魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~   作:無淵玄白

366 / 420

きっと今回のエリちゃんは、『子ブタ(子ジカ)は生きろ!!』


『アタシは!!!アタシが想うまま、アタシが望むまま!!!!歌(ジャイアンソング)を歌ったわよ!!』

とか……いや天微星であるエリちゃんではルカ様にはなれない。

なんてこったい!(マテ)

幻想水滸伝に頭をやられたあの時代が色々と……そんなわけで、少し尻切れトンボですが新話お送りします。

後の話が長くなりそうなんですよね。だから、ここまでの投稿ということなのです。


第334話『踊る大魔法線』Ⅲ

 

一高がそんな大混乱に陥っている中、チーム・エルメロイは訓練に邁進していた。

 

そんな中でも刹那は……。

 

「くっ!!!!」

「強いでござるなっ!!!」

「弱音は吐けないなっ」

 

本戦モノリス出場を内定した坂神、後藤、二三草に訓練を施していた。

 

グガランナの低出力バージョンの(ワンド)を用いて、様々な魔法を使って『対応力』を上げさせる。

 

「後藤君! 僕がバックアップする!! 前に出るんだ!!」

「了解だ! カズトくん!!」

 

その言葉に応じて後藤くんは、その手に持つ特化型CADを用いて刹那に向かう。

 

「今度こそ一本取らせてもらう!!!」

「受けて立とう!!!」

 

特化型CAD『カレトヴルッフ』より魔弾を解き放つ後藤君。ソレに対して、刹那は体で躱す。

 

身体強化の限りを施したそれを前にして、後藤くんの眼は四方八方で鋭くなりつつ―――。

 

「後ろだ!! 狼くん!!!」

 

二三草の言葉に反応したことで、後藤の魔法が刹那にヒットする。しかし、障壁が無為にする。

 

「流石に硬い!!!」

 

当然、一発当てただけで倒れるとは思っていなかったのか、二三草が細かな魔法を放ってくる。

4つもの魔法……小規模ながらも、かなりとんでもないもの同時に放ってくる二三草。

 

有り体に言えば火炎球(ファイア)降雷(サンダー)、そして大地棘(グレイブ)風圧(ウインド)までも発生する。

中々にレアな魔術系統である。数字持ちの家の面目躍如だが―――。

 

「悪いなっ」

 

擬似宝石を投影することで、それらを無力化。その手際は、これまで見せていたが、まさか会心のタイミングで無力化されるとは思っていなかったのだろう。

 

対抗術(アンチスペル)!」

「カウンターから!!!」

「逃げる!!!」

 

刹那がモノリス、というより戦闘において重要視していることがある。

 

それは『口頭連絡』を密にするということだ。

 

全員が魔法などである種の秘密会話を使用出来るといっても、近くでのやりとりに言語を使うのは、それが結局もっとも早く、かつジャミングを受けづらい情報伝達手段だからだ。

 

とっさに考えているまとまりのない思考など、受け取ったところでノイズにすぎないし、わざわざ魔法を使って会話するぐらいならば、口舌を使ったほうがよほどに早い。

 

魔法師は、SFに出てくるテレパシー種族ではないのだ。

 

そして何より『符牒』を紛れ込ませることも出来る。その利便性である。何より『動揺』していると見せかけることも出来る。

 

「カウンターは放つんだけどね!!」

「天珠防陣!!」

 

聞こえてきた言葉。坂神の術が後藤と二三草を守り切る。

 

黄金の短剣。魔力で構成されたものが、前に出現して円環の鎖の防御を展開。刹那の術を防御しきる。

 

これも見てきたことだ。そして、再びの戦闘。

 

今度は刹那も戦法を少しばかり変える。今までのが『司波達也』スタイルならば、今度は『一条将輝』スタイルというところか―――。

 

そうして非常に実戦的な戦いの中で、三人を鍛えた。フィールドも、変化させていき……。

 

結果、3時間(休憩あり)の訓練のあとには―――。

 

「「「おかわり!!!!」」」

 

失った体力を補給するために、飯食いに入るのであった。

 

「よっぽどスパルタなことしたのねー……」

 

後藤に1.5倍ほど余分に用意されていたご飯をよそいながら、桜小路紅葉は言うのであった。

 

「確かに練習はキツイ」

「けれどツラクはない」

「男が一度決めたことでござるからな」

 

配膳役である桜小路が、呆れるように言ってくるのに対して三人は、そう言っておく。

 

「けれど何でアイツ(遠坂)は出ようとはしなかったんだろうね?」

「そこは俺たちも思った。昨年の勇姿はちゃんと知っているだけにね」

 

本戦モノリスにて最強を冠するにたるのは、やはり刹那だ。

 

だが、今回の彼は余程のことが無い限りは『男子ソロ』『男女ペア』の本戦『つらら』で戦ってもらう予定なのだ。

 

「ある意味、後藤か二三草は譲られた形じゃない?」

「だったら尚更がんばっちゃいますよ」

「俺と二三草君で何とか遠坂君一人分にはなろうと想うさ」

 

桜小路の少しだけからかうような言葉に、二人は揺るがずに決意を表明する。今回の反省点は分かっている。

だが、敵が誰になるか分からない以上、それを想定したところで不測の事態には対処出来ない。そういう考えでの訓練は間違いなく個々の力量を上げていく。

 

「しかし……刹那の教えたこの『戦術』……マジでやるのか?」

「俺はいいと想うけど」

「けれど坂神君の負担がスゴイでござるからなぁ」

 

個々の力量上げだけに終始するかと思えば、遠坂刹那はこの三人で取れる最適戦術を見つけ出していた。

 

その先見にはある意味感謝である。地力だけで勝てる勝負ばかりでないことは既に認識しているのだから。

 

「で、そんな遠坂君はどちらに?」

「尼利さんと霧雨くんのペアダブルスの指導、当然実戦形式でね」

 

2vs1……三時間の特訓のあとにこれなのだから、超人マッソー(爆)ということか。

 

なにはともあれ精神と時の部屋じみたこの場所。殺風景どころか色彩豊かなのは魔法師・魔術師限らずそこにヒトの営みや感受性を増させる何かを配置する意味はあるのだろう。

 

(一応、外の季節は夏だからか、殆どにおいてこのサマメモアイランドなるところで皆して生活しているわけだけど……)

 

何というかちょっと早めの夏休みを毎日『三日間』は、過ごしていると―――色々と時差をボケてしまいそうになる。

 

(外とあまり通信出来ないけど……外は何かあれば、トリムちゃんが対応出来るらしいからな)

 

そんな風に桜小路紅葉が考えている一方で、外では少しの騒ぎが起こっていた。騒ぎというほどではないが、大人たちの事情である。

 

 

「つまり、九島家は大亜の周を匿っているというのか?」

『そのようです。これが老師か真言殿の判断なのかは私も分かりませんが……』

「だが、そのぐらいのことならば別に後で不義を問い質せばよいのではないかな?」

 

まだまだ当主としては浅いな。と思いつつも、後輩である貢の懸念の真実を改めて聞く。

画面越しの彼は少しだけ焦っているようだ。

 

「―――ふむ。つまり九研のデミサーヴァントを周は手に入れようとしているのか……」

『私としては、これはマズイのではないかと思っています。しかも周の手中にあれば……それは』

「大漢の連中にもそれらが渡りかねないか……」

 

どれだけの研究進捗なのか、そもそも定着した英霊の魂がどこの英霊様なのかにもよる……。

 

まぁつまり……危険の度合いは分からないが、それでもニホンで生まれた『兵器』を勝手に大陸の連中に使わせるわけにはいかない。そういうことだろう。

だが、それならば何故黒羽の手勢を動かさないのか? 彼の子供たちとてサーヴァントと契約しているマスターであるというのに。

 

『その……なんといいましょうか……危険が危ないと言えるか……亜夜子と文弥をこの重要な時期に動かしたくないというか』

「率直にいい給えよ」

『すみません! 息子と娘の安寧を優先したいのです!!!』

 

口ごもるように言っていた貢が、ようやくのことで心情を吐露したので全ては理解できた。

 

「だが、僕が話を通したからと刹那くんが動くかどうかは分からないんだが」

 

それでも、貢的には今は話を着けたくない相手なのだろう。直接のホットラインが無いわけではない。

しかし、あの東京での一件から色々と借りを作ってしまった。あの時点では自分が当主になると思っていなかっただけに、これ以上は……ということか。

 

かといって手下や子供たちを使うことも出来ない。

だからと、甥姪とも言える司波兄妹に積極的に話を通すことも出来ない。

 

(難儀なことだ)

 

少しだけ貢に同情するのは、今までそういった立場で動いていたのは、弘一の方だったからだ。

だがだからといってそこで謀略を遠坂刹那に積極的に見せなかったのは、彼がどこか自分の昔の姿を思わせたからだ。

 

「色好い返事が来るとは期待しないでおくべきだ。だが……要求されるものがあれば、供出しろよ」

『りょ、了解です』

「それと司波達也くんにだけでも話しておけ。四葉の案件であるというのに、刹那君にだけ働かせれば怒るぞ。彼は」

『でしょうね……』

 

ぶっちゃけ色んな所(双子、後妻(予定))から達也が友人と遊べなくてイライラしているというのは聞いている。

 

よって、大人2人は、四葉の若君と並行世界からの魔法使いに全てを丸投げするのだった。

 

 

「で、周と直接会ったのはお前だけだからな。どんな人間なのかを知りたいんだ」

 

「俺も直接、矛を交えたわけではないからな。ただまぁ……いろんな店を経営しているスマートな青年実業家って感じの人間だな―――見た目通りの年齢じゃないだろうけど」

 

刹那としても教えられることというか見知ったことというのは、その程度でしかない。

実際の所、自分たちが来た際に、周は大亜の魔法師―――あのルゥ・ガンフーと共に特級厨師にして震天将軍たる劉師傅の片腕をもぎ取った場面でしかない。

 

「まぁいいじゃないか、アイツが大亜の間者でロクデモナイ奸策をやろうとしているのは事実なんだ。止めるだけさ」

「だが、場所が場所だからな……」

 

達也としてはこんな難事を振った貢に少しだけ感謝と同時に恨みをぶつけたい気分だ。

 

連盟から奪取した第九研究所にて大々的な実験を開始した九の数字持ちたち。というか、九島家類縁のものたち……。

 

「機械的な美少女のガード達が、施設を防衛しており簡単に近づくことは出来ない」

「機械的ってなにさ?」

「恐らく感情の揺れが見えないということなんじゃないかな? お前の記憶映像で見たホムンクルス兵とかに似ていないか?」

 

端末に映し出された画像の少女たちを見て、刹那としても『成程』と思わざるを得ない。

 

しかし、こんなものまで作り出していたとは……恐らく『錠前』が協力しているのだろうが……。

 

「ここにいるデミサーヴァントを手に入れようとしている周を捕縛ないし、術使用不能にする」

 

改めて考えるに無茶な話だ。そもそも周が、今夜それをやるとも決まっていないというのに……。確度の高い情報とも言い切れないのではないだろう。しかし、黒羽という諜報分野のものがそういうからには……。

 

「どうでもいいんだけど、よくも私を無視してそんな会話出来るわね。あなた達」

 

まったくどうでもよくない言い方で噛み付いてくるのは、「金牛」の背に同乗している七草真由美である。

 

「父さんが素敵な男性2人が真由美を夜中のドライブにエスコートしてくれるよ。とか『胡散臭い』ことを言うからロクでもないことだと思っていたけど……」

 

「関西地区までグガランナでひとっ走り! まぁ仕事が終わった帰りに道頓堀で串揚げでも食べていきますか?」

 

「合間合間にキャベツを食べることで胸焼けを防ぐべきだな」

 

悪魔超人(サンシャイン)か!! ……まぁ何というか今年の九校戦は色々と変則的な変化球すぎるって聞いていたけど、あなた達は変わらないわね……」

 

変わらないわけではないのだが、まぁそれでもこんな時に戯れ合いの1つも出来ないのは、どうかと思いつつ、仕方ない話だ。

 

「望まざる戦いに思えたけど、どうやら合意の上らしいわね」

「馴れ合いより刺激を。何にせよ戦える機会は利用すべきでしょうよ」

 

ただどうせならば、ただのケンカをしたかった。学校(お国)なんかぬきで。

ただ一人の個人となることでナンバーワンを目指して、そいつが大将となるような戦いを。

 

「だが、お前は軍を率いて戦うことを選ぶんだな」

「そりゃ神輿が揺らいでいたらばマズイだろ」

 

ただ、ソレ以外にも理由がある。魔術師における称号の1つ。

 

魔道元帥と呼ばれた大師父の伝説にちと肖ろうと思った。西暦300年頃に起きた魔術協会と朱い月との戦争。

利己主義にして個人主義者で人格破綻者の集まりである魔術師たちのがん首おさえて統括して朱い月と戦ったかの大師父……本人曰く『あれが儂の決戦の日だった』とかなんとか。

 

とはいえ、それでは面白くない。というか魔法師は魔術師に比べてあまりにも『全体主義的』すぎる。その理由は分からなくもないが、というわけで刹那は、適正云々ではなく自分が『やりたい』と思っていることをやらせようと思った。

 

大師父とは逆に『枷を解いた』のだ。どうせ一度限りのドリームチーム(あぶれもの)。

やりたいことやったもんがちの青春なのだから。

 

「俺たちがセオリーに従う中、逆張りの勝負師だから、俺としても対策が取れないんですよ」

「達也君に博打打ちの才能は無さそうだものね」

 

理詰めの男である達也にとって、コレほどまでに『読み』を外される男はいない。

敵に回ると分かる刹那の恐ろしさ。それを実感していたのだが……。

 

「今回の博打は当たるかな?」

「さぁな。下手をすれば俺は九島家から何か言われるかもしれないぐらいにデリケートな案件だな」

 

周が研究所に入る前に決着を着ける……公的には周は大亜の軍人を手引した男だ。

つまり大亜の協力者ということ、これに対して魔法協会は、WANTED!を付けている。

 

ならば……公然と始末を着けられるかと言えば、これも少しばかりデリケートな問題だ。

 

「黒羽が今日(こんにち)の今夜といった以上……何かあるんだろうな」

 

恐らく『決行日』という表現でいいだろう。それを覆すべく動くわけだが……。

 

(こういうのは大抵は手遅れなパターンがあるんだよな……そもそもだが…)

 

如何に九の家にとって故郷ともいえる九研だが、一度は連盟に奪われた『城』をもう一度使おうと想うものだ。俺だったらば、埋める。沈める。砕く。その上で建物(工房)を建てる。

 

などと考えていると、グガランナの足が止まった。

 

ぶるるる!と鼻を鳴らすグガランナが『停車』したのは巨大建造物……『第九研究所』を見下ろせる場所―――山の中腹だった。

 

「マスター、あそこが第九研究所かな?」

「ああ、間違いなく。助かったよアーサー」

「グガランナは君に手綱を握ってほしかったようだから、精進しなよ」

 

そうするさ。と無言の笑顔で答えてから朱いシャツの上から黒い薄手のコートを羽織るセイバー・アーサーに、戦闘に入るかも知れないと言う。

 

「一番にはそちらの女性の護衛だ。頼めるか?」

「御意。騎士としてそれぐらいは当然だ」

「ここから周だけを狙い撃てればいいんだがな」

 

牛車の後ろにて遠くに見える九研を眺めながらそう呟く。

 

不可能を可能にする男 ゴルゴ13のような神業狙撃で―――その前に『周』の所在を達也に確認してもらう。

 

「狙撃するなら今だ―――九研の門前に停まったスポーツカーに周公瑾の姿があるぞ!」

 

ぎょっ!とするような報告の後に『鷹の目』で確認。透視(クレアボヤンス)というほどではないが、周の輪郭を見た。

同時にグガランナが器用にも『天牛金弓』をよこしてくれたことで狙撃の準備が整う。

 

いきなりなことに正直、面食らいながらも魔術師及び魔術使い遠坂刹那の意識は、ただ一点に集中する。

 

周の狙撃。ヤツを殺してしまえば咎になる。

 

―――術式魔弾・束縛呪を採用

 

かといって、ヤツに何かしらの術を行使されては木阿弥。

 

―――重複術式・防魔呪を採用

 

同時に腕の一本ぐらいは、貰い受ける。

 

―――破壊術式・青魔砲を採用

 

三種を揃え、束ね、一矢にして装填。そして―――。

 

達也と真由美の驚愕の視線を浴びながらも、刹那は―――その音の壁を破る一矢を解き放った。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。