魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~ 作:無淵玄白
ふふふ。ようやくちゃんと出版社から出るリーナの魔法少女。
そして新作ガンダム――――――うむ。境界戦機の二の舞だけはやめよう。
鉄血ほどじゃないんだが、それでも何というか……。
フィクションというもので企業間闘争という面を前面に出すとダメな気がする。
これで半沢直樹みたいに『倍返し』するような反逆物語ならば、いいんだけど。
まぁプロローグだけを見て判断するのはダメだな。
というわけで駄文、申し訳ないながら新話お送りします。
驚きばかりの術の撃ち合い。しかし、現在は刹那の『七色光線』で一年は少しばかり防戦気味。そこに至った原因であるもの―――発端たるものを知りたくなった。
「エルメロイ先生、刹那が使ったあの『吸収術』のようなものは何なんですか?」
「単純明快に言えば、宝石魔術だ。彼の家伝であり受け継いでいくもの……あの術式に関してならば、まぁ秘密というほどでもないな。単純な話ではあるが、放たれた術に『相性勝ち』しているだけだ」
術に相性勝ちしている。その理屈がいまいち理解できなかっただけに、詳しい説明がほしいところだが。
あまり魔法であろうと魔術であろうと探らないという原則があるだけに、マナー違反であることは確実なのだが……。
「まっ、元々は私が刹那の母親に教えて『実践』させた術式だからな。教えるのは吝かではないさ」
そう破顔するように言ってから、ロード・エルメロイⅡ世の課外授業が始まる。
「結論から言えば、ヤツのやったことは、七草君たちと刹晶院の術を『後出し』で無力化したということだ。
刹那が五大属性すべてに適正があるということは存じているな?」
「ええ、出会った当初はそれの凄さが実感出来ていませんでしたが、今となってはそれがとんでもない才能であることが理解できています」
そんな少しだけ『げんなり』した達也の言葉を聞いた時に、一瞬ではあるが、同じように苦虫を噛み潰したような顔をしたウェイバー先生が見えた気がする。とはいえ、説明は続く。
「五大属性全てに相応した『疑似宝石』とでも言えるものを『創り出し』て『円環配置』。その上で―――放たれた術に対して、相性で上回れる宝石からレーザーとでもいうべき波動を打ち出して無効化する。呪文詠唱の是非に関しては、まぁ諸君らには割愛しておくが―――、ともあれそういう風な術なんだ」
神秘はより強大な神秘に打ち負かされる。
魔術師側の理屈ではあるが、魔法師にもそういった風な原則はある。
干渉力の『強弱』によって、魔法が相手に透るかどうかが決まる。総じて言えば『速さ』勝負以外での戦いともなると、こういう理屈も存在する。
もっとも、魔術師側の神秘に関しては『地力』だけではないということが、魔法師の理屈とは違うのだが……。
「この術の利点は、『どれだけ』の規模の術式構築であっても、確実に相手の術を『打ち砕ける』という点にある。実際刹那の母親は、『霊脈』を抑えた『数十人規模』の術者たちで組んだ術を『後出し』で砕き貫いて、相手方を攻撃していたよ」
段々と理解が追いつくにつれて、その非常識さが身に沁みてくる。
達也の『術式解体』『術式解散』などにも繋がるものだが……。達也の術が
「けれど、それをするには相手の術の特性を―――あっ……」
「中条君の疑問は当然だな。だが、あいつは発動する術が何であるかが
なんたるインチキ。
相手が『どの術』を使おうとも、カウンターを合わせてくる理不尽。
そういうことだ。
ズルい。
単純な悪罵が口を衝きそうになる。
「けども、そんな緻密な術式は、あんまり刹那使っていなかったような気がしますよ? 今回が初見です」
レオが発した疑問の言葉に一高生全員(リーナ除き)がうなずく。なんというか刹那が『遠坂の宝石魔術』を『戦闘』で使う際には、どちらかと言えば「刻印利用」の大砲連射が、主だったはずなのだから。
そのさま――――まさしく人間戦艦。
「だろうな。結局のところ神秘の強弱による打ち合いは、真正面からぶつかった場合の話だ。そして、先程の術式は回り道や裏道の話。つまるところ、相性の良さ悪さは、神秘の勝敗において大いに影響する――――――だが、刹那の場合は、殆どにおいて『強弱』の勝敗だけで決着を着けられる。大雑把ともいえるし、面倒くさがっているともいえるが―――大概の敵に対しては、真正面から打ち倒せるのさ」
その言葉に、刹那の『事情』知りたちは納得する。
偽物であっても『本物』に届くほどの
先生があえて言葉を濁したが『疑似宝石』というのも、恐らく『投影魔術』によって作り出したものだろう。
武器とは違って、疑似宝石とやらがどれだけの時間保つものかは分からないが……。ともあれ―――。
「けれど、最初は吸収していましたよね? 今は、エルメロイ先生の言う通り、一年三人の魔法に対して出す前に合わせてカウンターを食らわせてますけど……」
―――最初の疑問はまだ解消されていなかったのである。
「これに関しては私も不明だな。凛に教えたのが五大属性を基点とした術式だが、刹那の場合は『七つ星』だ。恐らく自分なりに『術』を進めたんだろうが―――」
「リーナはなにか知っているんじゃないかい? キミの元々の『所属』。そして、セツナの『過去』―――まぁ後者から何となく分かるがね」
リーナを見ながらニヤつくライネス・エルメロイ。この小悪魔講師は、こういうことをする。刹那の人格形成に、多大な影響を与えた『師匠』であるこの御仁に言われて。
「ぐぬぬ! オノレいのりん(?)! BBAと言われるのは容赦できるが、それでもコノコトはワタシの口からは
遣る方無い想いを持ったリーナは不機嫌よろしく、明後日の方向を向きながらそんなことを返す。
「―――だそうなので、みんなでちょっと推理してみ? 七という数字から思いつくものを出してみよう。キミたちのインテリジェンスを試すぞ―――!!」
受けてライネス講師は、周囲にいた生徒たちへとQUESTIONを出す。思考のBREAK THROUGHを行うべく、口頭で思い思いの『七』に関することを言っていく。
七本槍、七歌仙、七つの大罪、北斗七星、七支刀、七支槍……。
とりとめのない回答が続いていく中、遂に正解が美月の口から出てきた。
「あっ、わたし分かったかも知れません。ライネス先生、照応しているのは『七大惑星』じゃないですかね?」
気付いた美月がそんな風に言うと、面白がるようにライネスは指を鳴らすのだ。
「
「どこを見て言っているんですか―――!?」
成長した姿でも、若干この学校の『巨大』たちに負ける事実に、小悪魔ロードは不機嫌というか呆れながら、解説を義兄にパスした。
「にしても七大惑星をミス・ミヅキに―――ああ、成程。だからキミの魔術は『反射』に適しているのか」
「前に刹那君に教えてもらったんですけどね。それで覚えていました」
照れるように言う美月に、達也もそのことを思い出す。
七大惑星。いわゆる天文魔術における理論の一つである。
グノーシス思想ともいえるが……。
まぁリーナが不機嫌になるのは理解できる。天文魔術は、カレシの元カノ関連なのだから。
だが、移動してきた世界で会えた少女も『星』に関する人間だったのだから、色んな意味で『縁』なのだろう。
「魔術にせよ現代魔法にせよ。バイオリズムというのは、決して無視できない構成要素だ。その点で言えば、五大属性と『魔眼』を使って、円環をある種の天体運行に見立てたセツナのそれは、正しくパーフェクトにして」
「エクセレントだ。あれは、相手の術も、各惑星が受ける太陽光に見立てて『受け止めて』『吸収している』そして―――この一手を指した以上、一年組には2つの道しかないな」
講師2人の手放しの賛辞の言葉。
この王手からの道とは……。
「退くか―――『新たな自分を曝け出す』か。だ」
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防戦一方としか言えない状況だ。観客たちは、ここからの逆転劇でも求めているのか、それとも……このままの降伏をするか。
「冗談じゃない!! 私はまだ全てを出し切っていない!!」
「このまま負けるには、少々……女意気に欠けますね!」
双子の方は、絶えず打ち付ける熱波、業風、水流、放電を躱し、防御しつつも戦意は絶えていない。
(遠坂先輩のこの1手は『さぁ、窮地だ。お前はどうする?』といったところか……)
挑戦状を叩きつけて、こんなカッコの悪いことをやるなんてあり得ないだろ? と嘲りの声が聞こえるかのようだ。
香澄が横目で霧雨を見てくる。なんやかんやと一緒にいた女子から、そのように『期待している視線』を向けられると、どうしても応えなければならなくなる。
「刹晶院くん……?」
疑問を浮かべる泉美にかまわず、眼鏡に手を掛ける。
双子の献身に答えるべく――――――
「
――――――魔眼殺しの眼鏡を外して、外界へとその眼を晒す。
その眼は―――灰色の中に『煌めく蒼』の瞳孔が存在するものであり、思わず泉美も見とれてしまうものであった。
「―――」
すでに半円の縁まであと五歩というところまで押されていた一年たち。
離れた安全圏から攻撃していた二年たちは、少々面食らう。
(眼鏡をしているところから察していたが、魔眼とはね)
おまけに自分が知らない魔眼。それが煌めく度に、魔力を含んだ『霧』……『魔霧』とでも言うべきものが視界を埋め尽くす。
それらがあらゆる意味で情報を遮断している。
(古式魔法師にとって、現代魔法師への最大級のカウンターだな)
霧の向こうにいる存在への干渉を全てシャットアウトする。恐らくこの濃霧の前では、達也の『眼』も相手を見通すことは出来まい。
かけるべきエイドス改変が出来ないならば―――。
「レッド! 最大出力!! ぶちかませ!!」
放出系の術で霧を吹き飛ばす。それが出来るかどうかの見極めに、モードレッドほどいい相手はいない。
「お、おう!! しかし……『魔霧』かぁ、貫けるかね―――」
不安そうに戸惑う理由は何となく分かる。だが、いまはやってもらわねばならないのだ。
十指を用いるCADを使って、術を構築するレッド。
「―――アーサー王の魔術基盤、その中でも使いやすく貫通力もある――――カルンウェナン!! 霧を吹きとばせ!!」
緑光あふれる魔刃の羽がレッドの周囲に滞空する。
「GO!!!」
指の指示によって霧へと向かうレッドの術だが―――。
霧と接触をした瞬間、消え去る結果が見えた。
(あの霧は、よほどの威力でない限り、突破は難しいか……)
だが、そんな『殺傷性』あふれるものを使えるわけもなく―――と思っていると、『窒息突風』なのか『風槌』なのかは分からないが、魔霧を孕んだ
その魔霧の人体への効果は―――。
(毒ではないが、魔力の循環を滞らせる、か)
長時間吸っていていいものではない。
「結界張りますよ」
「頼む。にしても、こんなものをあっちは吸っていても大丈夫なのかね?」
レティの言葉に言いながらも、攻撃は続行。一応、試しに『ガンド』を一発打ち込む。
呪いも威力も弱だが、それでも痛痒ぐらいはあるだろうか……。
「なし、か―――」
実験の結果はあまり芳しくない。攻防一体の魔眼。相手への強制的な『介入』ではない以上、魔眼とは少々違うかもしれないが……。
(いや、ある意味この霧に『囚われた』時点で、魔眼としては上級か)
しかも、現代魔法という
泉美はともかく香澄の方は色々と練習してきたのかもしれない。
風槌による魔霧は、大玉の魔弾として結界を穿とうとしている。
「むぅ、マズイわけではないですが……中々に難儀なものを展開されましたね」
「霧がフィールド全てを満たせば、どうなるかわからんな。ならば、ここは一つ―――」
レティの少し悩むような顔で考えるに、あちらもそろそろ決着に急いているだろう。
となれば……。
霧を払う魔術―――霧の巨人に対抗した神々の領域にして最大級の『現代魔術』。
北欧神話における神性領域を再現しようとした瞬間―――。
「あちらもユニゾンアタックしてくるならば、こちらもそれに対応した攻撃を披露しましょう! 仏日連係攻撃ですよ!!」
レティがなんか言ってきているが、無視しながら神性領域を―――と思った瞬間。
「いま必殺の姉ビーム♡♡♡ さぁセツナ。私をお姉ちゃんと呼んで、マロニエに歌を口ずさむような愛のユニゾンマジックをしましょう!!」
手でハートマークを作ってウインク一発してから、ハートマークの波動が、あほらしい限りだが、ホワンホワンという音と共に刹那を直撃しようとしていた。
「なんで俺は味方から攻撃を受けているんだ!? つーか、こんなアホな術でもある種の精神干渉作用が働いているだと!?」
観客全員がざわつくのも当然だ。精神干渉の大家と言えば四葉家。それをフランスの魔法師がやっているのだ。
全員が『シェー!』とかやっていてもおかしくないかもしれない。
そんな様子を霧の向こうから察したらしき一年たちが、気勢をあげる。
「奴ら混乱している!!」
「火刑だ!! 火に包まれろ!!!」
『『真面目にやれ―――!!!』』
香澄、霧雨、そして観客の声が響いた時―――勝負を決する。
魔霧は、その特性とは裏腹に『可燃性ガス』の面というか燃焼する要素があったらしく、泉美と香澄はすかさず気体を燃焼させる術である『ヒートストーム』をキャストする。
燃焼させるべきものは大量にある。例え結界に阻まれたとしても―――酸素が無くなれば、口舌を使う魔術師たちには、痛手のはずだ。
これで終わらせるべく―――。
「キリく―――」
「僕に構わず!!! 香澄さん!!」
そんな風に焦点をすでに2年勢に向けていた泉美とは別に、香澄は少しだけ、魔霧の発生因である刹晶院を慮った。
だが急かされるように、言われたことでヒートストームが発生。
「―――ASGARD!!!」
聞こえてくる呪文なのかそれともなにかのキーワードか、それは分からない。
しかし―――それでも勝敗は刻まれる。
爆発が続く2年側の陣営。爆風と爆熱の余波がこちらにも届く。それだけ、刹晶院霧雨の魔眼からの『魔霧』が可燃大気として優秀だということだ。
これほどの大爆発の連続の前では、あちらも防戦一方のはず。そして勝敗が決まる!!!
泉美や香澄が驚くほどの
自分たちが触媒として使ったせいで魔霧の防御が弱まっていたようだ。やったのはモードレッド・ブラックモア。
視界がひらける。そして向こう側にいる―――2年生が見える。
見えてきたその姿は、とてつもなく高くそびえる山のように大きな存在だが、決してノーダメージでないことを確信出来る様子だ。
決して負けていないことを理解した1年3人だが……
そして―――。
『it's GAME OVER WINNER 2年生チーム』
ダ・ヴィンチちゃんの言葉で勝敗が刻まれた。
「「「ええええ!!!!!?????」」」
戦っていた1年3人が驚くのも当然だ。しかし、観客全員は大拍手の嵐。健闘を祝われていてなんか複雑すぎて、狐につままれた気分であったところに―――。
「刹晶院、眼は大丈夫か?」
近づきながらも、こちらを心配する刹那―――その姿が高かろうと、決して負けて―――。
「ううん?……」
「……あれ?」
「―――まさか!?」
気勢を上げて、再び魔法をと、一歩後退した瞬間に理解する。
踏みしめた足元の感触が違う。明らかに視点が―――低すぎる。
先程までいた円形の闘場の感触ではない。
これはつまり……。
「場外負け!?」
ぽっかり半円が失われた闘場を遂に認識して、驚愕の声を上げる香澄。
「こちら側の陣地を―――消滅? 分解? どちらにせよ『ロスト』させたのか……!?」
どんなトリックであったかは、当事者である1年3人には分からないが、それでも―――。
(上を見るのはいいが、足元を疎かにするなってことかな……?)
地に足を着けて一歩ずつ着実に進んでいけ、あるいは……。
どちらにせよ……。
保険医であり魔法医としても有名な、この学校の教官であるロマン先生がやってきた。
「医者としては勘弁願うがね。だが、時にぶつからなければ見えてこないこともあるか。とりあえず診察室に来なさい。歩けないならば、こちらのガルゲンメンラインに連れて行ってもらうが?」
「「「いいえ、自分で歩きます」」」
きっぱりと、自力直立歩行をする無農薬戦士に連れて行ってもらうことを断るのだった。
ちょっとだけ怒っている様子の先生に申し訳ない思いを持ちながらも―――事態は動き、そして―――。
勝利したはずの2年生組の方で少しの動きが出てきた。
「刹那、何ていうか色々と―――とにかく!! 女の子にだらしなさすぎるのは―――………」
2年生組―――勝利を収めたはずの遠坂刹那に詰め寄る風紀委員『北山雫』の姿が―――そして何故か、糸が切れた人形のように崩れ落ちた瞬間。
刹那は抱きとめながら名前を呼び、喫緊であることを理解したロマンもまた、一年を小野遥に一度任せて駆けつける。
その様子に誰もが……ざわつきながらも、それでも2年A組の面子は……遂にこうなったかと、苦渋の顔をしてから―――全てを打ち明けることにするのであった……。