魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~ 作:無淵玄白
ツイでは既に書かれていたようなのですが、コンプエースで知りましたよ。
いや、本当にご自愛してください。そんなわけで新話です。
北は北海道から、南は九州―――とはいえ沖縄出身者もいるだろう。そんな人々が集まる魔法協会横浜支部。
そこにて対面した人々は、顔見知りがいたり、全然居なくて人見知りしたり人見知りせずに馴染もうとしたりして……まぁ色々だった。
だが、一つだけ言えることがある。ここに来たはぐれもの達は、戦うことを求めているということだ。
(しかし、三年生が来なかったのは、ちょっと予想外だったな)
最後の年ぐらい節度を保って自校で戦いたいということかもしれない。
そういうことかな?と想いつつも―――孔明の宝具『出師表』によって集められた連中の中には、去年に見た人間もいたが……今回の『本戦』では出られなかった連中というところか。
「正しく下剋上等な面子が揃ったものだ」
そいつらを束ねる自分のキャプテンとしての資質も問われる。
そんな訳で早速もチーム・エルメロイの為に用意された魔法協会の一室―――結構な広さの所に集められた面子の前に、刹那は姿を出すのであった。
ざわつきが広がる。
『ヨッ! 待ってましたキャプテン!!』
これはモードレッドの囃し立て。拍手と共に行われるそれ、まぁいいけど。ちょっと違うかもと想いつつ壇上に上がる。
全国津々浦々からの面子の視線を集める位置に来たことで、少し緊張するもとりあえず言うべきことを言う。
「まず、今回このような形とは言え、九校戦に参加するために集まってくれたここにいる全員に感謝をしておく。ありがとう」
「いやいや礼には及ばない」
「別に遠坂の為に集まったわけじゃないし!」
そう言ってくるのは一高の生徒、刹那の同級生にして同クラスメイト 相津郁夫と斎藤弥生である。
「そう言ってくれると感謝だね。そう言うからには、あぶれ者として自校とも戦う意思を持ってくれているということだな?」
「まぁ少しだけ戸惑うものもあるけどね」
「ただ、自薦してから要請されたならば、来るのが道理でござるよ!!」
これは桜小路紅葉と後藤狼。今回、集められた中に一高の2B組の面子は多い。
これは単純に刹那が安堵できる面子であるというのもあるが、『まさか』。こいつらを『採用』しないとは、補欠でもエントリーしておけば、というこちらの考えを壊してきたのである。
要は温情でありながらも、不採用になった面子を拾い上げた形なのだ。
よって―――。
「よし! それじゃまずは自己紹介をしてもらおうか!! 名前と顔を一致させていくにはまずはそれからだ!!」
そんな訳で一年・二年問わずに自己紹介となるのである――――。
知っている人間ばかりではない以上、これは当然だ。
「第五高校 二年 坂神一人だ。選ばれたからには全力を尽くす所存だ」
一高とは違いライトグリーンを基調として白をアクセントとしている東北圏の第五高校生徒、どことなく『カドック』を思わせる人間が、まず最初に挨拶をしてきた。
何だか制服よりも大正時代の青年将校の服でも着ていたほうが似合いそうだ。
「第三高校 一年 尼利ミサオでーす♪ ウチのエクレア先輩がベタぼれの遠坂先輩に呼ばれてマジ優越!もうなんか魔法女子として一歩先んじちゃってますね。コレ!」
知らねぇよ、と思いながらも、古典的なギャル?とも言える明け透けな態度を見せる少女。染めてるのか、地毛なのか明るすぎるピンク色の髪だが、髪型自体は特に遊びもない。
ストレートロングヘアな辺り、彼女の『地』をなんとなく察するのだ。
だが、ポーズ自体はキメッキメの横ピースな辺り、教室に居た魔眼のスパイ(OG)を思い出させる。
「第九高校の一年 六導レイと申します。誠心誠意、このチームのために尽くさせていただきます」
年齢詐称していない? と言いたく成るほどに自然と媚態を強調してしまう女子の朗らかな笑顔。
一番普通の挨拶なのだが、何というかこの中では一番『ヤバい女』な気がして刹那のセンサーが、先程からアラームを鳴らす。
だが……それを余って補うチカラも感じるのであった。果たして彼女をどうしたものか……。
(まぁ何とかするしかないな)
刹那の人生には、そういう危険きわまりない女はいくらでもいたのだから。
「第六高校 二年
これまた美形で、何というか……ある意味この中では、一般的な魔法師としては優秀だろう『数字持ち』の男子が挨拶してきた。
だが……その視線に少しばかり―――ぞわりとするものを覚える。俺、ノーマルなのでご勘弁を。
「女ってめんどうな生き物なんだけど、何人も上手くやれている刹那くんは、マジ尊敬する。リスペクトの対象だよ」
女子全員から反感を買いそうな言動をする二三草くんにちょっと懸念を持ちつつも。
「あーら、聞き捨てならないわね。このお坊ちゃん! 乙女のHeartは繊細なものなのよ。アナタの言動はマイナ〜〜〜ス」
何故、伸ばす? そう言いたくなるが、その人物は、乙女心を持つ人間ではあったようだ。
大袈裟なジェスチャーと共にバツを付けるその人は―――。
「ええと、妙漣寺
「ノンノン! 刹那センパイ、いいえセツナちゃん―――私のことは、そこに書かれてある通りスカンジナビア・ペペロンチーノ! ぺぺと気軽に呼んでちょーだいっ!!」
「ええ……」
第二高校の
妙漣寺鴉郎くんことスカンジナビア・ペペロンチーノという御仁は―――俗な表現で言えばオカマ、またはゲイと呼べる存在なのだった。
奇抜な髪型に髪色……奇妙な冒険でも繰り広げそうな人物は、驚くべきことに一年生であった。
だが、能力値はスゴイものだ。実際、集められた面子の中――――――いや2高ですら恐るべきものだ。
「ヒカルに次いで一学年で2位なのに……何故選考漏れ?」
端末に表示されている二高から寄越された資料だけならば彼のタレントは、決してエントリーから漏れるものではないはずなのに。
二高の判断にミソがつくものではないかと想う。
「うふふ。それに関してはヒミツなんて言うのも不興を買っちゃうからね。詳しくは言わないけど、私のお家というかお寺はデリケートだから、二高の父母会からせっつかれちゃったのよ♪」
それだけで何となく察せる部分はあった。ぺぺの実家は連盟の中でも比較的高い地位にあるのだろう。
当然、二高の選抜メンバーにそれらの家の子女子息がいないわけではないだろうが、その中でもぺぺだけがハブにされた理由は。
示しがつかない。というところか。
軽い感じで言っているぺぺだが、それなりにショックを受けたのかもしれない。
「私の本質は根無し草なの。そういう意味では、アナタには興味を覚えるわ。魔宝使い殿、アナタもそういうのじゃないかしら?」
「かもね。だからこそ『同類』どうし頼りにしてるよペペロンチーノ」
「任せてちょーだい♪ キャプテン」
その言葉を聞いてから、5分ほどで全ての人間の自己紹介が済んだことになる。
予備メンバーも含めて全部で80名……この形式だけは、全校一緒なのだ。練習メンバーもここから出す必要がある。
「さて、自己紹介が終わったところで、まずは競技種目に関して説明していこう。自校で既に受けている人間もいるだろうが、申し訳ないが改めて説明させてもらう」
宴もたけなわではないが、既存競技・新規競技、それらに関する説明が為される。
そして刹那は、この競技選出において他校とは違う方式を取ることに決めていたのだった。
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達也を含めた生徒会役員、プラス部活連会頭の服部が見ている資料は九校戦の選手選考用に実技成績を纏めたものだ。
種目が今年も変わらないという前提で使用した物だが、実技テストの全データが網羅されているので新種目の選手選定にも使えるはずだった。
もっとも……それを加味したとしても、色々と難ありだろうなのが、今回の九校戦だ。
「セイバー&ウィザーズ―――略してSAWか」
「運営委員としては最後の頭文字に『O』を使いたかったようにも感じますが、この競技は……かなり独特ですね」
「だな……」
だが、これはある意味で分かりやすいほどに『英霊戦』を意識したものである。
ざっくりしたイメージを申せば、昔に流行って今でも違う形で『ゲームセンター』に存在している『ビートセイバー』なものだ。
一定の距離を挟んで相対するセイバーとウィザードの2組。
ウィザードは『放出系魔法』を繰り出して敵ウィザードに事前に設定してある六枚のシールドを砕かなければならない。
六枚のシールドは、ウィザード側に固定位置として存在している。ライフポイント制ではないカードゲーム。ガードブレイク制のカードゲームと同じだ。
当然、最後に
六枚のシールドを砕くことが基本的な勝利条件。
ただこれでは魔法の打ち合い、砲撃戦だけになる。そこでウィザードはパートナーたるセイバー……剣に防御・護衛―――運命を託すのである。
「敵ウィザードのシールドを破壊する魔法は、かならずや敵セイバーのソード・アートフィールド―――ウィザードの前面にある『場』を通らなければならないという規定があります。そもそもシールドは、そういう位置にあるわけですけどね」
「どちらもハードだな……」
「そうとも言えないかもしれませんよ」
「どういうことだ?」
主な会話相手である会頭たる服部が疑義を呈する。
ここまでの会話で『剣』も『杖』も、とんでもない労力になると思えたのだが、司波達也はそうではないとしてきたのだ。
「セイバーの持つ『得物』次第では―――ということです」
「? 武器に関しては特に規定は無いのか、まぁ刃引きされて危険性や殺傷性に関して、ううん!?」
改めて端末を見つめた服部は、この競技のキモを理解した。
「気付かれましたか?」
「ああ、これは……『名剣』を―――もっと言えば、ディスペルウェポンをガードであるセイバーに持たせれば容易くなる!!!」
そう。この競技は『規定で共通の得物』というものは存在していない。寧ろそういうのがあるのは、ウィザードの方だ。
「セイバーが持つ得物に予めそういう『魔法』を付与していても、どうしてもこの分野では先んじている人間がいます」
「遠坂の独壇場じゃないか!! あいつならば、破魔の槍剣でも、波濤を発生させる槍でも、あるいは、綺羅びやかで豪奢な剣を宙に浮かぶファンネルのように『ジュワユーズ・オルドル』とか言ってブルーフレームDみたいなこともしかねないぞ!!!」
正しくその通りなのだが、最後の文言に関しては随分と具体的なイメージを語るものだ。とはいえ服部の言葉に同意する。
「やっぱり、これも国防軍の思惑なんでしょうか?」
中条会長の不安げな言葉に、達也としては首肯せざるを得ない。
「恐らく、ヤツの持つ
あわよくば、それをコピーしたい。そういう思惑だ。贋作屋のさらなる贋作とかシャレにならん。と考えつつ、だからといってここを諦めるつもり、捨て勝負にするつもりはない。
「俺の考えでは、ここの本戦『セイバー』に任ずるべきは、副会頭です。レオに刹那の用立てた武器持ちセイバーと拮抗してもらいましょう」
その達也の考えに待ったが掛けられる。
「西城に、か―――シールダー及び、モノリスで頑張ってもらいたかったんだが……」
「千葉先輩じゃダメなんですか?」
服部及び泉美の疑問はもっともだが、それでも応える。
「最終判断は会長にお任せしますが、レオの六手神腕を用いればただの鉄剣ですら最高位の得物に変じます―――」
ルーンを用いれば、ソレ以上にもなるだろう。
「まさか司波くん……西城くんに『八刀流』として戦ってもらうんですか!?」
「別に持ち込む得物と使う得物の『本数』に関しては書かれていません。寧ろ、魔法の防御で壊れた場合を想定して、その辺は遠慮なくどうぞと書かれてますからね」
ストックしておくべき武器は多くていい。という考えのようだが―――。
刹那がどんな得物を用立てたとしても、ソレ以上の手数で押す。そういう考えは―――。
「―――わかりました。例えルールに注釈が着いたとしても副会頭の神腕幻手ならば、どんな状況にも対応出来るでしょう」
―――了承されるのであった。副会頭には存分に苦労してもらうことにした。
「ご英断感謝です」
「ただ西城君など選手の負担を減らすように、出来るだけいい得物を出してくださいよ。新人戦に出る一年生のためにもそういうのは必要なんですから」
「本家にそういうのあったかな……」
「四葉家になくても千葉家でも、どの家でも『コレ』は『業物』と言えるものを供出してもらいます。これは会長命令です」
そのやけっぱち気味の言葉に、役員室に居た誰もが思った。その命令はズバリ。
「つまり中条会長の――――」
「「「「「刀狩り!!!!」」」」」
「最初にやったのは弟である豊臣秀長なんですけど!」
歴史の豆知識を入れながら、横浜ではどんな会議が行われているのか興味を持つのであった。
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「―――以上なわけだ。質問はあるか?」
特に無いようだが、この中の殆どは九校戦未経験の人間たちばかり、ここに来て具体的なイメージを持たされて緊張も覚えている様子。
変わらない面子を見ながらも、喝入れなんて性に合わないので―――。
「それじゃ、全員―――やりたい競技があるならば、いや……これならば俺はこんなことが出来るというプレゼンをしてくれ!」
その言葉にざわつきが生まれるのは、当然だった。
「遠坂君! そんな決め方でいいのか? 九校戦ってのは、それぞれの魔法適正に応じて競技担当を決めるんじゃないのか?」
「相津、考えてみろよ。突き放す言い方だが、お前たちは、その競技適性外だと言われたから、自校選抜から漏れたんだぞ?」
その言葉に詰まる人間は多い。
だが、続けて言う。
「別に勝利を目指さないわけじゃない。だが勝ち負けに必死で拘るつもりはない。がむしゃらにやることで結果を着かせるだけさ」
だからこそ、自分ならば『こう出来る』というものを見せてほしいと刹那は言った。
他の魔法科高校とは違う逆張りのやり方だ。だが、刹那は知っている。世に出た傑物は、譲れぬ信念を持ったからこそ傑物なのだと。
そして、モチベーションの問題もある。やはり自校を出てまでここで戦う以上、その動機はチームの為というよりも、『自分のために戦え』としておいた方がいいはずだ。
その言葉を受けて―――。
「ならば、僕がSAWのセイバーになる。パートナーであるウィザードはまだ未定でも、僕の身体強化と『身体狂歌』で襲いかかる魔法を全て斬り捨てたいと想う」
「分かった。まずは相津が1つ立候補―――ナニカ要求があるんじゃないか?」
シオンが端末に入力したことでSAWの選手枠、そのセイバー枠に相津が収まった。その後で問うべきことを問うことに。
「わっるい顔してるわねー」
「分かりやすかったからな。お前の剣術部のご同輩は」
からかうような斎藤に答えながら眼は相津に向けると。
「見抜かれすぎていて申し訳ないが、俺は魔法鍛冶師ともいわれる遠坂くんに―――」
その言葉を皮切りに、多くの要求が出て、もはやタイころ(?)のシナリオ担当を決める会議のように、多くの要求が怒涛のごとく出てきたのである。
(なんだ。皆してやる気はあるじゃないか)
そんな風に安堵していたのだが……。
「セツナ! 今年はリーナではなく私と一緒に石破ラブラブ天驚拳を放ちましょう!! 去年と同じだとお客さんもアンニュイな気分になっちゃいますよー!」
「刹那! 今年はアタシと一緒にダブルカリバーン入刀しようぜ!!!」
「技術屋ですが、別に一高の規定は私達には存在していませんし、ここは1つアラブの風に乗せてすごい戦いをしましょうか」
「ヤダわー。寝言は寝て言ってよネ。ミノルとミナミが求めたのはワタシとセツナのコンビと戦うことなんだから、オヨビじゃないのヨ!」
(欲望の権化さん達め―――!!!!)
思わず罵りたくなるぐらいには、紛糾する会議となるのであった。