魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~ 作:無淵玄白
ツッコミどころ満載かな?と思いつつも、まぁ劣等生はどちらかといえば「SF」であるなど今さらですしね。
そんなこんなの最新話どうぞ。そして、征服王閣下の代わりにバサスロの二枚目……泣けるぜ。
恐ろしいことが起きていた。
ようやく二科でも行われることになった魔法実技の時間。
一科よりも遅れて行われたそれの結果は見るも無残。実に無情―――そう言う風に才能の有無を認識しつつテスト結果を何とかしようとする時間のはずだったのだが……。
「やっぱり司波君もそうなるんだね。いや、本当に機械の故障とか、『何か』されたわけではないはずなのにね……」
「ああ、本当に―――どういう『魔法』だよ……で、そんな俺たち二科生に『魔法』を掛けた魔法使いは、どこに?」
同級生の一人。E組の人間に聞くと指さし―――そして見ると―――。
「おのれ! 遠坂刹那!! それだけの『技術』『実証論』を何故今まで発表してこなかったのよ―――!!!」
「はっはっは! 平河は小さくて本当に攻撃を避けやすいなー。しかもデコが広いと来たから余計にな」
「ムカつくわ―――!!!」
ぐるんぐるん腕を振り回して、刹那に攻撃を当てようとしている合同授業の相手であるG組の平河千秋。前髪を割ったデコを指一本で押さえつけている刹那の姿があった。
周りの人間たちは動揺しながらも、殆どは平河と同様の意見であり、どういうことなのかを聞きたがっている。
「おっ。達也も記録更新か?」
平河をいなしながらも、こちらに視線と言葉をくれた刹那の顔が喜色に満ちていた。これが計画なのだろうか。しかし、それだけで一科二科の対立が止むわけではない。
だが、そんなことは分かっているのか――――。
「くっくっく―――計画通り!」
「そのセリフは黙考でしかも人に見えぬところでゲスく言え」
ジャプニカ暗殺帳とかいう表題が書かれた紙のノートを持ちながら言う刹那にツッコんでから、こうなった原因―――そして刹那とリーナ、深雪までもここにいる理由も含めて(本人達談)回想することにする。
ホワンホワンホワンシバシバ~~……最近、変な電波を拾いすぎている達也であったが、とりあえず回想は始まる……。
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一科の実践授業。いわゆる魔法の行使において、その男がここまで積極的になるのは、初めてだった。
いつでも気だるげに受けながら最低限の平均点で、全てをこなす男。付いたあだ名は『昼行灯』。
その一方で真偽不確かながらも『赤眼』で魔法なども使わずに相手を無力化することから『ルビーアイ』などとも呼ばれている男。
両極端なあだ名を付けられていることを意に介さず我が道を行く男が、廿楽先生の授業で率先して―――しかも挑戦的なことに、『最高得点』を取ったらば、今日の単位認定してくださいなどといったことで、一科の殆どから反発が起きる。
誰か―――森崎がいきりたち声を上げようとしたところで、廿楽先生は手で制して遠坂刹那に言う。
「君の事情は知っている。しかし、授業を片手間で終わらせるというのもなかなかに腹立たしい―――だが、君のやろうとしていることは『嬉しい』ことだ。かさねて言うが『組織』で
「はい―――。そのつもりでいましたから」
「分かった。ならば、最近の最高得点は、この数値だよ。確か七草君と十文字君だったかな? この数値以上を出してみたまえ。0.1でも下であれば大人しくしていることだ」
決意を秘めた刹那の眼に対しても厳しいままの廿楽先生に対して、当然の如く機器に向かう刹那。
「まっ、そんぐらいはやらないといけませんよね。
今回の授業において行われることは、五個の球体―――それを操り、所定の位置に収める。その精緻さと緻密さ―――大胆さも要求されるタイムアタック。
多くの障害物を除いたり、組み替えたり―――迷路のようになっているところを一切触れずに、様々な術式を組んでいく。
魔法力―――という観点で言えば、多くのことが要求される実践授業。
無論、球体もまた砕けることある。幾らかの情報強化も必要なそれを前に――――多くの
「ほぅ!!」
刻印と接続したことで、遠坂家が記してきた家伝にして家門を模した魔法陣の数々。それらが―――。廿楽先生の眼を楽しませる。
同時にこれだけの『魔法』を『同時に行える』―――古式だとしても有り得ぬ『理屈』に一部の生徒を除いて驚きだけが心を占める。しかし、そも魔法師というのは誤解があるのだ。
本来神秘の根源たるものは、『あり得ぬもの』を使うことに執心するのだから―――。
「では、いいですね?」
「いつでもどうぞ」
全員に見える形でタイマーが押されてスタートのファンファーレ音―――同時に刹那が干渉を果たした『魔球』が超速で、定められたミッションをこなしながら進んでいく。
今となってはあり得ぬ『呪文の詠唱』、朗々と響くそれは
落ちてくる瓦礫や岩土などの山が『停滞』させられた隙に出て行き、崩れたミニチュアなどが吹き飛び、バックドラフトで飛んでくる瓦礫のごときものが消し飛びながらも進んでいき、迷路のようでありながらも完全に完成していないルートを『最速のルート』に変形させて進んでいく。
まさしく
それすらも『呪文』であるかのように叫ぶ刹那。まるでその五つの魔球が全て―――何かの『英雄の進撃』のように思える。
意味を知らぬものは、それが『軍神アルスの加護を!』という叫びであるなど知らない。知らなくても、「そのようなもの」だと思えるぐらいに、凄烈な『意味の無い叫び』だが―――。
最後に出た廿楽先生の
五つの珠で『円』を作り上げたそれは、巨大な干渉力で『星』となりて、魔物を正面から打ち倒して―――所定の位置。宝箱の中に納まり―――ロックされたことで、記録が刻まれる。
「う、ウソだろ!? 七草先輩や十文字先輩のタイムを10秒も縮めている!!!」
「あ、あいつ……マジでここに主君の仇撃ちでもしに来たのかよ……!? それ以前に……実技で実力を隠すなんて―――」
「ど、どこまで俺たちを舐めてたんだよ……?……泣けるぜ……」
「ふっ―――正しく『快刀乱麻』の綽名に相応しい所業。お見事で候。遠坂殿」
最後の後藤の台詞でざわつきが落ち着く。つーか後藤、また変なドラマ見たのかよ? とB組一同が思う。この前は『小和村 真紀』主演のサスペンスミステリーに影響されてエイミィと張り合っていたし。
などなど思いつつも、今まで隠していた爪の一つを晒した『猛禽類』が『星の恋人』と親指立てあっていたことで、五十嵐は木枯しになるのだった。
「10秒ではなく20秒にしておきましょう。最後の
「いいですよ。公式記録は、そのまんまで―――んじゃお先に失礼します。それと―――別に廿楽先生の授業は嫌いじゃないですよ。魔法陣は結構興味深いですし」
「小生としては君の、『未知の魔法陣』の方に興味を持つよ。様々な干渉を果たす数多もの魔法陣……まぁ今は行きたまえ」
そういって実習室から出て行った遠坂刹那。傲岸不遜―――あけすけで敵味方に頓着が無く、手前勝手に動きそれを通す『能力』がある。
しかし、ある意味では、それこそが『魔法師』の実態だな。と廿楽は考えておいて―――。
「ワタシもセツナのやることに興味があるので、同じ条件でお願いしますツヅラティーチャー!!」
「総代として、彼の勝手な行動は看過できません。同じくお願いします!!」
そうして数十秒もしない内に、再び二人の挑戦者―――にして逃亡者が生まれたことを、ちょっとだけ悲しく思い、『ドクターロマン』の『予言』を楽しく思うのだった。
変革を行う異世界の『グランドキャスター』の存在を……楽しみに思うのだった。
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「それで、どういうことなのか教えてくれますよね? 刹那君」
「怖いなー。まぁ確かに勝手すぎる行動ではあったか……とはいえ、少しばかり試したいことがある。深雪、お前は達也に入れ込んでいる。そんな達也―――他友人たちの『立身出世』ためだと言えば許すか?」
「内容によります」
「一科と二科の『境界』を消す。否、『殺す』のさ」
物騒な言葉。しかし、まだ内容によることだ。一科二科の差―――即ち自分と兄の差。それを消すなどあまりにも『傲岸』すぎる。
確かに深雪は、兄の真の実力を知っている。しかし、それが魔法師社会全般の『価値観』と合致するものではないことなど分かっている。
如何に、兄の能力が一点突破型であり全般優秀型の深雪との差で、社会の中で優劣がつく以上、これを覆すなど―――。
(今日に至る魔法師達の価値観を、遠坂刹那は
そうだとしても、今の魔法師達にとって『魔力量』の多寡が廃れた『優劣』となったように……何かあるのだ。
未だにどこも授業中の廊下をこそこそ歩きながら向かうは二科生の実習教室。そこには確かに兄がいる。他にも友人たちエリカや美月もいる。
その場所に向かいロックを外す。無論、同じ生徒同士なので特に拒否もされずに電子の開錠はなされ開いた後に最初に見た顔は――――。
「うわっ。遠坂刹那!―――アンタ何しに来たのよ?」
「なんだ平河か。つまらん顔だ」
顔だけ入れて人を探すようなことをした時に横にあったベンチに座っていた平河千秋の顔に文句を付ける刹那。
いきなりケンカ腰な態度に当然、平河は怒りだす。
しかし騒がず慌てずに矮躯を逆さに取り、手だけで平河の突進を止める。進撃の小人を片手で止めた刹那に対して更に言い募る平河。
「だいたい一科もまだ授業中のはずでしょ? アタシたちと違って、講師付の実践授業からあんたら何こっちに来てるのよ?」
「君を笑いに来た…そう言えば、君の気が済むのだろう?」
赤くて三倍ながらも、俗人になろうと努力した人の言葉を引用したのだが……。
「更にムカつかせてどうするのよっ!! ええとチアキ、実を言うとね、この私にとって宇宙一愛すべき赤いバカが、二科の皆に試したいことがあるのよ」
久々のハリセンによるツッコミでダウンする刹那は起き上がり、頭を抑えながら言う。
「その通り。まぁ、皆して実技が不得手らしいから、それを何とかする方策を伝授したいと思ってな」
「……まさか私達を植物と合成して、最終的にはG細胞も取り込ませて芦ノ湖付近で大暴れさせる気か!?」
「お前どっちかつったら、そういうの『倒す側』じゃないか」
ロボ研に入部した平河の今後―――とりあえず、土下座せざるを得ないサイオン弾を放つ
なんだか、そんな風な未来が見える。そこにアビーまで入り込んでとんでもない兵器を作る未来が―――。
「とりあえず久々にミアさんに連絡するかな……」
「浮気の第一歩は旧知の女性に対する連絡! セツナの浮気者!!」
「違うんだけど!?」
それならばシルヴィア及びアンジェラに対する秘匿通信も咎められるべき事態のはず。と刹那は考えてから、ともあれ、今は待機中G組の面子を相手に少しのレクチャーをすることに。
見ると、どうやら実習台の方にはE組の面子が見えている。クラス単位での実習交代制といったところか……。そう考えてからの話である。
「何はともあれ、平河。まずはお前からだな。お前に今までの実習での記録を更新させてやるよ」
「……何すんの?」
「簡単に言えば『イメージトレーニング』。これを試させてくれ。何も効果が無かったらおもいっきりぶん殴っていいぞ」
先刻の夫婦漫才とかで不信感マックスの平河であるが、実習のあまりにもの成果の無さ、記録の更新のむずかしさに悶々としていたのは間違いない。
こちらの言葉に、少しだけ安堵したのかそれともぶん殴れる機会が来たのを喜んだのか、了承の意を受けて―――平河の『領域』に接続―――。その上で彼女の『属性』を鑑定した。
「―――なに、これ―――」
「気を落ち着けろ。『乱れる』とお前が『視なければいけないもの』が『視えない』――――視えたな?」
差し出された手を握り、少し茫とした平河の様子に何人かが気色ばむも―――、特に害意が無いことに気付き―――、終わりの言葉の後に……サイオンの波長がいつになく『いいもの』に変化していた。
「これは―――何なの?」
「今の感覚、それを忘れぬ内に、今できる実習で感覚を掴んでおくんだ。幹比古、すまないが、こっちの平河に一度台を譲ってくれないか?」
「せ、刹那!? いつの間に来ていたんだ!?」
「五分ぐらい前には来ていたわよミキ。少し観察させてもらっていたけど、『面白い事』やってるじゃん。もちろん―――」
「ああ、エリカにも試させてもらうよ。とはいえ、一人覚えれば、その後は『ネズミ算』なはずだけどね」
エリカと二人一組で実習を行っていた幹比古の驚きの顔。『当然』の如く『合格点』を叩きだしていた幹比古を狙ったのだが、実習のパートナーが、こんな調子でいいのかよ。
ネコのような表情で聞いてくるエリカに、降参してから―――台が空き、平河のペアパートナー。女子生徒が駆けつけて―――。
「んじゃ始めるよ。ひよ」
「おっけー」
コンパイル時間の短縮練習。二人一組で行う実習で1000msを超えないようにする―――ようするに一秒未満で『魔法』を如何に発動させるかの演習。
魔法とはいえ、無論、この場における実習で行われる魔法とは単純な『照明』のもの。魔法陣を光らせるだけなのだが―――それがとにかく遅いらしいのが二科。
この練習は刹那もやったが……要は、『魔力』の本質を知っていれば簡単なものだ。面倒だから『高速思考』『分割思考』……アトラス院ほどのものがなくてもある程度の魔術師ならば持っている『脳髄の高速化』で対応していたのだが……。
そうして平河が初期型の―――大型のCADに手を着けて発動した魔法。表示された速度であり時間は――――。
『370ms!!!!????』
思わずE,G組全員の言葉がシンクロした。先程の一科にて、刹那がやったように動揺が走るのである。
やった人間―――平河千秋は、感覚を忘れ得ぬように―――深く没入して何度も発動をする。流石に誤差は出るが400を下回ることはない数値に誰もがチートの類ではないことを確信する。
ざわめきが際限なく広がる。
「凄い!!……ミキの魔力が残っていたとかじゃないわよね?」
「あり得ないよ。もしかして刹那がやったことって前に僕にアドバイスしたことかな?」
エリカの感嘆の言葉に対して幹比古が察しよくなる。二科の中の名花などと揶揄されつつある幹比古なだけにその辺はしっかり否定したいのだ。
「そんなところだ。それならば幹比古、俺がやったことに応用が効くはずだろ? 助手よろしく♪ リーナにやらせてもいいが、ゲスな思考をした男子に列を作られるのは嫌なのでね」
『『『『と、遠坂ぁああああ!!!!』』』』
血の涙を流さんばかりのE,G組の男どもの言葉に女子は白け顔。それどころか軽蔑しているものもいるほど。
やむを得ず女子はリーナに頼むことで落ち着ける。流石にリーナ一人では疲れるだろうから、レクチャーを受けて要点を理解した深雪も眼を何度も見開き、『そんな盲点が!?』などと呉学人の如く思い知らされるのだった。
長蛇の列とまではいかずとも大体60人規模の二科生たちなのだ。列は作られるも、四人のマジカルドクターからドーピングならぬ『診察結果』を受け取るE.Gの面子。
そうしていると、列のどちらかといえば最後尾にいた達也の順番となり、私的な会話も交えられる。
「これがお前の方策か……無論、事情や理屈は説明してもらえるんだよな?」
「あんまり怖い顔すんなよー。とりあえず今はDr.セツナにきいてみて! な気分でいろよ。ちなみに俺の母親はリンなんで」
おどけて笑って誤魔化す。もちろん教えるつもりだが―――達也は、意外なことにこちらの顔に『笑み』で応えた。
あら意外。などと思いつつも、改めて達也の『鑑定』をする。本当にこいつは複雑な人間だ。あんまり『視ちゃいけない』ものが見えつつも視えたものをそのままに達也に見せる。
「視えてるな?」
「ああ、これが―――『魔力の本質』、俺の魔力の『資質』か……」
「そうだ。お前を見縊っていない。このまま『特性』も教えていいが……今はこの感覚を忘れないようにしておけ」
そうして「行って良し!」などと指2本で機器へと向かうことを推奨される。
レオが幹比古に鑑定されて、『すごい! レオも『二重属性』だなんて!!』などと叫んでいるのを見つつも、次から次へと記録更新をしていく二科生の様子に、誰もが興味を覚える。
そうして話は冒頭に戻るのであった……。
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「で―――回想シーンは終わったか?」
人の悪い笑みを浮かべた刹那。達也としては、色々とやられっぱなしで何だか悔しいが、とりあえず答える。
「ああ、色々と衝撃的な事実とか思い出していたがな……それでドクターセツナの説明はあるんだよな?」
「もちろん。まずはホワイトボードを使って説明させてもらう。古典的で悪いがな」
構わない。むしろ、今回やったことが『古典』の類であることなど何人かにとって明白だったからだ。
アシスタントよろしくリーナがホワイトボードを持ってきて、準備を整えるようにポインターとサインペン―――更に―――。
((((なぜメガネ……?))))
伊達ではあろうが、メガネを掛けた刹那の姿。しかし、それがどうしようもなく似合っているのだから、疑問はすぐさまなくなるのだった。
「では授業を開始させてもらう―――」
ポインターを伸ばして、まるで戦に向かうかのように言う刹那は、実に分かりやすく授業を行うのだった。
―――世界は幾つかの『要素』で構成されている。単純明快なものである―――。
そう唱えたものたちは多く、古くは古代ギリシャの頃の哲学者プラトン、アリストテレスなどに代表されるものたちが、有名だろう。
彼らは、その知性で以て世界を解き明かした。この理論は多くの影響を生み出し、中世時代の魔術。更に言えば錬金術にも応用された考えである。
間違いではないが、決して正解とも言えぬ、この理論を人々及び著者たちは、こう評した。
「多くの人間達が想像出来るものとしては『四元素』―――『火』『水』『風』『地』……魔法や魔術に関わらずとも、何となく程度に多くの人間も想像出来るものだ」
その言葉に二科の人間、特に男子の多くが首肯する。彼らの連想したものは、『属性相関』というものが影響する
「魔術。魔法的なもので言えば『五大元素』―――『火』―――『水』―――『風』―――『地』―――『空』で示されるものが更に一般的だと思う」
説明の合間に、ポインターの先に火を灯し、それを水で打ち消して、溜まった水を風が蒸発させて、風は地を巻き上げて先に止まったところで、地にある土を分解して『空』―――サイオン、もしくは『エーテル』へと変化させる刹那の手並みの素早さに誰もが眼を奪われる。
「日本でかつて研究されていたエレメンツの研究では更に分割して、六大属性にしていたようだが、いまは置いておく。
そしてこの理論の魔法的に重要な所は―――世界を構成する要素が元素であるというのならば、世界の『構成』に含まれている『人間』―――『霊長』にも適したものがあるのではないかという帰結さ」
「つまり、古代の哲学者……魔法使いたちが、世界に関して推察していて、その理論の終点として『人間』にもその『論』が通用すると思ったのか?」
「そうだ。そもそも一般社会でも未だに黄道十二宮での『星座占い』や『干支12支』なんかから自分の
そう言われて、そういやそうだ。と誰もが思う。しかしエレメンツの研究が終息し、魔法研究が、物理的作用だけに執心してここまで『違う観点』を失うものなのだろうか。
それだけ―――現代魔法が魅力的に映ったのだろう。即ち―――『神秘的』な『力』から科学的なアプローチに、少し違うがそんなところだろう。
「俺の『田舎』の古臭い論に従えば、少なくとも魔力―――エーテル、サイオンを扱うものは総じて何かしらの『属性特化』があるものだ」
「そしてお前がやったことは、その『五大元素』や『四大元素』に通じる『魔力』を全員に『意識』させたのか……」
「エクセレント その通りだよ達也。俺がやったのは本来ならばCADの魔法式で『色づけ』されるはずの『魔力』。それが本来持つ『色彩』を取り戻させただけさ。後は本人の持つイメージとCAD―――『ホウキ』との連携さ。魔力のコントロールとはイメージのコントロールなんだからな」
言いながら刹那は、再びそのポインターの先にある魔力。恐らくただのサイオン―――件のエーテルとやらに赤、青、黄、緑……虹色に色彩を変化させた上で鳥にしたり、剣にしたり―――はたまた『ハンマー持ったデフォルメきのこ』にしたりしていた。
こんなのは刹那にとって片手間なんだな。と思うぐらい『魔力』の『本質』に迫った男。魔女の後継者というのは伊達ではないということか。
「はーーい。 せんせぇ質問でーす」
「はい。エリカさん」
小学生向けの義務教育補助の動画にでも出てきそうな『小学生』のノリで手を上げたエリカに対して、刹那も、まるでその動画に出てきそうな『教師』のノリでポインターを指して答える。
「私達がサイオンに色付けしていなかったのは分かったけど、それって一科の人々にとっても意識しているものなの? だとしたらば少しズルい気がするわ。こんな単純なことで変わるなんて、それを教えていないなんて」
「ふむ。鋭い質問だな。しかし、これは俺なりの仮説だが、恐らく一科二科の違いとは『空』属性すなわち『エーテル』『サイオン』の『素のまま』に使えるかどうかの違いなだけだと思う」
「つまり、一科の人間達は、全員が『空』属性、エーテル、サイオンをまるっと扱える。だからこそ『起動式』の取り込みも『魔法式』の構築も早いということか……」
「言っといてなんだが、仮説にすぎない上での単純な結論だがな。しかし光井みたいなエレメンツの末裔もいる以上、そうとも言えない……だがやはり見立てとしては――――」
そういって刹那は、遂にペンを取り出してホワイトボードに書き込んでいく。最初は円―――芸術家の証明であるかのように正確な円の後には、五芒星をその中に描く。
その線は一つ一つがはっきりとしたものだ。幼い頃から書かされていたんだろうな。写経をする坊さんの如く―――そう思える筆さばきだ。
「身を乗り出して聞くなんて、よっぽど聞き入っているんだな達也」
「――――今さら気付いたよ。全く以てアイツには驚かされる……」
面白がるように隣のレオに言われて今さら、本当に今さら気付かされる。髪を掻き恥ずかしさを消して思い返す。
自分の属性『火』と『地』を意識して魔力を供給した所、『再成』だけに演算領域が働き―――終ぞ無き……高揚感があった。
達也にとって『魔法』と言うのは呪われた力だ。家から忌み子として扱われていた時から―――。だからあえて高めようとも思わないし、それ以外ではまずまず求められている『力』があればいいだけ。
現代社会の価値観における『魔法能力の上達』なんてのは、正直意味が無いものだったのだが……。
『楽しかったろ?』
そう無言で言うような刹那の後ろ姿である。苦笑のため息を突いてから、授業の続きとなる。
描かれた魔法陣は何を意味するのか、そしてこれが刹那のやる『イイこと』の終息ではあるまいと思いつつ、授業の第二部が始まる……。