魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~   作:無淵玄白

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安定の型月クオリティ――――なわけもなく。

遂に10月も今日一日だけになって――――――極光のアスラウグはまだなのかぁ!?(涙)

何か続報が欲しいところです。もしも体調不良ならば、それはそれで知らせていただきたい。そんな想いを抱きつつ新話どうぞ。


第336話『妖精皇女(ふぇありーぷりんせす)モるがーン・る・フぇ』

 

 

たどり着いたホテルで待っていたのは、意外なことに藤林響子と黒羽貢であった。

当初の依頼筋の中年と、九研に関係のある若い女性の組み合わせ……見る人次第では不倫関係かと勘ぐってしまうだろう。

だが、この2人が説明を欲しがっていただけに、ロビーのソファではなく閉め切りの談話室に案内されて、そこにて説明とするのだが……。

談話室の面子が面子だけに、たとえ四葉の息が掛かった場所(ホテル)とはいえ勘ぐらせることは間違いない。

通常業務で訪れている客の中に、こちらの素性を知るものがいたら、どうしようか? そんな疑問を抱けない辺りに、物申すほどヒマではないので、とりあえず貢と響子の求める事情説明を行うことにした。

ちなみにもう一方の依頼者である七草家は「SOUND ONLY」と表示された端末からのご参加である。

十五分程、説明者を変えたり質問を挟まれたりしながら全てを説明し終えると……。

 

「最初っから君に頼み込まなくても周は排除出来たのか……」

「それは結果論でしか無いのでは?」

「まぁ連盟の策謀……九研に仕込まれていた『災厄招来』の術を知らなかったわけだしな」

 

とどのつまり、どちらにせよ周公瑾は失敗することが約束されていた。九研で達也とアーサー王が見た呪詛の印……何かの血で以て刻印されていたそれが、モルガンという妖妃を呼び寄せた。

 

「私達は最高位の使い魔を招来した気分でいたけど、実際は……完全な上位存在を―――私達を破滅させるものを作っていたわけね」

「連盟が仕組んだ呪詛は、私にとって一番見覚えがあるものだった。あれは『島』の呪力を呼び寄せるものだ。かつてヴォーティガーンの配下の魔術師が使っていたものですよ」

 

卑王ヴォーティガーン。アーサー王のブリテン島統一の上で、最後に立ちはだかる強敵。

『人理』を殺してでも島を『神代』の時代に止めようとする島の意志の代弁者として、城塞都市ロンディニウムにて、太陽の騎士ガウェイン卿と騎士王アーサーは卑王と対峙を果たしたのだった。

 

「星の霊脈が『地続き』ではなく海原を越えてでもつながる以上、こういうことはあるのでしょうが……俺の失態かな。完全にブリテン島に打ち付けたアーサーの魔術基盤を利用されたカタチだ」

 

かつてフェイカーという偽性のサーヴァントを召喚した手並みと同じだ。現代魔術科の学長が、冬木の聖杯基盤を遠くブリテン島から繋げたという話を思い出す。

 

『ちなみにモルガン妃というのはどういう人物なんだい? やはり僕たち現代魔法師では御しきれないかな?』

これは東京にいる弘一からの質問だ。

 

現在、モルガンは「武蔵ちゃん」と「ジェーン」に連れられて、色々と『衣装直し』などの真っ最中である。何かの盗聴をされていても特に問題はあるまい。

よって一応説明をしておくことに―――。

 

「とりあえず巷間で語られているモルガンというのは、一般的な逸話から話すと、イギリス妖精史では『善き湖の妖精』として語られていて、アーサー王伝説が編纂されてからは、アーサーに敵対する悪女とされた」

「これは(アーサー)でもアルトリア・ペンドラゴンでも同じことだと認識してください。そこは『共通編纂項』(コモンタイムロック)なのです」

アーサーからの補足を受けて説明を続ける。

「モルガンの出自はティンタジェル公とイグレインの間に生まれた子で、後に母イグレインがウーサー王に嫁いだことで、アーサー王の姉になったんだ」

『そしてその後、正当なる王の後継たるアーサーへの嫉妬から様々な悪事を働き、最終的にはアーサーと身体を重ねて、不義にして破滅の騎士モードレッド卿を生み、円卓の騎士に送り込んだ……』

「どういったところで、キャメロットが滅びた要因の多くで最後のひと押しは、モルガンだったということです」

 

弘一の補足にして一般的な巷間で言われているモルガンの説明としては、この辺りが妥当だろう。

「ですが、モルガンには別の側面があった。それはアーサー王の守護者としての顔、時には湖の妖精ヴィヴィアンと同一視される存在、聖剣エクスカリバーを与えた存在とね」

総じて女とは摩訶不思議なものだと言わんばかりの存在だが―――。

 

「魔術世界では、どういう見解があるんだ?」

「本人に聞けば早くないか?」

 

達也の疑問をアーサーにスルーパス。そんなわけで閉め切りの談話室にいる王子様に話を聞くことに……。

 

「あのモルガン・トネリコが私が知っている姉上と同じかどうかは分からないが―――。私の知っているモルガンは、母とティンタジェル公ゴルロイス殿との間に生まれた子ではなく、父王ウーサーと母イグレインとの間に生まれた子だ」

 

ため息交じりに話す王子様だが、それでも他ならぬ自身が説明せねばならないと理解しているのだろう。

 

「えっ? それって―――」

「前置きとして、父王ウーサーと夢魔の魔術師マーリンは、ヴォーティガーンとの決戦のために『ヒトを越えた王』の創造を画策した。そのために、次代のブリテン王には、ブリテンの守護を司る赤き竜の因子を持った存在を欲したんだ」

 

真由美の疑問を解消するためというよりも、自分語りを優先したアーサーの言葉が響く。

 

「つまり、モルガンもブリテン王の候補だったということかね?」

「その通りですCLOVERのご当主。姉もまた人智を超えたチカラの持ち主ではあった―――しかし、その本質は倒そうとしているヴォーティガーンと同じくブリテン島の意志の代弁者……妖精の子だったのです」

 

その説明に黒羽貢は少しだけ考えてしまったようで、達也に視線を寄越したのである。受けて達也は、「いらんいらん」とでも言うように、片手を胸の前で振って、権力とか持ちたくないと無言で示すのだった。

 

「姉はその事実を隠し、あくまで人間の子として育っていった……私が現れるまでは確かな王権を持っていたのですが……」

 

選定の剣を抜いて、王を目指してカタフラクト兵団を組織し、異民族を征伐し王威を示していくアーサーは、ブリテンの覇権を狙い争い合う諸侯をまとめていく……そして一大勢力を作り上げて、卑王ヴォーティガーンを討ち果たした。

卑王という主を失った城塞都市ロンディニウムは、のちに騎士たちの栄光の城……キャメロットへと変わっていく。

他ならぬアーサー王の手によって……蛮族を受け入れて島の怨念に呪われた街は、そうして変わったのだ。

 

「だが、そうした私の行動は、姉には不快に映ったのだろうな。やがて彼女は、隠していた妖精姫としての神秘のチカラを持って、キャメロットを毒していった。遠くオークニーのロット王に嫁がれても、姉は私を破滅へと導こうと、様々な謀略を仕掛けてきた」

 

そうして彼女は自分を認めなかった全てを憎み、やがてブリテン破滅の一因となっていった。

何だか少しだけモルガンに同情してしまうのは、やはり古代の男社会における序列が古臭いと思ってしまうからだろうか。

それとも必要だと作っておきながら、後に要らないとされた魔法師社会と同じような関係を垣間見たからか、どちらにせよ……モルガンという英雄が『御しきれる』ものではないということは、理解できたわけだ。

 

『けれど聞いていると、随分と複雑な女性なのね。モルガン姫は……』

「そんなもんでしょ。女ってのはいくつもの『側面』(フェイス)を持った存在なのですから。

 

聞こえてくる四葉真夜の言葉にそう返す。

 

アーサーないしアルトリアの『善き姉』(ヒト)としての顔。妖精姫(ヴィヴィアン)としての顔。そしてブリテンの化身(モルガン・ル・フェ)としての顔。……もしかして三つの人格を有していたのか?」

 

「恐らく……だから、あのモルガンが『どの姉上』なのかで危険度が違うんだ……だがマスターのリソースは深いなぁ……私を維持しながらも、ジェーンと武蔵―――そしてルーラー・モルガンとも契約しているのだから」

「流石に戦闘時以外では魔力は絞っているけどな」

 

もっともルーラーモルガンも、武蔵ちゃんも、あまりこちらから魔力を送らなくても自前で何とか出来ていたりするようなので、刹那の魔力はあまり消費が無かったりするのだ。

そんなわけで、あとはモルガンにご登場願うだけだった。

 

「我が夫よ。お色直しが終わりましたが、その間に私の噂を立てるなど、あまりいい気分ではないですね。不満です」

 

申し訳ない限りだが、やはり盗聴をされていたようだ。悔しいが、やはり魔術師としては神代の時代に敵わないようだ。

 

「申し訳ない。だが君を招来した家のヒトもやってきたんだ。説明せざるを得ない」

「何だか男運悪そうな娘だな」

 

ぐさりとHeartに剣を突き刺された気分の響子だが、特に紹介もしていないのに、何故分かったのかと言いたくなるぐらいに驚異的な見識だ。

魔眼だろうと思いつつも、ショックから立ち直った響子はモルガンに『勧誘』を掛ける。

 

「えーーと、モルガンさんは刹那くんをマスターにしたいの? 出来ることならば、アナタを招来した家である九島家に就いてくれると嬉しいんだけど…」

「私は私の意志で全てを選ぶだけだ。そして何より……あまりいい気分ではないが、アルトリアの持つエクスカリバーをブリテンに打ち付けたことで私が招来した以上、その基盤の創設者に従うのは道理だ」

 

響子のスカウトに対して素気ない返答のあとには、主とした理由を言われた以上……どうしようもなかった。

 

「何より仮初のアルトリアが、マスターを主とした以上、姉として妹に劣るなどありえぬ」

 

要するに『姉より優れた妹など存在しねぇ!!』そういうことなのだった。

そういう意味合いでは響子と似通った精神性のサーヴァントではあろう。失礼千万ながらそう感じた。

 

「が……何故、このような幼童の姿になったのかはそのうち調べるとしよう……よもや、エリザベートのような複合霊基でもあるまいしな」

 

意味は不明だが神代の魔術に通じている彼女のことだ。そのちっさい姿をアルトリアに近づけると精神衛生によろしくない人がいるのだが―――まぁレッドに対しては『ああ』なのだから、問題ないと信じたい。

 

「―――私からの質問だがよろしいですか? 姉上」

「なんだ? 禁断の愛(不○は文化)をやりそうな弟よ」

「げふっ!!! そ、そういう文春砲を放たないでいただきたいモルガン妃……私の中身が砕けそうになりましょう!!」

「ただの戯れだ。許せ。全然見覚えが無い弟よ」

 

矛盾した表現ではあるが、心神耗弱した櫻井アーサーに対する物言いで理解できることもある。このモルガンは……アルトリア側の編纂史の存在なのだと―――。

 

「―――アナタはどの姉上なのだ?」

「……さてな。分からぬなどとは言わぬが、どの私であってもやることは唯一つだ」

 

ブリテンの王になるべく邁進する。あるいはブリテンの守護者たらんとする。

それだけだ。

無言で宣言されたことで、響子も『コイツとは無理』と感じたのか、管理をこちらに任せてきた。

 

「とはいえ、九研の後始末の為の始末金ぐらいは出してほしいわ」

「ならば―――これで十分だろうか?」

「「―――――――――」」

 

全員がビビるほどに呆気なく、様々な魔導器―――恐らく円卓時代のブリテンで作られたもの―――モルガン制作だけではないものを、ワームホールとでも言うべきものから出してきた。

談話室の机いっぱいに広げられたそれから漂う魔力が、こちらを毒する。

英雄王ギルガメッシュの『ゲート・オブ・バビロン』(王の財宝)のようなそれを前にして、全員が説明をモルガンに求める。

 

「キョウコ、汝はどうやら女騎士というべき存在のようだからな。これだけあれば、捨て値であっても十分に元を取れると思うが? あのガーディアンの娘どもに装備させてもよしであろう」

 

そんな言葉を言われた響子―――ここでもう一声とでも言えていれば良かったのだが、もはやあまりにもとんでもない御業を前にして、ビビってしまい、コレ以上の分捕りが出来なかった。

どうやら研究所に『人間』はいなかったようで、人的被害は無かったようだ。

そもそも九島としても、指名手配を掛けられていた周公瑾と通じていたことをあまり公にされたくないので、ソレ以上のことは無かった。

ただ一つ……この話し合いの最中、殆ど口を開かなかった真由美は―――自分の実家からの通信が映像を出さないSOUNDONLYを終始貫き、2人の声が聞こえていた事実。

某種死における『艦長と議長』のようなことをしていたと察していたのだ。

 

「周の始末自体は、四葉が請け負ったことだ。もっともあの調子では、しばらく大人しくせざるを得ないと思うがね」

 

どこぞのマフィアのボスよろしくボルサリーノハットを被る黒羽貢の言葉を受けて、それで今回の依頼は終わりとなった。

結局、依頼は完遂出来なかったので前金も返還しようとしたが―――。

 

「それぐらいは受け取っておけ―――個人的には、真由美さんへの『迷惑料金』代わりとして使い給え」

そんな言葉を受けて、結局―――翌日には不機嫌マックスの真由美を引き連れて大阪巡りへとなり、帰宅が遅れたことを学校及び家で詰られたりすることになった。

刹那の方は、さらに言えば、連れて帰ってきた妖精皇女(ふぇありーぷりんせす)モるがーン・る・フぇの存在が―――。

 

『ウチは『トキノユ』とか『ひなた荘』とか、天然の温泉が湧いているワケじゃナイわヨ!!!』

 

などと爆発させたりするのだったが……なにはともあれ、そんな一悶着ありつつも、九校戦の始まりの時は―――迫っていき―――。

そして……。

 

「自校のバスを使って現地集合でも良かったんだがな。西日本の人間たちは遠回りだろうし」

「それじゃ味気ない上に、それにヒトによっては白眼視される針のむしろかもしれないじゃないか」

「そうですね」

 

本当に色々と難儀な限りの学生選抜連合―――チーム・エルメロイである。

ロマン先生の言葉に返しつつ、集まりつつある面子の数を確認する。

というよりも、事前に泊まりで東京にいた面子が大半なわけで、集合確認はスムーズに終わった。

夏の暑さ、照りつける太陽の熱が刹那を灼いていく。

 

今の気持ちを表すならば―――。

「天気晴朗なれども波高し」

 

正しい意味ではないが、立ちはだかる波は大きくでかい。されども―――この快晴の元、出発する以上越えていこうと決意する。

そういう覚悟であった―――……。

 

一高の制服ではなく『チーム・エルメロイ』の制服を纏った刹那は、決意を新たにしていく……。

 

 

 

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