魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~   作:無淵玄白

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そんなわけで、九校戦に入る前の幕間です。

この話の前半は私の脳内設定とか妄想も含まれていますが、ただ随分とこの手の話題に辛辣すぎる他作が多いので少々、やんわりとさせることにして、姉弟の関係も少しだけ変えることにしました。

まぁ大前提として『父の勧める縁組を断れなかった』としていたので、ちょっとこのヒトにも責任を取ってもらう形で出演させました。

原作がどうなのかは、これからですけどね。

長々しましたが、どうぞ。




幕間5
『クリームヒルト様は探したい 1』


 

 

 

いつぞや以来の魔法家への個人的指導。七宝が三高に逃げたことで、刹那の教導範囲は、色々と『ラク』になってしまった。

 

こういう風な施設を持つ辺りに、流石はブルジョワジーとして、ちょっとした恨み言も持ったりするのだが……。

 

それを飲み込みながら訓練を行う。

 

昨日は三矢家であり、今日は十文字家……基本的には、家の指導方針に対して口を出すわけにもいかないので、刹那の方で術を放ち、それに対する『対応力』を鍛えさせるという塩梅である。

 

「どうやら低位の魔力武器に対しての『障壁』は硬くなってきたな」

 

「当然です……!」

 

汗を拭いながらも、なかなかにスパルタすぎたかと思う。だが、これこそが竜樹君が求めたことだ。

 

彼が考えた十文字の魔法師としての道とは『移動形の城塞』。その移動城塞で攻撃を繰り出すことであった。

 

鉄壁・不動・剛体・無双のどれでもなく―――瀑圧……造語でしかないが、それを求めるのであった。

 

とはいえ、そうは言うが攻撃型ファランクスの要点は、相手の攻撃を『弾き飛ばせるだけの力』が無ければ無意味となる。

寧ろ、密集して盾による『陣』を敷くよりも難易度は高い。

 

盾そのものを殴打武器として接近していく。そして『鎧』と化した身体で『ボンバータックル』を行うのが、彼の理想らしい。

 

「いや、そんな愛の力で場外にふっ飛ばされかねない術は使いたくないですけど」

 

ジト眼で見てくる年下にちょっとだけ苦しくなる刹那。

 

「俺の心の内に分け入らないでくれ」

 

「ただ……レオさ―――西城先輩みたいな『アレ』は取得したいです」

 

そんなやりとりの中で、竜樹君の理想が知れるのであった。

 

「レオの幻腕、幻手はセンスの産物だからなぁ。あれは固有魔法に近いし……」

 

その素質としては、確かに十文字家の障壁に近いモノはあるが、似て非なるモノとしか言い様がない。

 

「君だけに出来ることなんて言っても、所詮は誰かの上塗りだ。オリジナルというのは、先人ありきだしね。レオのあれだって、元は俺の兄弟子のものでしかない。今は、焦らずにやっていくことだと想うけどね」

 

十文字竜樹は流石は十師族の血で、当たり前のごとくセンスの塊だ。

魔法の発動速度が速い上に、その威力も高い。

何より、魔法式の展開速度自体が他の魔法師の比ではない。

 

それでは満足できない『贅沢な輩』が増えたのは、俺の所為なのだろう。

 

「ただ、あえて言わせてもらうならば、強力な外皮()を武器に突進するというのは、ヒト型というよりも『獣』の類だからな」

 

「鎧竜とか剣竜……まぁ言われてみれば確かに……」

 

「キミの名前は特に『起源判定』をしての名付けではないから、関連があるかどうかは分からないが、その内に出来るかもしれんな」

 

ナーガールジュナに値するだけの『力』が―――。

 

などと思いながらも―――。

 

 

「次は、剣から放たれる遠距離攻撃だ。どれもこれもビーム攻撃だから、多様な攻撃を防御するファランクスと違って力任せで防ぐしかないが、そこは頑張ってくれよ?」

 

「了解しました。 ご指導よろしくお願いします」

 

結局、従来通りの教導に落ち着かせるのであった。だが何気なく刹那が放った言葉は少しだけ、竜樹に明朗なものを覚えさせていた。

 

それはとある朝陽の中に見た姿……日課の早朝ランニングを行っていた時に、飛行機のジェット音のごとき音を耳が拾い、何気なく空を見上げた瞬間に見えてきたもの。

 

甲高いソニックブームを響かせながら、大空を飛ぶ漆黒の『機体』。朝の光を浴びても黒く光るそれに、国防軍の新型機かと思ったそれは……機械的な印象の他に、生物的なものを覚えた。

 

まるで―――『竜』のように見えたのであった。

 

その竜のように成りたい。その強壮な姿こそが竜樹の目に焼き付いている……。

 

あのような存在になりたいと想うほどに焼き付いた憧れ。

 

―――朝日の中に消え去っていく竜のように見えた、戦闘機の姿を追うことに決めた。

 

 

しかしながら結果は無情にも彼を勝利へと導かずに、次の段階たるオールレンジビーム攻撃というものをしこたま食らって悔しく想うのであった……。

 

 

 

「竜樹さんはあれですね。私の親友と同じぐらい無茶しますよね」

 

「防御では姉さんが勝っている。攻撃においては俺が、伸ばすべき分野が違うんですよ」

 

(茉莉花の猪突猛進とは違うと想うけどな……北海道に猪はいないのに)

 

訓練終わりと同時に、回復術を受けてもまだ心配な弟を労るアリサ。獣医である養父母の影響ではないだろうが、彼女は怪我人に対する処置が随分と達者であった。

 

違う『線』では、どうにもすれ違う姉弟であったこの2人だが、ここでは違った結果になる。

 

整理して考えるに、全ては―――『お節介』と『信用不足』であったということであった。

 

ことの発端は―――現当主である和樹の父親にあたる十文字 (ガイ)氏のお節介であった。

 

当時、初孫ともいえる克人を溺愛していた(現在も継続中)鎧は、克人の母親、和樹の妻女を亡くしてからの十文字家を少しだけ憂いていた。

 

和樹には弟もいて、そちらも結婚をし、息子がのちに出来ていたりするのだが、それを差し引いても、このまま和樹が子を作らないのはどうなのだろうという考えと同時に、まだ3歳程度の克人に『母』を作ってやらない和樹の態度に少しだけ懸念を覚えた。

 

後妻が、克人をどう扱うかは分からないが、それでもこの年で母がいないというのは少々寂しいではないかと想い、仕事と克人の魔法訓練にだけ没頭する和樹に業を煮やしたのが、鎧氏の立場であった。

 

―――だが、鎧氏も知らなかったこと、それは……十文字和樹も一角の人物であり『男』であったということだ。

 

どうあっても妻を亡くして寂しい思いをしていた和樹は、仕事の関係だか、それとも密かに『デートクラブ』にでも登録していたのか、その辺りは不明だが、その頃には既にアリサの母親―――伊庭ダリヤことダリヤ・アンドレエヴナと男女交際をしていたということだ。

 

彼女との交際を大っぴらに出来なかったのは、喪に服している期間での世間体とか、彼女の素性が色々とナーバスになるかもしれないという、そういう『気遣い』をダリヤから言われて、それをあまり表に出していなかったことが、後々の『信用不足』を引き起こした。

 

喪に服すること数年―――克人が六歳頃に大きな転機が訪れた。

 

『和樹君―――先代 十文字当主であり十研の意思として伝える―――十の魔法師の繁栄のため、君への縁談を用意した。受けてくれ』

 

その言葉に愕然としたのは和樹であった。

 

その時の鎧は、よほど亡妻のことが忘れられないのだろうと思い、この縁組を成功させるべく、ワザと権威的な物言いをしたのだが……。

 

この時に血の繋がりある『親子』としての腹を割った会話をしていれば、また違った結果があったかもしれない。

 

そんな風に秘密の交際を続けていた女性がいるということも打ち明けられず、それを断ることも出来ないほどに、当時はまだまだ研究所及びその『上』の意向は、魔法師の自由意志を縛り付けていた。

 

だが、それでもまだ一縷の望みはあった。そもそも和樹は、自分のような大柄でゴリマッチョな男が、世間一般の女性から好かれる容姿ではないことは理解できていた。

 

ダリヤはそういう意味では、稀有な女性であった。

こんな無骨に生きてきた男の拙いデートプランにも不満を漏らさないどころか、喜んでくれた人……。

 

言ってはなんだが、父である鎧が組んでくれた縁談。あちらにも自分の写真は寄越されているだろう。きっと幻滅しているに違いない。

 

自分も相手を見た―――確かに美人であり、少しだけ亡妻を思わせる顔立ち。しかしながら、相手のプロフィールは、確かに魔法家として見るならば、十文字にとって遺伝子的に良いのかもしれない。

 

だが、育ちは―――昔風に言えば『山の手のお嬢様』。

 

こんな女性が自分との縁談を良しとするわけがない。

 

よって破談するという冷たい計算が働いた。話によれば、十文字家の『上』などが頭を下げて申し込んだこの縁組―――断る権利はあちらにあるのだから……。

 

そんな打算と計算に塗れた心は……。

 

『和樹さんを一目見た時から思っていました。ナイスでグッドなマッチョウイルだと!!』

 

乙女の意外な男の好みの前では無益なものだった。

 

『それ以外にも、あなたと私は幼い頃に会っていましたから……』

 

照れながら語られる慶子との出会い。それはただ単に年上として年長者として、手助けした程度のことだったのだが……それでもそんな風に言われては和樹としても、情を持たざるをえなかった。

 

この時の和樹は付き合う内にきっと幻滅するだろうということも考えていた。幼い頃の思いは、所詮、幼い頃のことでしかないのだから……。

 

だが、そんな和樹の変化を敏感に感じ取った人物がいた。

 

男女の関係にあったダリヤであった。

 

知己である遠上及び軽部などに頼んで調べさせたところ―――上記のような事実を知ってしまったということだ。

 

ダリヤとしても、和樹の元を離れるのは辛かった。あれだけ情を交わし合って将来も誓った仲であったが……。

 

日本の婚姻とは家と家のツナガリ、ムスビ……そんな古くさい理解をしてしまったが為に、ダリヤは遠上家の方を頼って北の大地へと向かうのであった。

 

そんな『逆さ舞姫』な状況に陥ったダリヤさんではあるが、この時……和樹もダリヤも理解していなかったことがある。

 

すなわち『懐妊』をしていたのであった。

 

(その後の追加調査だが、ダリヤさんも自分が子を為せる身体だとは思っていなかったフシがある)

 

べゾラゾフのクローンにして調整体魔法師。いつぞや達也が言っていた魔法師の合鴨、ラバ……次代を残せぬ悲しき宿命は既に打ち破られていたのであった。

 

そして、その事実を知らぬまま、身を引いたダリヤに後ろ髪引かれつつも、それでも慶子との婚約は順調に進んでいき、そして―――事の次第は一年ほど前に至るのであった。

 

これらの事実を、鎧は後に和樹から話されて、そして……涙を流しながら鎧ジイさんは3人の孫と和樹の後添えたる慶子に謝罪したそうだ。

 

ある意味では……本当に……すれ違っていたのだ。

 

(隠し事というか『本心』とか『本音』を隠しすぎなんだよな)

 

鉄壁というよりも『鉄面皮』の十文字とかに改称すべきではないかと刹那は感じつつも、和樹氏も鎧氏を父親と尊敬するならば、もう少し―――腹を割って話しておくべきであったかもしれない。

 

そういう……お互いを気遣う親子関係であっても、少々刹那としては羨ましさを覚えてしまうのであった。

 

そんな風に考えたことが召喚の呪文になったのか、この魔法練習場に克人が現れた。

 

「今日のレッスンは終わったか?」

 

「まぁ俺の方でのものは、この後の竜樹君やアリサ君の予定は知りませんが」

 

「ならいいんだ。遠坂、少々話をしたいことがある。いいか?」

 

その言葉に何やら不穏なものを感じつつも……。

 

「ええ、魔法大学のこととか教えてほしいですからね。克人先輩のキャンパスライフ―――教えて下さいよ」

 

それを弟妹に感じさせない対応で、気遣われたことを悟った克人は―――。

 

「ああ、お前のバラ色スクールライフほどではないが、魔法大学の女子たちと戯れる俺のキャンパスライフを教えてあげよう」

 

自信満々な笑みでそんなことを言った克人だが……。

 

「ちなみに言えば我が家に兄さんが連れて来たのは、ここ一ヶ月ほどは七草真由美さんだけです」

 

「他の女性の顔を見る日はいつになるやら……」

 

弟妹からさんざんなことを言われた、克人の意気消沈した顔に同情しつつも……。

 

克人の案内で来客用の応接室に案内された。

茶を濾す克人を見ながらも、『失礼します』といって客席の方だろうソファーに腰掛けて、湯呑の茶を互いに呑んでから、一息吐いて―――言葉を発する。

 

 

「卒業式以来だな」

 

「そういやそうでしたね」

 

あの後はお互いに怒涛の日々であったのだ。何となく聞こえてくる話によれば、魔法大学に入った先輩方も色々だったらしいのだから。

 

同時にこちらのこともあちらには伝わっていたのだろう。

 

「まさかロンドンと京都で連盟に一大決戦を挑むとは……気遣ったのか?」

 

「まぁ一応、大学入学前に乱痴気騒ぎで式に出られないとか、あれでしょう」

 

意味合いとしては仲間はずれすんなよ、という言葉に対して返す。

 

「怪我をするという前提で進めるな……まぁ感謝しておく筋ではあるか」

 

「―――リズリーリエは既にギアスを解いています。俺の階梯では、あの人を縛り付けることは無理ですから、これが聞きたかったことでは?」

 

「見透かすなよ……」

 

年下に一枚どころか二枚も取られて、克人としても反撃出来ないことに、苦笑せざるを得ない様子だ。

 

本当の意味で家に連れてきたい女は、克人にとって本当に『高めの女』であった。

 

「だが、今は彼女のことではない。本題に入ろうか。

我が十文字家に警察経由で妙な依頼が入った。当然、魔法や魔術関連のことだ」

 

その辺りの心を押しのけて克人は、ソファーの向こうにいる刹那に対して、話をしてきた。

 

「昨今、都内で喪服のようなドレスを着込んだ美女が、『突如』ふいに『眼の前』に現れるという話が出ている……それだけならば、ただの怪談話の類、都市伝説なのだが……」

 

「その女が『とんでもない刃物』で、男を斬り殺しに掛かるなんて話でしたね」

 

「知っていたのか?」

 

「詳細は知りません。ただ、そんな話をエリカが話していたので」

 

情報源は長兄だろうが、と推測を交えながら言うと、『そこまで分かっているなら』と克人は備え付けの映像機器を操作して、件の下手人を示してきた。

 

「いまは情報管制を敷いているが、そろそろ限界だからな……この美女の早急な確保の協力を願いたい」

 

映像機器の画面には、犠牲者相手に身の丈にあわない大剣を今にも振るおうとしている美女―――イイ笑顔をしてる。

 

そして、振るおうとしている剣の正体は、目にした瞬間に理解しても―――少しだけ不可解な想いをする刹那が出来上がるのであった。

 

 

 

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