魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~ 作:無淵玄白
あとがきに続く……。
金髪の姫騎士の言葉が、大講堂に響き渡る。
『大体、こんな提案!! 大却下に決まってるでしょうが!? こういうことはもうちょっと前もって決めて通達しておくべきではないですかね!?』
『そ、それを言われると私も苦しいわ。けれど、そんな前に決まっていたらば、それはそれで今以上の抗議が広まっていただろうし……もう噂の東京マガジンの噂の現場案件も同然だけど……』
流石は、弁が立ちすぎるおフランスのハーフ。まぁ誰でも思うことではある。もっとも六月二十一日……定期試験もまだなこの時期に、というのは『遅い』とは思わない。
しかし……試験と並行して選手選考をしようと思っていた全魔法科高校にとっては由々しき事態だ。
『お上が決めたことだからと、今更このようなことをするならば、軍に行きたがる魔法師も出ませんよ!!』
それはかなり痛烈な言葉ではあった。しかし―――。
『だとしても、これが決定事項です。時に不祥事を起こしたことがフライデーされて地区予選優勝校に代わり、準優勝校が繰り上げ全国出場することもあるように、不測の事態に備えることも、競技選手として、魔法師として必要不可欠な素質です。受け入れなさい一色愛梨』
高圧的な物言いだが、決定は覆らないことを言われて愛梨も口を噤むが……。
『ならばせめて! チーム・エルメロイに対して何名かの優先指名枠ぐらいはあってもいいんじゃないですか!?』
「それが設けられたとしても、三高の女子エースであるキミは指名できないだろうし、仮に出来たとしても、そんな節操のないことはしたくないぞ」
『セルナ!? 私の気持ちを知っていながら、このいけずうぅぅぅう!!!』
そのセリフは中々に来るものはあったが、三高の為にも刹那は説得の言葉を吐く。
「君が三高の代表に選ばれないなんてことはありえないだろうし、仮にここでE川の『空白の一日事件』みたいなことになったらシャレにならないだろ」
理屈の上では正しい。しかし、情がある人間には中々に厳しいことだ。E川も巨人に入りたいからこそ、そうしたのだ。その後のプロ野球ドラフトというのは、職業選択の自由を著しく侵害しているという批判も飛び出てくるのは。
(同じか)
そもそも、指名してくれた球団で自分が『プロ野球』選手として大成出来るかどうかは分からない。
監督が、選手全員の人生を背負っているという『責任感』を持っているならば、それなりに指導も熱があるものだが……。
色々な意味で、その状況は現在の魔法科高校にもリンクしてくる。
(時に非凡な人物というのは、恵まれた環境よりも、逆境から出ても来るからな……)
全てが、因果な話ではある。
高校スポーツは、『この監督の下』で学びたいということで志望校を選ぶこともある。現在の魔法科高校がそれなのだ。
『け、けれども……』
「本音を言えば、確かに居てくれれば頼もしいし、嬉しいだろうけど、昨年の先輩方の心を知っている君にそこまでの不義理はさせたくないんだ。理解してくれ」
そんな言葉で、一応は一色愛梨は引っ込んだ。不承不承という感じではあるが、彼女が西武ライオンズに入ったKKコンビの片割れたる『K原』よろしくならなければいいなぁというのが、全魔法科高校の心であった。
三高の代表としてなのか、一色に代わって出てきた一条は―――。
『……俺たちは去年の雪辱を果たすために気張る!! けれど―――……だから一色はそちらには渡せないぞ』
「念押しされるまでもない」
『ただ……! お、俺だって司波さんとぶべぇ!『はいはい。そんじゃ他校に渡すわよ!』―――翠子ぉ!!』
未練がましいことをいった一条くんに対して容赦のない扱い。一色翠子という、愛梨とは別の一色の子が、他校に発言権を渡す。
三のあとに、発言したのは―――。
『ウチは特に無いんやけど、エースたる九島君が一言あるそうやから、代わるで』
今まで出ていた二高会長 植田 由宇に代わり画面に出てきたのは、美形の男であった。
(少し骨っぽくなったな)
やさ男という印象がなくなりつつある御仁を眼にした刹那。一高の講堂に沸き起こる黄色い声を聞きつつ、何を言うのかを少しだけ予期していた。
『まずは申し訳ありません。此度のことは―――』
「謝んなくてもいい。起きてしまったことならば最大限に活かすさ」
『……あなたは本当にウォーサーフだな……だからこそ、サーファーという民族でもある魔宝使い遠坂刹那に僕は挑ませてもらう―――』
その言葉にざわつきの『色』が変わった。
美形の少年の放つ言葉は―――。
『僕と水波さんは、男女混合ダブルスのアイスピラーズに出ます―――しかも本戦です』
「―――」
ざわつきが途端に混迷を帯びていく。まさかここで予告先発みたいなことをしてくるとは。
『あの一高で催されたカーニバル・ファンタズムの中でも出した果たし状の一つ。改めて突きつけますよ刹那』
真剣な目で見てくる光宣。それに刹那は真摯に応じる。
「いいだろう。ただし、トーナメント表次第では俺とお前に対決の機会が訪れるかは分からない。俺のいる場所まで来い―――2人揃ってな」
挑戦が出来るかどうかはお前たち次第。それは釘を刺しておく。組み合わせ次第だが……運命を信じる。
『昨年の九校戦の伝説、遠坂先輩とアンジェリーナさん……そして達也様と深雪様が作られたものを私達が塗り替えます』
桜井も光宣の横に現れて『ご夫婦』で、宣戦布告をしてきた。しかし、こんな風に……作戦の一つを晒していいのかと思ったが……。
『粋というのは、こうでなきゃアカンからな。男ならば誰かのために強くなれ! 女もそうや! ぶつかり合ってこそ見えるものもある!!』
メガネをキラーン! と輝かせながら二高 植田会長は、そんな風に言うが―――。
『まぁ九島君と水波ちゃんの魔法力は全学年でも群を抜いとるからな。アンタとガチンコでやり合える相手をこっちは用意しただけや。しょっぱい戦いなんかでお客さんしらけさせるわけにいかないやん』
プロレスじゃないんだからというツッコミは野暮だろうが言いたくもなる。しかし、関西圏の人間にとってはそうではない。
『流石はナニワの
『それでこそ俺らの会長や!』
囃し立ての言葉に、それでいいのか第二高校!? と思うが―――。
『大丈夫! 僕も本戦で戦う!! 僕が皆の勝利の女神さ!!』
『当然、目指すんは優勝ただ一つ。取るべきイスは全て奪う……!! ウチと勝利の女神たるドラゴンに黙って従いっ!』
『『『『『『会長―――!!!!!』』』』』』
『『『『『『ヒカルちゃん!!!』』』』』』
これが今年度の2高の布陣か!! そう戦かせるものがあった。デミ・サーヴァントたる九島ヒカルという存在が2高を格段に上げていく。
その様子に呑まれるわけにはいかない。そう感じた他校が声を上げる。
『フフフ! 2高の皆さん方、西の人々は剛毅の限り、しかし今年度の優勝は私達! 4高が貰い受けます!!』
『僕たち姉弟は新人戦出場ですが、僕たち四葉の一族が鍛え上げた4高精鋭たち『月海原騎士団』―――その腕前を存分にお見せしましょう』
言うや否や、いつぞや用立てた魔術衣を着込んで『黒』という―――4高の制服のカラーではない色で威圧してくるは、黒羽の姉弟。
全体的に黒色の……かなり昔に流行った『ビジュアル系バンド』のような衣装であるが、そのチカラはかなりのものだ。
(まさか―――リズリーリエのドレスの技術を応用したのか?)
技術志向の4高だからこそそれが継承されていたのだろうが、それにしても……。
「亜夜子、まさかその格好で、九校戦を戦う気なのか?」
ご親族からツッコミが入るのは当然だった。
『アインツベルン先輩はいいものを残してくれました。この天衣の遺産を用いて、4高を勝利に導き―――』
一拍置いて、黒羽亜夜子は口を開いた。
『そして達也兄様を私のはんr―――』
その言葉を断ち切るように、4高との回線がブツリと切れた。切ったのはブツリとキレた副会長殿であることは、暗黙の了解なのであった。
『ではこれ以上は、後々ということで―――選考選手のエントリー締め切り、それ以後のチーム・エルメロイの選考などは、書面で書いてある通り』
その4高の宣言を中途で終わらせたことで会議はお開きムードになりつつあった。
締めのつもりなのか、響子の宣言の後には全ての魔法科高校との通信が断たれ、そして―――。
刹那は胸元に忍ばせている家宝の宝石。英霊エミヤの召喚の触媒にもなったものを握りしめていた。
(九島光宣……遠坂刹那……魔宝使いと戦うか)
その前途は多難。そして賞金首たる刹那を狙う輩は多い。
(俺とて……戦えるならば)
だが、今年の俺の役目は完全に『後方廻り』である。そう言われていただけに、少しだけ恨めしく思う……。
―――大講堂での全魔法科高校を巻き込んでの超会議を終えると、その場で刹那や留学生たちへの質問は出てこなかった。
というか、自分たちが意識を外していた一瞬の間に退場をしていたようだ。
それに対して抗議というか反意的なものも出そうだったのだが……。
『遠坂君たちは、所用で出ていきました。そしてチーム・エルメロイの責任者はウェイバー先生方、ノーリッジの先生たち。彼らとの戦いがある以上、こちらも負けていられませんよ!』
四葉真夜先生の言葉でそれは抑え込まれるのであった。
そんなこんなありつつ今日も達也たちは放課後の定番、少し早い時間であるが昼食も食べれるということで、行きつけの喫茶店「アイネブリーゼ」に寄り道していた。
メンバーは達也たち二年生八人と、一年生が三人。
レオにべったりな言峰カレンと、深雪にべったりな泉美。そんな二人とは別に少しだけムスっとした香澄という塩梅ではある。
そんな香澄を心配したのかマスターが、料理に不手際あったかと聞いてきたが。
「そんなことないです。マスターのエビピラフ大変美味しいです。ごめんなさい―――仏頂面でご飯を食べて……」
料理を食べる時は、美味しければ笑顔を。食の基本ではある。
「一緒に来る霧雨君がいないことが原因かな?」
「しょ、しょんなことないですよ!? プリンパフェ注文します!」
明らかに動揺したらしき香澄の言葉だが、追加注文を貰えたマスターはそれ以上は言わずに厨房に引っ込むのであった。
それを機会に、話を始める。
「まさかこんなことになるとはな……」
「けれど、こんな規約を設けてまで刹那君やリーナを排除したいのでしょうか?」
「色んな組織の色々な人々の思惑が重なり合った。そうとしか言えないかな……表向きは響子さんが語った通り、その裏側も見え透いていたが……」
色々な思惑が学生大会に重なった。だが、好意的に考えれば、成績では良いものを持つが、能力値が競技種目と相反している。もしくは一芸特化では出場させられないなど、学校・作戦都合で出場機会の無い魔法師が出れるのだから、それはそれで良いことだった。
そして香澄は、そんな『学校都合』で出場選手の選考候補にすら乗っていない男子のことで
恐らく大半のノーリッジ生たちは、キャプテン・セツナが率いるチーム・エルメロイに所属することになるだろう。
仮に刹那やエルメロイ先生が一高側にいるならば、そのチカラのほどをどうやって活用するかを説けただろう。
だが、残念なことに現在の一高首脳陣は、ノーリッジ生……一年の活かし方を理解できていない。
例外なのは、ノーリッジ生でありながら現代魔法的領域での分かりやすさを発揮している現・2,3年だけなのである。
「香澄ちゃん。そんなロベルトに置いてかれた翼くんみたいな調子にならなくても……」
「だって、ボール1つにキリキリまいならぬ遠坂センパイ1人いなくなるだけで、あいつのウワサでチャンバも走るなんて……」
美月の慰めだかなんだか分からぬものを受けて香澄も返す。だが、まぁ言わんとすることは分かる。
他校に比べて大変な混乱を来しているのは、一高なのだ。
「現状に不満を漏らしても決定は覆らないのだから、明日に対して眼を向けるべきだな」
「随分と……切り替えが早くて、無情ですよね司波先輩って」
香澄の言葉に、少しだけキレながらも説得の言葉を発する。
「アイツがああいう風に強気張ってでも、『はぐれもの』を率いることで勝利を目指す―――そういう『気持ち』を表明したんだ。いつまでも未練がましくいられるかよ」
それが本心か、虚勢を張ってなのかはまだ不明ではある。
だが、刹那が現状に対して『正対』して立ち向かう以上。
これ以上はないのだ。
「そうですね。あのスパダリがいなくなれば、それだけ司波先輩の活躍も増えます」
「同時にレオの活躍もな」
「正しく天佑―――主は見ているのですね」
この子はどこまで本気なのか……言峰の言葉に返しながら、今年から『変更』・『追加』された競技種目に眼を通していく。
「なんていうか実戦的なものが多いわね」
「国防軍の思惑だろうな」
エリカの言葉は紛うことなく響子の語るところを意味していた。
消えた競技は。
「バトル・ボード」
「クラウド・ボール」
「スピード・シューティング」
変更、追加されたのは。
「ロアー・アンド・ガンナー」
「シールダー・ファイト」
「セイバー・アンド・ウィザーズ」
……そしてまだある新規追加4種目目は――――。
「なんだこの『???』とかって競技は?」
「詳細不明、現地に行ってからようやく分かるものなんだろうな……」
書類上ではそんな簡素なものだが……。昔懐かしの雑誌の『袋とじ』よろしく、電子端末における開けないページが存在していた。
その袋とじページの正面には―――『名人X』なる巨漢にして覆面レスラーのような姿をした男がいて―――
『確かみてみろ!』
―――などと、トゲ吹き出し付きのセリフを言っているのであった。
名人Xなる、児童漫画雑誌のホビーコーナーでたまに見る、ホビー会社社員ないし編集者のコスプレ姿……総じて言えばジョイまっくす(爆)のような御仁の正体は……。
(((((何をやってんだ。十文字親分!?)))))
去年までの一高の大親分を知っている大半の人間が内心で驚愕のツッコミを入れるほどに、名人Xとやらに言ってから、袋とじページを開くべく端末にパスワードを入力すると、そこには……。
『2096年夏から新スタート』
『出た!』
『つくえの中から飛び出した』
『何が?』
『その名は?』
『正体は?』
『すごーくおもしろいんだ!』
『すごーくゆかいなんだ!』
『でも、どんな競技かは、当日までのお楽しみ!』
『夏は富士演習場で僕と握手だ! よろしく!』
昔懐かしの勉強机の引き出しから飛び出てきたハリ吹き出し。驚いて逃げ出す1人のSDキャラ……これはデフォルメされた真由美先輩だろうか。
それを見て誰もが一言――――。
「こんなんで何が分かるんだよっ!? 十文字OB!!」
「藤子不二雄の藤本氏に対する冒涜ですね」
お客いっぱいのアイネブリーゼならともかく、若干ながら閑古鳥が鳴いているアーネンエルベでならば、このような大声をあげてもさして何も言われない。
代わりに―――。
「ミドリ、チョコパフェ5つプリーズ」
―――迷惑料金代わりに、追加注文をするのは当然だった。
「ミドリと呼ぶんじゃねー!!!」
抗議しつつも注文を承る辺り、千鍵ちゃんはウエイトレスさんの鑑であったりするのだ。そしてチョコパフェを奢ってもらえる女子4人が、喜色を出すのであった。
「勢い込んで宣言したが、負けるつもりは無いな。そして俺と共に戦う人間に弱気も見せられん」
「ホント、ソーイウところはボスの
「嫌いになった?」
「ますますダイスキになっちゃいました♪♪」
そんな風にリーナと言ってから、現状に対する問題点を洗い出していく。一番にはどれだけの『人間』が集まってくれるか、だ。
こうして自分が戦うことを表明して、かつ『集え!チーム・エルメロイへ! 行こう!! 九校戦!!』などと言った所で、愛校精神がある人間は中々に動かないだろう。
「一応、自薦もありますから補欠選出すら無い人間はやってくるでしょうね。そこからエルメロイ先生のデータも」
参謀役である錬金術師たるシオンからの言葉。まぁ話はそこからになるのだろうが……。
「そうだな……ん?」
そんな風に考えていた時に早くも自薦がやって来た。それは刹那の個人的な交友関係からのものではあるが……。
取り敢えず『選ばれる可能性』が無きにしもあらずなので、まだ希望は持っておくようにとしておくのであった。
「アナタの
「最大級の皮肉をありがとよレティ」
レティシアの言葉に返しながらも、今から考えられるのは、自分たち5人の出場種目程度だろう。
だが、自分たちよりも適任がいるならば、そいつに任せることも吝かではないのだ。
(さてさて、どうなるやら……)
組織からはぐれて戦うということが、自分の本道であることは今更だ。
(俺は失うことに慣れすぎているのかね……)
今更ながら、自分がやり過ぎたことが再びの『喪失』を招いた。そうとも取れる―――だから、この四人を勝利に導くのは、忘れないでおくことにするのであった。
「ハーレムを作った男の責任だねー♪」
内心で思っていたことにツッコミを入れるオレンジこと『ひびき』に苦笑しつつも、五人分のチョコパフェを受け取り、その甘味に舌鼓をうつことは忘れない。
そんな甘さは、自分の中に生まれていた苦さを打ち消してくれる『魔法』であった……。
続き
まぁ寅年時代に、とらのあなのアキバ店舗が閉店しちゃったし――――――験が悪いといえばそうなんですが……ううむ。ちょいと考えていることとしては、お虎を一度、蟻編の『ノブ』さん扱いにしようかとか考えちゃっています。
経験値先生が悪いわけじゃないんですが、まぁそんな感じで。