魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~ 作:無淵玄白
まさか大泉洋の叔父が機動戦士だったとは(え)
暑さに負けそうになりながらも頑張って生きていこうと思いつつ、新話お送りします
泉美によって刹那が連れ去られた生徒会室にて作業を続ける面子は、少しだけムスッとしたリーナに気を遣わざるをえなかった。
だが仕事は滞りなくやる辺り、流石と言えるか……。
教師補として刹那の傍にいられることが多くなったとしても、二人は求め合うのだろう。
その絆の深さなのか、そういったものに物申したかった深雪は問うことにした。
「今さらだけど、本当に刹那君は人気者でモテ王ですよね……リーナは、そんな刹那君から離れようとは思わなかったんですか?」
要は嫉妬心とか呆れから、そういう風な考えになったことはないのかという深雪の問いに対して―――。
「ないワ。絶対に離れないと想ったモノ」
なんたる絶対の自信。それはどこから来ているのか、そう考えて更に問いかける前に―――。
「プリマス港で一目見た時にホントウに想ったモノ。彼こそ生涯のパートナーだと♪ 決して分かたれることのない
立ち上がって、演説をするように赤い顔で語るリーナは、目立ちまくりである。
ライネス先生と一緒のエルメロイレッスンでもこんな調子だとも聞いている深雪は、とりあえず語らせるだけ語らせることにした。
「感情が語るのは
心が囁くのは
血が騒ぐのは―――
それでいいのか米国人とも考えたが、偶然にも生徒会会計たる五十里に会いに来ていた千代田花音が思わず『メモ』するぐらいには、
その直後―――。
端末に緊急連絡が入る。その内容は―――
『―――部活連承認の下での魔法戦闘が承認されました。魔闘戟成立です。2−B 遠坂刹那は、1−C 七草香澄、1−E 刹晶院霧雨との戦いを承認しました』
端末に表示されるピクシーの読み上げたアナウンス。
ロボ研の、ダ・ヴィンチちゃん特製のアナウンス室より発せられたそれを聞いてから―――。
「ゼンサイボウノイシ―――!!!!????」
驚愕を声と言葉、そして全身で表しながら、リーナは生徒会室から脱兎のごとく出ていくのであった。
残された面子は、何が何やら分からぬが―――。
((((とりあえずっ―――部活連に急げということか!!))))
全員が『火事と喧嘩は江戸の華』という粋を分かっている人間であったのだ。
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「確かに魔闘戟……凝った名称だがある種の公式の魔法戦闘の申し込みは、今年度からの新制度であるが、積極推奨された制度というわけではない―――が……やるのか?」
「ここ最近の一高の空気はどちらかと言えば、『闘争を求める』ものが漂っていましたからね。入学して2週間ほどが経ったことで、新入生は上位術者に対して「腕試し」をしたがり、そして何より上のチカラが『どれほど』のものかを知りたい―――その空気に当てられたのか、マジックシュート関連の部活が再戦したぐらいですし」
副会頭の言葉は会頭である服部も些か感じていたぐらいだ。だが、まさか大恩ある七草真由美の妹が、ここまで喧嘩っ早いとは……。
「服部会頭も一年の頃はそんな感じだったと聞いておりますが?」
ジェネラル・服部の一年の頃の武勇伝は現二年にも伝わっており、わざとらしい咳払いをしてから言葉を紡ぐ。
「西城、あれは若気の至りだ……が、他人のことはとやかく言えんか」
苦労性の人間2人の判断は「是」。そして会長である中条あずさも「是」。意外なことにビッグボスも了承してきたのだ。
「意外ね。中条会長がこれを良しとするなんて」
「全面的に賛成は出来ませんけど、学内の空気がそれを望むならば、この辺でガス抜きは必要でしょうから」
風紀委員長の言葉に、少しの諦め顔で息を吐く様子が印象的だ。
「勝負形式まですでに決まっているんですか……」
刹那は『心の贅肉』を刈り取る作業と言っていたが、刹晶院は……彼にとって無駄事ということなのだろうか?
少しだけ達也は考えつつ……挑戦を受けた際に発したその言葉の真意を読み解こうとしたが、無駄なのでそうそうに諦めることにした。
どうせ。万事が上手くいく。
問題は……その果てに何を得ようとしているのか。だ。
「エルメロイ先生は、どう考えています?」
「「エルメロイ先生は二人いるが? どっち?」」
部活連の部屋内にいた講師二人。一人は黒髪。一人は金髪―――金髪は『ヘアブラシ』を使って黒髪の髪を撫ですいている。拙いというほどではないが、黒髪的にはあまり満足していない様子。
そんな達也の質問にパトレ○バーよろしくな返答されるも―――。
「ウェイバー先生の方でお願いします」
金髪小悪魔の表情を見て、刹那の大師匠の方に返答をお願いするのであった。
「戦闘を行うという意味では、特に私がどうこう言うことではないな。かつては時計塔において奨励されていたし、刹那の母親など積極的に競っていた―――主な相手は、遠縁の親戚とも恋敵とも言える相手だったな。研鑽するのに研究だけでは、どうしようもないこともある」
四角いジャングルで殴り合う二人の美女の姿が容易に想像できた。特に刹那の過去を知る人間は、そう考えた。
「この戦いの意味ということでは、恐らく『特に何も考えてはいない』。色々と絡んでくる生徒であり後輩と、一度は魔術を交えたかった……そんな所だろうな」
弟子に関して、そこはノータッチで行くということだが……エルメロイ先生の話題は違う方向に飛ぶ。
「私が気になっているのは、現2年のA組の生徒に関してだ。明確に私も全員を知っているわけではないが、どうにも全員が『いい調子』というわけではなさそうだな」
流石に職員室でも、この手の話題は挙げられているのだろう。しかしながら、百舌谷教官はこの学校でも古株であり、年齢で言えば廿楽教官よりも下なのだが、大学出向の廿楽よりもキャリアは長い。
そんな訳で……2−Aでありながらも(失礼)アドバイスを受けに来た面子がいたらしく、ウェイバー先生は、そこを気にしているようだ。
「―――エルメロイ先生にとって……生徒とは何ですか?」
「難しい質問だな。だが端的に言えば、『対等な協力関係』とも言えるかな?」
その言葉は意外なもので―――言葉を発した2-Aのほのかが少しだけ瞠目したが……。
『―――魔闘戟開戦まで、残り二〇分前になりました。観戦者はお早めに来場してください』
「どうやら、陣地作成スキル持ちのサーヴァントを総動員したようだな。我が弟子ながらいい手際だ」
「ライネス先生は、随分とこういうことに前向きですよね……」
魔法に対してどちらかといえば穏やかな利用を模索していきたいほのかは、エルメロイ教室の金髪先生―――、一昔前のサブカルではよく用いられた『天才ちびっこ教師』という御仁に、少し引きつつ想ったのだが……。
「いやぁ私はカスミ君の姿勢を買っているんだよ。女とは須らく、ファイターだからな。魔術だろうが―――恋だろうが、戦ってこそ女というのは、輝くものなのさ」
「―――」
その言葉に、ほのかの眼が輝いたのを全員が目撃。同時に『計略通り』と言わんばかりの顔をしたライネス先生を見て……。
「達也さん! さぁ!! 行きましょう!! 刹那君と新人たちが何を見せてくれるか、私楽しみでしょうがありませんよ!!」
さっきと180°態度が違う光井ほのかを誰もが苦笑気味になる。例外たるは、深雪のように達也に好意を抱いている存在だ。
そんな中、闘争の準備段階をしようとしている人々にも、ちょっとしたトラブルは起きているのであった。
「むぅうううう!」
控室というほどではないが、戦いをする前に用意された室内にて、不満の空気が充満する。
その
「あんまりぶーたれるなよリーナ。考えてみろ。お前とセツナはエルメロイ教室の教師補として、
「レッドみたいな
「ああ、筋力のレッドに、腕力のレティ―――間を取り持つは、触媒のセツナ。理屈めいたことを言ったが……たまには譲れ、セツナと
快活な笑みを見せるレッドに対して、リーナは頑なだ。
不貞腐れるリーナの心は刹那にも理解できる。恋人だからこそ、そこは当然なのだが……。
前述した通り刹晶院の力のほど……何かを隠しているということを理解しているだけに、それを引き出すためのチーム編成なのだ。
「それでマイマスター、なにか指示はありますか?」
コスプレ衣装を纏うレティの質問。――――――本人曰く『神風魔法少女ジャンヌだワン!』という、あざとイエローな衣装の彼女に答える。
「今回の戦いは刹晶院霧雨という不詳の魔法師の実態を探ることにある。基本は好きにやって構わないが、多少は戦いを引き伸ばすようにして動いてくれ」
どれだけのチカラを出せば、どこまで『対応』出来るか、それを知りたいのだ。レティの言葉にそう伝えておく。
「双子はガン無視か?」
「まさか、片方はどうやら此処に来るまで刹晶院と訓練してきたからな。隠し芸ぐらいは見せてもらいたい」
次いでレッドからの質問に答えて、全ての『準備』は完了した。羽織る衣装は―――とても印象的なカラーであった。
「エッ!? セ、セツナ!?」
「レッドが赤で、レティが黄―――だったら、俺はそうしなきゃバランス悪いだろ?」
準備を完了させて立ち上がった姿に、リーナは驚いた様子である。だが、これこそが自分の想いなのだから……。
「モウ……しょうがないんだから♡今夜はシャネルNo.5でベッドインして、バスカーモードのオルゴンマテリアライゼーションで、エクストラクターマキシマムなんだからネ♪」
赤くなった頬を抑えながら滔々と語るリーナに、『がんばらなきゃな』と苦笑気味に想う刹那。
((意味不明な言語が多いも、言わんとすることは理解できたが、コイツラはホントウに――――))
砂吐きそうな気分になったレッドとレティだが、それを呑み込んで、自分たちも『そっち側』になりたいとリーナを羨みながら―――『蒼と金』のマジックローブを羽織った魔宝使いと共に、戦いに赴くのであった……。
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サーヴァント達によって用立てられた闘技場は、いわゆるコロッセオに見られる円形のフィールドであった。
石作りの闘技場は、当然のごとく『場外判定』すらありえる仕様。こちらの要求を全てこなしてくれた皆に感謝しつつ、先に待っていた後輩諸君に対して―――。
「待たせてすまないな」
「構いませんよ。宮本武蔵よろしく焦らしたわけではないことは理解していますから」
香澄は言いながらも不敵な面構えだ。よほど俺に挑戦したくて仕方がなかったのだろう。
片割れである泉美の方は苦笑気味ではある。巻き込まれた形、3対3形式を取るために、無理やりそちらの組に入れられたのだから当然か。
そして刹晶院霧雨は……。
(もはや隠す必要は無くなったということかな?)
霧雨に充足するチカラの流れが理解できる。
ここに来て隠し立てする必要が無くなったというところか……。
集まった観客を収納する客席とは離れているが、それでも歓声が沸き起こり、降り注ぐ。
(九校戦を思い出すな)
まだ一年も経っていないというのに、あの時に感じた熱さを体に覚える。芯が燃えるのを感じるのだ。
『ルール説明をする。変則的ながら今回の魔闘戟は、コロッセオでのノータッチルールで行う』
戦いの主催者たるダ・ヴィンチちゃんの声が朗々と響く。本来的な魔法戦闘演習におけるフィールドは、特殊な緩衝材を敷き詰めた演習場。そこに範囲を決めた上で、場外失格ありの戦いが主。
使える魔法は、当然のごとく遠距離魔法のみで、武器を使っての近距離戦などは以ての外。しかし、ある種のパペット、使い魔、ファミリア……etcなどを使っての相手への攻撃は有効。
そして、これが重要なのだが……。
「半円全てが動ける範囲、場外失格は円の外か半円を超えて出てしまった瞬間……」
「力士の土俵のようですね」
「昨日の夕黄龍関の戦いは横綱の品格を下げるものでしたね」
一年三人の会話。どうやら春場所の取組を泉美はチェックしているようで、意外な気分だ。
戦いがスタートするまでの寸暇の間に、泉美は霧雨に問いただすことにした。
「刹那先輩に挑むためだけに、香澄ちゃんと『一緒にいた』だなんて、私の半身をなんだと想っているんですかっ」
ジト目と不満な声で言われると、霧雨としても困ってしまう。とはいえ、誤解は解かねばならないとして、言うべきことは言うことに。
「姉君をお借りして申し訳ありません。けれど、本当ならば僕一人で挑むつもりだったんですよ?」
そこの誤解は解いておく。そして何より霧雨は、香澄に対して恋心のようなものを抱いているわけではない……と想う。
相手の方は、どう考えているかは分からないが。
「まぁ今はそういう詮索は止しておきましょう。私としても2年トップ、いえ……魔法師界のベスト10に入るかもしれない相手とは、戦いたいと想っていましたからね」
どいつもこいつも喧嘩っ早い。普通の学生スポーツの世界ならば、自分が地方でブイブイ言わせても、全国区の相手を前にして、何か一つでも通じるものがあるか、はたまた萎縮するか……胸を借りて思い切ってぶつかっていくか。
そういう心での戦いは多い。だが―――。
1年3人の心は違っていた。
―――遠坂刹那に勝つ・勝ちたい・勝ってみせる―――
その心で戦うのだ。一つでも勝っているものがあるならば、頂点との差を知りたいと思う。そういうファイターが、この三人であった。
「ところでキリウ君―――その眼鏡、やっぱり……」
「ああ、泉美さんも気付かれましたか、実は―――」
「全ては計算通りです。予測の範囲内です。とか、そういう知性派キャラの定番アイテムなんですか?」
思わぬ言葉にキリウはずっこけるしかなかった。いや、まぁそういうことにしておけば対面にいる―――
「ふふふ。泉美ってば、キリ君を侮りすぎ。私は知っているよ。教えられた時には、己の
そんな大層なものではないのだが、ともあれ戦いの合図は、そろそろ鳴り響こうとしていた。
相手は強い。なんてレベルではない。
充足する魔力が眼鏡を挟んだとしても見えてくる。だが、それでも戦うと決意したのだ。
エーテルとサイオンの光が互いの間で交差する。両者がその2つのチカラを
―――始まった瞬間、戦いの主導権は、どちらにも無かった。それは至極当然の話であった。
刹那はもはや彼の定番となった『魔弾』をありったけ吐き出す。弾幕の形成―――バレットシャワーとでも言うべきものが吐き出されて、およそ500m先の1年3人を穿たんとする。
対する1年組も、それに負けじと魔法を吐き出す。
香澄が放っているのが風の弾丸であるエアブリットならば、霧雨が放つのは水の弾丸―――アクアブリットとでもいうべきものだ。
水を使った魔法という意味では、中々に懈怠なものだ。
水は氷と違い、固体としての質量物ではないので、弾丸として放つならば、前年までいた双子の姉のように氷にした上で放った方が効率的なのだ。
だが―――――。
(成程、香澄の風の弾丸をサポートするためでもあるのか)
霧雨の考えを少しだけ読めた、観客席の達也は感心する。
「流体制御か、ケイネス先生の十八番ではあったが、こういう相互で制御することも、また一つの考えだな」
ウェイバー先生に『ぽつり』と言われたことで、達也も理解が捗る。
風の弾が水の弾に接触すると、水の弾はちょっとした水圧レーザーとなりて、襲いかかる。
香澄が100の弾を放ち、霧雨の放つ200の弾を加工する。
餅つきの阿吽の呼吸のごとく、それらは刹那に向けられていた。
もっとも……それが届くかどうかはまた別の話ではあるのだが……。
当然、それらは刹那の放つ魔弾とかち合う。砲弾と砲弾の打ち合い。当然、それらが通じるのは……どちらが多くの
(重っ! やっぱり刹那先輩の魔弾は強い!!)
(こちらが200発打つ間にあちらは400発―――)
単純な物量差であることを感じて、歯噛みする。更に言えば……。
「レッド!」
「了解だぜ!」
更に言えば、その最中でも余裕綽々というわけではないが、前線を金髪の2年―――モードレッド・ブラックモアに譲った上で、刹那は後方射撃に移る。
モードレッドのスキルは『赤雷』を操ることにあり、同時に、この場においては最大級に不味かった。
「キリくん!」
「ええ!!」
水の弾丸を出すのをやめて即座にスイッチしたが、放たれた弾丸と「閃雷」が触れた瞬間、フィードバックが走る。
痛痒は一瞬であったが、それでも痛みは痛みである。動きに微細な淀みが生まれた。
「―――
無論、その隙を見逃すレッドではない。全身から迸る朱雷を『矢』に換えて、弓弦を引き絞るかのような体勢を取る。
理想的な射撃フォーム。現代魔法において、そういう所作を取ること、狙い撃つぞ! という合わせは隙にしかなりえないはずなのだが……。
(レッドの全身から奔る雷と刹那の魔弾とが、1年組の攻撃を通さないでいる……)
対魔力でも上のはずなのだが、その辺りは抑えているのかもしれない。
ともあれ、ノーガードでの撃ち合いという大歓声沸き起こるド派手な魔法戦は、思わず息を呑む速射戦へと移りそうだったのだが……。
「そうはさせませんよ!!」
放たれた矢―――高速のそれをガードするべく、泉美が前に出る。領域干渉ではそれを抑え込めないのは理解できている。
放たれた矢の威力は相当なものだ。
魔力の密度。圧縮された電圧のエネルギー量。放たれた運動エネルギー。
全てが彼女では抑えきれないことが理解出来ていた。ゆえに――――――。
(上空へと逸らす! 下手に湾曲障壁で逸したらば観客席に直撃する!!)
それだけは避ける。そういう泉美の意気が通じたのか、それとも元々だったのか、レッドの放った矢は、沈むようにフィールドへと落ちる。
速いが沈む矢。物理法則の通りと言えばその通りだが……ともあれ着弾点が考えていたところとは別になると察した時点で、刹晶院霧雨は―――。
「散ってください!!―――『抑えます』!!」
「おう!!」
「―――」
刹晶院の言葉に応えた香澄とは違い、泉美はその言葉に疑問符を持ちながらも、香澄に引っ張り連れられるままに、着弾の影響範囲から逃れた瞬間。
「飛雷審」
呪文を唱えた霧雨によって、着弾と同時に炸裂するはずであった雷のパワーは全て消え失せた。
一瞬だけ破裂しそうなほどの圧が泉美と香澄を襲おうとしたが、それらが、あっという間に消え失せたのだ。何をされたのかは、分からない。
だが、それが刹晶院霧雨の力の一端であることは理解できていた。
「――――やるじゃねぇか!」
モードレッドの素直な称賛。強化した聴覚が、それを聞き届けながらも……反撃のチャンスだ。
「お褒めに預かり恐悦至極!! 香澄さん!!」
「準備は出来ているよ!! 泉美!!」
「大丈夫!! いけるよ!!」
阿吽の呼吸で言い合う霧雨・香澄とは違い、泉美は少々戸惑いつつも、香澄と同調しつつ気圧の魔法を解き放つ。
それは本来ならば、かなり殺傷性の高い魔法として存在するものだが……。
「ふぅむ。窒息乱流でしたか。『ふたりはジェミキュア』は、随分ととんでもない魔法を使いますねぇ。ですが、この神風魔法怪盗ジャンヌの前は素通りさせませんよぉ!!」
ここに来て『あざとイエロー』なフランス美少女が、手を掲げて障壁を発生させる。奇跡を願うようなその所作だけで、現代魔術をも超えた術理が展開される。
障壁……というよりも、半円の殆どを覆うものは
ナイトロゲンストームで範囲を圧迫するも、それを吹き飛ばすほどの
焦る
巨大な魔法陣。上空に描かれている紋様は現代魔法のそれではない。
だが、そこから放たれるは―――。
「雷霆!!」
先程のレッドの朱雷を拡大したような落雷の雨であった。
次から次へと迸るそれに対して。
「
七色の光源を携えたオーブが出来上がって、そこに落雷の雨は吸い込まれていく。同時に、窒息乱流の術も吸い込まれていく様子だ。
「ええっ!?」
「うそーん!!!」
「……これが遠坂の
三者三様の驚愕の言葉を吐く一年の眼前には、七色の『宝玉』を自分の周囲に滞空させる蒼金の魔術師がいた。