倒すべきは遠坂刹那か……いつ戦います? 僕も協力しますよ」
「「刹晶院」」
第一高校の制服が学ランでないことが悔やまれる登場。
七草香澄と刹晶院霧雨の登場。そして―――。
「ほら。やっぱり騒動が発生していたじゃないですか。私達、そうどうの面白いところに一番乗りですよレオン先輩♪」
「いや、それより何でこの運び方なんだよ!?」
「あいにくながら、私は魔法能力だけは達者な虚弱なガールなので、お父さん並みに
「「「「理由説明になっていない!!!」」」」
思わずツッコミを入れてしまう言峰カレンの言い様に、誰もがツッコミを入れるのは当然であったが―――。
「まぁなにはともあれ、刹晶院君、七草さん―――いまやるべきなのは……」
どうやら顔見知り(?)らしく、2人に話しかける言峰。
その言葉に気付かされたかのように2人は―――。
「そ、そうだね! というわけで遠坂先輩!! 果たし状だコラ――!!!」
「受け取れや―――!!!」
叩きつけるように書状を刹那の胸に押しつける一年2人。
なんて失礼な後輩、とかは思わずとも……。
「やれやれ。この辺で俺が育て上げた心の贅肉を刈り取るのも一興か。いいぜ。食戟ならぬ魔闘戟 開幕だ」
果たし状の内容を一読してから、それを燃やして挑発的な笑みを浮かべる。
この辺りで、機を見るに敏―――というわけではないが、連盟が送り込んだスパイとやらのチカラを測ることにするのであった―――。