魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~   作:無淵玄白

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色々と買いたい本が多すぎる!! 

流石は記念すべき100回目のコミケ!! 作家の皆さん気合い入れすぎ!!(嬉しい悲鳴)

とはいえロード・エルメロイⅡ世の冒険もあることだし――――――

買わずに後悔するなら、買って後悔しろという島本先生の格言もあるほどだ。(え

というわけで新話お送りします。


第325話『春色逢瀬』

 

 

「しかし疑問点もありますね。そもそもの発端、深雪が利用した百舌谷教官の魔法訓練の『動機』、本当の意味でのホワイダニットが分からない」

 

「それならば簡単だよ。彼こそが―――『ロード・エルメロイII世』であり『ロード・トオサカ』になりたかった若造だったからだ」

 

将棋のルール自体は理解しているものの、アドバイザーは欲しいということで、リーナ対百山校長の対局に連れてこられた、というよりも百山校長は着いてくるように指示してきたのだが。

 

最後の答え合わせ――――――そのための会話がこの部屋での会話であった。

 

「彼は私の教え子でな。利発で、かつ多くの魔法師を、数字持ちと同じ領域にあげていきたいと考える人間だった」

 

当時の魔法教育のカリキュラムとは、今とはまた別なもので、十大研究所の策定した方針論によって培われていた。

 

それは確かに、魔法師という種族を生み出した連中からすれば、『これぐらいは出来るだろう』という風なブラック極まるものであったらしい。

 

一部では、どこぞのカルト宗教が売り捌く、ありがたみなどクソほどもないブラック戒律教典などとも揶揄されていたそうな。

 

研究所由来ではない魔法師や、チカラ足らずだと認定され放逐された魔法家からすれば、本当にブラックなものだったのだろう。

 

「だが、これをなんとかやろうと、様々な方法論を読み漁って実践させていたのが鳥彦君なんだよ。彼の心は好ましかった。彼の気持ちは―――健が望んでいた世界を実現してくれると想っていた」

 

言葉の間に、リーナの『飛車』が校長の『角行』 によって取られた時に、話題は転換する。

 

「だが彼は失敗してしまった。多くの挫折を本人だけでなく、他の魔法師にもさせてしまったことで、彼は……本当に、一時は自殺するのではないかとすら思えた」

 

「ひょっとして去年の四月で、セツナに対する反論で練達の術者150人が50人に―――っていうハナシは実体験だったんデショウカ?」

 

「ああ、結局の所、彼の考案した方法は、肉体と精神の対比をお座なりにしたものであった。演算領域が『身体』か『脳髄』か、そもそも脳髄にあるとするならば、それは肉体に対するアプローチなのではないか―――詳細は省くが、これはかなり画期的だったんだ」

 

だが、その画期的な手法には穴があった。それも致命的な―――。

 

「精神―――『心』が感じる疲労とは、存外重いものだ。普段ならば何気なく出来ることも、その場に立たなければ分からない緊張感や伸し掛かる重圧とが、魔法の使用にすら支障を来す……まぁアレだな。彼は―――ちょっとばかり神経質だった……そして、自分が思ったより他人(ひと)から好かれていないことを、自認出来ていなかったのだろうな」

 

あれは神経質とかいうレベルではないと思う。ヒステリーと呼べる類である。もっとも、それを黙らせるだけの結果を出せばいいだけなのだ。

 

「ウェイバー先生の仏頂面は、才能ある人間を見るのが嫌な仏頂面。百舌谷教官の仏頂面は、才能ある人間が何故これを出来ないのかという、無理解からの仏頂面。

吐き気がするぐらいに天地がひっくり返るほどの差です」

 

転じて百舌谷からすれば、現状の評価基準で『才能のないとされている人間』など、路端の石も同然なのだろう。

 

「そう悪意的な見方をしないことだ……ただ、少々―――理想を打ち砕かれてナンバーズの選民主義に『かぶれていた』彼にとって、キミとエルメロイ先生は、己の顔面を切り裂きたくなるほどに―――『理想形』すぎたんだな」

 

苦笑しながらも百舌谷を少しだけ養護する校長先生。結局の所、そんな話だった。同時に、その深い思惑も見えていた――――。

 

「本当の所、彼は自らを失職(リタイア)させたかったとも見える。だが、その一方で、自分もロード・エルメロイになれるのではないかという願望もあった」

 

相反する願いが、今回の顛末に繋がった。

そして後者が無理だったことで出された『辞表』が、投了した(負けリーナ)将棋盤に出された。

 

「まさか受け付けるつもりじゃないでしょうね?」

 

「当然だ。4月にいきなり学年主任を辞職するとかあり得んだろう。彼の進退は―――この一年で決めさせるさ」

 

その後のことは、全てウェイバー先生に丸投げされては困りものである。

 

しかし、何故こんな話をしてきたのか……それを何気なく問う。

 

「彼の苦悩を少しは分かってほしくてね。かつての教え子に対する弁護だよ」

 

「―――、一つ聞きたいことが出来ましたよ。百舌谷教官の能力訓練で、喪失した人々は―――後悔していたんですか?」

 

「後悔もあった。恨みもあっただろう……ただ、それでもあの時、魔法が達者に使えることを喜び、笑顔を向けあえた日々を……ウソにはしたくないんだ」

 

そんな老人の後悔は、色んなものを孕みつつも、それでも……昔のような不幸を回避出来たことは、僥倖であったのである。

 

 

 

夕焼け空に染まる春色の季節。風雅なものを見ながら何となく伸びをする。

 

事件というほどの事件では無かった。最大級のアクシデントは回避出来た。

 

「やれやれ、一件落着かな」

 

「ミユキが元凶とか、色んな意味で予想通りというかなんというか……」

 

だが彼女の心を考えれば、これは予想通りであった。全ての人間が望んだ通りの道を進めるわけではない。

 

そんなことは、分かりきっていた。

 

ここから旅立っていた人たちの中に、そういう人もいたはずだ。

 

けれども―――。

 

「セツナ、アナタが責任を負うべきことではないと思うワ。ソレはアナタの言う心の贅肉だモノ」

 

「……顔に出ていたか?」

 

屋上にて、フェンスの向こうに視線をやっていた自分の心を読んだらしき、少しだけ呆れ顔のリーナの顔が、フェンスに頬杖を突きながら見てきた。

 

「イエス、イエス。そして、ソレを打ち消すには……」

 

すかさず刹那の胸の中に飛び込んできたリーナを受け止めた。いつでも感じていた柔らかさ。いつまでも抱きしめていたい柔らかさに抱き返す。

 

「しょうがないさ。達也みたいにある種のシニシズムな人間になれないんだよ。こればっかりは心の贅肉さ」

 

「モー! そういうことじゃないんだけど! つまり!! ミユキのナイーブなハートなんかにドウジョウしないでってコト!!」

 

「あっ、そっちなワケね」

 

転じて『他の女のことなんか考えるな』ということであった。しかしながら、そこを割り切れないと想うも―――。

 

(まぁどうせ達也から慰めてもらっているだろうし、俺がヤキモキする必要もあるまい)

 

結論としては、魔大陸で見捨てるということにするのであった。

 

「ウン……ナンカ今日のセツナはアツく抱きしめてくれるワ……気持ちイイ」

 

「最近、こういうのしていなかったからな……まぁ夜は別枠だけど」

 

「ソレだけは欠かさないとか、セツナのベースケ〜♪」

 

言いながらもリーナの髪を撫でることは忘れない。疲れはそれなり、言ってもお互い様とか言われそうなので、そこは言わず相手の身体を労るように魔力の循環をする。

 

「うんっ……ソンナにしちゃうと、我慢(wait)出来なくなりそうヨ」

 

見上げてくるリーナの瞳が潤んでいる。不安げにしつつも期待しているその眼を見ながら、密着する身体は深く近くとめどなくなっていく。

 

「リーナ」

「セツナ」

 

屋上にて見つめ合う男女。なんとも感動的なシーンであり、画になるワンシーンだ。

 

そして口づけが交わされる。

 

その口づけは――――――。

 

(((ディ、ディープキスゥウウウウウ!!!)))

 

出歯亀をしていた一年3人は、衝撃的なシーンを見せつけられて、色々と混乱の極みである。

 

「ま、まぁ分かっていたことだけども、まさかガッコーでこんなことを……」

 

「……泉美さん。大丈夫ですか?」

 

「え? 大丈夫だけど? もしかして霧雨くん、妙な勘違いをしていない?」

 

「違うんですか?」

 

度々、今期の総代が遠坂刹那と一緒にいるのは、そういうことだと思っていたのだが……

 

「違うよー。まぁちょっとは『いいかなー』とかは、考えたこともあるけどー」

 

あるんじゃないかと、双子片割れと関西からのスパイは呆れつつも、思ってから……。

 

「ヤバい! 先輩バカップルが来ちゃうよ!!」

「流石に『合体』まではしなかったか……」

「キリくんフケツ!!」

 

そんなやり取りをする2人の傍で、ちょっとした慕情を砕かれた七草泉美は、涙を払う。

別に知らなかったわけではない。あからさまに知っていたのだが……それでも、こんな場面を見ても諦めない三高の一色愛梨などは、随分とタフな女なのだと、妙な感心をしてしまうのであった。

 

 

 

「放ったのはいいが、予定通り行くか?」

 

「問題はないと思いたい。だが、彼女の『つがい』となるべき『サーヴァント』は、まだ召喚されていない。あの男の内側にいるならば、どうとでもなるかもしれないが」

 

「なんにせよ。これにて仕事は終わりか―――」

 

「……『ナイン』。ここはアナタの故郷だろう? 感慨とか無いのか?」

 

銀色の乙女に言われて、ナインと呼ばれた男は、苦笑をしながらも、そんなものは無いと言ってのけた。

 

「あやふやな記憶だからな。妻の記憶は確かにある。だが、ソレ以外となると途端に、な―――キミと同じだ。アーチャー。ある意味……俺は『時間を飛び越えた』存在のようだ」

 

神話時代に生誕を果たしてから、ある種のコールドスリープ(人工冬眠)を経て、西暦時代に足を踏み出したアーチャーの伝説は、良く存じている。

 

そして、その力も……。

 

「マリアの為にも、ちょいといい魚でも買っていくかね」

 

「私の『竪琴』を、密輸入のための冷凍庫みたいに使ってほしくないんだけど」

 

 

セーラー服姿の異国の少女が、学ラン姿の少年の嘆きに答えるように、そんなことを言ってからその姿は消えた。

 

そうとしか言えない様子で、消えたあとには……。

 

 

「匂う、匂うわ……あの唐変木のニオイが!! 誰であろうと構わない! 竜のニオイが私の鼻を捻じ曲げるとしても!! 私は―――アナタに復讐させていただくわぁ!」

 

1人、1人―――斬っていくことでヤツに辿り着く。

 

白蝋のような肌をしながらも、その美貌が何一つ損なわれないものと、ゴシック調の喪服の如きドレスを纏う美女は、その眼を炯々と輝かせながらも暗い情念を吐き出す。

 

「待っていなさい!! ジィイイイクフリィイイイトォオオオオ!!!」

 

その叫びは今宵の悪夢にまで尾を引きそうな復讐の女の絶叫であった―――。

 

 

 

 

 

 

 

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