魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~ 作:無淵玄白
上記のようなツッコミが入りそうな今話。しかし寿和さん……何か同じ長男どうし分かる気がするんですよね。
完全に遊び人みたいな生活をするか、真面目に根を張って地道に頑張るか……。どっちかなんですよねぇ。
まぁ本質的にはゴーゴーファイブのレッドやマジレンジャーのグリーンみたいなものなんだろうな。
「さて、先に語った通り。やはり空属性の魔力を操れるというのは『系統魔法の四系統八種』において実に有用な手だ。達也ならば諳んじれるだろう?」
「語れって言うなら語るさ。加速・加重 移動・振動 収束・発散 吸収・放出―――属性的に表すならば『加速・移動』が『風』、『加重・振動』が『土』ってところかもしれんか」
自分の推測を語るとそれなりに満足した顔。なんだか踊らされている気分だ。
「そう。現在の物理的干渉から端を発する様々な『自然現象』―――これらによって『万能』を得ている気分なんだろうが、俺からすれば『甘い』。実に甘い結論だ」
「ほう。22世紀を迎えるこの時代に、あえて魔法師達にとって金科玉条の如きその『最終結論』を覆すか?」
「ああ、当然だ。でなければ俺は『先生』に顔向けできない。まぁそれは私事だ。気にするな。今お前たちに必要なのは自らの『魔力の属性』を掴むことと『魔術特性』を掴むことにあり」
そういって魔法陣を見せる。いわゆる属性相関図とも言えるか、そのドイツ語で属性名を書きながらも分かりやすく、『赤』『青』『緑』『茶』『黒』などで色付けしてある。
「これは見ての通り。五大属性を相関にしたものだ。陰陽五行思想における『五行相生・五行相剋』―――まぁ生かしたり、殺したりする属性の関係図だ。まずは『生かす方』に魔力を流し込む」
どうやらホワイトボードに書いたとはいえ魔法陣として機能するらしく、刹那がポインターで一点。五芒星の頂点の一つを突くとそこから色つきの魔力が流れて、それぞれで分かるものだ。
生かすのは魔法陣の円周であり―――きれいな虹色を見せる。
誰もが感嘆の吐息を吐くぐらいに見事なものだったのだから、それも仕方ない。
見ると確かに『生かしあっている』。これが自然界における正しい『繁栄』の仕方なのだろうと思えるものだ。
「続いて『殺しあう』属性を見せるよ―――
一言で、それまで流れていた魔力の流れが変わり五芒星が―――あまりいい色ではないものに変わる。流れ込む魔力がそれぞれで消しあっているのだ。
「火は水に負け、水は土に吸われ、土は風に攫われ、風は
「詩的な表現どうも、美月。もしかしてこういうの諳んじているの?」
「魔法幾何学は興味があるというか美術部だけに得意になって……」
焦る様子だが、問題は無いだろう。達也も刹那も思うが、ともあれ美月の説明で全員の頭にインプットされる。
「ご覧の通り。属性にも相関図がある。同時に先に語った四種八系統の中でも苦手な分野もひとによってあろう。それらは無論、本人の資質にもよるが、本質的には己の『特性』を理解していない点にある」
「特性……それは、演算領域にある『特性』と同じと考えていいのか?」
「おおまかにはな。ただどちらかといえば、俺が示しているのは『精神』というよりも『魂魄』の側の話だよ」
ヒトが『人』という形を得る前の『原初のカタチ』。それは例えどのような姿となってもその宿命からは逃れられないものの一つ。
魔術師 遠坂刹那の語るところ、はじまりの『渦』から出てきた自分達の大本が、人間の姿を取ったとしてもそれが持っていた特性からは逃れられないという。
宿命……『魂の
「つくるもの・こわすもの さぐるもの・つかうもの―――この大別した四種の系統が、皆が持っている『魔法特性』に直結している。さっきまでのがNARUT〇のチャクラの性質変化の話ならば、これからするのはHU〇TER×HUN〇ERの念の系統みたいなもんだ」
単純明快ながらも実生活においても『何となく』意識するものがある属性だ。現に達也はリーナと刹那によって『つくるものでこわすもの』と評された。
というかさっきから刹那は、かなり昔の『漫画』を題材にして言ってくる……完全に読んだことが無い名作でないだけにツッコミを入れるのが野暮である。
「例えば、そうだな……レオの得手をばらすようで悪いが、『硬化魔法』が得意なんだろ? んで属性は―――」
「水と土だったね。二重属性は結構レアなんだろ刹那?」
「ああ、そしてレオの『起源鑑定』の結果だが、「つかうもの」だな。もうちっと詳しく見てもいいが、あんまり見過ぎると起源に囚われすぎる」
幹比古の言葉を継いで説明するとレオの顔に真剣みが走る。自分の将来に直結することなだけに当然だ。同時に刹那も顔を引き締めた。
「水は高きから低きに流れるという特性があり、代わりに土は不動のものという概念がある。これらは一見すると相反する属性でありながらもある共通点がある」
手を上から下に下げていく様子を見せてから五指を開き虚空で止めて何かを『とどめる』ような刹那のジェスチャーを含めての説明。
魔力が集中しているのも分かるので、どこか神秘然としたものだ。
「それは――――」
「―――『変化』を許容するという考えにある。水はたえず流れる運動に終始し液体から気体、個体に『変化』しようとする。土は不動と言えどもなんの『変化』も受けないわけではない『風化・浸食』が主だな。それを念頭に置くと硬化魔法においては『分子運動』をつまり相対位置を『固定』することで対応しているが、その場合物質の形状を固定しているという状態にあるのだが、完全に『変化』を許容しないわけではないから、お前さんはそんな中でも楽々と動けるんじゃないか?」
「正解。得手をばらすわけではないが、その通りだよ。そうか―――言われてみれば、そういったことを『意識』しなかったわけではないか……」
少しだけ得心するレオ。眼を瞑り魔力のコントロール。そのイメージに『形』を与えようとしているのだろう。
よって少しだけアドバイス。
「山とか大樹とか……
「……更に正解かもな。俺の名前から分かる通りドイツの土地を思い出すんだよ……つまり刹那、俺の特性は」
「『変化』に属するものなんだと思うね。硬化魔法は確かにイメージとして『土』とかを思い浮かべるが、柔軟さを持った『流れるような魔力』と考えや思考が硬直していない性格に起因する『変化の特性』をイメージして意識すれば、今まで難儀していたものも難なく……とまではいかずともこなしていけると思うよ」
あとは努力次第。と言われるも、言われて見せた顔は絶望ではない。ようやく見えた『指針』でもあるのだ。
それを離すわけにはいかない。つかまなければならないものだ。しかも釈迦が地獄に垂らした蜘蛛の糸ほど細くは無いのだ……。
「最後に締めくくりというわけではないが、一科の中でも、それらの魔力コントロールとイメージに長けた人間がいる。それがマイハニー アンジェリーナ・クドウ・シールズと達也にとってのスイートシスター司波深雪だ」
その言葉できゃっ! などと頬を赤らめて明後日の方向を向く二人の女王。少しだけ硬い空気が和らぐ。
砂糖は吐かない。シュガーノーボミット……耐性が付いてきたようだ。
皆、進化してる……あまり嬉しくない進化かもしれないが―――。
「この二人は、雷気と冷気―――魔力を自然と『イメージ加工』してそれらに転換している人間たちだ。まぁ時に暴走とも言えるが……みんなは、それらに繋がる端緒を得た。美月の属性。レアカラーとも言える『月』の説明は『今回』は省かせてもらったが、『今度』やらせてもらう。すまんな」
「柴田さんのは月以外に『水』もあったからね……まぁそっちで対応できる話もあるのかな?」
「ってミキ……男子から刺されても知らないよー。刹那君の男気を無下にしちゃってさ」
「どういう意味っ!? いやなんとなく分かるよ! 分かるけど柴田さん他数名の女子はなぜかこっちに並んだんだもの!!」
恐らく幹比古という美少年に鑑定してもらいたかったのだろうが、きっと男子達の嫉妬の視線は幹比古をゲイ・ボウで刺し貫くがごとく鋭かっただろう。
アッーー!! なことにならないように、などと考えつつ、今回の授業はここまでで『何か機会』があれば、F組の面子にも教えてやれということで終わらせようとしたのだが―――。
「まだよ! 遠坂、一番肝要なことをアンタ言っていないわ! きりきり吐いてもらいましょうか?」
「なんだ平河。俺みたいな美少年に手を握られたことで、秘密の一つでも知りたくなったか?」
「そ、そんなことあるわけないじゃない! 私をバカにするんじゃないわよ!! アンタみたいなツラだけ良くて『軽薄な』心の持ち主なんて嫌いなのよ!」
そこまで言われるとは何と言うか嫌われたものである。まぁいいけど。いや良くないな―――なんせ後ろで魔性菩薩が誕生しているし。と刹那は思う。
「チアキ……! あんまりワタシのステディを変な風に言うようならば―――」
「軽薄なんだけど、せ、責任は取ってもらうわよ!! ティーチ、ユアカラー!!」
頭悪い英語ではあるが、リーナに怯えまくった平河の言葉に、刹那も皆の秘密を見てしまったわけだからその言いたい事に準じて言うことに―――。
「俺の場合は五大属性全てに適性がある―――魔術世界ではこれを『アベレージ・ワン』と称するんだがな」
「……なん……だと……?……」
――――二科生全員が白バックの背景に若干の白目が含まれたままに驚愕を示してくる。君ら仲イイね。一科はけっこうギスギスしてんのに(談:元凶)
そんな中、いち早く復活したエリカが、真実を推察する。
「冷静に考えれば刹那君、そのポインターの先に『五大属性』全てを軽々しく出したり消したりしていたもんね……あれはそういうことだったんだ」
「別に水属性だからと火が使えないわけではないが、水と火を合わせた『燃焼』活動ってことになりがちだが、俺のは違うよ」
「馬鹿な!
告げられた驚愕の事実。この中では達也、美月、レオ、幹比古、エリカの五人程度が
というか最後のは何だよ……確かに『似ている』要素がないわけではないか……。
「まぁお袋の副産物みたいなものだよ……親父曰く『お前の『あくま』な遺伝子が俺の遺伝子を食い尽くした』とか言っていたし」
「どんな夫婦だよ……?」
「私生児だから正式な入籍はしていないはずだ。まぁ俺がいる以上、何かしらの情動があったんだろうけど」
親父はどこかで野たれ死んだと言う刹那の眼に、一瞬、寂しさが宿ったのを何人かが視たが変わって、とりあえず秘密の暴露はいいか?と平河に問う刹那の姿。
「うん。ありがとう。そしてごめん―――無遠慮だったわ」
「気にしちゃいない。別に親父は魔術師としては「へっぽこ」だったからな」
平河の謝罪に苦笑で返す刹那……しかし、達也としてはそれで収まらない。
今までの刹那のプライベートな情報の散逸した情報を纏め上げるに、母親 『遠坂凛』は相当優秀な『魔法師』……『魔術師』『魔女』だったのだろう。
ある種のエリート思考の人間が、情だけで子を為すものだろうか。その場合、刹那の父親はよっぽどな色男か多数の女性に好意を寄せられるタイプの人間だったはず。
それもあり得るかもしれないが……。刹那はそれでも父親の話題を出すことは殆ど無い。それは能力が劣っていたからだろうか?
達也と深雪も『母親』と『父親』の恋愛結婚の末に生まれたわけではないことぐらい、今となっては知っている。
そして父親が、いくら『家の決まり』で別れさせられたとはいえ、元・恋人と情のある関係を続けていて、母が死ぬと同時に間を殆ど置かずに再婚したことなどは今でも心のしこりであり、再婚相手に家の敷居を跨がせたくないぐらいだ。
(だが、お袋が親父の血を求めたのは、やっぱり血統ゆえだ。なんというか……
しかし父親としては認められない。そんな達也のセンチメンタル(?)なものと重ねるのは、危険だがやはり刹那の父親にも『秘密』はあるのだ。
(刹那の母親 『遠坂凛』には、どうしても刹那の父親の『血』を取り込む目的があった……無論、ウチの家族と違ってもう少し情のある関係だったんだろうが)
それこそが―――遠坂刹那というイレギュラーに近づく最大の要因―――最近、風間たちが手に入れた『セイエイ・タイプ・ムーン』という『アンジ-・シリウス』以上に謎の多い魔法師の情報にも直結するはずだ。
(無限の『魔宝』をたずさえし、
などと思いながらも、聞き耳立てていたであろう一科生―――ほのかや雫に混じって、知らない顔も多いのをドアを開けて勢いよく招待した刹那のイタズラに―――。
「やっぱり違うのか……?」
「「「???」」」
「お兄様の心が刹那君で占められている……!! この気持ち…まさしく憎悪よ!!!」
「あんた達兄妹はお互いの
色々とカオスになっていく場……これを狙っていたのか……と思いつつ、一度、風間なり……頼みたくないが『叔母』辺りに刹那の『出生』を洗ってもらいたくなるのだった。
† † † †
ブランシュ日本支部。その場所を密かに監視して、その動向を注視してきた一人は戻ってきたデスクにて、やる気がないのがデフォルトながらも真剣にならざるを得なくなっていた。
場所は自分の妹が入学した高校から殆ど目と鼻の先だ。
八王子の一角に居を構えた彼らの狙いなどようとして知れる。それ以外にも色々あるだろう。
反魔法師活動を是とする彼ら―――本当に130年以上も前の共産赤軍活動家の如き彼らの動きは厄介なものだ。
「その活動を止められるとすれば、彼らが『暴走』した時だけか、厄介だねぇ」
だが、それが人類社会におけるルール。けなげな努力を続けて法治国家として存続させてきた今日の社会。
その社会において非合法活動を完全に暴力革命にシフトさせた時点で彼らに正しさは無くなるのだ。
「今までは武器を違法に所持しているという点でしょっ引ければ良かったんだが……狡猾すぎるな」
部長もこの対応には焦っているのが分かる。明らかに『おかしい』というのにその一方で『正しい』限り……。
今では武器弾薬などどうとでも隠せるのだろうという余裕がある。おかしい点を何とか掴みたいのに掴み切れない―――警察省の警察官『千葉寿和』にとってこれは厄介な案件となっていた。
そんな風に自分と数名程度の人間しかいない課にて、来るべきものが来るのを待っていた……。
「警部! 頼まれていたもの持ってきました」
「ん、ご苦労様。さっそく見させてもらうよ」
焦ってるな。部下である稲垣が入るやいなやこの態度。いつもならば、「そこに置いといて」ぐらいの気だるげな言葉が出るというのに―――年下の上司の剣客として、『兵法者』としての直感が働いた資料は―――いわゆる金の流れを示したものだった。
上司のケツに火が点くぐらいには、大層な案件になりつつある……。その予感が稲垣を緊張させた。
資料を一読。寿和の眼が鋭くなるのを見咎める。
「……やはりな。どう考えてもおかしい」
「おかしいですか? この『精肉店』からの注文書が……」
「古来、アレキサンダー大王以前、そして織田信長、武田信玄、豊臣秀吉しかりだが、いつでも頭を悩ませてきたものがある。それは兵糧の確保だ」
現在の戦争においても補給の問題というのは、かなり死活問題だ。弾薬以上に燃料・食料・医薬品―――軍隊然り人間というのは一日『待機』しているだけでも多くのものを『消費』している。
戦えば、それ以上の物資が減るわけだが、それでも『待陣』しているというのでも、多くの物が消費される。それが『大軍』であれば尚更だ。
「ブランシュの構成員の数など我々は分かっているが―――、それにしたってこの量はありえないな。一日ごとに『牛五頭分に豚が二十匹分』の肉だ。どんだけ『大ぐらい』がいるって話だ」
「しかも、この『光熱費』も……あり得ませんね。肉を焼けばその分、エネルギーが消費されるはずなのに、一般家庭と殆ど同じ分しかメーターが動いていないですよ」
例え、何か―――自然に火でも起こして毎日BBQパーティーをやっている愉快な集団で、持っている刃物を咎めたとしても「あっ、すみません。僕ら金物マニアの定例集会なんです」なんて理由はまずありえない。
まぁつまり肉のカットは精肉店の仕事。精肉屋としては大儲けでがっぽがっぽの後の税金徴収のあれこれでもちょっとした高額納税できるかもしれないが……。
「現実をいとも捻じ曲げられる『魔法師』にとって、
「……つまり『動機』があると?」
「もっとも簡単に解釈するならば『生肉を食わなければいけない存在』を内に擁しているということだ。如何に魔法師が人類を超越しているとはいえ、虎や獅子とそのまま取っ組み合いをして無傷で勝てるわけがないからな」
凶暴な猛獣。もしくは何らかの『生物兵器』……噂程度であるが、新ソ連が先年のニューヨーク大決戦において遺伝子改良した生物兵器を利用したという話もある。
それを想像して稲垣は唾を呑み込む。
「ペットにワニや大蛇を擁すれば……まぁびっくり兵器ぐらいにはなるかな……それ以上になれば、もう国防軍に出動要請だ。どうせ馬鹿にされるだろうが、部長に進言してくる」
「自分も――――」
「いや、上司のアホな推測に巻き込まれることはない。つーか俺の方が年下なんですから、いいんですよ『先輩』。杞憂に終わればそれで、妹にも馬鹿にされて上司に馬鹿にされて、ホント
「前者に関しては『トシ君』にも一端の責任があると思うけどね……まぁ気持ちは分からなくもないかな?」
制されて稲垣が門下生の頃か、彼が
そうして今も喧々囂々の部長のデスクに向かう千葉道場の苦労人の栄達を願って、事務仕事を行っておくことにするのだった……。